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30.元友達襲来(2)

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 頭が痛くなってきた。この男と一緒にいたせいでまたストレスが溜まってきているのだろう。数値がまた下がっているかもしれない。

「あのホームレス野郎がいるかもしれないからお前の所に来たんだが、このまま帰るのもつまんねーな……」
「あ……?」

 呆けていたら、突然一気に間合いを詰めてきて抱き締められた。

「ちょ!?なっ、なんだよ!!」

 驚いてすぐに離れようとするが、やはり力の差は歴然で振り払えない。

「お前がヒートになった時のあの色っぽい顔……もっかい見たくなったんだ」
「はあ!?ふざけるな!頭おかしいんじゃないのかお前はっ!!」
「リリアにフラれてからもうおかしくなってんだ。フラれたモン同士いいだろ?」
「よくねーよ!キモイんだよ!!」

 この男に触られるだけで嫌悪感が半端ないので、反射的にオーガの頬を平手で叩いた。オーガにとってはなんのダメージにもなりはしないが、精一杯の抵抗だった。途端に鋭い眼差しが向けられて、気が付いたら頬に衝撃が走っていた。

「っ、ぐ」

 勢い余ってベットに倒れると、オーガはそのままパスカルに覆い被さる。

「キモイとは失礼だろ。おれより弱いくせに。生意気になりやがって」

 こちらを見おろすオーガは目が据わっていた。瞳孔が開き、物々しい雰囲気に圧倒されて声が出なくなる。

「っ、い、やだ!」
「うるせえ!」

 両腕を力任せに押さえつけて、パスカルの着用している薄い寝間着を無理やり引きちぎる。ボタンがはじけ飛んで、床にそれらが散らばった。

「大人しくしろって言ってんだろ!!」
「っひ、ぐ」

 激しく抵抗を見せれば再度頬に拳が飛ぶ。視界がぐにゃりと歪んで鼻から血が滴る。

「おれに生意気な真似をするのがいけねぇんだろ!大人しくしろよ!どうせお前はオメガなんだろ?ちんぽ突っ込まれる事に喜びを感じる癖に嫌がるんじゃねえよ!」
「ぐ、っ」

 三度拳が飛ぶと、もう痛みと朦朧とする頭に抵抗する力は失せていく。

「引き立て役にされないと目立てないパスカルの癖に」

 急激なストレスと恐怖と風邪による体力の低下に、とうとう身動きすらとる気力がなくなった。

「そう。それでいいんだ。やっと大人しくなったな」

 オーガがパスカルの服をどんどん脱がしながら剥き出しになった肌を貪り始めた。



 嗚呼、なんで俺っていつもこうなんだろ。女の見る目がなくこっぴどくフラれて、友達だった奴は超級のクズで、レアオメガという人生超ハードモードの道を歩ませられている。しまいにはその超級のクズ男に犯されちまうのか。こいつに尻穴処女喪失とか死にたくなるわ。

 頑張って前を向いて、自分なりに短い人生を往生しようと思ったのに、最近は悪い事ばかりで心に闇が増えていく一方だ。
 
 こんな辛い事ばかりなら、この先どうあがいても孤独が決まってるなら……もういい。

 死んでしまいたい――!!




「ぎゃあ!」

 何もかもが嫌になった瞬間、上に乗っていたオーガが壁際に吹っ飛ばされたのを朦朧とする意識で察する。

「とことん最低なドクズだな」

 重く低い声が耳に入る。ぼやける視界には知っている気配。

「最初に容赦しないと言ったはずだ。前回のヒート時を合わせたら三度目の正直。貴様のような下劣な人間には徹底的にわからせてやるしかないようだ」

 いつもの優しいテノールとは思えない重低音は紛れもなくのもの。視界が鮮明になると、底冷えするほどの絶対零度の瞳を宿したメルが、オーガを殺さんばかりに睨んでいた。

「ひっ……!」

 その佇まいはまさしく大帝国を担う次期皇帝の威厳と貫禄があった。どんな相手ですら跪かせ、畏怖させる存在感と威圧感。メルの纏う帝王としての凄みにオーガは涙目でガタガタ震えるが、それでも自分の今まで培ってきたプライドが許さないのか口からは図に乗った台詞が出てくる。

「て、てめえはホームレス野郎っ!あいたかったぜ!てめえみたいな底辺野郎におれが負けるはずがないんだっ!だからこうして……ぐはっ!」

 いきり立とうとしたオーガの髪を鷲掴んで、鳩尾に膝蹴り。そのまま片手で顔面を鷲掴んで壁に叩きつけた。


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