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第一話
しおりを挟む「ユリア、君との婚約、やはりなかったことにしてくれないか」
悪びれもせず、ライオット様はそう言いました。
私は衝撃を覚えるとともに、どこかで納得している自分に気が付いていました。そうか、この人はやはり、私のことなど......。
こうなった要因は、私が彼に、彼の幼馴染のことについて問い詰めたことにあります。
リリーという名前の彼女は、どこにでもある普通の家の一人娘ですが、病気がちでもう十何年も家に閉じこもったままだと聞きます。そんな彼女のために、ライオット様はお見舞いに行き、珍しい品々を贈り、外の世界の話を聞かせるのです。毎日、毎日。
お優しいのは結構なのですが、そのせいで婚約者である私とのコミュニケーションは皆無。結婚の日取りや式の準備など、話さなければならないことは山積みだというのに。
我慢の限界に達した私が、今日も夜遅く帰ってきた彼を問い詰めると、うんざりした表情とともに返ってきたのが、この言葉でした。
「......それは、正式な婚約破棄、ということですか?」
「ああ。前々から、父上とも話をしていたんだ。だから、大丈夫」
ああ、なんということでしょう。
ライオット様は、私のことなどどうでもよかった。彼が欲しかったのは、自分と幼馴染の逢瀬を快く許してくれる、そこそこ格の高い家柄の女。しかも彼だけでなく、彼の家全体が、そういう女を求めていた。
ライオット様の感情と、家の存続を両立させる。名家らしい、合理的な考え方です。私の気持ちなどどうだっていい、という残忍さも、とても名家らしい。
どうしてその条件で私が選ばれたのかわかりませんが、私にはそんなことは、一切知らされなかった。
私は何も知らないまま、ライオット様を一生の伴侶と信じて、馬鹿みたいに尽くしてきたのです。
なんと、みじめな話でしょう。
ですが、ここでごねても、誰も幸せになりません。今のライオット様にとって、私は二人の恋路の邪魔者でしかないのですから。
「......わかりました」
私は、振り絞るようにそう言うのがやっとでした。
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