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89.リリアの正体とは
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「ああっ、メルキオール君!来てくれたんだね!私のためにっ!もうこんな暗い中に閉じ込めておくなんてひどいと思わない?か弱い女の子をさっ。ぷんぷん」
「相変わらずお前は懲りない女だな……」
メルが姿を見せた途端にぱあっと顔を明るくさせる女。昨日の事などなかったかのような態度で牢屋の入口前まで寄ってくる。学習力がないのか、それとも……いや、何も考えていないだけだろう。
硫酸をかぶった顔は包帯が巻かれ、目だけが見える状態になっている。結構な量をかぶったのだ。ただ傷が残るレベルではないだろうと思う。時間経過した今もそれなりにヒリヒリして痛いはずだ。それでも痛がらずに呑気に声を掛けてくるこの女の精神の図太さだけは尊敬に値するものだ。
「だって恋する乙女はなんだってがんばれちゃうんだからっ。メルキオール君のためなら私っ、どんな事も耐えられるわっ」
「悲劇のヒロインぶって自分に酔ってるな。そんな姿になってまでよくオレにすり寄ろうとするな。執着されてマジうぜぇんだけど」
「うぜぇって……やっぱりメルキオール君は意地悪だよっ。そんな意地悪な所もひねくれてて好きだけどぉっ」
「お前に好かれてオレは世界一不幸だね。あーやんなっちゃう」
「私は世界一幸せだもんっ!運命の番はパスカル君じゃなくて私になってるんだからっ。夢の中で白馬に乗ったメルキオール君が迎えに来てくれてぇ、花束持って優しい言葉を掛けてくれるんだからっ。それでね、お花畑できゃっきゃして初キッスしてぇ、お花畑で初めてのエッチしちゃうの。そこでね、妖精さん達が祝福してくれてね、みんなに見守られながらいっぱいまた愛されるんだぁ。きゃっ、祝福されながらのえっちとか恥ずかしい」
「…………きっしょ。妖精に見られながら青姦とかどんな罰ゲームだよ。羞恥プレイとかオレ趣味じゃねーし。ステレオタイプの少女趣味もここまでくると鳥肌立つわ。まじきんも。おえっ。吐きそう」
「ううう、吐きそうとかひどぉおおい!恋する乙女の願望なのにっ」
「恋する乙女どころか股開きのビッチだろうが。キショい妄想暴露すんなや」
ああ、どんな姿になってもこの女は典型的なヒロイン像なのだ。昔ながらの王道な少女漫画のヒロイン脳で、天然無自覚の男誑し。どんな男も惚れさせてしまうゲームの強制力という力を持っているので、きっと強制力は死なない限り永遠に男を誘惑し続けるのだろう。無自覚に、無意識に。
「まあ、好き勝手妄想の中で白馬に跨る偽物なオレに愛されてなよ、夢見る夢子の阿婆擦れちゃん。明日の深夜にお前はどうせ処刑だろうけどな」
「ええっ、処刑?処刑って何?処刑ってうそでしょぉ!?私、何も悪い事してないもんっ!なんで?なんで?」
「お前はバカだからわかりやすくゆっく~り説明してあげると、お前の仲間に国家転覆を企む男が複数いたわけ」
「え、こっかてんぷく?」
「この帝国を滅ぼそうとする奴らって事。それにお前は知らずに加担してたの。仲間にしてた。わかる?わかるよね?それわかんないともうお前生きてる意味ないよ。死んで赤ちゃんからやり直した方がいいね、阿婆擦れちゃん」
「ぶうううう!バカにしないでよっ!さすがにそれはわかるもん!ぷんぷんっ!」
「ならこの状況の深刻さは理解してる?知らなかったじゃ済まないし、げんにお前はオレをおびき出すためにパスカルとキャロライン嬢を誘拐した首謀者だ。知らなかったとか、そんなつもりなかったじゃ済まされない。それ以外でもお前はヴァユ国でレナードを筆頭とする王侯貴族を引っ掻き回し、国の税金で豪遊して好き勝手してた。これ以上お前の所業は見過ごせないわけ。てことで、さっきお前の処刑が決まった。お前の両親は泣いてたけど、処刑には納得してたよ」
「っ……し、信じられないモン!私悪い事してないのにっ!そ、そりゃあパスカル君とかを誘拐はしちゃったけど、こうでもしないとメルキオール君は私を見てくれないじゃないっ!」
見てくれない、か。
そう言えば前世の元嫁もそんな事を言っていた。前世で結婚前の女遊びがひどかった頃や、パスカルと仲良くするようになった時に。
『恭太さんはあの男の子ばかり構って私を見てくれようとしないじゃない!』って――。
やっぱり、この女のモデルは元嫁にしか思えない。どれもこれもそっくりすぎるのだ。
「オレが見てくれないからって誘拐にまで走るとか、マジドン引きだから」
「でも、でもっ……メルキオール君が好きだからっ」
「デモダッテとか、好きだからとか、大した言い訳なさすぎて聞くのも嫌になってくるな」
「だってぇ……好きになったら止まらないんだもんっ!恋する乙女なんだもんっ!」
そうしてすぐ涙目になって感情的なるのも元嫁そっくりだ。
「あーもうどうでもいい。オレが一番怒ってるのはパスカルを誘拐して汚い奴らに凌辱させようとした事だ」
「それは……別に殺そうとしたわけじゃないし、ちょっとちがう男の子とスルだけなんだから。大した事ないじゃんっ!」
「セックス大好きなお前からすれば大した事はないだろうな。誰構わず股を開くなんて普通は嫌だから。不快で不潔だから。倫理観がズレてんだよお前。普通じゃないの。わかる?」
「そうなの?あんなにも気持ちいい事なのに嫌がるなんて変なのぉ。ていうか不潔だなんてひどいっ!」
ああ、やっぱりこの女に何を言っても無駄だなと察する。所詮は元嫁の亡霊のようなものだ。人間相手と話していると思わない方がいいだろう。
「相変わらずお前は懲りない女だな……」
メルが姿を見せた途端にぱあっと顔を明るくさせる女。昨日の事などなかったかのような態度で牢屋の入口前まで寄ってくる。学習力がないのか、それとも……いや、何も考えていないだけだろう。
硫酸をかぶった顔は包帯が巻かれ、目だけが見える状態になっている。結構な量をかぶったのだ。ただ傷が残るレベルではないだろうと思う。時間経過した今もそれなりにヒリヒリして痛いはずだ。それでも痛がらずに呑気に声を掛けてくるこの女の精神の図太さだけは尊敬に値するものだ。
「だって恋する乙女はなんだってがんばれちゃうんだからっ。メルキオール君のためなら私っ、どんな事も耐えられるわっ」
「悲劇のヒロインぶって自分に酔ってるな。そんな姿になってまでよくオレにすり寄ろうとするな。執着されてマジうぜぇんだけど」
「うぜぇって……やっぱりメルキオール君は意地悪だよっ。そんな意地悪な所もひねくれてて好きだけどぉっ」
「お前に好かれてオレは世界一不幸だね。あーやんなっちゃう」
「私は世界一幸せだもんっ!運命の番はパスカル君じゃなくて私になってるんだからっ。夢の中で白馬に乗ったメルキオール君が迎えに来てくれてぇ、花束持って優しい言葉を掛けてくれるんだからっ。それでね、お花畑できゃっきゃして初キッスしてぇ、お花畑で初めてのエッチしちゃうの。そこでね、妖精さん達が祝福してくれてね、みんなに見守られながらいっぱいまた愛されるんだぁ。きゃっ、祝福されながらのえっちとか恥ずかしい」
「…………きっしょ。妖精に見られながら青姦とかどんな罰ゲームだよ。羞恥プレイとかオレ趣味じゃねーし。ステレオタイプの少女趣味もここまでくると鳥肌立つわ。まじきんも。おえっ。吐きそう」
「ううう、吐きそうとかひどぉおおい!恋する乙女の願望なのにっ」
「恋する乙女どころか股開きのビッチだろうが。キショい妄想暴露すんなや」
ああ、どんな姿になってもこの女は典型的なヒロイン像なのだ。昔ながらの王道な少女漫画のヒロイン脳で、天然無自覚の男誑し。どんな男も惚れさせてしまうゲームの強制力という力を持っているので、きっと強制力は死なない限り永遠に男を誘惑し続けるのだろう。無自覚に、無意識に。
「まあ、好き勝手妄想の中で白馬に跨る偽物なオレに愛されてなよ、夢見る夢子の阿婆擦れちゃん。明日の深夜にお前はどうせ処刑だろうけどな」
「ええっ、処刑?処刑って何?処刑ってうそでしょぉ!?私、何も悪い事してないもんっ!なんで?なんで?」
「お前はバカだからわかりやすくゆっく~り説明してあげると、お前の仲間に国家転覆を企む男が複数いたわけ」
「え、こっかてんぷく?」
「この帝国を滅ぼそうとする奴らって事。それにお前は知らずに加担してたの。仲間にしてた。わかる?わかるよね?それわかんないともうお前生きてる意味ないよ。死んで赤ちゃんからやり直した方がいいね、阿婆擦れちゃん」
「ぶうううう!バカにしないでよっ!さすがにそれはわかるもん!ぷんぷんっ!」
「ならこの状況の深刻さは理解してる?知らなかったじゃ済まないし、げんにお前はオレをおびき出すためにパスカルとキャロライン嬢を誘拐した首謀者だ。知らなかったとか、そんなつもりなかったじゃ済まされない。それ以外でもお前はヴァユ国でレナードを筆頭とする王侯貴族を引っ掻き回し、国の税金で豪遊して好き勝手してた。これ以上お前の所業は見過ごせないわけ。てことで、さっきお前の処刑が決まった。お前の両親は泣いてたけど、処刑には納得してたよ」
「っ……し、信じられないモン!私悪い事してないのにっ!そ、そりゃあパスカル君とかを誘拐はしちゃったけど、こうでもしないとメルキオール君は私を見てくれないじゃないっ!」
見てくれない、か。
そう言えば前世の元嫁もそんな事を言っていた。前世で結婚前の女遊びがひどかった頃や、パスカルと仲良くするようになった時に。
『恭太さんはあの男の子ばかり構って私を見てくれようとしないじゃない!』って――。
やっぱり、この女のモデルは元嫁にしか思えない。どれもこれもそっくりすぎるのだ。
「オレが見てくれないからって誘拐にまで走るとか、マジドン引きだから」
「でも、でもっ……メルキオール君が好きだからっ」
「デモダッテとか、好きだからとか、大した言い訳なさすぎて聞くのも嫌になってくるな」
「だってぇ……好きになったら止まらないんだもんっ!恋する乙女なんだもんっ!」
そうしてすぐ涙目になって感情的なるのも元嫁そっくりだ。
「あーもうどうでもいい。オレが一番怒ってるのはパスカルを誘拐して汚い奴らに凌辱させようとした事だ」
「それは……別に殺そうとしたわけじゃないし、ちょっとちがう男の子とスルだけなんだから。大した事ないじゃんっ!」
「セックス大好きなお前からすれば大した事はないだろうな。誰構わず股を開くなんて普通は嫌だから。不快で不潔だから。倫理観がズレてんだよお前。普通じゃないの。わかる?」
「そうなの?あんなにも気持ちいい事なのに嫌がるなんて変なのぉ。ていうか不潔だなんてひどいっ!」
ああ、やっぱりこの女に何を言っても無駄だなと察する。所詮は元嫁の亡霊のようなものだ。人間相手と話していると思わない方がいいだろう。
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