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第四話
しおりを挟むそれから二か月、私は奔走し、どうにか事態は収拾されました。
繊細な政治状況ですから、この件が内戦の火種になるのではないかとひやひやしたのですが、どうやらその心配はなさそうです。
というのも、この一件はすぐに外部に伝わり、今世紀最大の笑い話、「伝説の十五分間」として、絵本が出版されるほどの大盛り上がり。
きっと王政に反対する勢力も、怒るより先に笑ってしまったのでしょうね。
もちろん、二人のしでかしたことは笑い話では済みません。
エリスはその場でとっ捕まえられ、重罪は免れないでしょう。王家を侮辱したのですから死刑でも妥当なのですが、私としては......というより、この国としては、今回の件はこのまま笑える話であってもらったほうが都合がいいので、あまり笑えない処分はやめておくよう進言しておきました。
ニード殿下は、エリスの嘘そのものは知らなかったということで罪に問われることはありませんが、王室の権威を損ねたとして、現在は謹慎中です。
あまりに市中で彼が笑いものになっているので、王権の継承順位から外すことも、目下検討中です。
それはつまり、私が王妃になれなくなるということなのですが、私はそれでも別にかまいません。私の責務は、王妃にならなくとも果たせますから。
ただ、少し面白いことになっていまして。
王室には現在、適齢の直系の男性はニード殿下しかおりません。彼を継承順位から外すと、彼の妹、現在は別の国に留学中なのですが、彼女を呼び戻すか、あるいは傍系の血族から誰かを呼び寄せるか、が一般的なのですが、そのような馴染みのない継承者を立てても、今回落ちた権威は回復されないのでは、という声が、関係者から出ているようなのです。
じゃあ彼らが誰を推しているかというと、国民に馴染み深くて、人気があって、実務能力があって、なおかつ今回の件に関わり、収拾に導いた人物......。
まさか、ね。
fin.
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