54 / 98
54.ヒロインのガチ恋
しおりを挟む
セバスチャンがリリアを連れ出そうとしたところでやっとレナードが止めた。メルはリリアがオーガに乗り換えるような浮気性女と知っているので、普段は平民と貴族を差別したりはしないのだが、リリアに対してはなんとしてでも関わりたくないようだ。攻略キャラのようにバカでなければ普通は関わりたくないタイプなので無理はない。
「レナード。お前の恋人ならなぜ彼女が異性に話しかけているのに咎めない。お前はその女性と恋人ではないのか」
「恋人ですけど、彼女はただ誰とでも仲良くしたがるいい子なもので、殿下とも普通に仲良くしたいだけですよ。この前もディアスとレイモンドとも仲良くしていましたが普通に楽しそうでしたし」
リリアはレナード以外にさらにいろんな攻略キャラにも手を出しているようだ。逆ハーエンドでも目指すつもりなのだろうか。
そもそも、これまでいろんな男性に声を掛けては誑し込んでいるのをレナードも見ているはずなのに、レナードのこの危機感のないへらへらした様子に呆れる。やはりゲームのチョロキューは現実もチョロキューでしかないようだ。情けない事極まりない。
「それが恋人持ちや妻子持ちであっても、仲良くしてほしいからという理由で放置していいのか。仮に本当に仲良くしてほしいから放置するとしよう。それで婚約者や既婚者女性からいらぬ誤解を生んで、向こうが不貞行為疑惑の民事裁判を起こされてもお前は仲良くしてほしかったからという理由を証言するのか」
「そ、それは……」
「お前が今後その女の手綱を徹底的に握るか手を切るかしなければ……自国が滅びても知らぬぞ」
メルは目をすぼめてそう言うと、レナードは一瞬だけ顔を青くする。
「ッ、そ、そんな国が滅びるなんてありえないですよ。彼女は悪気があっていろんな者に話しかけているわけではないですし……なぜそう思われるのですか」
「私は運命の番と番ったんだ。それがどういう意味か分かるな」
「えっ、運命の番!?」
「そのうち公になるだろうが、この少年が……パスカルが私の運命の番だ」
メルがパスカルの肩に手を置いて引き寄せると改めて紹介する。不意に抱き寄せられてドキッとした。
「こ、この平民の少年が……!」
「ええ~!パスカル君てばこのカッコイイ人と番になっちゃったのぉ!?パスカル君の見た目で冗談だよね?」
二人ともありえないとでも言いたそうな顔でパスカルとメルを交互に見ている。見た目がこんなんで悪かったなと、パスカルは怒り心頭で二人を睨みつけた。頭がおめでたい二人である。
「だから、その女が今後私やパスカルに下心丸出しでちょっかいでもかけて見ろ。運命の番の災いによって国がどうなるかお前も王族の端くれなら知っていよう」
「っ……そ、それはもちろん知っていますが……さすがに仲良くしようとしているだけでそれは行き過ぎでは?」
「行き過ぎだと思うのか?その女はトラブルメーカーにしかならん。それを知らないはずでもあるまい。それにお前はお前で婚約者がいながらその恋人とやらと宿泊施設に出入り。呆れ果てるものだ」
「し、知っていたのですか……。ですが、災いなんてそんな……」
ないとも言い切れなかった。げんにリリアはメルキオールに見惚れている様だった。今にも近づいてモーションを掛けたくて仕方がない様子である。
「今までそうやって侮っていた者が何人不審死したと文献に記録されていたと思う?のべ一千人は超えていたぞ」
「っ――り、リリアが無礼な真似をっ……大変申し訳ございませんでしたっ!」
レナードはさすがに運命の番の災いに恐怖したのか、リリアの腕を引っ掴む。
「あんっ、レナードっ!私まだあの超カッコイイ方のお名前聞いてないよっ!それにパスカル君と運命の番だなんて冗談だと思うしっ」
「そんなのは後でいい!いいから来るんだ!余計なことをすれば国が滅びちゃうんだよっ!」
「きゃっ、レナードってば痛いよっ!ああんもっとお話ししたいのにぃ~~!」
「あの方は私達が関われるような御方じゃないんだよ!」
「えー。でもぉ、でもぉ、あの方に私っ、ドキドキしちゃってぇ、なんか胸がキュンってしちゃったのっ。これってもしかして恋なのかなぁ」
「えっ、ええ?そ、そんなわけないよ。リリアの考えすぎだよ。さっき甘々胸キュンはぁとスープカレーを食べたから発汗作用で熱くなっているだけさ。うん、きっとそうだよ」
「そうかなぁ~。赤い実はじけたと思ったのにぃ。でも、このドキドキする切ない気持ちは何なのかしら……あの方を一目見てから胸が疼いて目が離せなくって、体が熱いわっ」
「ほら行くよリリア」
妙に演技口調のリリアにさすがにジト目になりかけたレナード。リリアと出会っていなかったらきっとまともな人だったんだろうなと窺わせる。
「きゃっ、もう今日のレナードってば強引だよっ。ぷんぷん。女の子には優しくしないとだめなんだからっ」
「ご、ごめんね」
そんなこんなでレナードはリリアの腕を無理やりにでも引っ張って出て行った。
「レナード。お前の恋人ならなぜ彼女が異性に話しかけているのに咎めない。お前はその女性と恋人ではないのか」
「恋人ですけど、彼女はただ誰とでも仲良くしたがるいい子なもので、殿下とも普通に仲良くしたいだけですよ。この前もディアスとレイモンドとも仲良くしていましたが普通に楽しそうでしたし」
リリアはレナード以外にさらにいろんな攻略キャラにも手を出しているようだ。逆ハーエンドでも目指すつもりなのだろうか。
そもそも、これまでいろんな男性に声を掛けては誑し込んでいるのをレナードも見ているはずなのに、レナードのこの危機感のないへらへらした様子に呆れる。やはりゲームのチョロキューは現実もチョロキューでしかないようだ。情けない事極まりない。
「それが恋人持ちや妻子持ちであっても、仲良くしてほしいからという理由で放置していいのか。仮に本当に仲良くしてほしいから放置するとしよう。それで婚約者や既婚者女性からいらぬ誤解を生んで、向こうが不貞行為疑惑の民事裁判を起こされてもお前は仲良くしてほしかったからという理由を証言するのか」
「そ、それは……」
「お前が今後その女の手綱を徹底的に握るか手を切るかしなければ……自国が滅びても知らぬぞ」
メルは目をすぼめてそう言うと、レナードは一瞬だけ顔を青くする。
「ッ、そ、そんな国が滅びるなんてありえないですよ。彼女は悪気があっていろんな者に話しかけているわけではないですし……なぜそう思われるのですか」
「私は運命の番と番ったんだ。それがどういう意味か分かるな」
「えっ、運命の番!?」
「そのうち公になるだろうが、この少年が……パスカルが私の運命の番だ」
メルがパスカルの肩に手を置いて引き寄せると改めて紹介する。不意に抱き寄せられてドキッとした。
「こ、この平民の少年が……!」
「ええ~!パスカル君てばこのカッコイイ人と番になっちゃったのぉ!?パスカル君の見た目で冗談だよね?」
二人ともありえないとでも言いたそうな顔でパスカルとメルを交互に見ている。見た目がこんなんで悪かったなと、パスカルは怒り心頭で二人を睨みつけた。頭がおめでたい二人である。
「だから、その女が今後私やパスカルに下心丸出しでちょっかいでもかけて見ろ。運命の番の災いによって国がどうなるかお前も王族の端くれなら知っていよう」
「っ……そ、それはもちろん知っていますが……さすがに仲良くしようとしているだけでそれは行き過ぎでは?」
「行き過ぎだと思うのか?その女はトラブルメーカーにしかならん。それを知らないはずでもあるまい。それにお前はお前で婚約者がいながらその恋人とやらと宿泊施設に出入り。呆れ果てるものだ」
「し、知っていたのですか……。ですが、災いなんてそんな……」
ないとも言い切れなかった。げんにリリアはメルキオールに見惚れている様だった。今にも近づいてモーションを掛けたくて仕方がない様子である。
「今までそうやって侮っていた者が何人不審死したと文献に記録されていたと思う?のべ一千人は超えていたぞ」
「っ――り、リリアが無礼な真似をっ……大変申し訳ございませんでしたっ!」
レナードはさすがに運命の番の災いに恐怖したのか、リリアの腕を引っ掴む。
「あんっ、レナードっ!私まだあの超カッコイイ方のお名前聞いてないよっ!それにパスカル君と運命の番だなんて冗談だと思うしっ」
「そんなのは後でいい!いいから来るんだ!余計なことをすれば国が滅びちゃうんだよっ!」
「きゃっ、レナードってば痛いよっ!ああんもっとお話ししたいのにぃ~~!」
「あの方は私達が関われるような御方じゃないんだよ!」
「えー。でもぉ、でもぉ、あの方に私っ、ドキドキしちゃってぇ、なんか胸がキュンってしちゃったのっ。これってもしかして恋なのかなぁ」
「えっ、ええ?そ、そんなわけないよ。リリアの考えすぎだよ。さっき甘々胸キュンはぁとスープカレーを食べたから発汗作用で熱くなっているだけさ。うん、きっとそうだよ」
「そうかなぁ~。赤い実はじけたと思ったのにぃ。でも、このドキドキする切ない気持ちは何なのかしら……あの方を一目見てから胸が疼いて目が離せなくって、体が熱いわっ」
「ほら行くよリリア」
妙に演技口調のリリアにさすがにジト目になりかけたレナード。リリアと出会っていなかったらきっとまともな人だったんだろうなと窺わせる。
「きゃっ、もう今日のレナードってば強引だよっ。ぷんぷん。女の子には優しくしないとだめなんだからっ」
「ご、ごめんね」
そんなこんなでレナードはリリアの腕を無理やりにでも引っ張って出て行った。
2
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる