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第十一話
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な、長いです。
かれこれ、三十分近くもの間……マルサス様は踊り続けています。
タップダンス専用のシューズを履いたかと思えば、軽快にステッキを振り回しながらステップを踏み。
酒を口に含んで火を吹き出したり、綱渡りをしたり、急にサーベルで殺陣を披露したり、圧巻のショーが開催されました。
「すごーい。マルサス様って芸達者なんですね
ー」
「運動神経は良いと聞いていましたが……」
理由が分かりません。
ダンスを見せて何を伝えたいのか。目的がさっぱり分からないのです。
「これが謝罪なのではありませんか?」
「はい?」
「ですから、普通に謝罪するよりもお詫びとして、お姉様を芸事をして楽しませることで誠意をみせようとされているのです」
「あなた、本気でそのようなことを」
「そんなはずがありませんの」
シェリアは純粋にマルサス様のダンスショーを楽しんでいました。
最終的には通行人の皆さまが空から降ってきた巨大なお星さまを囲んで、腕を組んでラインダンスを行い――突然音楽が鳴り止みます。
するとマルサス様は再びムーンウォークでこちらに戻ってきて、跪きました。手にした小箱を差し出して――。
「ルティア・アルディス。僕と結婚して欲しい」
「「…………」」
小箱の中には先日、無理やり取られた婚約指輪が入っていました。
ま、まさか、この人はプロポーズしています?
絶句、という体験をもう一度するとは思いませんでした。
土下座されて別れた相手にプロポーズされるなんて考えてもみませんでしたから。
「……えっ? 嫌ですけど」
「ぽえっ!?」
とはいえ、拒絶の言葉は3秒も経たないうちに口から発せられました。
彼には秘密ですがリュオン殿下と婚約していますし、仮にしていなくてもこの方と結婚はしたくありませんが。
……それにしても、マルサス様はご自分が拒絶されることを全く想定していなかったのでしょうか? 口をあんぐりと開けて、心底驚いた顔をしています。
「あ、あのさ。ルティア……、これ、冗談でやってる訳じゃないんだよ? そりゃあ、ここで断ったほうが喜劇としては面白いと思うが……」
「いえ、このような大がかりな仕掛けをされて、エキストラの方々まで雇われて、冗談だとは思っていません。真剣にお断りしております」
「はぁ~~~!?」
なぜ、私がその場のノリで冗談を言ったと捉えたのでしょう。
断ったという言葉を聞いたマルサス様は不満げな声を惜しみなく出しました。
「……ルティア! お前は僕の婚約者だったじゃないか! 僕のことは好きだろ!? こんなサプライズも用意してやったのに! なんで、断るんだ!?」
「エリナさんにプロポーズするからって別れたからです。あの瞬間、私とマルサス様は他人になりましたから」
「この薄情者! 一回、夫婦になろうって約束をそんな薄い感情で決意したのか! 自分勝手にも程がある! いいからよりを戻せ!」
「……護衛のお二人~~。ボーッとしていないで、仕事してくださいな。お姉様、襲われちゃうかもしれませんわ~」
「――っ!? な、なんだ!? お前ら! この無礼者! 離せ! 離せ!」
理不尽に怒鳴るマルサス様を見て、シェリアが護衛の方々に声をかけ、彼を私から引き離させました。
マルサス様、薄情なのはどちらですか――?
かれこれ、三十分近くもの間……マルサス様は踊り続けています。
タップダンス専用のシューズを履いたかと思えば、軽快にステッキを振り回しながらステップを踏み。
酒を口に含んで火を吹き出したり、綱渡りをしたり、急にサーベルで殺陣を披露したり、圧巻のショーが開催されました。
「すごーい。マルサス様って芸達者なんですね
ー」
「運動神経は良いと聞いていましたが……」
理由が分かりません。
ダンスを見せて何を伝えたいのか。目的がさっぱり分からないのです。
「これが謝罪なのではありませんか?」
「はい?」
「ですから、普通に謝罪するよりもお詫びとして、お姉様を芸事をして楽しませることで誠意をみせようとされているのです」
「あなた、本気でそのようなことを」
「そんなはずがありませんの」
シェリアは純粋にマルサス様のダンスショーを楽しんでいました。
最終的には通行人の皆さまが空から降ってきた巨大なお星さまを囲んで、腕を組んでラインダンスを行い――突然音楽が鳴り止みます。
するとマルサス様は再びムーンウォークでこちらに戻ってきて、跪きました。手にした小箱を差し出して――。
「ルティア・アルディス。僕と結婚して欲しい」
「「…………」」
小箱の中には先日、無理やり取られた婚約指輪が入っていました。
ま、まさか、この人はプロポーズしています?
絶句、という体験をもう一度するとは思いませんでした。
土下座されて別れた相手にプロポーズされるなんて考えてもみませんでしたから。
「……えっ? 嫌ですけど」
「ぽえっ!?」
とはいえ、拒絶の言葉は3秒も経たないうちに口から発せられました。
彼には秘密ですがリュオン殿下と婚約していますし、仮にしていなくてもこの方と結婚はしたくありませんが。
……それにしても、マルサス様はご自分が拒絶されることを全く想定していなかったのでしょうか? 口をあんぐりと開けて、心底驚いた顔をしています。
「あ、あのさ。ルティア……、これ、冗談でやってる訳じゃないんだよ? そりゃあ、ここで断ったほうが喜劇としては面白いと思うが……」
「いえ、このような大がかりな仕掛けをされて、エキストラの方々まで雇われて、冗談だとは思っていません。真剣にお断りしております」
「はぁ~~~!?」
なぜ、私がその場のノリで冗談を言ったと捉えたのでしょう。
断ったという言葉を聞いたマルサス様は不満げな声を惜しみなく出しました。
「……ルティア! お前は僕の婚約者だったじゃないか! 僕のことは好きだろ!? こんなサプライズも用意してやったのに! なんで、断るんだ!?」
「エリナさんにプロポーズするからって別れたからです。あの瞬間、私とマルサス様は他人になりましたから」
「この薄情者! 一回、夫婦になろうって約束をそんな薄い感情で決意したのか! 自分勝手にも程がある! いいからよりを戻せ!」
「……護衛のお二人~~。ボーッとしていないで、仕事してくださいな。お姉様、襲われちゃうかもしれませんわ~」
「――っ!? な、なんだ!? お前ら! この無礼者! 離せ! 離せ!」
理不尽に怒鳴るマルサス様を見て、シェリアが護衛の方々に声をかけ、彼を私から引き離させました。
マルサス様、薄情なのはどちらですか――?
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