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57.皇宮でのメル
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「ほっほっほ。皆様、公式の場ではないのでそう緊張しなくて大丈夫ですよ。陛下も妃殿下も平民の生活にとても理解がある方々なので挨拶もくだけたもので結構ですぞ」
「そ、そそそそうは言ってもですねぇ~くぁwせdrftgyふじこlp」
「そもそも、こんな綺麗なドレス着たの結婚式以来だわ」
「そういえばぼくもこんな燕尾服来たの結婚式以来だ」
「あなたっ!」
「パステル!」
ひしっと抱きしめあうベーカー夫妻にジト目になるパスカル。いきなり何をやっているんだろうこの夫婦は。
「ちょっと父さんも母さんもいきなりイチャつくのやめてくんないかな。現実逃避か知らないけど、俺が居た堪れないんだけど」
「じゃあ、オレ達もいちゃつく?」
「もーキミまで対抗意識なんか持たなくていいからね……って……め、めめめメル!?」
いつの間に!?と、反応に遅れて驚いた。
「ふふ。こんにちはパスカル。オレの愛しい人。逢いたかったよ」
穏やかに微笑むメルがなんだかいつもより違って見える。
「メル……お、おれも……逢いたかった……」
「パスカル……なんか素直で可愛いね。衣装もよく似合っててキュートだし」
「キュートって女の子に使う言葉だよ」
「それでも可愛いく見えちゃうんだもの」
三日ぶりのメルは髪も艶々の銀髪で、服装も高貴な者が纏うような宮廷衣装を着用している。どこからどう見ても身分の高い上に立つ者の姿だ。おまけにこのキラキラした容姿なので、いつものホームレスなどの姿を見慣れているせいか今のメルの姿に柄にもなくドキドキしてしまっている。
「メルはなんか皇太子らしいカッコしてる、ね……」
「皇宮ではいつもこんなものだよ。イケメンで惚れなおした?」
「っ、な、内緒……」
「別に内緒じゃなくても顔でバレバレだよ?ドキドキしてくれて嬉しい」
「う、そ、そんな事ないしっ」
「オレはパスカルがいつも可愛くて惚れなおしてるのになぁ」
「可愛いは余計だよっ」
メルと比べたら自分の姿など馬子にも衣装だと思う。こんな貴族のお坊ちゃんが着るような格好をしても、なんだか自分には似合っていない。平民な雰囲気が醸し出されているので、何を着てもパッとしないのが笑えるものだ。前世からずっと平凡地味っていうのも辛い。
「あら、メル君!今日は一段とイイ男になっちゃって!」
「お義母さん、お義父さん、アカシャへようこそお越しくださいました。これからは私が父と母がいる部屋へ案内いたします」
紳士の礼のポーズをとるメルは洗練されている。部下に命令を出すような厳しい表情のメルではなくて、穏やかで壮麗な次代の象徴という印象だった。
「んまあ、挨拶が丁寧ねっ」
「立派だなぁ。まさかうちのパスカルをもらってくれる相手が皇太子様だなんてなぁ。うっうっ、夢みたいだ」
「あなた!泣くのはまだまだ先だよ。結婚式もしてないし孫の顔もまだ見てないんだからっ」
「そ、そうだね!うん。それまでに涙はとっておかないとっ」
一際大きな扉を開けると、豪華絢爛なダイニングルームに到着。座席に連れてこられて座って待っていると、一足遅れて厳かな男女が側近に連れられてゆっくり歩いてきた。
「おお、メルキオール。連れて来てくれたか」
メルがこくんと頷く。
「父上、母上。パスカルとベーカー夫妻をお連れしました」
メルが静かに伝えると、パスカルやベーカー夫妻は一層背筋をぴんと張って直立不動になった。
この二人がアカシャの現皇帝陛下と妃殿下。陛下はまだ若々しくありながらも貫禄のあるイケメンで、妃殿下はとても30代とは思えない程の若作りの美女。写真館で見たことがある顔にいろんな意味で感慨深い気持ちになった。
(ほ、本物だっ。本物の皇帝と妃殿下だっ)
妃殿下はたしか陛下の後妻と聞いている。メルの実の母親はすでに病気で亡くなっており、後妻に迎えたメアリー妃殿下とは親子というより姉のように接してもらっているとメルから事前に聞いていた。
「よくぞアカシャにお越しくださいました。我々一同はそなたら三人を大歓迎する」
「突然、お食事になんて誘ってごめんなさい。どうしても早くパスカル君とベーカー夫妻にお会いしたくて権力行使しちゃったの。あの朴念仁のメルキオールが好きになった運命の番の子がどうしても気になってね……キミがパスカル君?」
「は、はひいぃっ!ぼ、ぼ、ぼくがパスカルでありますっ!」
「まあ。元気よく返事をして超可愛いっ!抱きしめたいっ!」
「え、えええっ!?」
可愛いって自分の事だろうか?ただの15歳で中身は20代後半。
(総年齢はおじさんなんですけど)
「そ、そそそそうは言ってもですねぇ~くぁwせdrftgyふじこlp」
「そもそも、こんな綺麗なドレス着たの結婚式以来だわ」
「そういえばぼくもこんな燕尾服来たの結婚式以来だ」
「あなたっ!」
「パステル!」
ひしっと抱きしめあうベーカー夫妻にジト目になるパスカル。いきなり何をやっているんだろうこの夫婦は。
「ちょっと父さんも母さんもいきなりイチャつくのやめてくんないかな。現実逃避か知らないけど、俺が居た堪れないんだけど」
「じゃあ、オレ達もいちゃつく?」
「もーキミまで対抗意識なんか持たなくていいからね……って……め、めめめメル!?」
いつの間に!?と、反応に遅れて驚いた。
「ふふ。こんにちはパスカル。オレの愛しい人。逢いたかったよ」
穏やかに微笑むメルがなんだかいつもより違って見える。
「メル……お、おれも……逢いたかった……」
「パスカル……なんか素直で可愛いね。衣装もよく似合っててキュートだし」
「キュートって女の子に使う言葉だよ」
「それでも可愛いく見えちゃうんだもの」
三日ぶりのメルは髪も艶々の銀髪で、服装も高貴な者が纏うような宮廷衣装を着用している。どこからどう見ても身分の高い上に立つ者の姿だ。おまけにこのキラキラした容姿なので、いつものホームレスなどの姿を見慣れているせいか今のメルの姿に柄にもなくドキドキしてしまっている。
「メルはなんか皇太子らしいカッコしてる、ね……」
「皇宮ではいつもこんなものだよ。イケメンで惚れなおした?」
「っ、な、内緒……」
「別に内緒じゃなくても顔でバレバレだよ?ドキドキしてくれて嬉しい」
「う、そ、そんな事ないしっ」
「オレはパスカルがいつも可愛くて惚れなおしてるのになぁ」
「可愛いは余計だよっ」
メルと比べたら自分の姿など馬子にも衣装だと思う。こんな貴族のお坊ちゃんが着るような格好をしても、なんだか自分には似合っていない。平民な雰囲気が醸し出されているので、何を着てもパッとしないのが笑えるものだ。前世からずっと平凡地味っていうのも辛い。
「あら、メル君!今日は一段とイイ男になっちゃって!」
「お義母さん、お義父さん、アカシャへようこそお越しくださいました。これからは私が父と母がいる部屋へ案内いたします」
紳士の礼のポーズをとるメルは洗練されている。部下に命令を出すような厳しい表情のメルではなくて、穏やかで壮麗な次代の象徴という印象だった。
「んまあ、挨拶が丁寧ねっ」
「立派だなぁ。まさかうちのパスカルをもらってくれる相手が皇太子様だなんてなぁ。うっうっ、夢みたいだ」
「あなた!泣くのはまだまだ先だよ。結婚式もしてないし孫の顔もまだ見てないんだからっ」
「そ、そうだね!うん。それまでに涙はとっておかないとっ」
一際大きな扉を開けると、豪華絢爛なダイニングルームに到着。座席に連れてこられて座って待っていると、一足遅れて厳かな男女が側近に連れられてゆっくり歩いてきた。
「おお、メルキオール。連れて来てくれたか」
メルがこくんと頷く。
「父上、母上。パスカルとベーカー夫妻をお連れしました」
メルが静かに伝えると、パスカルやベーカー夫妻は一層背筋をぴんと張って直立不動になった。
この二人がアカシャの現皇帝陛下と妃殿下。陛下はまだ若々しくありながらも貫禄のあるイケメンで、妃殿下はとても30代とは思えない程の若作りの美女。写真館で見たことがある顔にいろんな意味で感慨深い気持ちになった。
(ほ、本物だっ。本物の皇帝と妃殿下だっ)
妃殿下はたしか陛下の後妻と聞いている。メルの実の母親はすでに病気で亡くなっており、後妻に迎えたメアリー妃殿下とは親子というより姉のように接してもらっているとメルから事前に聞いていた。
「よくぞアカシャにお越しくださいました。我々一同はそなたら三人を大歓迎する」
「突然、お食事になんて誘ってごめんなさい。どうしても早くパスカル君とベーカー夫妻にお会いしたくて権力行使しちゃったの。あの朴念仁のメルキオールが好きになった運命の番の子がどうしても気になってね……キミがパスカル君?」
「は、はひいぃっ!ぼ、ぼ、ぼくがパスカルでありますっ!」
「まあ。元気よく返事をして超可愛いっ!抱きしめたいっ!」
「え、えええっ!?」
可愛いって自分の事だろうか?ただの15歳で中身は20代後半。
(総年齢はおじさんなんですけど)
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