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プロローグ〜

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 三人の深い溜め息を聞いたリュークは、「どうするの?」と無垢な質問を投げ掛けた。

 ミハルは肩掛け鞄と杖を地面に下ろして「そのローブを裏返して着なさい」と言うと、自分が着ていた白いローブを大胆に脱いで裏返し、また着て、鞄を肩に掛け、杖を持った。

「ピクシーに惑わされたときは、服を裏返して着ると正しい道に戻れると云われているの。本当かどうかは分からないけどね。とにかく、早くローブを裏返しに着て」

 ミハルの後、リュークと視線が合ったソロウが申し訳なさそうに頭を掻いて言う。

「俺達は鎧を着けているから脱げない。このまま進むが、もし記憶にある景色が見付かったら教えてくれ」

 さあ、早く、と着替えを急かされたリュークは、しかし頷かず、まだ不思議そうな顔で、「そっちは、森の奥に行っちゃうよ」と進行方向を指差した。

「どういうことだ?」

 ギムナックが眉をひそめて訳を聞いてみたところ、リュークは今度は反対側を指差して「あっちがさっきまで居たところでしょ」、次に進行方向より二時の方向を指して「あっちが太陽が昇ってくる方でしょ」と、さも当然のように言ったのだった。

 冒険者たちは先程までの進行方向と後方を二度も三度も見やり、困惑しながらこの場で佇むことしかできない。

 リュークの言うことが事実であるならば、東南へ向かっていたはずが、知らず知らずのうちに進路を変えて東北へ向かっていたということになる。

 そもそも、リュークの方向感覚が正しいかどうかは疑わざるを得ない。ギムナックが足を止めたのは、急激な方向感覚の喪失に陥ったからだった。索敵と地形把握のスキルを持つギムナックだからこそ、それを妨害するピクシーの干渉にいち早く気付けたのだ。

 ギムナックは反論したい気持ちにかられたが、ただ既にドラゴワームとスライムの件を目の当たりにしているだけに、リュークの言葉を否定しきれなくなっていた。ソロウとミハルも同じ心境だった。

 葛藤のあまり無言になる三人へ、さらにリュークが口を切る。

「さっきからおなじところを回ってる。早くしないと、ワイバーンが来る」

 ソロウが腰を折ってリュークの顔を覗き込みながら尋ねる。

「……お前、まさか上位の索敵スキルを持ってるのか?」

 リュークは「知らない」と首を振って、「ウォーウルフの怒った声がする。ワイバーンを警戒してるんだ。ワイバーンは群れになったウォーウルフには近寄らない。だから、この近くに来ると思う」と答えた。

「確かに……」ギムナックが呟くように頷いた。「言われてみれば、微かに遠吠えが変化している。どうせ今の状態じゃ、ピクシーに導かれるだけだ。ここはリュークの言うことを信じてみるしかないと思う」

 ミハルとソロウも同意見だった。四人は急いで方向転換して進むことを決める。


  
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