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第六話(ジーナ視点)

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 まったく、ニッグったら最近になって付き合いが悪くないかしら。
 あの地味女の家族が私と彼の浮気を疑っているからとか言っていたけど、まさかあれだけ否定したのにまだ疑うなんて。
 まー、あの地味な感じじゃモテないでしょうし、ニッグに執着するのも分かるけど。
 
 全然分かってないのよね。
 あの子如きがニッグの特別になんてなれないんだから。
 公爵家の箱入りだから物珍しさがあるみたいだけど、身分が高いから調子に乗ってるところがあるみたいだけど、女としての魅力がないのは残念よね~~。
  
 あの男に媚を売る態度も気に食わない。大人しくお淑やかにしていれば、良いって考えているんでしょうけど、そんなのダサいじゃない。

 私はそんなの嫌。思っていることはズバッと言うし、笑いたいときに笑って、泣きたいときに泣く。
 そっちの方が格好いいでしょう。女らしくとかって馬鹿みたいよね。

 ま、まぁ、ニッグの前だけは特別よ。特別……。
 あの男は馬鹿だから私の好意に全然気付いて無かったの。
 こっちはずーーーっと、ニッグと結婚出来ると思っていたのにさ。
 あいつったら、公爵家の財産ゲットとか笑いながら婚約したことを告げてくるし。

 デリカシーもないのよね。あいつは……。
 私しかあいつのこと全部わかってやれる人間いないのに。
 駄目なところも、格好良くて男気があるところも、全部、ぜーんぶ、知っているのは私だけなんだから。

 だからこそ、屈辱だったわよ。
 あの女を相手にヘラヘラ笑っているのは。
 婚約者の席は私のものなのに、あの女ったらわきまえもせずに居座るし……。

 何度、伝えてやろうかと思ったことか。
 ニッグの妻に相応しいのは、この私だと。
 エルザ、あんたなんかじゃ、ニッグを満足させられないんだから。

「……急に会えないって、まさかニッグ、今さら乗り換えるつもり?」 

 いやいやいやいや、あり得ないでしょう。
 愛し合ったあとに、必ず「いつか迎えに来るよ」って言ってくれていたのに。
 結局、身分だけ高い地味女のところに行くってわけ?

 私は違うわよ。ずっと、ニッグ一筋なんだから。
 信じてるわよ。真実の愛があなたと私の元にあるって。
 じゃないと私――。

「あの、もしかしてジーナさん?」

「えっ?」

「ほら、覚えてないかな? 王立学園で一年上だったケヴィンだよ。隣国の侯爵家を継ぐことになったから、引っ越したけど」

 友人とランチをしていると、突然私は見知らぬ男に話しかけられた。
 
 ――ちょっと待って。こ、こんなに格好いい人初めて見たんだけど。
 えっ? えっ? えっ? 長い金髪に宝石のような碧眼、それにニッグが霞んで見えるほどの整った顔立ち……こんな人、知り合いに居たっけ?

 一個上の先輩……? 学園時代はニッグ以外に目に入ってなかったから覚えてなかったのかな。

 それよりも、私に何の用事だろう? 急に話しかけてきたからなのか、胸がドキドキする。

「いやー、学生時代さ。ずっとジーナさんのこと好きだったんだけど、家のことがあって告白出来なくてね。でも、やっぱり君のことが忘れられなくて、こっちに来てしまったんだよ」

「へ、へぇ~~」

 に、ニヤけてしまう。この人、本当に格好いいんだもん。
 う、嘘でしょ。このケヴィンさんという方、私のことをずっと好きだったの?
 
「良かったら、今度は二人きりで会えないかな?」

「は、はい! 喜んで!」
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