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ジャックするって言うけど俺達ただ巻き込まれた系だよねと大声で叫びたい 8

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 初めてテレビに出た収録を見たのはテレビ放送された次の日だった。
 案の定と言うか山奥に地上波は届かない以前に番組もテレビ欄から削除される田舎仕様だったのだ。
 飯田さんが録画したものをBlu-rayに焼いて麓の家でみることになったのだが
「お前ら・・・・・・
 なんていうか、ひどい顔だな」
 先生の率直な意見にはさようでございますねと答えるしかなかった。
「仕方がないだろ?
 カーテンが上がって一歩踏み出したところで多紀さんと蓮司が正面でカメラとコードをさばきながら待ち構えていたらこういう顔になるから」
 至極真面目な顔で言えば
「うん。あれは驚いたよね。よく見れば服部さんや木下さんもいるし、映画の人達が照明とか音声とかやってるんだから驚くしかないよ」
「ジャックやるって言ってたけどまさかこんなことにもだとは思わなかったし」
 誰がテレビ番組自体を乗っ取るとか想像するのかと言うものだ。
 最初の挨拶と飯田さんの紹介、そしてジビエ料理の紹介と最後の挨拶ぐらいしか俺達の出番はなかった。
 だったらなぜ夏休みの三時間枠の中でこれが放送されたかと言えばやっぱり多紀さんが撮影したことに由来するのだろう。
 出演者の驚く表情やスタッフとして潜り込んだ波留さんや蓮司をはじめとした俳優の方々のスタッフとしての仕事ぶり。番組の出演者たちが小さくなるような顔ぶれだけどシナリオがあるのか皆さんの低姿勢ぶりにスタジオは混乱を極め、観客の皆様は大笑いと言うひどい話し。
 俺達もあれだけ長い時間控室で時間を潰した挙句にスタジオに滞在した割には顔を出した時間は一分程度。まあ、妥当と言えば妥当だが
「宮下良いか?テレビに出てもこれだけの出演時間しかないし、俺達が発する情報は動画でいくらでも知ることが出来る事しか発信することが出来ないんだ。
 二度とテレビ関係のオファーは受けるなよ。
 絶対動画の方が俺達が発信する言葉が多いし、視聴者の数は一時は増えるけどテレビを見てきた人は結局の所通りすがりの人で中身がないから登録人数より視聴回数に繋がらないし・・・・・・」
「綾人、宮下が情報の多さにパンクしてるぞ」
 あきれ返った先生は缶ビールのプルタブを開けて飯田さんが作ったカツオのたたきにネギをたっぷりと乗せてポン酢を絡めて口へと運びながら
「藁焼きのカツオのたたきって生臭さがほんと無くって良いな」
 そう言って日本酒をくいっと呑んでいた。開けたビールの放置はやめてくれ。
 でもね、そう言って食べて呑まれるとこっちが我慢ならないのよ。
 途端に減っていくカツオのたたきに
「飯田さん、まだカツオのたたきありますか?!」
 一瞬で空になったお皿を見て飯田さんは苦笑しながら
「今から焼きますがお待ちできますか?」
「お酒飲んで待ってます」
 もうビデオなんて興味が一切ないと言うように飯田さんが作る料理の争奪戦へと誰もが参加する事になった。
 何せ今は夏休み。
「植田!お前取りすぎだろ?!」
「これが師匠の教えなのでござる」
「「ござる?!」」
 なんて語尾に園田達が食らいついた。
 ったく、お前ら付き合いいいよなと感心しながらも
「だけどほんと綾っちは今回巻き込まれた系だね」 
 珍しいと言うのは上島弟。
「まあな。宮下のおせっかいが発動したからそれならそれで俺に必要だからいいんだけど」
「綾っち何やったの?」
 素直に巻き込まれるわけないよなと言う植田の言葉だけど
「カモのローストオレンジソースはいかがですか?」
 飯田さんの神タイミングでこの話題はシャットダウンされた。 
 って言うか
「オレンジの皮も入っていてほろ苦さがたまりません」
 たっぷりとオレンジソースを絡めて食べてしまえば植田の言葉なんて思い出す価値すらない。
 ひどいと言われようが、言葉にした植田自身も俺の隣で一緒にオレンジソースをぬぐうようにしてカモのローストを食べる。
「綾っち美味しいよ!神の腕は俺達が高校生だったころよりも神々しさが増していて召されそうです!」
「判る。判るぞ植田。だからさっさと召されて俺の分を食べようとするのは止めろ」
「えー?綾っちはいつも食べてるからいいじゃん」
「ですよー。たまに帰ってきたかわいい後輩の為に少しは遠慮してください」
「おまいらかわいくない。飯田さんの料理、俺の物!」
「宮っちー!綾っちがおかしくなったー!」
「いつもだからいちいち気にしないのー!」
 宮下の酷い言葉に誰もが笑いながらも飯田さんが改めて作る藁焼きのカツオのたたきに誰もが箸と取り皿をもって待機する光景を平和だなと思うのだった。

  
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