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ジャックするって言うけど俺達ただ巻き込まれた系だよねと大声で叫びたい 6

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「もう寝てるし……」
 蓮司は呆れながらも寝つき良すぎるだろと俺の寝顔を写真撮りはじめながら
「うわ、お前この近距離で起きないとかありえないだろう」
 言いながらもパシャパシャと写真を撮る。
 それを見て多紀さんも真似して写真を撮っていたのを綾人は知らない。
 蓮司と多紀さんが撮り出せば当然のように波留さんも写真を撮り始め、何がありがたいんだと言うような圭斗と宮下だが
「綾人さんってこうやって黙って寝てると二十代前半で通用しますよね」
 その場の流れに乗るように飯田さんも撮っていた様子に目をそらしていた。
「わかるわあー。おじいちゃん、おばあちゃん子だから精神年齢高いけど、やっぱりまだまだお子様なのよねー。あ、睫ながーい」
 三十代でお子様と言われる同級生二人は何も言えないでいるけど
「波留ちゃん、そろそろ僕達もお暇しようか」
 居た堪れなさそうな圭斗と宮下をちらちらと見ながらチョリが申し訳なさそうに戦線離脱宣言をしてくれた事なんて寝ている綾人からすればどうでもいいと言うように寝息を落としていた。
「そうねー。これだけ気持ちよく寝ているのを見ているとこっちも眠くなっちゃったしね」
 アヤさんの寝顔いっぱい撮っちゃったなんて言いながらご機嫌に立ち上がり
「多紀さんも帰るよ」
「えー?」
「えーじゃない。明日も打ち合わせがあるんだから帰るよー」
「じゃあ俺が家まで送ります」
「蓮司君ありがとう~」
 蓮司も立ち上がり、強制的に多紀さんを家に送るように駐車場に止めた車に押し込めて
「じゃあ、アヤさんによろしくね」
「俺達も失礼します」
「すみません。お付き合いいただいて」
 代表で飯田さんが挨拶をする。
「気にしないでー。蓮司君預けた時に比べたら大した事ないから」
 からからと笑う波留さんに皆さん苦笑。
 あれはほんと酷かったと預けられた蓮司も逃げ場があれば逃げ出したい突然の出会いは死にかけた心でもこんなにも恐怖があるのかと今も心の中に強く残っている。
 テレビ局を出た所で一瞬みせた綾人のあの表情、俺が初めて山の家に案内された時と重なる顔をしていたがそれはほんの一瞬。気のせいかと思うようなわずかな時間。
 だけど、知らない人が怖いと言う綾人の言葉を聞けば、恐怖する顔とその後の陽気な声は心を奮い立てるための取り繕う声。
 自分自身をだますためのもの。
 こうやってその場を凌いで来たのかとそっとため息をこぼせば
「蓮司君」
 車の運転を始めた所で多紀さんに呼ばれた。
「綾人君って本当に脆く崩れやすい子だね」
 俺様な姿しか見せないけど、自然にその場に合わせるくらいに対応するぐらいの器用さは心の防衛のもの。
「不器用でバカですよね」
 あれだけ俺達を頼れと言うのにこれぐらい何てことないと言う態度に腹が立つ。
「ほんと目が離せないよ」
「まあ、そのくせやる事もバカだからな」
 大金積んで購入した家をたった一年で売るなんて考えられんと耳を疑ったが、それでも本人は真剣だからどうしようもない。
「まだまだ綾人君から目が離せないから、悪いけど付き合ってね」
「俺も目が離せないから問題ありませんよ」
 俺も大概だが俺以上に歪な成長を遂げた親友を思えばこれぐらいお安い御用。
 願わくば
「あんな丸まって寝なくて済むくらい、寝る時くらい安心して寝ろよっていいたいっすね」
 寒くも狭くもないのにまるで自分を守るように丸まって眠る子供の姿に何も言えなくなって退散した俺達はまだまだ綾人の事をわかってない事だけが分かった。
 


「・・・・・・気持ち悪い」
「うおっ?!急に起きていきなり何を」
「綾人、ほらトイレはこっちだよ。お酒強くないのにどれだけ飲まされたんだよ」
「お水持ってきます」
 多紀たちが撤退して三十分もしないでむくりと起きだした綾人の言葉に布団を敷いて寝る準備をしていた圭斗はぎょっとするも宮下は慣れたように綾人をトイレに連れて行った。
「って、なんて介護だ」
 いきなり体を起こした綾人に驚いて心臓が未だにバクバクと全力疾走状態だけど、こちらも慣れたようにミネラルウォーターの蓋を緩めてトイレにいる綾人に渡せば気持ちいいほど飲んだ後・・・・・・以下略。
「慣れてるなって言うか、吐くほど飲むなよ」
「たった三杯だけど、緊張して死にそうだった」
「うんうん。綾人は頑張ったね」
 なんて便器を抱いて泣く綾人に適当に相槌を打つ幼馴染の姿の目の前で飯田さんが酔い止めの薬を綾人に飲ましていた。
「これ以上飲むの苦しい」
「飲まない方が苦しいですよ。さっきで出すもの出したのだから薬飲んで寝ちゃいましょう。盥置いておくので安心して寝ましょう?」
「むり、動けない。もうここで寝るから」
「トイレの独占はやめてください」
 この家に複数トイレがあるとはいえトイレで寝るなって言うものだが
「お家に帰りたい」
「はいはい。明日には帰るから、明日帰れるように寝ようね?」
「うん。寝る。ウコを抱っこするんだ」
「お酒の匂いが残ってるとまたつつかれるから、朝起きたらシャワー浴びようね」
「うん。山に帰ったら……」
「あー、だから便器抱えて寝ないの!」
 なんて酔っ払いだと宮下がずるずると廊下を引きずりながら客間に戻ってくる合間にも飯田が盥やミネラルウォーターのペットボトルを枕元に用意してるのを見て
「お前ら甘やかせすぎだ」
「それは判ってますが・・・・・・」
「圭斗、ここで放置しておくと熱出したり家中汚れて片づけさせられることを考えると絶対こっちの方がましだから」
 経験で言わせてもらいますと言う頭で覚えさせるより体で覚えさせた綾人の粘り勝ちだろうか。
 俺が知る限りそんな悪酔いしないだろうと圭斗は言いたかったがここで一人の人物を思い出した。
 今ここに居ない飲んだくれの姿を。
「先生か?先生が綾人をこうしたのか?」
「俺は綾人さんをこんな悪酔いするような飲ませ方させません」
 きりっと言い切る飯田だけど
「自慢にならないから」
と言う冷めた目で言う。
「結局の所綾人をおとなしくさせる方法がこれだから仕方がないんだよ」
「理由はわかるが、お前ら鬼だな」
 何をこれぐらいと言いながらやっとの思いで布団に寝ころばせて程よい空調に調節し、部屋を暗くしたところで再び聞こえ出した穏やかな寝息にほっとできない圭斗は当然のように寝不足の顔で目を覚ますのだった。







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