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第七話

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「やぁ、アリア。元気にしていたかい? 驚いたよ、私が記憶している君と比べてとても美しくなっていたからね」

 最後に会った日と変わらない長い金髪をなびかせて、彼は私との再会を喜んでくれた。
 ジェノス様、あなたは私の記憶のままの姿だった。あの日と同じく、私はあなたに見惚れている。

「ジェノス様、よくぞ無事に帰ってきてくれました。私は凶報を聞いたとき、泣き明かしたのですよ」

「悪かった。私も情けないと思っている。自ら格好をつけて先陣を駆けていたのに、まさかあんなことになるなんて。とりあえず座ってくれ。どこから話せば良いか分からないが話をしよう」

 客間で私の手を握りしめて謝罪するジェノス様は、ソファーに座るように求める。
 仕方ないということは分かっていた。だから責めるつもりはない。  
 
 私はジェノス様に従ってソファーに腰掛けて会話を開始すると私たちの間にあった年月という壁はすぐに壊れてしまった。

 それにしてもよく生きていたものだ。
 転落して大怪我を負った彼は記憶を失いながら、田舎の農夫に助けられて身体が治ったあともしばらくそこを手伝いながら過ごしていたのだという。

「ある日の夕焼け空が君と一緒に見たきれいな夕焼けと似ていてね。私は君の顔をまず思い出したんだ」

「ジェノス様……」

「だから、私がここに戻って来られたのは君のおかげなんだよ。アリア、君にまた会えて私は幸せだ」

 私のおかけで記憶が戻ったというジェノス様の言葉を聞いたとき、思わず涙が出そうになった。
 こうしてまた笑って話せるなんて奇跡みたい。私は彼が無事でいてくれて、神に感謝した。

「それで、これを君に受け取ってほしいんだ」

 ジェノス様は立ち上がり、私の側で跪き、小箱を開けて差し出した。
 中には指輪が入っている。こ、これって、まさか。

「無事に帰ってこれたら君に渡そうと思っていた。渡すのに時間がかかってしまったが、申し訳ない。アリア・エルミリオン、私の妻になってくれ」

 真剣なまなざしをこちらに送りながらジェノス様ははっきりとプロポーズの言葉を述べた。
 どうしよう。すごく嬉しい。多分、今の私は涙が出て、人様に見せられない表情になっていると思う。
 でも、婚約破棄したばかりだし、ここですぐに別の人と婚約っていうのも……。

「ジェノス様、嬉しいです。こんなにも想っていてくださったなんて。私もジェノス様と結婚したいと思っています」

 受け取ってしまった。
 私はジェノス様から指輪を受け取って、求婚を受け入れる返事をした。
 だって、断れる気がしなかったし、よく考えたら前の婚約者にこれっぽっちも未練が遺っていなかったもの。

「ああ、良かった。断られたらどうしようかと思っていたよ。アリア、君のことを絶対に幸せにする。私と人生を共に歩んでくれ。私はそれだけで幸せになれるから」 

「あら、それでは私がジェノス様を幸せにするのは簡単ですね」

「はは、そのとおりだ。だってもう、幸せになっているんだからね」
  
 ギュッと抱きしめられて、共に人生を歩みたいという言葉を聞いた私。
 これから私は彼と新しい人生を歩めると考えるだけで胸が高鳴る。
 この日、私はジェノス様と婚約をした。人生最良の日は今日だと私は言い切ることが出来る――。
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