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第一話
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「君の妹のローザともう少しで関係を持ってしまうところだった。これでは君への愛も疑わしい……。悪いがこの縁談はなかったことにしてくれ……」
婚約者であるアゼルタ公爵家の嫡男であるガーランドからのいきなり婚約を解消しようと言われた私。
――遂に妹の欲しがり病がここまで来てしまいましたか。
ガーランドの困惑した表情を見て、私は妹のローザの顔を思い浮かべました。
ローザは今までも私のモノを何でも欲しがり、様々なモノを奪っています。
服もアクセサリーも私へのプレゼントだろうが自分で買ったものだろうが、お構いなしに掠め取ろうとするのです。
幼いときは両親に訴えもしました。しかし、両親は必ずと言っていいほど妹を咎めたりはしません。
容姿が妖精のように可愛らしい妹は両親に溺愛されていましたので、私に一言だけ「姉なのだから我慢なさい」と言うだけでした。
ガーランドとの縁談は両家とも前向きで、私もようやく我儘な妹から離れられると安堵していたのですが、結局その妹に壊されてしまいうという結末に終わります。
唯一の救いは彼が妹に靡かなかったことです。
ガーランドが誠実過ぎたおかげで、私との婚約も破棄しようという結論を出すに至りましたが……。
婚約者まで妹に奪われたとなれば……私は立ち直れなかったかもしれませんので、それでも不幸中の幸いでした。
とはいえ、今回のこれはやりすぎです。
今日という今日は……ローザには強く言わなければ――。
「ローザ! あなた、どういうつもりですか?」
「どういうつもりとは、何のことでしょうか? お姉様」
妹の部屋に入ると、ローザはベッドの上で呑気に本を読んでいました。
その本も私がガーランドから頂いた大切な本ですが、その話は置いておきましょう。
彼女は私が責め立てても、覚えがないという顔をします。
「ガーランド様の件ですよ。あなた、姉の婚約者に色仕掛けをしましたね? そもそも、私が婚約する前は彼のことに全く興味が無かったはずです。何故、そのようなことを?」
恐ろしいのは、ローザはガーランドに特別好意を抱いていないことです。
好きでもない相手に色仕掛けをするという行動原理が私には理解不能でした。
「ガーランド様は好きですよぉ。だって、お姉様が選んだ人ですもの。きっと私を幸せにしてくれる、と確信しましたわ」
「はぁ?」
「私、お姉様のことを尊敬しているんです。尊敬するお姉様が選んだ殿方ですから、その瞬間から輝いて見えるのは当然かと」
私はローザの答えに愕然とします。
彼女はガーランドのことを私が選んだから好きになったと答えました。
ということは、私がこの先……どんな人と縁談を結ぼうとしても必ず妨害される――。
――背中に寒気が走りました。
「一人くらい譲ってくれても良いじゃないですか。お姉様なら、次を探せますし。私も今回はちょっと遠慮したのが良くなかったです。ガーランド様にもっと積極的になれば良かった」
次の縁談も早速壊す気満々のローザに私は頭痛がしてきました。
この先、私はこの悪意のない悪魔に全てを搾取され続けていくのでしょうか……。
そんな中、私に縁談の話が舞い込みます。相手は傲慢で性格が悪いと一部で有名なこの国の第二王子ダミアン。
出来れば丁重にお断りを……、と思った瞬間に私はあることを思いつきました――。
婚約者であるアゼルタ公爵家の嫡男であるガーランドからのいきなり婚約を解消しようと言われた私。
――遂に妹の欲しがり病がここまで来てしまいましたか。
ガーランドの困惑した表情を見て、私は妹のローザの顔を思い浮かべました。
ローザは今までも私のモノを何でも欲しがり、様々なモノを奪っています。
服もアクセサリーも私へのプレゼントだろうが自分で買ったものだろうが、お構いなしに掠め取ろうとするのです。
幼いときは両親に訴えもしました。しかし、両親は必ずと言っていいほど妹を咎めたりはしません。
容姿が妖精のように可愛らしい妹は両親に溺愛されていましたので、私に一言だけ「姉なのだから我慢なさい」と言うだけでした。
ガーランドとの縁談は両家とも前向きで、私もようやく我儘な妹から離れられると安堵していたのですが、結局その妹に壊されてしまいうという結末に終わります。
唯一の救いは彼が妹に靡かなかったことです。
ガーランドが誠実過ぎたおかげで、私との婚約も破棄しようという結論を出すに至りましたが……。
婚約者まで妹に奪われたとなれば……私は立ち直れなかったかもしれませんので、それでも不幸中の幸いでした。
とはいえ、今回のこれはやりすぎです。
今日という今日は……ローザには強く言わなければ――。
「ローザ! あなた、どういうつもりですか?」
「どういうつもりとは、何のことでしょうか? お姉様」
妹の部屋に入ると、ローザはベッドの上で呑気に本を読んでいました。
その本も私がガーランドから頂いた大切な本ですが、その話は置いておきましょう。
彼女は私が責め立てても、覚えがないという顔をします。
「ガーランド様の件ですよ。あなた、姉の婚約者に色仕掛けをしましたね? そもそも、私が婚約する前は彼のことに全く興味が無かったはずです。何故、そのようなことを?」
恐ろしいのは、ローザはガーランドに特別好意を抱いていないことです。
好きでもない相手に色仕掛けをするという行動原理が私には理解不能でした。
「ガーランド様は好きですよぉ。だって、お姉様が選んだ人ですもの。きっと私を幸せにしてくれる、と確信しましたわ」
「はぁ?」
「私、お姉様のことを尊敬しているんです。尊敬するお姉様が選んだ殿方ですから、その瞬間から輝いて見えるのは当然かと」
私はローザの答えに愕然とします。
彼女はガーランドのことを私が選んだから好きになったと答えました。
ということは、私がこの先……どんな人と縁談を結ぼうとしても必ず妨害される――。
――背中に寒気が走りました。
「一人くらい譲ってくれても良いじゃないですか。お姉様なら、次を探せますし。私も今回はちょっと遠慮したのが良くなかったです。ガーランド様にもっと積極的になれば良かった」
次の縁談も早速壊す気満々のローザに私は頭痛がしてきました。
この先、私はこの悪意のない悪魔に全てを搾取され続けていくのでしょうか……。
そんな中、私に縁談の話が舞い込みます。相手は傲慢で性格が悪いと一部で有名なこの国の第二王子ダミアン。
出来れば丁重にお断りを……、と思った瞬間に私はあることを思いつきました――。
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