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そんなクソゲーではしゃいではいけません

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 俺が借りていた部屋の幅ぐらいの石造りの廊下を駆け抜けひときわ大きなベランダと言うかテラスと言うかそんな空中庭園だった。上の階から流れ落ちる滝は小さな池に溜まり、そこから水路に沿って流れて行き、下の階の庭へと注がれていく。水路の上にいくつもかけられた橋を越えた先の四阿に辿り着けばちゃんとテーブルとベンチもあり、そこに聖華ちゃんが座ったと思ったら俺にも席を進めてくれた。
 面接会場ではないが、この世界では席を進められなければ座ってはいけないのがマナーだ。まあ、親子とか友人の間柄なら気にしなくても良いようだが、こうやって人の目がある状況ではお気に入りの場所に招いてくれた彼女のおもてなしは丁寧に受け取るのが大人としてのマナーだろう。
 すぐに侍女の方達がお茶の準備をして見えるけど声が聞こえない距離まで下がったのを見届けてから

「それにしても驚きましたね!」

 彼女は興奮冷めやらないと言う様に俺に何かを訴える物の生憎理解して上げれるポイントが分らなくて首を傾げてみるも彼女はお構いなしに興奮気に語り続けるのだった。

「この世界私がすっごーくはまってた乙女ゲーって言うか恋愛シュミレーションゲームの世界その物なのなんて私すっごいラッキーだと思いませんか?!しかも主人公ポジション!
 あ、ひょっとして天鳥さん知りませんか?花咲く君の幻想曲ってタイトルなんですが、一時期すっごい話題になったゲームなんです」
「ごめん、社会人になるとスマホゲームがせいぜいだから」

 テレビの前に何時間も座ってるぐらいなら寝ると言う事までは言わないがそもそも恋愛系シュミレーションのジャンルは趣味じゃないからタイトルもノーマークだ。

「そうですか、学校の友達やネットでも盛り上がりまして……」

 共通の話題が出来ないと理解したのかしょぼんとする彼女のギャップに少しかわいそうな気をして、内容が分らなくてもせめて語らせてあげようと言葉をかける。

「へえ?どんなゲームなの?
 そのゲームとどこがこの世界と似てるのかな?」

 とりあえず情報収集として彼女から話を聞きだそうとする、そう思えばこのゲーム娘は満足するし、ご機嫌な彼女を見ればあの王子も満足するだろう。三人纏めてwin-winなら問題ないじゃないかと女の話しは長い、それを覚悟して話しを促せば、彼女は物知り顔で自信たっぷりに髪を揺らして顔を上げる。

「まぁ、乙女ゲームあるあるなのですが、この世界の救世主として主人公は聖女としてこの世界に召喚されます。勿論いきなり見知らぬ世界なので召喚した王子を始め、宰相の息子、騎士団隊長の息子、魔導師団長子息、聖女を祭る教会の祭司子息と言った五人の次の世代を担う国の中心人物になる人達と一緒にこの世界を救う事になるのです」
「救うって?」

「失われた光竜の雛を助け出し、今この国、いいえ、この世界をむしばもうとしている森を枯らし、動物を魔物に変え、人を狂わす闇の魔力を祓う為にの力、聖女の愛が必要になるのです!」

 力いっぱい自信満々に言い切った彼女に思わず拍手をすれば、彼女は優雅に一礼をして椅子に座り直すのだった。
 と言うかだ。
 失われた光竜の雛とか言う何か油断ならないワードを聞いた気がするけどと視線を彼女のすぐ横にある明後日の方へと向けていれば

「とりあえず今はこの世界の事を学ぶために貴族が通う学校に一年間通う事になりまして、そこでフレーデリク様のご学友の方達、後の国の運営の中心人物になる方と出会い、友情を高め、信愛度をマックスにすると攻略済みとなって聖女の愛の力になるのです。
 その力が五人分が最大値で、それによってトゥルーエンドになるかバッドエンドになるか決まります。
 ですがここでのポイントはノーマルエンドこそが重要なのです」

 良いですかと言う様に人差し指をぴんと突き立てて俺へと顔を近づけて

「実はこのゲーム続編がR-18指定となりまして、そちらではこのノーマルバージョンの未来設定となってます。
 データを継続するとノーマルバージョン、つまりお友達エンドからの再発展と言う旧作とは違う展開があったり、新しいキャラクター、隠しキャラクターとの出会いがあるのですよ!!!攻略対象が一気に倍になるんですよ!!!」

 キャー!と言う彼女は完全にノーマルエンドでは終わらせない派だと俺は理解した。

「こっちはまだ未発売で私もネットでの情報でしか攻略対象は知らないのですが、ノーマルではキスシーンですら寸止めの状態だけど、今度はガッツリ濡れ場がありましてね!しかも攻略対象は新旧ファン驚きの男女関係なく同性もありって言うめっちゃエッチなスチルが目白押しなのですよ!!!」

 ……。

「あ、私はまだ十六歳なので予約もできませんが、漏れてくる情報はネットで拾いました」

 うっとりと語る彼女の言葉に十六歳とは思えないよと思いつつも一つの引っ掛かりを覚えた。








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