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33.女嫌い
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「俺はお前が考えているほどいい男でもないし、紳士的でも誠実でもない。仮に結婚した所で俺はお前と一生同衾するつもりもない。女に触られるだけで気持ちが悪くなってしまう男なんだ、俺は」
「え……」
やはり驚きを隠せない様子。そりゃあそうだろう。一切肉体関係を持たないと言っているのだから、子無し宣告も同然だ。あと、気持ち悪くなるのは本当の事。
ついこの間まで俺の部屋を担当していたメイドや図書館にいた女に何度も迫られて、無理やり既成事実を作ろうと襲い掛かられた。それ以来女という女が苦手になってしまったのだ。カーリィ以外に体を触られると下手をすれば吐くほどに。
だからそれらの女は強引に裏から手をまわしてクビにしてやった。あの図書館の女も僻地送りにしてな。今までそうやって俺を色目で見てくる痴女共を排除してきたが、この苦手意識はここまでくると一生治りそうもない。やはり俺にはカーリィしかダメだという事。
「お前を含めた女に今まで近寄られたり触られたりして気持ちが悪かったって言いたいんだ。となると、俺とお前の間にこれ以上の関係は望めないし、俺とお前の間に子供も永久に望めない。跡取りなんてのもお前と取る予定もない。こんなうだつの上がらない男と結婚してお前は幸せにはなれないだろう。だから、大事になる前に今のうちにお前からあれは間違いだったと国民に向けて謝罪しろ。新聞各社に己の虚言だったと書かせてな」
「そんな事っ……」
令嬢の女はいろんなショックを受けていて動けない。元はと言えばそっちがデマを流すからこういう事になるんだ。
「で、でも……あなたは小さい頃、私を嫁にと言ってくださりました。あの約束はどうなさるのですか!?」
「幼少の頃の約束なんぞ時が過ぎれば変わる事もあるだろうが。政略的な婚約に本気で恋慕を抱かれても困るんだよ。それに事情が事情だ。お前も立場上わかるだろう?ガキができないイコール肩身の狭い思いをする事になる。つまり、跡取りのできない女なんぞ側近共から白い眼を向けられて針の筵。三年子無きは~って言うだろ。ガキのできない俺と結婚してもお前になんのメリットも意味もない。あるとすれば飾り物の皇妃の座くらいか……って言ってもそんなお飾り椅子は重荷にしかならないだろう。という事でもう俺に余計な期待をするな。関わるな」
「それでも……わたくしはアラン様をっ……アラン様をお慕い申しております!子供がいなくてもわたくしはあなたと添い遂げたいのですっ。どうかおそばに……」
令嬢は泣きながら俺に手を伸ばし、縋り付こうとする。俺はパシリとその手を払いのけた。ここまで言ってまだ引き下がらないとか空気が読めないメンヘラ女だな。俺も人の事言えないが。
「気安く俺に触るなよ。どの女に触られても反吐が出るんだ。これ以上近寄らないでいただきたい」
「アラン様っ!!」
令嬢を無視して側近のジャレットに目配せする。
「後日、私が他にいい男性を紹介させましょう。帝国軍人の爵位を持つ有能な殿方を。貴女にとって決して悪くない男性だ。これからはその殿方相手に愛でもなんでも囁いてもらうといいでしょう。それでは失礼。まだ公務が残っておりますので」
「アラン様っ!いや……待って!」
「ジャレッド、ファンティーヌ嬢のお帰りだ。お見送りの準備を」
俺は言い終わる前に背中を向けてバラ園を出て行こうとする。背後から「御意」と首を垂れる有能な腹心のジャレットは、早々に部下に指示を出している。
「いや……!アラン様!アラン様ぁ!」
令嬢は立ち去ろうとする俺の名を叫んでいる。それに対してやっぱりなんの感慨もわかなかった。女なんてカーリィ以外はどれも同じだ。身を着飾るばかりで、中身の良さを磨こうとしない我儘で喚く女ばかり。大嫌いだ。
*
「ふう……終わった」
一階の廊下の掃除と客間の清掃が完了し、私は流れる汗を拭った。あとはノア君がよくいる古い図書館前の廊下で今日の業務は完了だ。
働き始めて半年が経ち、以前よりかは仕事のスピードが速くなった事に嬉しくなる。メイド長や執事長も褒めてくれて充実している毎日。
明日もがんばろうとぐっと背伸びをすると、向こうの柱からしくしくとすすり泣く声が聞こえてきた。
「え……」
やはり驚きを隠せない様子。そりゃあそうだろう。一切肉体関係を持たないと言っているのだから、子無し宣告も同然だ。あと、気持ち悪くなるのは本当の事。
ついこの間まで俺の部屋を担当していたメイドや図書館にいた女に何度も迫られて、無理やり既成事実を作ろうと襲い掛かられた。それ以来女という女が苦手になってしまったのだ。カーリィ以外に体を触られると下手をすれば吐くほどに。
だからそれらの女は強引に裏から手をまわしてクビにしてやった。あの図書館の女も僻地送りにしてな。今までそうやって俺を色目で見てくる痴女共を排除してきたが、この苦手意識はここまでくると一生治りそうもない。やはり俺にはカーリィしかダメだという事。
「お前を含めた女に今まで近寄られたり触られたりして気持ちが悪かったって言いたいんだ。となると、俺とお前の間にこれ以上の関係は望めないし、俺とお前の間に子供も永久に望めない。跡取りなんてのもお前と取る予定もない。こんなうだつの上がらない男と結婚してお前は幸せにはなれないだろう。だから、大事になる前に今のうちにお前からあれは間違いだったと国民に向けて謝罪しろ。新聞各社に己の虚言だったと書かせてな」
「そんな事っ……」
令嬢の女はいろんなショックを受けていて動けない。元はと言えばそっちがデマを流すからこういう事になるんだ。
「で、でも……あなたは小さい頃、私を嫁にと言ってくださりました。あの約束はどうなさるのですか!?」
「幼少の頃の約束なんぞ時が過ぎれば変わる事もあるだろうが。政略的な婚約に本気で恋慕を抱かれても困るんだよ。それに事情が事情だ。お前も立場上わかるだろう?ガキができないイコール肩身の狭い思いをする事になる。つまり、跡取りのできない女なんぞ側近共から白い眼を向けられて針の筵。三年子無きは~って言うだろ。ガキのできない俺と結婚してもお前になんのメリットも意味もない。あるとすれば飾り物の皇妃の座くらいか……って言ってもそんなお飾り椅子は重荷にしかならないだろう。という事でもう俺に余計な期待をするな。関わるな」
「それでも……わたくしはアラン様をっ……アラン様をお慕い申しております!子供がいなくてもわたくしはあなたと添い遂げたいのですっ。どうかおそばに……」
令嬢は泣きながら俺に手を伸ばし、縋り付こうとする。俺はパシリとその手を払いのけた。ここまで言ってまだ引き下がらないとか空気が読めないメンヘラ女だな。俺も人の事言えないが。
「気安く俺に触るなよ。どの女に触られても反吐が出るんだ。これ以上近寄らないでいただきたい」
「アラン様っ!!」
令嬢を無視して側近のジャレットに目配せする。
「後日、私が他にいい男性を紹介させましょう。帝国軍人の爵位を持つ有能な殿方を。貴女にとって決して悪くない男性だ。これからはその殿方相手に愛でもなんでも囁いてもらうといいでしょう。それでは失礼。まだ公務が残っておりますので」
「アラン様っ!いや……待って!」
「ジャレッド、ファンティーヌ嬢のお帰りだ。お見送りの準備を」
俺は言い終わる前に背中を向けてバラ園を出て行こうとする。背後から「御意」と首を垂れる有能な腹心のジャレットは、早々に部下に指示を出している。
「いや……!アラン様!アラン様ぁ!」
令嬢は立ち去ろうとする俺の名を叫んでいる。それに対してやっぱりなんの感慨もわかなかった。女なんてカーリィ以外はどれも同じだ。身を着飾るばかりで、中身の良さを磨こうとしない我儘で喚く女ばかり。大嫌いだ。
*
「ふう……終わった」
一階の廊下の掃除と客間の清掃が完了し、私は流れる汗を拭った。あとはノア君がよくいる古い図書館前の廊下で今日の業務は完了だ。
働き始めて半年が経ち、以前よりかは仕事のスピードが速くなった事に嬉しくなる。メイド長や執事長も褒めてくれて充実している毎日。
明日もがんばろうとぐっと背伸びをすると、向こうの柱からしくしくとすすり泣く声が聞こえてきた。
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