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47.再登城
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「そこでだ。ここに来たのはただあんたと話をしに来たわけじゃない。カーリィ。一緒に帝都に来てほしい」
「……えっ」
「アランはずっと目覚めないまま。目覚めさせるにはあんたの存在が必要不可欠だ」
「っ、しかし、私は帝都を追放されました。それに……私なんかがそばにいて目覚める根拠なんて……」
「目覚める確率はぐっと高くなるのは間違いない。好いた女がそばにいるんだ。これ以上の心強いものはないだろ。ちなみにもう二度と帝都に戻れない身だとかそういう事は気にしなくていい。あんたはシスターに変装して俺の客人として皇宮に潜入してもらう。いろいろ突っ込み所はあると思うが、大事な親友を救いたいんだ」
「大事な親友……」
ジャレッドさんにとって、アラン様は皇太子として敬う存在であると同時に親友としても想っているんだろう。いつもひとりぼっちだとか言っていたけれど、いるんじゃん。頼もしい親友がここに。
「もしこのまま目覚めなければ離宮へ送られて、ファンティーヌ嬢に目覚めるまで一生飼い殺しにされる。あの令嬢とその伯爵家は皇族のパイプを意地でも欲しがっているから、アランが目覚めない事をいい事に自分のモノにしようと既成事実を作ろうとするはず。今がその絶好の機会と窺い、陛下に正式な婚約の儀を結ばせようと躍起になっているんだ」
あの令嬢は……ファンティーヌ嬢はアラン様にとても執着していた。何もいらないとまで言っていた程、彼を好きだと言っていた。だから悲しいながらも身を引こうと決めたのに、今更その話を聞いてずきんと嫉妬心が胸を痛める。それに飼い殺しだなんて物騒だ。
「目覚めない皇太子と契りを結ぶなんて前代未聞だという声もあがっているが、昔からアランを歪んだような目で見ていた女と一族だ。なりふり構ってられない行動に移すだろう。それも強引にでもな。だから、それを阻止するためにもあんたに来てほしい」
「っ、でも……」
「アンタを振り回す事になるのは申し訳ないと思っている。だが、アランの事も親友として放ってはおけない。このままあの女の好き勝手にされると思うとそれこそアランは変な気を起こしてしまう。だから、本人の意思を尊重してやりたい。昔から次期皇帝陛下と祀り上げられて自由がなかったアイツには、幸せになってほしいんだよ」
切なる願いが私の胸に響く。私だってアラン様……ううん。ノア君には幸せになってほしい。
「アランが……ノアが好きなら、少しでも助けたいと思うなら……俺と来い。カーリィ」
今後の事は置いておいて、アラン様を助けるために私は帝都へ向かう事を決めた。オジー達村人はやり残したことがあるなら後悔せずにやって来いと快く送り出してくれる。しかし、カルロだけはそんな所へ向かうなとか難癖をつけてきたが無視して旅立った。
道中、妊婦だという事をジャレッドさんに打ち明けると、初恋相手には手が早いなとかアラン様に呆れていた。それと同時にくれぐれも正体がバレないようにとしつこく促された。正体がバレてしまえば想像通りに咎められてしまうし、さらにアラン様の子供を妊娠しているなんてバレでもすれば国中の大問題に発展する。
この身に宿っている新しい子にいらぬ苦労を背負わせたくないので、私自身も身を引き締めてシスターの姿に身を窶した。
帝都に到着し、馬車を降りてそのままジャレッドさんの後を追いかけるようにして慎ましく歩く。見慣れた外観の威容を見据え、入り口の大門を通り、階段を上り下りしてアラン様がいるであろう寝室へ向かう。時々すれ違う顔見知りの高官や元同僚達にドキドキしたが、なんとかしがないシスターのフリをしてやり過ごす。
「アラン様……っ」
見慣れたベッドの上には寝息を立てているアラン様……ノア君が眠っていた。それを見て泣きそうになったがなんとかこらえて、そっと手を握りしめる。転落した当初は頭部に包帯が巻かれていたらしいが、その傷も薄くなってほぼ完治したので、今はただ静かに眠っているようにしか見えない。
「ノア君……ごめんね。突然いなくなって……」
三か月前のあの別れからずっと心残りで、今やっとその謝罪をしても本人は眠っている。時々、眉根を歪めていて怖い夢でも見ているのだろうか。
「あら、ジャレッド様。そちらのシスターは?」
寝室に入ってきたファンティーヌ嬢を一目見て心の中はひどく動揺したが、平然を装いながら前を向く。顔は化ける化粧を施してもらったので一目見てカーリィ・ヒューズだとはバレやしない。じっと目を凝らして見ない限りは。
「ああ。専属のシスター兼看護師だ。今日からしばらく彼女も世話係として入ってもらう事になった」
「シスターのメアリィと申します」
偽名のメアリィとして慎ましく頭を下げる。探るようなファンティーヌ嬢の視線に逃れたかったが、ここで視線を外せば怪しまれるので堂々と見つめ返した。
「そうですか。でも必要ないわ。彼は私が看ていますので。点滴の交換も私がいたしますわ。もう何度も見ているのでやり方を覚えましたの」
得意げになってそう言う彼女に唖然とした。いやいや、点滴は医者と看護師以外は扱ってはダメなんだけど。今時子供でも分かるよね?
ジャレッドさんがファンティーヌ嬢の事を浮世離れした苦労知らずの箱入りだと罵っていたが、ちょっとわかった気がする。
「……えっ」
「アランはずっと目覚めないまま。目覚めさせるにはあんたの存在が必要不可欠だ」
「っ、しかし、私は帝都を追放されました。それに……私なんかがそばにいて目覚める根拠なんて……」
「目覚める確率はぐっと高くなるのは間違いない。好いた女がそばにいるんだ。これ以上の心強いものはないだろ。ちなみにもう二度と帝都に戻れない身だとかそういう事は気にしなくていい。あんたはシスターに変装して俺の客人として皇宮に潜入してもらう。いろいろ突っ込み所はあると思うが、大事な親友を救いたいんだ」
「大事な親友……」
ジャレッドさんにとって、アラン様は皇太子として敬う存在であると同時に親友としても想っているんだろう。いつもひとりぼっちだとか言っていたけれど、いるんじゃん。頼もしい親友がここに。
「もしこのまま目覚めなければ離宮へ送られて、ファンティーヌ嬢に目覚めるまで一生飼い殺しにされる。あの令嬢とその伯爵家は皇族のパイプを意地でも欲しがっているから、アランが目覚めない事をいい事に自分のモノにしようと既成事実を作ろうとするはず。今がその絶好の機会と窺い、陛下に正式な婚約の儀を結ばせようと躍起になっているんだ」
あの令嬢は……ファンティーヌ嬢はアラン様にとても執着していた。何もいらないとまで言っていた程、彼を好きだと言っていた。だから悲しいながらも身を引こうと決めたのに、今更その話を聞いてずきんと嫉妬心が胸を痛める。それに飼い殺しだなんて物騒だ。
「目覚めない皇太子と契りを結ぶなんて前代未聞だという声もあがっているが、昔からアランを歪んだような目で見ていた女と一族だ。なりふり構ってられない行動に移すだろう。それも強引にでもな。だから、それを阻止するためにもあんたに来てほしい」
「っ、でも……」
「アンタを振り回す事になるのは申し訳ないと思っている。だが、アランの事も親友として放ってはおけない。このままあの女の好き勝手にされると思うとそれこそアランは変な気を起こしてしまう。だから、本人の意思を尊重してやりたい。昔から次期皇帝陛下と祀り上げられて自由がなかったアイツには、幸せになってほしいんだよ」
切なる願いが私の胸に響く。私だってアラン様……ううん。ノア君には幸せになってほしい。
「アランが……ノアが好きなら、少しでも助けたいと思うなら……俺と来い。カーリィ」
今後の事は置いておいて、アラン様を助けるために私は帝都へ向かう事を決めた。オジー達村人はやり残したことがあるなら後悔せずにやって来いと快く送り出してくれる。しかし、カルロだけはそんな所へ向かうなとか難癖をつけてきたが無視して旅立った。
道中、妊婦だという事をジャレッドさんに打ち明けると、初恋相手には手が早いなとかアラン様に呆れていた。それと同時にくれぐれも正体がバレないようにとしつこく促された。正体がバレてしまえば想像通りに咎められてしまうし、さらにアラン様の子供を妊娠しているなんてバレでもすれば国中の大問題に発展する。
この身に宿っている新しい子にいらぬ苦労を背負わせたくないので、私自身も身を引き締めてシスターの姿に身を窶した。
帝都に到着し、馬車を降りてそのままジャレッドさんの後を追いかけるようにして慎ましく歩く。見慣れた外観の威容を見据え、入り口の大門を通り、階段を上り下りしてアラン様がいるであろう寝室へ向かう。時々すれ違う顔見知りの高官や元同僚達にドキドキしたが、なんとかしがないシスターのフリをしてやり過ごす。
「アラン様……っ」
見慣れたベッドの上には寝息を立てているアラン様……ノア君が眠っていた。それを見て泣きそうになったがなんとかこらえて、そっと手を握りしめる。転落した当初は頭部に包帯が巻かれていたらしいが、その傷も薄くなってほぼ完治したので、今はただ静かに眠っているようにしか見えない。
「ノア君……ごめんね。突然いなくなって……」
三か月前のあの別れからずっと心残りで、今やっとその謝罪をしても本人は眠っている。時々、眉根を歪めていて怖い夢でも見ているのだろうか。
「あら、ジャレッド様。そちらのシスターは?」
寝室に入ってきたファンティーヌ嬢を一目見て心の中はひどく動揺したが、平然を装いながら前を向く。顔は化ける化粧を施してもらったので一目見てカーリィ・ヒューズだとはバレやしない。じっと目を凝らして見ない限りは。
「ああ。専属のシスター兼看護師だ。今日からしばらく彼女も世話係として入ってもらう事になった」
「シスターのメアリィと申します」
偽名のメアリィとして慎ましく頭を下げる。探るようなファンティーヌ嬢の視線に逃れたかったが、ここで視線を外せば怪しまれるので堂々と見つめ返した。
「そうですか。でも必要ないわ。彼は私が看ていますので。点滴の交換も私がいたしますわ。もう何度も見ているのでやり方を覚えましたの」
得意げになってそう言う彼女に唖然とした。いやいや、点滴は医者と看護師以外は扱ってはダメなんだけど。今時子供でも分かるよね?
ジャレッドさんがファンティーヌ嬢の事を浮世離れした苦労知らずの箱入りだと罵っていたが、ちょっとわかった気がする。
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