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12.皇子の微笑
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相変わらずの性悪野郎だと内心ムカついていると、性悪皇子はこちらをじっと見つめていた。纏っていた警戒心が和らいでいる感じがして、訝しげに見つめ返すと、
「お前、名前は……?」
なぜか名前を訊ねられた。急になんで。
「え、あー……いや、その……名前は言えないです。素性をばらせないのが仮面舞踏会の掟ですよね。ほら、つけてますでしょ?」
「じゃあ、その仮面をとれ」
「それが一番無理っす」
この場は仮面舞踏会の会場とは異なるし、別にそんなルールはこの場に適用されないだろうとは思うのだが、自分の平凡地味な素顔なんて見られたくない。この性悪皇子にブスだとか地味だとか、悪口のオンパレードを吐かれそうだからな。
それにもしここを通りかかった者が偶然ここを見たとしよう。チクられて私に罰がきてしまうじゃないか。この皇太子に罰がいくわけはないだろうし、平民の私が確実に不利である。罰金ウン十万も払わせられるなんて野垂れ死にも同然だ。
「それくらい別にいいだろ」
「いえ、知ってもすぐ忘れます。しがない働き盛りの下働きブスなので。こうやって会う事なんてそうそうないですし、ここを見られでもすれば罰金ウン十万が……ぶつぶつ」
「どんだけ警戒しているんだお前は。たかが罰金くらいで」
呆れている皇子にこちらが呆れたくなるわ。世間知らずなこーたいしサマにな。
「警戒もなにもあなたが皇太子サマだからです。それに罰金くらいでとおっしゃいますが平民には大金です。明日の生活もやっとなんですから、払えなんて言われた暁には死亡フラグです」
世知辛い世の中なんすよと言うと、皇太子サマは急に意気消沈した様子で微笑んでいた。
「そう……なんだな。俺はまだ平民の事を……何もわかってなかった……世間知らずだ……」
世間に疎い自分を嘆いているようだった。皇太子サマだから平民の事を気にしても仕方ないのにね。まあ、外の世界に住む者達の苦労を考えられる点は良い事だ。
「だが、皇太子ってだけで権力があると思うな。所詮はただのお飾りだ。つまらん肩書きに過ぎない」
「え……」
「っ……なんでもない。質問を変える。お前の出身地はどこだ」
「出身地?なぜ出身地なんて……」
「いいから言え。名前や顔が駄目なら世間話くらいはいいだろ」
「ま、まあ……別にそれくらいならいいですけど、笑わないでくださいよ。辺境の北の地にある山です。なんて名前かは言えませんけど」
オリーブ山だなんて爆笑されるレベルの未開の地も同然だ。働き始めた時だって、出身地を訊ねられて答えたら超田舎の山奥だってバカにされたものだ。
きっとこの人も笑って……ってあれ?笑わない。むしろ「やっぱり」とでも言いたそうな納得した顔だった。想像通りのド田舎だから驚きも少ないってやつかね。それはそれで腹立つんですけど。
微妙な反応だなーと思っていると、皇太子様はふっと柔和に微笑んだ。
しょ、性悪皇子が穏やかに笑った……!?なん、だと。
「遠くから来たんだな……」
柔和に笑う顔があまりに予想外すぎて、逆にこちらが驚いて固まった。口の悪い性悪で、一人の時間が好きなツンツン野郎だと思っていたけど、そんな顔もできるんじゃん。
「あ、あのぉ……なんで、急にそんな顔を……」
「あん?」
「ア、イエナンデモゴザイマセン」
下手なこと言うと今度こそ不敬扱いされるかもしれないし、ブスが粋がんなボケがとか言われそうなのでやめておく。さっきみたいに睨まれて警戒されているよりかはマシなので、ちょっとだけ心を開いてくれたのは悪くない。仮面という魔法を纏っている今だけかもしれないけど。
そんな時、向こうから優雅な音楽が流れ始めた。仮面舞踏会のメインダンスが始まったのだろう。皆今頃楽しそうに踊っているはずだ。
「お前、名前は……?」
なぜか名前を訊ねられた。急になんで。
「え、あー……いや、その……名前は言えないです。素性をばらせないのが仮面舞踏会の掟ですよね。ほら、つけてますでしょ?」
「じゃあ、その仮面をとれ」
「それが一番無理っす」
この場は仮面舞踏会の会場とは異なるし、別にそんなルールはこの場に適用されないだろうとは思うのだが、自分の平凡地味な素顔なんて見られたくない。この性悪皇子にブスだとか地味だとか、悪口のオンパレードを吐かれそうだからな。
それにもしここを通りかかった者が偶然ここを見たとしよう。チクられて私に罰がきてしまうじゃないか。この皇太子に罰がいくわけはないだろうし、平民の私が確実に不利である。罰金ウン十万も払わせられるなんて野垂れ死にも同然だ。
「それくらい別にいいだろ」
「いえ、知ってもすぐ忘れます。しがない働き盛りの下働きブスなので。こうやって会う事なんてそうそうないですし、ここを見られでもすれば罰金ウン十万が……ぶつぶつ」
「どんだけ警戒しているんだお前は。たかが罰金くらいで」
呆れている皇子にこちらが呆れたくなるわ。世間知らずなこーたいしサマにな。
「警戒もなにもあなたが皇太子サマだからです。それに罰金くらいでとおっしゃいますが平民には大金です。明日の生活もやっとなんですから、払えなんて言われた暁には死亡フラグです」
世知辛い世の中なんすよと言うと、皇太子サマは急に意気消沈した様子で微笑んでいた。
「そう……なんだな。俺はまだ平民の事を……何もわかってなかった……世間知らずだ……」
世間に疎い自分を嘆いているようだった。皇太子サマだから平民の事を気にしても仕方ないのにね。まあ、外の世界に住む者達の苦労を考えられる点は良い事だ。
「だが、皇太子ってだけで権力があると思うな。所詮はただのお飾りだ。つまらん肩書きに過ぎない」
「え……」
「っ……なんでもない。質問を変える。お前の出身地はどこだ」
「出身地?なぜ出身地なんて……」
「いいから言え。名前や顔が駄目なら世間話くらいはいいだろ」
「ま、まあ……別にそれくらいならいいですけど、笑わないでくださいよ。辺境の北の地にある山です。なんて名前かは言えませんけど」
オリーブ山だなんて爆笑されるレベルの未開の地も同然だ。働き始めた時だって、出身地を訊ねられて答えたら超田舎の山奥だってバカにされたものだ。
きっとこの人も笑って……ってあれ?笑わない。むしろ「やっぱり」とでも言いたそうな納得した顔だった。想像通りのド田舎だから驚きも少ないってやつかね。それはそれで腹立つんですけど。
微妙な反応だなーと思っていると、皇太子様はふっと柔和に微笑んだ。
しょ、性悪皇子が穏やかに笑った……!?なん、だと。
「遠くから来たんだな……」
柔和に笑う顔があまりに予想外すぎて、逆にこちらが驚いて固まった。口の悪い性悪で、一人の時間が好きなツンツン野郎だと思っていたけど、そんな顔もできるんじゃん。
「あ、あのぉ……なんで、急にそんな顔を……」
「あん?」
「ア、イエナンデモゴザイマセン」
下手なこと言うと今度こそ不敬扱いされるかもしれないし、ブスが粋がんなボケがとか言われそうなのでやめておく。さっきみたいに睨まれて警戒されているよりかはマシなので、ちょっとだけ心を開いてくれたのは悪くない。仮面という魔法を纏っている今だけかもしれないけど。
そんな時、向こうから優雅な音楽が流れ始めた。仮面舞踏会のメインダンスが始まったのだろう。皆今頃楽しそうに踊っているはずだ。
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