怪奇ファイル

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恋するゴブリン

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 その日水原千里はむしゃくしゃしていた。
 彼女は自分の浅はかな行動を悔やんだ。
 無意識に早足になり、歩行者を追い越しては前に出た。
 眉間の辺りが妙に凝る。
 喫茶店のショーケースを睨み、食品サンプルからガラス面に目の焦点を合わせ、顔を映すとなるほど目が吊り上がっている。

 帰宅した千里はただいまも言わずに玄関を開けた。
 両親が共働きゆえ、従って家には誰もいない。
 街を踏み潰すゴジラさながらに床を踏み鳴らして居間を通り過ぎ、キッチンに向かう。
 玄関から続く廊下の板、居間のカーペット、キッチンのフローリング。
 それぞれが持つ床材の感覚を踏みしめて、やっとチサトは冷蔵庫にたどり着いた。
 中には役に立たなくなったバースデーケーキがある。
 それを荒々しく手づかみで口に運んで頬張り、クリームを舌で拭って平らげると服を脱いで今度は風呂場に向かった。

 いくぶん足が軽くなったのは、ケーキをやけ食いしてストレスが和らいだからではない。
 服を脱げば、ブラジャーを取れば、裸の胸が何の支えもなしに揺れる。
 それを嫌ってチサトは先だってのゴジラ顔負けの闊歩から一転ゆっくり、そして静かに歩いた。

 なぜか手をドアノブに掛けようとしてためらう。何だろう。体に違和感を覚えた。
 しかし千里は、迷いを振り切ってドアを開ける。
 風呂場のタイルを踏み、カランを捻ってシャワーを浴びていたその時、彼女の予感は的中した。
「やだ」
 途端体調の異変に気付き、間もなくそのシグナルに腹が鳴る。
「ぎゅごっぐるるるる……」
 いきなりの腹鳴に身を屈め、バスタオルを纏い、彼女は腹を手で押さえながらクローゼットへ急いだ。

 透明なポリプロピレンの、衣装ケースの引き出しから諸々を引っ手繰って床に投げ、痛くもない頭に手を当てる。
 やたら場所を取り、徒に目立つことで、自らを主張する下着類が悩ましい。
 17歳の彼女は、少々自分の体が育ち過ぎたことを自覚させるそれらを一枚づつ拾い上げて身に付ける。
 急いで89センチDカップのバストにブラジャーを纏い、Tシャツを着て59センチのウエストを隠し、90センチのヒップにパンティーを被せ、スウェットパンツを足に潜らせた。
「ぎゅいぎゅい ぐるくく きゅーくっくっ」
 体は温まった筈なのに腹具合が収まらない。
 彼女は自分のお腹を摩りながら、なだらかな曲面を見遣った。
「ひょっとして変なものでも食べたかしら」

 タオルで髪を揉みながら、帰宅までの道のりの、記憶を辿る。
 昼は母が持たせた弁当を食べ、帰りに寄った喫茶店でスパゲティーを食べ、さっき6号のケーキを半分食べた。
 どれも味は美味しかった。
 傷んでいるようにも思えなかったし、食べ過ぎというほどの量を食べたわけでもない。
 しかし――
 彼女は腹部に違和感を覚えた。
 まだ身籠ったことはないが、まるで赤ん坊のように我儘に振る舞う何者かの意思を感じる。
 それが自分に対して盛んに何かを訴え掛けて来る。
「何なのかしら、これ。ひょっとして病気!?」
 腹鳴の形を借りて盛んに自分に呼びかけているような気がする。初めはただの便意だと思っていた。

 男とも付き合っていないし、何もしていないから、妊娠などあり得ない。
 それに腹部に感じる意思は、子供ではなく、もっと始末に置けない者のように思えた。
 そしてその意志は、もっと具体的な行動を起こして自らの正体を明かすことを決めたようだった。

 着メロが鳴り、緩慢な動作でスマートフォンを取ると、登録のない電話番号からの着信を示している。
 受けようか受けまいか、逡巡する彼女は激痛に腹を押さえた。
「ぎゅっぎゅっ ぎゅるぎゅぎゅ ぎゅっぎゅーぎゅる」
 まるで電話を受けよと急き立てるように腹が鳴る。
「いたたた……」
 根負けするように彼女は、反射的に受話ボタンを押して応答した。

「はい、もしもし」
 見知らぬ相手の第一声はこうだ。
「僕だ」
 聞き覚えがない声で僕だと言われても、思い当たる人物がない。
 彼女は素っ頓狂に聞き返した。
「はい?」
 何が気に入らなかったのか男は語気を荒げる。
「お前が食べた僕だ。今お前の腹の中から喋っている。僕はお前に食べられたんだ」
 いきなり告げられた突拍子もない話と、男の言い種に釣られて、彼女の語調も強くなる。

「私のお腹から喋ってるですって?」
 彼は事も無げにそれを肯定し、驚くべき事実を告げた。
「そうだ、因みにお前が手にするスマートフォンは、僕が送った意思を翻訳し、音声に変えているに過ぎない」
「はあ?」
「従って僕が電話で喋っているというよりは、僕が電話に喋らせているという方が正しい」
「もしもし、悪戯電話ならこの番号を通報しますよ」
「お前人の話を聞いてないだろう」
 彼は立腹しているようだ。

「いいえ、聞こえてますよ」

「よく聞こえているんですけど意味がわからなくて」
「まあいい、僕もそのスマホを使うのは嫌だったんだ。タンスの引き出しにピンクの古い携帯電話があるだろ、あれを持ってこい」

 千里は動揺し、逡巡した。
 ファンタジーを題材にしたライトノベルはたまに読むが、同じ非現実的なことでも、オカルト現象に耐性はなかった。
 確かに男の言う通り、タンスには使わなくなった携帯電話が仕舞ってある。
 
 なぜそんなことを知っているのか。それに彼は何者なのか。
 お前の腹の中から喋っているという彼の言葉を裏付けるように、事前に腹部に違和感を覚え、意思のようなものを感じた。
 彼の言うことを額面通り信じていいのか。
 それを追及しようとしたら、また腹痛と共に腹が鳴る。

「ぎゅごぎゅご ぎゅっごご ぎゅごぎゅっご!」
 身が出そうになった彼女は言われた通り、急いでタンスへ向かい、今は使っていない携帯電話を引き出しから出した。
 彼はさらに指示を出す。
「よし、充電器を繋いで電源を入れろ。そうしたらスマートフォンの方は切っていい」
 彼女はそれに従い、ピンクの折り畳み式携帯電話に電源を繋いでパワーボタンを押した。
 懐かしい音と共に起動した携帯電話は、通信回線の契約がないにも関わらずすぐに着信した。
「やあ、僕だ。言う通りにしてくれて礼を言う。そこでお前に説明しようと思う。今起きている状況をだ」
 どういう理由か、腹具合の悪さと彼には関係がある。
 さらに言えば、彼には腹鳴りを操っている節がある。
 千里はまた腹鳴が起きると困るので彼に靡いた。
「お、お願いします」
 従順な姿勢に気をよくしたのか、彼の態度が幾分和らいだ。
「さっきも言ったが、お前は僕を食べた」
 しかし彼女は率直に言い返した。言葉の意味も飲み込めなければ、彼を飲み込んだ記憶もない。
「それなんですけど、私さっぱり覚えがないんですが」
 すかさず彼は、帰宅直後に取った千里の行動を指摘した。
「さっきケーキを食べただろう」
「あなたケーキなんですか」
 少し間が開く。恐らく説明が腰砕けになったのだろう。
「違う! ケーキのドカ食いを言っている。一度にあんなに食べやがって」
 彼は言葉を乱して感情を露わにした。
「意外においしくてつい。はっ、あなたはもしかしてメタボの精!?」
 メタボの精。
 聞き覚えのない名前を、彼女はさも常識であるかのように口にした。 
 ドラマ、CM、映画、小説。
 ヒットした作品、あるいは、日の目を見なかった作品をも、彼は記憶の限りをたどって知見を当り、何かにその語句が引用されているかどうかを確かめた。
 だが一向に見当も付かない。
 このままでは失念に悶えたまま、この頭の出来が悪そうな小娘に無知を晒すことになる。
 しかし彼は降参した。
「何だそのメタボの精っていうのは」
「それはですね、カロリーの高い食事を摂ったら太るようなことに関わる、体のメカニズムを司る妖精みたいな」
「……名を馳せているのか。実績は少なくとも、例えば著名なものがその恩恵に預かったとか」
「今とっさに考え付いたんです」

「何だと! 勝手に変なもん創作するな。言うにこと欠いてダイエットの精だなんて」
「メタボの精ですけど」
「どっちでも同じだ!」
「話の腰を折るようで申し訳ないんですが、そろそろ本題に入っていただけますか」
「お前が長引かせているんだろうが! まあいい、早い話、僕は由緒あるゴブリン様だ」
「どう由緒があるんですか」
「言葉のアヤだよ。いちいち揚げ足を取るな。ゴブリンといえばその名が通っているだろうが」
「ファンタジーの世界ではですよね」
「あああっ、だから、お前が言ったような聞いたこともない、メタボの精みたいなのじゃなくてっていう意味だよ。そういう意味で言ったんだよ。確かにお前の言う通り、このゴブリン様は由緒もへったくれもないよ」
「怒ってるんですか。私何か気に障るようなこと言いましたっけ」
「言わないよ。こっちも怒ってないし」
「でも……」
「まだ言うか。ぐるぐる鳴らそうか? お腹を」
「すいません気を付けます」
「ならよろしい」
「じゃあ、あのケーキ腐ってたんですね」
「何だと?」
「それでお腹の調子が悪くなって」
「人の、いやこのゴブリン様の話を聞いてないだろうお前」
「それじゃあなたは病原性大腸菌のお化けか何かで」
「これでも食らえ」
「きゃああやめて下さい」
「ぎゅるごろぎゅるごろ ぎゅーごっごろ ぎゅーぎゅーごろごろ ぎゅごごっごろ」
 内股で尻を突き出して堪えた千里は、羞恥に顔を染める。
「このぐらいにしておいてやる。今度怒らせたら、そのときは覚悟しろ」
「やっぱり怒ってたんですね」
「覚悟できているのかお前」
「いえすみません。それじゃ、あの、ゴブリン様はどうして私のお腹の中に」
「話は長くなるが」
「手短にお願いできますか」
「ぎゅーぎゅーぎゅっごろ ぎゅるぎゅっごろ」
「反省してます、反省してます」
「ぎゅるぎゅるぎゅっごろ ぎゅーぎゅっごろ」
「大いに反省してます。だからお願い、止めて!」
「いいか、次は最後までやる。わかったら返事をしろ」
「はい。もう逆らいません」
「よし。手短に言えばだ、お前がケーキごとこの僕を食べたと、そういうことだ」
「ええ! ゴブリン様ともあろうお方が何ゆえ私の食するケーキなどに隠れておられたのですか」
「何かお前の丁寧な物言いは嫌味に響くな。それでだ、僕はここから外へ出ようと思う」
「外って?」
「お前の体の外だ」
「どうやって出るんですか」
「うん。だから腸を通って出ようと思うんだ」
「ええええ!」
 ゴブリンは彼女のリアクションに応じる言葉を持たなかった。
 ただ人知れず頷くのみであった。
「ちょっと待って、それじゃあなた……」
「そうだ。お前の想像の通りだ」
「だったら、腸なんて長い道程を通ったりしないで近道はないんですか」
「うん、ない。だから頼みというか、予め断って何事も起きないようにしておこうというのが、君に伝えたいことのすべてだ」
「それ、どういう意味」
「条件が揃わなければ僕は外に出られない。それにはまず、お前が異物としてこの僕を体外に排出する意思が必要になる」
「その意思なら大いに持ってるわ」
「今お前は戸惑ったではないか」
「それは……出口に関して疑問に思ったからよ」
「少しでもその意思が揺らげば僕は出られない」
「ええ! どういうこと」
「お前の体の内に留まらざるを得ない」
「体の内に留まるだなんて、それじゃまるで……」
 彼女は言い淀んだ。そのまま口にするのは余りにも聞こえが悪い。
 しかしこの先ずっと腹の中にゴブリンを抱えて生きるかと思うと千里は総毛立った。
 感情の高ぶりに任せて彼女は彼を詰った。

「それじゃまるでお通じがないみたいじゃない」
「そういうことになるな。まあ、僕はどこにいても生きていけるが」
「冗談じゃないわよ、何呑気なこと言ってるの」
 彼女は取り乱した。
「嫌あぁ、もう勘弁してって感じぃ。もう何で私のケーキなんかつまみ食いしたりするのゴブリン様はぁ」
「食い意地が張ってて悪かったよ」
 体内にいるゴブリンとの交信手段であるピンクの携帯電話を振り、彼女は声を荒げた。
「何とかしてよ。そんな所からこんなのを使って私と会話ができるんだから。私の体内から外に出るくらいのことなんて造作もないんでしょう」
「さっきも言ったように、ゴブリンの僕にできることは自在に形を変えて君から離れることぐらいさ」
「蒸気みたいに毛穴から立ち上るみたいな?」
「それは無理だ。腸を通って、固まるか幾つかに分かれるか、そんな差異のことを言っている」
「何それ! 期待して損した」
 千里は剥れて腕組みをした。
「あなたゴブリンなんでしょ、他に体外に出る方法はないの」
「何でも未知の存在を、万能の生物のように都合よく解釈したくなるのはわかる」

「無理だよ、トイレットペーパーが切れてるみたいに」
「どういう意味?」
「紙がない。神じゃない」
「私のお腹みたい」
「そのココロは」
「苦しいってことよ」
「苦しいで思い付いた。上を目指す方法はどうだろう」
「上って?」
「口から出るのさ。入って来たときみたいに」
「なるほど。嘔吐っていうわけね」
「それなら今実行する。ただし、とても苦しいことだと断っておく。何せ胃の内容物とともに気道を塞いで上がって行くんだからね」
「お、脅かさないでよ」
「もうひとつ断っておくけど、口から吐いた僕はただのコピーに過ぎない」
「はあ!?」
「本体の僕は、君のお腹に留まる」
「アンタ私にケンカ売ってるの、このエロゴブリン。それじゃ意味ないじゃん。散々気を持たせてそれか!」
「落ち着け、少しでも気休めになればと思って」
「なるかバカ! 人のケーキはつまみ食いするわ、人のお腹の中で消化不良は起こすわ、本当にアンタは人騒がせなゴブリン様よ」
「そうまで言われたんじゃ仕方がない。とっておきの方法を試すより他ないだろう」
「ふうん、これはまたずいぶんと風呂敷を広げたもんね。話半分で聞いといた方がいいんでしょ、アンタの自尊心のためには」
「さっき使ったスマートフォンをまた使う。用意してくれ」
「用意って」
「手に取って電話帳を開くんだ。携帯電話の方はスピーカーに切り替えてテーブルに置けばいい」
「電話帳を開いたわ。ここからどうすればいいの」
「中山康二にダイヤルするんだ」
「ええ! 何でその名前を。電話帳調べたの?」
「いいから電話を掛けるんだ」
「嫌よ。こっちから掛けたってしゃべることなんてないもの」
「だがそれが唯一、君を煩わせずに僕が体外へ出る方法なんだ。それでもためらうかい」
「だって……」
「わかっている。お前が中山を好きだっていうことも、それが片思いだということも」
「何でそんなことを。それじゃこっちから掛けにくいって事情も察してよ」
「間違って掛けたことにすればいい。そしたらすぐに切らずに間を持たせ、言葉にならない苦しさを滲ませたお前の心情を相手に聞かせろ」

「その態度で、いかにその粗相を悔やんでいるかが相手に伝わる。どんな間抜けな男でも、ドラマや映画などで見てそんなシチュエーションが
どんな心理状況から起こるものか何となくわかる筈だ。康史が気付けば後々に実を結ぶ。縁があればの話だが」
「そんなこと……」
「その間に向こうにいる僕の仲間、つまり別のゴブリンに用事を頼む。人間には理解できない言語でな」
「ちょっと待って、向こうに仲間って、中山君の家にもいるわけ、ゴブリンが」
「そうだ。僕が頼んだ」
「何でそんなことを」
「人間に悪戯をするのがゴブリンの仕事みたいなもんだ。そういうことだよ」
「何が仕事よ。人が彼のために苦労したケーキを勝手につまみ食いなんかして」
「それを渡そうとしてケーキの包装を選びに行ったとき、奴が女を連れているのを見た」
「どうしてそれを」
「だから帰って来て即行手製のケーキをヤケ食いしたんだろうが」
「何もかもお見通しってわけね」
「電話を掛けにくいのはわかる。だがこんな僕にも罪の意識と贖罪の精神っていうもんがある。今それに押し潰されたらここにも留まれない。腸を通って出る以外に道がなくなる」
 チサトは無言で電話を掛けた。数回呼び出し音が響いた後に中山康二が出た。
「もしもし、チサトちゃん? どうしたの」
「ぎゅーぎゅーぎゅるごろ ぎゅろごっご」「ヒャッハー」
「チサトちゃん?」
「もうっ! いい加減にしてよ。あっ……」
「チサトちゃんどうかしたの? チサトちゃん」
「何でもないんです。間違って掛けちゃいました。すみません」
 チサトが電話を切ろうとした時、受話口の向こうから喚き声が聞こえた。
「チサトちゃん、電話を切らないでくれ。俺の周囲で奇妙なことが起きている」
「どうかしたんですか」
「今台所に向かってる。それも自分の意思に反してだ」
「それってどういうこと」
「わからない。俺の手は勝手にヤカンを火に掛けお湯を沸かし……」
「それで」
「吊戸棚からストックしておいたカップラーメンを手に取っている」
「そんなにお腹空いてたの」
「空いてるような、そうでもないような」
「無意識にラーメン作っちゃうほど」
「そうじゃない。信じられないと思うけど勝手にやってるんだ、体が」
「信じるわ」
「ちょっと待ってて、カップラーメンの蓋を開けるのに電話を置くから、このまま切らないでくれ」
「うん」
「ありがとう。君が電話を掛けて来てくれなかったら」
 ゴトっという音と共に会話が途切れた。
 康二の意志でコントロールできない体は、彼の手からスマートフォンをテーブルに落とし、カップラーメンの蓋をめくった。
 さらに自由の利かない体は、スマートフォンを重しにしてカップラーメンに蓋をし、スピーカーフォンに切り替える隙さえ与えず冷蔵庫にビールを取りに向かわせた。
 結局チサトはカップラーメンができるまでの間、受話口で待たされた。
「ゴ、ゴメン、待っててくれたんだね」
「カップラーメンはできたの」
「うん。でも食欲が湧かないんだ。正直参っている。あっ」
「何が起きたの」
「聞いてくれ、カップラーメンの麺がまるで意思を持ったように空中へと昇ってゆく」
「信じるわ」
「それが何者かの口に音を立てて啜られてゆくんだ。こんなことってあるか」
「ふつうはあり得ないことよね」
「ああっ、ビールが」
「ビールがどうしたの」
「冷蔵庫から、やはり勝手に取り出してテーブルの上に置いた缶ビールが、傾いたと思ったらどこかへ消えてゆく」
「本当なら恐ろしいことね」
「本当なんだ。喉ごしの良さそうな音がゴクゴクと響いて。そうだ、今ビデオ通話に切り替える」
「とっとにかく、誰にもこの不思議な体験は










つい先だって、
我々の種族の長が天界の呼び掛けに応じ、人間界で得行を積んだ者は特にその力を認められ新たな奇跡を生み出すための力を付与されるというお触れがあった。お前と中山の恋をこの僕が取り持てば僕にその力が備わることになっている。これで僕は晴れて君の体から難無く抜け出せて君たちも幸せになるめでたしめでたしというわけだ。

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