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第三章
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しおりを挟む土曜日の夜。パートは休みなので、夕食はさくらの分も夫の分も私が作る。
土曜日は夫も仕事が休みで家にいる。さくらと二人でおもちゃで遊んでいる。その光景を私はキッチンから眺める。
幸せそのものだ。なのに、私はなぜこの幸せに満足できないのだろう。
今、この瞬間、罪悪感で押し潰されそうになっても、私はまた夜に家を抜け出し、罪を犯すのだ。
ふと、夫と目が合う。
罪悪感を感じているからか、夫の目が私を疑っているような目に感じてしまい、私は慌てて目を逸らす。
もう一度、夫を見ると、視線はさくらへと移動していて、ホッとした。
夕食を作り終え、テーブルに並べる。
さくらが「お腹すいたー!」とテーブルへ走って来る。
三人でテーブルを囲み夕食を食べる。
「おいしいー!」
さくらはそう言って目の前に置かれた夕食たちをぺろりと平らげる。
しかし、夫は黙ったままだ。
私は思わず、
「味、どうかな?」
と、聞いてしまう。
「……味、薄いな。母さんが作る肉じゃがの方が美味しい。」
夫の答えに私は何も言えなくなってしまう。
結婚してから今まで夫に料理を褒められたことはなかった。味の感想だけならまだいいのだが、義理の母と料理を比べられるのはとても辛かった。
「……ごちそうさま。」
結局、夫は半分ほどしか食べなかった。
夫が残した夕食たちをシンクへ捨てる。頭を抱え、溜め息を吐く。本当にどこか遠くへ行ってしまいたい、そう思った時、エプロンのポケットに入れていたスマホが震えた。
スマホを取り出し見てみると、葵くんからLINEがきていた。
《明日、どっか行きませんか?突然お誘いしてごめんなさい》
という文章だった。
明日は日曜日で、さくらも夫もずっと家にいる。さすがに明日は無理だ。断ろう。
そう思い、返信しようとした時、シンクに捨てられた夕食たちが目に入る。
私は《ごめんなさい》と打っていた文章を消し、《私もどっか行きたいです》と打ち直し、送信した。
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