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8話

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 朝早く出発した僕達は夕方には西の平原にたどり着いた。

 ちなみにお昼はおにぎりを作った。

 米はいいね!

 遠く離れた向こう側には帝国がいるらしい。

 いつ始まるのかビクビクしていると団長が

「なにビクビクしてるんだ?開戦は明日の昼からだぞ?」

「え?開戦する時間なんて決まっているんですか?」

「あぁ、帝国と王国が話し合って決めてあるぞ。他にも色々決まり事があるがお前は気にしなくていい」

「そうだったんですか」

 戦争にルールがあるとは、まぁ確かに前世の世界でも戦争にルールがあったからな、こっちでもあるのはおかしくないか。


「そういえばお前に王国騎士団長から伝言預かってるんだった」

「え?王国騎士団長が僕に?」

「あぁ、日が暮れる前に来てくれだとよ」

「わ、わかりました」

 なんの用だろう?人が足りないから僕に戦えとか?どうしよう!僕人間相手には戦えないよ!

 王国騎士団長がいる天幕まで来たけどどうしようかうろうろしていると天幕の横にいた騎士が

「何だ貴様、先程から天幕の前でコソコソと。怪しい者め!」

「あ、はい!…じゃなくて決して怪しい者ではありません!」

「なんの騒ぎだ」

「こ、これは騎士団長。怪しい者がいたものでして」

「怪しい者?ああ、彼のことか。彼は私が呼んだ客人だ」

「な!そ、そうでございましたか。用事を思い出しました。私はこれで失礼します。」

 騎士の人は焦ってどっか行ってしまった。そんなに大事な用事だったのだろうか?

 天幕の中に案内された僕は王国騎士団長とむかいあうように座っている。

「キオ君だったかな?」

「あ、はい!そうです王国騎士団長」

「君の噂は聞いているよ、何でも美味しいご飯を作れるというね」

「は、はい。美味しいかどうかはわかりませんが料理は作ることができます」

「ははっ、謙虚だね。まぁいい、君にはある大きな仕事をしてもらいたい」

 な、なんだろう。帝国のスパイになれとか、暗殺をしてこいとかだろうか?

「そんな難しい顔しないでよ。なに、君の得意分野だよ。料理を作って欲しいんだここにいる約1万人の食事をね」

「い、1万人!?そ、それはさすがに…」

「あぁ、作るのは君一人じゃないさ。20人の料理人を連れて来ている。その人達と協力して欲しい」

「うーん」

「頼む!この戦いに勝つためにはどうにかして士気を上げたいんだ。帝国は1万5000の兵がいる、それに対してこちらは1万。明らかに劣勢だ。だから頼む!力を貸してくれ!」

「あ、頭を上げてください!わかりました、わかりましたから!」

「そうか!やってくれるか!ちなみに食材は全部使っていいぞ」

 
 ここにあるのを使ってくれ!と言われた場所には馬車が4台、積み荷はすべて食材。

「何を作りますか?」

「ん、あなたは?」

「あぁ、私達は今回呼ばれた料理人のガスといいます。。私が他の者に指示しますのでキオ様は私にご命令下さい」

「あ、そうでしたか。ガスさんよろしくお願いします。」

「はい、よろしくお願い致します。」

 うーん、どうしよう。何を作ろうか


 馬車の積み荷をみるとふと気になるものがあった。

「…ん?ガスさんこれは?」

「あぁ、香辛料ですね」

「あ、本当だ。これはクミン、ナツメグ、それにクローブ他にも色々…」

「よし!決まった!カレーだ!カレーを作ろう!」

「カレー?ですか?すみませんが私達にはどんな料理か存じません」

「大丈夫です。私の言うとおりにしてください。」

「まずですね牛肉とキロ(人参)ポト(じゃがいも)を食べやすい大きさに切ってください」

「ふむ、そこの7人でやりなさい」

「「はい!」」

「えっと、次は切った野菜と肉を鍋でどんどん炒めてください」

「そこの7人がやりなさい」

「「はい!」」


「それと、 軽く火が通ってきたら、バターを入れて薄力粉とこの香辛料をまぶして下さい。その時だまにならないように全体を炒めてください。 」


「「はい!」」


「えっと、この中で魔法で水を出せる人いますか?」

 3人が手を挙げた

「その人たちは炒め終わった鍋全てに水を入れて沸騰させて下さい下さい」


「「はい!」」


「その時あくが出るので取る人を」

「そこの2人でやりなさい」


「「はい!」」

「あと、米を大量に炊いて下さい」

「では私が」

「肉や、野菜が柔らかくなってきたら僕を呼んで下さい。僕が香辛料を入れに行くのでその後とろみがつくまで煮込んでください」


「各自自分の仕事が終わったあとは次の工程を手伝うようにして下さい。なにせ、1万人分ですからね」


「「はい!!」」





 一通り作り終え僕が味見をする

 というか、1人で1万人分の米を炊くなんて何者なんだろうガスさんは…


「うん、美味い!」

「よっしゃー!」

「やっと終わった」 

「もう野菜は切りたくない」

「みんなお疲れ、でもこれから配らないといけない。あともうひと仕事だ!」



 全ての人たちに配り終えた時にはもう僕達はヘトヘトだった。

 王国騎士団長が寄ってきて

「よく作ってくれた!ありがとう!」

「はい、出来ればもうやりたくないです」

「はっはっはっ」

「でも、みんなの食べている姿を見てみろ。とても決戦前だとは思えない顔だぞ。みんな不安だった顔が嘘みたいにあんなに笑っている。士気も上がった。これは料理人たちのおかげだ。ありがとう」

 カレーを食べている人たちは確かにみんな笑っていた。

「か、辛い!がそれが良い!」

「大変美味なり!」 

「米とカレーってやつは相性抜群だ!」

「なんだこれは!美味い美味すぎる!」

「見た目は茶色なのにどうしてこんな味が!」

「うおぉー!俺は幸せだー!」


 作るのは本当に大変だったけどみんなの笑顔が見ることができて良かった。








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