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第ニ章:新たな侵略者、【魔界貴族】編
第35話:第三部隊の作戦会議に参加する話
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グレイスが私のパーティーに加わった。
各国の【勇者】が集まる作戦会議、まずは3つの部隊に分けるらしい。
私達、ダルバート王国の面々はグレイスの兄のレオンが部隊長を務める第三部隊に振り分けられた。
「ちょっとお兄様、止めてください。皆様が見てますよ」
グレイスはレオンを振り解きながらそう言った。
「はっはっは、いやぁスマンスマン。久しぶりにお前の顔が見れたから、さ。よーし、第三部隊はこっちに集合だ! そして、この娘が世界一可愛いオレの妹のグレイスだ!」
紫色のツンツン頭で端正な顔立ちの男性はグレイスと同じく右胸に赤い薔薇の紋章が入った白い鎧を身に着けていた。
【加護の力】は全部で5つ、これはアレクトロンの歴史上【勇者グラン】に次いで2番目。
剣も魔法も超一流の使い手としても有名だ。
「おっ、君はアレックスのところにいたルシアじゃないか。アイツも、追放なんかしないで、オレんとこに君を寄越せば良かったのに……。そしたら、グレイスもオレのパーティーに来てくれたんだけどな。ははっ、まっ元気そうで良かったよ。よろしくっ」
レオンはニコッと笑って私に手を差し出した。
「えっと、はい。よろしくお願いします」
私は頭を下げて、レオンの手を握った。相変わらず、感じのいい人だ。
「良かったなぁ、グレイス。憧れの先輩とパーティー組めて。ルシア、頼むからウチの妹を幸せにしてあげてくれ」
レオンは妹を嫁に出す兄のような顔をした。ええと、私が女なのは知っているよね?
「当たり前だろ、オレ以外の男の【勇者】ところに可愛いグレイスを渡せるか!」キリッ
ああ、この人こんなキャラだったんだ……。
故郷の英雄のシスコンな一面を見て、私は呆然としていた。
「ボルメルンは年功序列という言葉を知らないらしわねぇ。何故、妾が副隊長でこの男が隊長なのかしら」
【魔導教授(プロフェッサー)】フィーナがお出ましか。本当にターニャ達と同年代にしか見えん。
「ははっ、まったくですよね。オレみたいな若輩者に隊長をやれなんて。まぁ、でもフィーナさんの方がどう見たってオレよりも若く見えますから、そこを重視した人選だったかもしれないですよ。勝利する為には【魔導教授(プロフェッサー)】の力が不可欠です。よろしくお願いします」
レオンはフィーナに頭を下げた。
「あら、そう? あなたがそこまで言うなら仕方ないわねぇ。妾って、そんなに若く見えるのかしら? 特別なことは何もやってないのよぉ」
フィーナは唇に指をおいて、上機嫌そうな顔になった。何もやってないはずないだろ……。
「よしっ、第三部隊は全員集まったみたいだな。最初に確認だ、【爵位】を持つ【魔界貴族】の幹部との戦闘経験がある者は挙手をしてくれ」
レオンの質問にチラホラと手を挙げる者がいる。私とターニャも挙手をした。
「ふむふむ、オレとフィーナさんのパーティーを除くと15人くらいか。オッケー、わかった。次の質問だ、【爵位】を持つ幹部を討伐したことがある者は手をそのままにしておいてくれ」
レオンは2つ目の質問を投げかける。
ふむ、その質問はかなり人数は減りそうだが……。
あれっ、レオンとフィーナのパーティーの人間と私とターニャだけしか挙げてないじゃん。
「さすが、ルシア先輩! 既に【魔界貴族】の幹部をやっつけておいでとは……。凄すぎます!」
グレイスは一人で拍手していた。
「ターニャだっけ? 君は今年の【天武会】で優勝した、新米(ルーキー)だったね。驚いたな、確かに決勝戦を見た時、圧倒的な才能は感じていたが……。たったの数日で【魔界貴族】を倒せるほどまで成長しているとは……」
レオンはターニャに話しかけた。
「……私はルシア先生のサポートをしただけだ。ほとんどルシア先生が一人で倒していたぞ……ふわぁ」
ターニャは面倒そうにあくびをしながら答えた。こら、大先輩にその態度はダメだぞ。
「そういえば、ルシアはダルボートでも【シャックス侯爵】とかいう奴を一人で仕留めてたわよね」
エリスが思い出したように呟いた。
周囲の視線が私に集まる。
「あいつは食堂でなんか騒いでた……」
「アレックスと揉めてたな……」
「……ちょっとカッコ良くない?」
「【魔界貴族】の幹部を2人も倒したとは……」
他国の人間が私を見ながらざわつく……。
「へぇ、やるじゃないの。じゃあ貴女はこちら側ね……」
フィーナは私を手招きした。はぁ、こちら側ってなんですか?
「うん、流石は我が妹が伴侶に選んだだけはある。君たちダルボート王国チームもこの部隊の主力として機能してもらうぞ」
レオンは頷きながら、私達を指さした。伴侶って、言い方はやめていただきたい。
「第三部隊の方針はこうだ。基本的に主力以外は幹部とは戦わない。後方支援と下級悪魔及び、大悪魔の討伐に集中してもらう。大悪魔には複数のパーティーで必ず挑むように。【爵位】をもつ幹部はオレのパーティーとフィーナさんのパーティー。そして、ルシアとターニャの連合パーティーが相手をする」
レオンの作戦は合理的だな。
徒に犠牲者を出さない方針にしたのは好感が持てる。
その後、第三部隊の進軍ルートと悪魔の軍団と戦闘になった際の隊列の動きを打ち合わせた。
私達、ラミアを含めて7人は第三部隊の1番左側の先頭を担当することになった。
出陣は明日ということで、各パーティーに【魔界貴族】の情報が記された書類が手渡され、今日は解散となった。
「ところでルシアは、ラミアも連れて行くつもりなの?」
エリスが私に質問をした。
あー、それには理由があるんだけど、エリスにしか言えないな。
「私の【勇者のスキル】なのですが、どうもラミアとリンクしているみたいで、ラミアが一定の距離離れると使えなくなるのです」
私は小声でエリスに説明をした。これは、3回スキルを使って感じ取ったことだ。
【ヴォラク男爵】との戦闘中に、ラミアはオリゲルトに乗っていたが、明らかに力を使えないタイミングが何度かあった。
その時、私は原因がラミアとの距離によるものだと察知したのだ。
そして右手の黒い翼の紋章が、私とラミアをリンクしている印だと推測した。
【消滅魔法】は【魔界貴族】との戦闘の切り札になりうる。ラミアには悪いが連れていくしかない。
実はこのことを先程、ラミアにこっそり伝えた。
『はにゃん、ルシア様と繋がっているなんて、幸せで死んじゃいそうですわぁ』
気色の悪いことを言われただけだった。
はぁ、大きな力を手に入れたとはいえ、このスキルはジェノスが言ったように『じゃじゃ馬』だよ。
とりあえず、エリス以外には助手という名目で必要だと伝えとこう。
ラミアは絶対に私が守るから……。
――翌日、ボルメルン帝国、北側の荒野――
小高い丘が見える、荒野に我々は集合した。
丘の上に、【魔界貴族】が即席で作った要塞がある。
三方向から各部隊が要塞に向かって進軍し、【ベルゼブブ大公】を討つことが今回の戦のもくてきである。
地上の歴史に間違いなく残る大戦の火蓋が切り落とされた!
各国の【勇者】が集まる作戦会議、まずは3つの部隊に分けるらしい。
私達、ダルバート王国の面々はグレイスの兄のレオンが部隊長を務める第三部隊に振り分けられた。
「ちょっとお兄様、止めてください。皆様が見てますよ」
グレイスはレオンを振り解きながらそう言った。
「はっはっは、いやぁスマンスマン。久しぶりにお前の顔が見れたから、さ。よーし、第三部隊はこっちに集合だ! そして、この娘が世界一可愛いオレの妹のグレイスだ!」
紫色のツンツン頭で端正な顔立ちの男性はグレイスと同じく右胸に赤い薔薇の紋章が入った白い鎧を身に着けていた。
【加護の力】は全部で5つ、これはアレクトロンの歴史上【勇者グラン】に次いで2番目。
剣も魔法も超一流の使い手としても有名だ。
「おっ、君はアレックスのところにいたルシアじゃないか。アイツも、追放なんかしないで、オレんとこに君を寄越せば良かったのに……。そしたら、グレイスもオレのパーティーに来てくれたんだけどな。ははっ、まっ元気そうで良かったよ。よろしくっ」
レオンはニコッと笑って私に手を差し出した。
「えっと、はい。よろしくお願いします」
私は頭を下げて、レオンの手を握った。相変わらず、感じのいい人だ。
「良かったなぁ、グレイス。憧れの先輩とパーティー組めて。ルシア、頼むからウチの妹を幸せにしてあげてくれ」
レオンは妹を嫁に出す兄のような顔をした。ええと、私が女なのは知っているよね?
「当たり前だろ、オレ以外の男の【勇者】ところに可愛いグレイスを渡せるか!」キリッ
ああ、この人こんなキャラだったんだ……。
故郷の英雄のシスコンな一面を見て、私は呆然としていた。
「ボルメルンは年功序列という言葉を知らないらしわねぇ。何故、妾が副隊長でこの男が隊長なのかしら」
【魔導教授(プロフェッサー)】フィーナがお出ましか。本当にターニャ達と同年代にしか見えん。
「ははっ、まったくですよね。オレみたいな若輩者に隊長をやれなんて。まぁ、でもフィーナさんの方がどう見たってオレよりも若く見えますから、そこを重視した人選だったかもしれないですよ。勝利する為には【魔導教授(プロフェッサー)】の力が不可欠です。よろしくお願いします」
レオンはフィーナに頭を下げた。
「あら、そう? あなたがそこまで言うなら仕方ないわねぇ。妾って、そんなに若く見えるのかしら? 特別なことは何もやってないのよぉ」
フィーナは唇に指をおいて、上機嫌そうな顔になった。何もやってないはずないだろ……。
「よしっ、第三部隊は全員集まったみたいだな。最初に確認だ、【爵位】を持つ【魔界貴族】の幹部との戦闘経験がある者は挙手をしてくれ」
レオンの質問にチラホラと手を挙げる者がいる。私とターニャも挙手をした。
「ふむふむ、オレとフィーナさんのパーティーを除くと15人くらいか。オッケー、わかった。次の質問だ、【爵位】を持つ幹部を討伐したことがある者は手をそのままにしておいてくれ」
レオンは2つ目の質問を投げかける。
ふむ、その質問はかなり人数は減りそうだが……。
あれっ、レオンとフィーナのパーティーの人間と私とターニャだけしか挙げてないじゃん。
「さすが、ルシア先輩! 既に【魔界貴族】の幹部をやっつけておいでとは……。凄すぎます!」
グレイスは一人で拍手していた。
「ターニャだっけ? 君は今年の【天武会】で優勝した、新米(ルーキー)だったね。驚いたな、確かに決勝戦を見た時、圧倒的な才能は感じていたが……。たったの数日で【魔界貴族】を倒せるほどまで成長しているとは……」
レオンはターニャに話しかけた。
「……私はルシア先生のサポートをしただけだ。ほとんどルシア先生が一人で倒していたぞ……ふわぁ」
ターニャは面倒そうにあくびをしながら答えた。こら、大先輩にその態度はダメだぞ。
「そういえば、ルシアはダルボートでも【シャックス侯爵】とかいう奴を一人で仕留めてたわよね」
エリスが思い出したように呟いた。
周囲の視線が私に集まる。
「あいつは食堂でなんか騒いでた……」
「アレックスと揉めてたな……」
「……ちょっとカッコ良くない?」
「【魔界貴族】の幹部を2人も倒したとは……」
他国の人間が私を見ながらざわつく……。
「へぇ、やるじゃないの。じゃあ貴女はこちら側ね……」
フィーナは私を手招きした。はぁ、こちら側ってなんですか?
「うん、流石は我が妹が伴侶に選んだだけはある。君たちダルボート王国チームもこの部隊の主力として機能してもらうぞ」
レオンは頷きながら、私達を指さした。伴侶って、言い方はやめていただきたい。
「第三部隊の方針はこうだ。基本的に主力以外は幹部とは戦わない。後方支援と下級悪魔及び、大悪魔の討伐に集中してもらう。大悪魔には複数のパーティーで必ず挑むように。【爵位】をもつ幹部はオレのパーティーとフィーナさんのパーティー。そして、ルシアとターニャの連合パーティーが相手をする」
レオンの作戦は合理的だな。
徒に犠牲者を出さない方針にしたのは好感が持てる。
その後、第三部隊の進軍ルートと悪魔の軍団と戦闘になった際の隊列の動きを打ち合わせた。
私達、ラミアを含めて7人は第三部隊の1番左側の先頭を担当することになった。
出陣は明日ということで、各パーティーに【魔界貴族】の情報が記された書類が手渡され、今日は解散となった。
「ところでルシアは、ラミアも連れて行くつもりなの?」
エリスが私に質問をした。
あー、それには理由があるんだけど、エリスにしか言えないな。
「私の【勇者のスキル】なのですが、どうもラミアとリンクしているみたいで、ラミアが一定の距離離れると使えなくなるのです」
私は小声でエリスに説明をした。これは、3回スキルを使って感じ取ったことだ。
【ヴォラク男爵】との戦闘中に、ラミアはオリゲルトに乗っていたが、明らかに力を使えないタイミングが何度かあった。
その時、私は原因がラミアとの距離によるものだと察知したのだ。
そして右手の黒い翼の紋章が、私とラミアをリンクしている印だと推測した。
【消滅魔法】は【魔界貴族】との戦闘の切り札になりうる。ラミアには悪いが連れていくしかない。
実はこのことを先程、ラミアにこっそり伝えた。
『はにゃん、ルシア様と繋がっているなんて、幸せで死んじゃいそうですわぁ』
気色の悪いことを言われただけだった。
はぁ、大きな力を手に入れたとはいえ、このスキルはジェノスが言ったように『じゃじゃ馬』だよ。
とりあえず、エリス以外には助手という名目で必要だと伝えとこう。
ラミアは絶対に私が守るから……。
――翌日、ボルメルン帝国、北側の荒野――
小高い丘が見える、荒野に我々は集合した。
丘の上に、【魔界貴族】が即席で作った要塞がある。
三方向から各部隊が要塞に向かって進軍し、【ベルゼブブ大公】を討つことが今回の戦のもくてきである。
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