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66.前世
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「パスカル、どうした?」
「あの……メル。リリアに何も思ってないよね?」
「ん、どうして?」
「リリアは……その、昔からお節介で余計な事に首を突っ込む天然サイコパス……いや、魔性の女で、特に見目のいい男にばっかり絡もうとするんだ。そのおかげで昔から同性の友達は全くいなかったんだけど、どんな男でも虜にさせてしまう気がして……心配で……」
「ふぅん。パスカルはオレがあの女に誘惑されちゃうかと思って心配しちゃったんだ」
「う……そうともいう、かも」
パスカルが心配してしまうのもよくわかるなとメルは思っていた。なんせヴァユ国の王族含め上級貴族の男共はこぞってあの女に心酔してしまっているようだ。特にあの三馬鹿が筆頭。関りのある令嬢達は大層ご立腹だろうと思う。
メルからすればあの女の何がいいのか全くもってわからないが、いろんな男を誑し込む才能だけはあるので、婚約破棄をされた令嬢達が気の毒に思う。あとで我が国の有力貴族を紹介させようかとも思っているくらいだ。
「大丈夫だよ。オレはあんな女に惹かれたりしない。むしろ大嫌いなタイプだから。いろんな男に愛想振りまいてはしたなく股も開いてる浮気性女なんて論外。皇宮の侍女や女官に似たようなタイプがそれなりにいてウンザリしていたからね。あなたをわかってあげられるとか、与えてあげられるだとか、そう言って気を引いて術中にハメようとしてくるの。まあ、あのリリアとかいう女は天然そうだから余計にタチ悪そうだけど」
「ねえ……メル。メルは前世って信じる?」
「え……前世?」
いきなりパスカルが意を決したような表情になってこちらを見つめてきた。
「俺……前世の記憶があるんだ。この世界は元々作られた空想の世界っていうか、小説とかが現実になったっていうか……」
いきなりとんでもない事を暴露してきたパスカルに驚く。やっぱりパスカルは……
「ねえ、パスカルって前から思ってたけど、転生者?」
「へ………?あ、いや、そうだけど。ど、どうしてそう思ったの?」
「前世って訊ねてきたからもしかしてと思って。それに前からそんな感じがしてた。オレも元々は転生者だし」
「え、ええ!?メルも!?」
パスカルの驚きようにこちらがまた驚いてしまう。
「そんな驚く事かな」
「聞いてないよ。というか、全然そんな素振りに見えなかった」
「そりゃあ思い出したのはつい最近だからね。パスカルと番契約結んだ時にね」
「番契約の時って俺が死にかけてた時かな」
「うん……。なんとかパスカルを死なせたくないって思って項を噛んだ時にね、いきなり前世の記憶がぶあ~って出てきたんだよ。運命の番効果ってやつかな。それでここが架空の世界なんだって気づいた。自分の前世が心療内科医だったって事も、前世の元妻に自分が殺されたんだって事も全部思い出した」
「前世は心療内科医だったんだ。しかも元妻に殺されたって……嫌な事思い出しちゃったね」
結婚していた事にまず驚いたが、その奥さんに殺されてしまう前世を思い出すって相当辛いと思う。本人にしかわからないけど、いろいろ修羅場じみた人生だったのだろうか。
「まあ、前世の事だからね。そこまで気にしてないよ。胸糞ではあるけど」
「そもそも結婚していたなんて驚いたよ。奥さんの事……好きだったの?」
知りたいけど知って後悔しないだろうか。
「ふふ、気になる?」
「ちょっとだけ……。でも、ショック受けたくないし……」
「ぶっちゃけると好きじゃなかった。嫌い、かな」
「えっ、嫌い!?」
「結婚当初は好きになろうと努力はしたよ。でもやっぱり好きになれなかったけど。結婚したのも妊娠したとか言われて仕方なくしたって感じ。責任取る形でね」
「そ、そうなんだ……」
彼女いない歴年齢の童貞だった自分には絶対ありえない展開だなぁと他人事のように聞いてしまう。
「今はもちろんパスカルだけだよ。その時にもしキミと知り合ってたら、元妻なんかよりキミを愛していたと思うし」
「メル……でも、前世の事だからわかんないよ?前世の俺はてんで大した事のない平凡地味だから、メルは俺に見向きもしないんじゃない?」
「そんな事ないよ。だってパスカルの事が大好きだもん。きっと前世でも出会ってたら確実に好きになってたよ」
断言するとまで言うメル。自分はそこまで愛されてるんだなってちょっと嬉しいと同時に優越感にも浸ってしまう。元妻以上に想ってくれているのが。
「元妻には結婚後にいろいろやられたんだ。仕方なく結婚した後、妊娠した子がオレの子じゃないって知ったの。DNA鑑定で知ってね、托卵されそうになった。しかも浮気性で男誑しだった事も後から判明して、最悪な女と結婚したって後悔したよ。ついてないよねーオレ。女の見る目なかったっていうか、当時の自分をバカだなって思う。女遊びしまくったせいだなって。あはは」
「それを笑いながら語れるメルがすごいよ」
「所詮は前世だからだよ。それに今生では皇太子。度胸だけはあるし、嫌なことはすぐ忘れるの」
「そっか……。そういえば元妻さん……なんかリリアみたいだね。浮気性な所とか男誑しなとことか」
「やっぱりそう思うよね。似てるどころかそっくりなんだ。顔もだけど。あの天然サイコパスをさらにパワーアップさせたのが元妻って感じ」
前世の元妻はリリアを彷彿とさせる。あの性格や雰囲気をさらに歪ませたような所が。まるで製作者が元妻をモデルにしたんじゃないかと思う程に。
「あの……メル。リリアに何も思ってないよね?」
「ん、どうして?」
「リリアは……その、昔からお節介で余計な事に首を突っ込む天然サイコパス……いや、魔性の女で、特に見目のいい男にばっかり絡もうとするんだ。そのおかげで昔から同性の友達は全くいなかったんだけど、どんな男でも虜にさせてしまう気がして……心配で……」
「ふぅん。パスカルはオレがあの女に誘惑されちゃうかと思って心配しちゃったんだ」
「う……そうともいう、かも」
パスカルが心配してしまうのもよくわかるなとメルは思っていた。なんせヴァユ国の王族含め上級貴族の男共はこぞってあの女に心酔してしまっているようだ。特にあの三馬鹿が筆頭。関りのある令嬢達は大層ご立腹だろうと思う。
メルからすればあの女の何がいいのか全くもってわからないが、いろんな男を誑し込む才能だけはあるので、婚約破棄をされた令嬢達が気の毒に思う。あとで我が国の有力貴族を紹介させようかとも思っているくらいだ。
「大丈夫だよ。オレはあんな女に惹かれたりしない。むしろ大嫌いなタイプだから。いろんな男に愛想振りまいてはしたなく股も開いてる浮気性女なんて論外。皇宮の侍女や女官に似たようなタイプがそれなりにいてウンザリしていたからね。あなたをわかってあげられるとか、与えてあげられるだとか、そう言って気を引いて術中にハメようとしてくるの。まあ、あのリリアとかいう女は天然そうだから余計にタチ悪そうだけど」
「ねえ……メル。メルは前世って信じる?」
「え……前世?」
いきなりパスカルが意を決したような表情になってこちらを見つめてきた。
「俺……前世の記憶があるんだ。この世界は元々作られた空想の世界っていうか、小説とかが現実になったっていうか……」
いきなりとんでもない事を暴露してきたパスカルに驚く。やっぱりパスカルは……
「ねえ、パスカルって前から思ってたけど、転生者?」
「へ………?あ、いや、そうだけど。ど、どうしてそう思ったの?」
「前世って訊ねてきたからもしかしてと思って。それに前からそんな感じがしてた。オレも元々は転生者だし」
「え、ええ!?メルも!?」
パスカルの驚きようにこちらがまた驚いてしまう。
「そんな驚く事かな」
「聞いてないよ。というか、全然そんな素振りに見えなかった」
「そりゃあ思い出したのはつい最近だからね。パスカルと番契約結んだ時にね」
「番契約の時って俺が死にかけてた時かな」
「うん……。なんとかパスカルを死なせたくないって思って項を噛んだ時にね、いきなり前世の記憶がぶあ~って出てきたんだよ。運命の番効果ってやつかな。それでここが架空の世界なんだって気づいた。自分の前世が心療内科医だったって事も、前世の元妻に自分が殺されたんだって事も全部思い出した」
「前世は心療内科医だったんだ。しかも元妻に殺されたって……嫌な事思い出しちゃったね」
結婚していた事にまず驚いたが、その奥さんに殺されてしまう前世を思い出すって相当辛いと思う。本人にしかわからないけど、いろいろ修羅場じみた人生だったのだろうか。
「まあ、前世の事だからね。そこまで気にしてないよ。胸糞ではあるけど」
「そもそも結婚していたなんて驚いたよ。奥さんの事……好きだったの?」
知りたいけど知って後悔しないだろうか。
「ふふ、気になる?」
「ちょっとだけ……。でも、ショック受けたくないし……」
「ぶっちゃけると好きじゃなかった。嫌い、かな」
「えっ、嫌い!?」
「結婚当初は好きになろうと努力はしたよ。でもやっぱり好きになれなかったけど。結婚したのも妊娠したとか言われて仕方なくしたって感じ。責任取る形でね」
「そ、そうなんだ……」
彼女いない歴年齢の童貞だった自分には絶対ありえない展開だなぁと他人事のように聞いてしまう。
「今はもちろんパスカルだけだよ。その時にもしキミと知り合ってたら、元妻なんかよりキミを愛していたと思うし」
「メル……でも、前世の事だからわかんないよ?前世の俺はてんで大した事のない平凡地味だから、メルは俺に見向きもしないんじゃない?」
「そんな事ないよ。だってパスカルの事が大好きだもん。きっと前世でも出会ってたら確実に好きになってたよ」
断言するとまで言うメル。自分はそこまで愛されてるんだなってちょっと嬉しいと同時に優越感にも浸ってしまう。元妻以上に想ってくれているのが。
「元妻には結婚後にいろいろやられたんだ。仕方なく結婚した後、妊娠した子がオレの子じゃないって知ったの。DNA鑑定で知ってね、托卵されそうになった。しかも浮気性で男誑しだった事も後から判明して、最悪な女と結婚したって後悔したよ。ついてないよねーオレ。女の見る目なかったっていうか、当時の自分をバカだなって思う。女遊びしまくったせいだなって。あはは」
「それを笑いながら語れるメルがすごいよ」
「所詮は前世だからだよ。それに今生では皇太子。度胸だけはあるし、嫌なことはすぐ忘れるの」
「そっか……。そういえば元妻さん……なんかリリアみたいだね。浮気性な所とか男誑しなとことか」
「やっぱりそう思うよね。似てるどころかそっくりなんだ。顔もだけど。あの天然サイコパスをさらにパワーアップさせたのが元妻って感じ」
前世の元妻はリリアを彷彿とさせる。あの性格や雰囲気をさらに歪ませたような所が。まるで製作者が元妻をモデルにしたんじゃないかと思う程に。
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