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第十二話
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「まさか宣戦布告とは。私の領地に軍隊を差し向けるということはジルベータ王国に喧嘩を売ることと同じことに気付いてないのでしょうか?」
「どうしますか? ジルベータ国王に援軍を頼みましょうか?」
「ええ、そちらはロゼルさんにお任せします。いつもすみません。面倒な仕事を頼んでしまって」
「いえ、とんでもありません。私はアレイン様のお役に立ちたいのです。お側に置いて頂けて光栄です」
この国で領地を納めるようになってからというもの、ロゼルには事務処理などの雑務を頼りきりになっています。
彼は獣人族の族長代理をしていただけあって、とても気が利くのです。
「しかし、魔物の駆除もおぼつかない状況で軍隊を送るなんて。恐らく、それほど多くの数の兵隊を集めることは出来ないと思いますが……」
「ヤケになっているとは考えられませんか?」
「寧ろ、そうとしか考えられません。国王陛下は許していないでしょう。予算が無いのに負け戦に兵士を投入するなんて」
アーヴァイン殿下が考え無しに軍隊を送ってきていることは明白です。
国王陛下の許可など取れないでしょうから、兵士の数も少ないと予想できます。
それならば、援軍の到着を待つまでもないかもしれません。
私が出て、エデルタ皇国の軍隊に帰ってもらえるように立ち回れば……。
アーヴァイン殿下、ちょっと反省してもらいますよ――。
◆ ◆ ◆
「アレイン・アルゼオン! たった一人で立ちはだかるとは良い度胸だな! それとも、領地を僕に返す気になったか!?」
アーヴァイン殿下は兵士を5000人ほど従えてエデルタ皇国とジルベータ王国の国境沿いに現れました。
領地を返すって……。確かに殿下に頂いた慰謝料と退職金から買い取ったモノですけど。
ご自分が無理矢理渡したお金で手に入れたモノを返してほしいというのは厚かましく感じます。
「アーヴァイン殿下、兵を下げて下さい。ジルベータ王国から間もなく援軍が到着します。5000人程度ではどうにもなりません。今なら間に合います。撤退の指示をされた方が賢明です」
私はアーヴァイン殿下に撤退するように助言しました。
このまま、戦って軍隊が壊滅したらそれこそエデルタ皇国にとって大打撃でしょうし。
振り上げた拳を下げて、冷静に話し合った方がよいと諭そうと思ったのです。
「はっはっは! 元々、エデルタの人間の君なんかのためにジルベータ王国が援軍を本気で出すものか! もしそうなら、お前が一人でここに来るはずがないじゃないか! 行け! エデルタの精鋭たちよ! この辺り一帯は僕たちの本来は領地だ! それを取り返すのだ!」
こんなに頭が悪かったとは思いませんでした。
婚約破棄してくれて、良かったかもしれませんね。
こういう野蛮な手段は好きではありませんが……。
「――氷の槍ッ!」
私がパチンと指を鳴らすと、空から千本の全てを凍らせる氷の槍が降り注ぎます。
当ててしまうと死んじゃいますから、取り敢えず武器から狙ってみましょうか。
「け、剣が凍りついた!?」
「俺の槍が~~!」
「なんて威力なんだ!? こんなのに当たったら俺たち……」
「――氷の槍ッ!」
「「ぎゃあああああっ!」」
脅しも含めて二千発程の氷の槍をエデルタの兵士たち放つと兵士たちは忽ちの内に戦意喪失していきました。
さて、アーヴァイン殿下。せっかくですから謝って貰いましょうか――。
「どうしますか? ジルベータ国王に援軍を頼みましょうか?」
「ええ、そちらはロゼルさんにお任せします。いつもすみません。面倒な仕事を頼んでしまって」
「いえ、とんでもありません。私はアレイン様のお役に立ちたいのです。お側に置いて頂けて光栄です」
この国で領地を納めるようになってからというもの、ロゼルには事務処理などの雑務を頼りきりになっています。
彼は獣人族の族長代理をしていただけあって、とても気が利くのです。
「しかし、魔物の駆除もおぼつかない状況で軍隊を送るなんて。恐らく、それほど多くの数の兵隊を集めることは出来ないと思いますが……」
「ヤケになっているとは考えられませんか?」
「寧ろ、そうとしか考えられません。国王陛下は許していないでしょう。予算が無いのに負け戦に兵士を投入するなんて」
アーヴァイン殿下が考え無しに軍隊を送ってきていることは明白です。
国王陛下の許可など取れないでしょうから、兵士の数も少ないと予想できます。
それならば、援軍の到着を待つまでもないかもしれません。
私が出て、エデルタ皇国の軍隊に帰ってもらえるように立ち回れば……。
アーヴァイン殿下、ちょっと反省してもらいますよ――。
◆ ◆ ◆
「アレイン・アルゼオン! たった一人で立ちはだかるとは良い度胸だな! それとも、領地を僕に返す気になったか!?」
アーヴァイン殿下は兵士を5000人ほど従えてエデルタ皇国とジルベータ王国の国境沿いに現れました。
領地を返すって……。確かに殿下に頂いた慰謝料と退職金から買い取ったモノですけど。
ご自分が無理矢理渡したお金で手に入れたモノを返してほしいというのは厚かましく感じます。
「アーヴァイン殿下、兵を下げて下さい。ジルベータ王国から間もなく援軍が到着します。5000人程度ではどうにもなりません。今なら間に合います。撤退の指示をされた方が賢明です」
私はアーヴァイン殿下に撤退するように助言しました。
このまま、戦って軍隊が壊滅したらそれこそエデルタ皇国にとって大打撃でしょうし。
振り上げた拳を下げて、冷静に話し合った方がよいと諭そうと思ったのです。
「はっはっは! 元々、エデルタの人間の君なんかのためにジルベータ王国が援軍を本気で出すものか! もしそうなら、お前が一人でここに来るはずがないじゃないか! 行け! エデルタの精鋭たちよ! この辺り一帯は僕たちの本来は領地だ! それを取り返すのだ!」
こんなに頭が悪かったとは思いませんでした。
婚約破棄してくれて、良かったかもしれませんね。
こういう野蛮な手段は好きではありませんが……。
「――氷の槍ッ!」
私がパチンと指を鳴らすと、空から千本の全てを凍らせる氷の槍が降り注ぎます。
当ててしまうと死んじゃいますから、取り敢えず武器から狙ってみましょうか。
「け、剣が凍りついた!?」
「俺の槍が~~!」
「なんて威力なんだ!? こんなのに当たったら俺たち……」
「――氷の槍ッ!」
「「ぎゃあああああっ!」」
脅しも含めて二千発程の氷の槍をエデルタの兵士たち放つと兵士たちは忽ちの内に戦意喪失していきました。
さて、アーヴァイン殿下。せっかくですから謝って貰いましょうか――。
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