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第一話
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結婚する前から「浮気したら婚約破棄する。あと、絶対に許さん」と言われ続けてきました。
私としては不貞を働くなどもってのほかだと思っていましたし、夫のエリックも私を大切に想ってくれているからこその発言だと思っていましたので、特に気にすることなく、彼と婚姻します。
結婚してからも「不倫したら離婚だけじゃ終わらせない。相手も含めて地獄に落とす」と口癖のように言っておりました。
私はいい加減に信じてほしいとは思っていましたが、こんなことを言う彼は浮気だけはしないだろうし、自分もすることはないから実害はないと思い流してきました。
夫は私への束縛を強め、外出には必ず許可を取り、いつ何処に行くのか誰と会うのかを必ず伝え、何時には戻るということも伝えて出かけます。
男の人と口を利くことも禁止され、目が合っても浮気だと騒ぐようになりました。
ここまで来ると流石に息苦しくなってきましたが、私はそれでも彼を立てていました。毎日、笑顔を絶やさずに、夫を愛し続けていたのです。
今思えば、もっと早くに彼の異常さを何とかしておくべきでした。
そう。私がここまで彼一筋を貫いてもエリックは私のことを一ミリも信用してはくれなかったのです――。
「やっぱり思っていたとおり浮気したな! ずっと前から分かっていたぞ! お前は絶対に浮気すると!」
ある日のこと。エリックは外出から帰ってくると血相を変えて私の胸倉を掴みながら怒鳴りました。
私には全く身に覚えのないことなのですが、彼は私が浮気をしたとまくし立てます。
ずっと私を疑っていたということもショックですが、覚えのないことで糾弾されるのはさらにショックでした。
「これだから女は信用できないんだ。どうせ僕の家の財産を目当てで近付いただけなんだろ? この売女が!」
「痛い……! 痛いです……! そ、それに苦しい……」
エリックは私の頬を二回叩き、首を締めてきます。
お、夫に殺される……。このとき、彼の異常性と本性を見ました。
私が彼の家の財産を目当てで近付いた思っているみたいです。
確かに彼は伯爵家の嫡男で家も裕福ですが、だからといって私は彼の家の財産などには興味がありません。
父は公爵で王室とも繋がりがありますし、他人の財産をアテにするほど困っていません。そもそもエリックの父親が私の父に頼み込んで、私たちの縁談は成立しましたので、私から近付いたという話になることがおかしいのです。
「一昨日の夕方! お前が知らない男と楽しそうに話ながら食事をしていたという目撃情報があった! 言い逃れは出来ないぞ!」
「ううっ……、お、一昨日の夕方……? お、一昨日は一緒にここに……、この部屋に……、いましたよね? 貴方が今着ている服を……、見繕ったではありませんか……」
「服を見繕った……? そ、そういえば……」
エリックは私と一昨日の夕方は一緒にいたという話を聞いて、ハッとした表情をしました。
そして、私の首から手を離します……。
はぁ、苦しかった。まさか全く事実無根の疑いで殺されかけるとは――。
この人もたったの二日前のことを思い出せずに怒りだして首を締めるなんて……。
一昨日は今日開催されるパーティーに出席する彼の為に服を一緒に選んでいたのです。
それを頭に血が上った彼は変な話に踊らされて忘れてしまっていたみたいでした。
「そうだった。僕はなんで忘れていたんだろう」
「そうだったでは、ありません。急に首を締めるなんて……常識外れにも程があります! まずは謝罪することが筋でしょう」
「……なんだと!? なんで僕が女に謝罪なんか! そうだ。別の日と勘違いしただけだ。お前は絶対に不倫している!」
呆れを通り越して悲しくなってきました。
この人は私のことを完全に見下しています……。
こんな人にどうして私は尽くしてきたのでしょう。今の発言で完全に冷めてしまいました――。
私としては不貞を働くなどもってのほかだと思っていましたし、夫のエリックも私を大切に想ってくれているからこその発言だと思っていましたので、特に気にすることなく、彼と婚姻します。
結婚してからも「不倫したら離婚だけじゃ終わらせない。相手も含めて地獄に落とす」と口癖のように言っておりました。
私はいい加減に信じてほしいとは思っていましたが、こんなことを言う彼は浮気だけはしないだろうし、自分もすることはないから実害はないと思い流してきました。
夫は私への束縛を強め、外出には必ず許可を取り、いつ何処に行くのか誰と会うのかを必ず伝え、何時には戻るということも伝えて出かけます。
男の人と口を利くことも禁止され、目が合っても浮気だと騒ぐようになりました。
ここまで来ると流石に息苦しくなってきましたが、私はそれでも彼を立てていました。毎日、笑顔を絶やさずに、夫を愛し続けていたのです。
今思えば、もっと早くに彼の異常さを何とかしておくべきでした。
そう。私がここまで彼一筋を貫いてもエリックは私のことを一ミリも信用してはくれなかったのです――。
「やっぱり思っていたとおり浮気したな! ずっと前から分かっていたぞ! お前は絶対に浮気すると!」
ある日のこと。エリックは外出から帰ってくると血相を変えて私の胸倉を掴みながら怒鳴りました。
私には全く身に覚えのないことなのですが、彼は私が浮気をしたとまくし立てます。
ずっと私を疑っていたということもショックですが、覚えのないことで糾弾されるのはさらにショックでした。
「これだから女は信用できないんだ。どうせ僕の家の財産を目当てで近付いただけなんだろ? この売女が!」
「痛い……! 痛いです……! そ、それに苦しい……」
エリックは私の頬を二回叩き、首を締めてきます。
お、夫に殺される……。このとき、彼の異常性と本性を見ました。
私が彼の家の財産を目当てで近付いた思っているみたいです。
確かに彼は伯爵家の嫡男で家も裕福ですが、だからといって私は彼の家の財産などには興味がありません。
父は公爵で王室とも繋がりがありますし、他人の財産をアテにするほど困っていません。そもそもエリックの父親が私の父に頼み込んで、私たちの縁談は成立しましたので、私から近付いたという話になることがおかしいのです。
「一昨日の夕方! お前が知らない男と楽しそうに話ながら食事をしていたという目撃情報があった! 言い逃れは出来ないぞ!」
「ううっ……、お、一昨日の夕方……? お、一昨日は一緒にここに……、この部屋に……、いましたよね? 貴方が今着ている服を……、見繕ったではありませんか……」
「服を見繕った……? そ、そういえば……」
エリックは私と一昨日の夕方は一緒にいたという話を聞いて、ハッとした表情をしました。
そして、私の首から手を離します……。
はぁ、苦しかった。まさか全く事実無根の疑いで殺されかけるとは――。
この人もたったの二日前のことを思い出せずに怒りだして首を締めるなんて……。
一昨日は今日開催されるパーティーに出席する彼の為に服を一緒に選んでいたのです。
それを頭に血が上った彼は変な話に踊らされて忘れてしまっていたみたいでした。
「そうだった。僕はなんで忘れていたんだろう」
「そうだったでは、ありません。急に首を締めるなんて……常識外れにも程があります! まずは謝罪することが筋でしょう」
「……なんだと!? なんで僕が女に謝罪なんか! そうだ。別の日と勘違いしただけだ。お前は絶対に不倫している!」
呆れを通り越して悲しくなってきました。
この人は私のことを完全に見下しています……。
こんな人にどうして私は尽くしてきたのでしょう。今の発言で完全に冷めてしまいました――。
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