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「なっ……あー……そ、そういえばお宅の言う奴隷かは知りませんが、激しく泣いていたのはいましたねえ。実に愉しかったなぁ」
グレイソンは思い当たる節があるのか話をそらすように、フラヴィオの怒りになるべく触れないように話題を選んで話し出す。
「こちらは紳士的に接してやっているのに、その少年は何度も何度もあなたの名前を泣き叫びながら許しを請いていましたよ~。あんな汚いガキに好かれて公爵殿も気の毒というか何というね~でもよがる姿はどんな女や男よりも甘美な味がしました。泣いているにも関わらずイヤらしく腰を振ってアンアン啼いて笑いがとまらな――」
その刹那――フラヴィオがグレイソンの両腕を斬り裂いていた。
「ぐぎゃああっ!!」
目の前がカッと赤くなっていた。ここまでよく我慢したと思う。眩暈がするほどの怒りを抑える事など不可能で、気が付いたら手が動いていた。
レオや部下達が止める暇もなくぼとりとグレイソンの両腕が床に落ち、野太い絶叫をあげる。自らのなくなった腕を見てパニックを起こし、巨体は血だまりに転がった。
「お、おれさまの腕が……腕がぁああ!!なじぇ……なじぇええっ」
「貴様には腕など過ぎたものだろう。だから報いとして奪ってやった。その手でもう二度と悪事を働けないようにな。だが、これだけでは俺の気は済まない。貴様の言う激しく泣いていた少年……つまり俺の愛するティオと十数年前の姉リディアにした報いも受けてもらわないとな」
視線で殺せるほどの激情を宿し、伯爵の体を思いっきり踏みつける。普段から無表情なフラヴィオの顔から、さらに感情が抜け落ちたその顔は悪鬼そのもの。憎悪と殺意の赴くまま血で汚れた剣を持ち変える。
「おれの、あい、する、ティオ……!?」
「そうだ。それを貴様は知ってか知らずか蹂躙した。その蹂躙した下半身はここか。この汚らしい局部かッ!ああ、忌々しいっっ!!汚らしい!!突き刺してやるよ。こうやってなっ!!」
「ぐぎゃああぁああーー!!」
フラヴィオはグレイソンの股間を杭を打つように刺し貫いた。
「ひぎいいーーー!あ、ああああ!ああ……なんで……なんで、……あ、あぁあんなきたな、い……が、ガキ、なんか、に……まさ、か……ほ、本気で……惚れ、て……ぐあああああ!!」
グレイソンがまさかの地雷を踏んだと悟った頃にはもう遅かった。今度は両足をも貫かれた。フラヴィオは返り血を浴びながらもその様子をじっと眺めて「いいザマだ」と一言呟く。
あまりの苦痛に声をあげることができなくなったグレイソンは、最早恥も外聞もなく涙を流してひいひいと呼吸をあげて転がる。ここまでしても醜い豚が汚く喚いているとしか思えない。
「ティオや姉がどれだけ恐怖したか、屈辱だったか、その浅ましい野望と私腹を肥やす事しか考えていない豚になどわからんだろうな!!そんな下劣な豚はこれから絶望と恐怖と痛みにのた打ち回りながら死ねっ!!」
フラヴィオの激しい剣幕は共にいたレオや部下の者達でさえ震えてすくみ上がる。それほどの逆鱗に触れたのだと誰もが圧倒されて茫然とする。
簡単には殺さない。簡単には心の臓を刺してたまるか。この上ない痛みを与えて地獄のように苦しませてやる。そして、最期は無様に命乞いをした所で獣にでも食わせてゆっくり殺してやる。今までのうのうと好き勝手して生きてきた事を後悔させてやる。
「フラン」
憎悪に震えるその背中を見ながらレオはやっと肩を掴む。このままではフラヴィオが狂ってしまいかねない気がしてあえて声を掛けた。声を掛けるまでは自分もフラヴィオの激情に呑まれてしまっていた。
「止めるな……こいつはっ……こいつは俺のティオや姉さんをっ……苦しませて殺してやるッ!!」
未だに怒りは収まらない。どんなにこいつを痛めつけても、やり場のない怒りは永遠に冷めやらない気がする。
「馬鹿野郎!気持ちはわかるがティオの方が先だろう!!しっかりしろ!!病むな!!」
「ぁ……てぃ、ティオっ!」
レオの怒声にはっとして、ティオの安否と不安に泣きそうになった。
「こいつの後始末は任せとけ。どうせこのまま放っておいても死ぬだろうが、その後の始末を怠るとお前が過剰殺人として罪に問われてしまいかねないからな。うまい事処理をしておく。だからお前は早くティオを探せ!」
「っありが、と。頼む……レオ……」
*
フラヴィオは部下と共に広い屋敷の中を探し回る。未だに冷めやらぬ激情を一旦は抑え込み、止まることなく次々と部屋を開けて探索する。いろんな部屋の探索を始めてから何人かの使用人達がこちらを見て震えていた。
グレイソンの使用人達は仕方なく伯爵命令で働かされていたらしい。逆らえば家族ごと道連れだと脅されていた事を細々と話す。気の毒なほど縮こまっており、グレイソンに日々相当いたぶられて恫喝されていたようだ。とりあえず部下達に罪のない使用人達を保護するよう指示を出し、自分は他の部下達とさらに下層へと向かう。
「ティオ!どこだ!ティオ!」
一階と二階を探した上で最後に地下室に降りると、たくさんの檻の中に年端もいかない少年少女たちが監禁されていた。グレイソンの奴隷として理不尽に買われた少年少女達だろう。
どれもが人形のように動かず、ぼうっと鎖で繋がられたまま脱力している。逃げる気力どころか動く気力さえない様子に、グレイソンの性暴力に怯え、罵倒され、されるがまま耐えて疲れ切った末に無気力になってしまったんだろう。
自分の姉もここで殺された。おそらくこのような状態で。
もし、この場所を見つける事ができなかったら、この少年少女達の末路は言わずもがな姉と同じ末路を辿る。そして、ティオも……
そう思うとまた抑え込んでいた怒りが沸くが、今はティオを探すのみ。
グレイソンは思い当たる節があるのか話をそらすように、フラヴィオの怒りになるべく触れないように話題を選んで話し出す。
「こちらは紳士的に接してやっているのに、その少年は何度も何度もあなたの名前を泣き叫びながら許しを請いていましたよ~。あんな汚いガキに好かれて公爵殿も気の毒というか何というね~でもよがる姿はどんな女や男よりも甘美な味がしました。泣いているにも関わらずイヤらしく腰を振ってアンアン啼いて笑いがとまらな――」
その刹那――フラヴィオがグレイソンの両腕を斬り裂いていた。
「ぐぎゃああっ!!」
目の前がカッと赤くなっていた。ここまでよく我慢したと思う。眩暈がするほどの怒りを抑える事など不可能で、気が付いたら手が動いていた。
レオや部下達が止める暇もなくぼとりとグレイソンの両腕が床に落ち、野太い絶叫をあげる。自らのなくなった腕を見てパニックを起こし、巨体は血だまりに転がった。
「お、おれさまの腕が……腕がぁああ!!なじぇ……なじぇええっ」
「貴様には腕など過ぎたものだろう。だから報いとして奪ってやった。その手でもう二度と悪事を働けないようにな。だが、これだけでは俺の気は済まない。貴様の言う激しく泣いていた少年……つまり俺の愛するティオと十数年前の姉リディアにした報いも受けてもらわないとな」
視線で殺せるほどの激情を宿し、伯爵の体を思いっきり踏みつける。普段から無表情なフラヴィオの顔から、さらに感情が抜け落ちたその顔は悪鬼そのもの。憎悪と殺意の赴くまま血で汚れた剣を持ち変える。
「おれの、あい、する、ティオ……!?」
「そうだ。それを貴様は知ってか知らずか蹂躙した。その蹂躙した下半身はここか。この汚らしい局部かッ!ああ、忌々しいっっ!!汚らしい!!突き刺してやるよ。こうやってなっ!!」
「ぐぎゃああぁああーー!!」
フラヴィオはグレイソンの股間を杭を打つように刺し貫いた。
「ひぎいいーーー!あ、ああああ!ああ……なんで……なんで、……あ、あぁあんなきたな、い……が、ガキ、なんか、に……まさ、か……ほ、本気で……惚れ、て……ぐあああああ!!」
グレイソンがまさかの地雷を踏んだと悟った頃にはもう遅かった。今度は両足をも貫かれた。フラヴィオは返り血を浴びながらもその様子をじっと眺めて「いいザマだ」と一言呟く。
あまりの苦痛に声をあげることができなくなったグレイソンは、最早恥も外聞もなく涙を流してひいひいと呼吸をあげて転がる。ここまでしても醜い豚が汚く喚いているとしか思えない。
「ティオや姉がどれだけ恐怖したか、屈辱だったか、その浅ましい野望と私腹を肥やす事しか考えていない豚になどわからんだろうな!!そんな下劣な豚はこれから絶望と恐怖と痛みにのた打ち回りながら死ねっ!!」
フラヴィオの激しい剣幕は共にいたレオや部下の者達でさえ震えてすくみ上がる。それほどの逆鱗に触れたのだと誰もが圧倒されて茫然とする。
簡単には殺さない。簡単には心の臓を刺してたまるか。この上ない痛みを与えて地獄のように苦しませてやる。そして、最期は無様に命乞いをした所で獣にでも食わせてゆっくり殺してやる。今までのうのうと好き勝手して生きてきた事を後悔させてやる。
「フラン」
憎悪に震えるその背中を見ながらレオはやっと肩を掴む。このままではフラヴィオが狂ってしまいかねない気がしてあえて声を掛けた。声を掛けるまでは自分もフラヴィオの激情に呑まれてしまっていた。
「止めるな……こいつはっ……こいつは俺のティオや姉さんをっ……苦しませて殺してやるッ!!」
未だに怒りは収まらない。どんなにこいつを痛めつけても、やり場のない怒りは永遠に冷めやらない気がする。
「馬鹿野郎!気持ちはわかるがティオの方が先だろう!!しっかりしろ!!病むな!!」
「ぁ……てぃ、ティオっ!」
レオの怒声にはっとして、ティオの安否と不安に泣きそうになった。
「こいつの後始末は任せとけ。どうせこのまま放っておいても死ぬだろうが、その後の始末を怠るとお前が過剰殺人として罪に問われてしまいかねないからな。うまい事処理をしておく。だからお前は早くティオを探せ!」
「っありが、と。頼む……レオ……」
*
フラヴィオは部下と共に広い屋敷の中を探し回る。未だに冷めやらぬ激情を一旦は抑え込み、止まることなく次々と部屋を開けて探索する。いろんな部屋の探索を始めてから何人かの使用人達がこちらを見て震えていた。
グレイソンの使用人達は仕方なく伯爵命令で働かされていたらしい。逆らえば家族ごと道連れだと脅されていた事を細々と話す。気の毒なほど縮こまっており、グレイソンに日々相当いたぶられて恫喝されていたようだ。とりあえず部下達に罪のない使用人達を保護するよう指示を出し、自分は他の部下達とさらに下層へと向かう。
「ティオ!どこだ!ティオ!」
一階と二階を探した上で最後に地下室に降りると、たくさんの檻の中に年端もいかない少年少女たちが監禁されていた。グレイソンの奴隷として理不尽に買われた少年少女達だろう。
どれもが人形のように動かず、ぼうっと鎖で繋がられたまま脱力している。逃げる気力どころか動く気力さえない様子に、グレイソンの性暴力に怯え、罵倒され、されるがまま耐えて疲れ切った末に無気力になってしまったんだろう。
自分の姉もここで殺された。おそらくこのような状態で。
もし、この場所を見つける事ができなかったら、この少年少女達の末路は言わずもがな姉と同じ末路を辿る。そして、ティオも……
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