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短い秋の駆け足とともに駆けずり回るのが山の生活です 2
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飯田さんについていって一緒にケーキの納品状況を見てきた。
こういうのもなんだけどまだ朝の八時過ぎ。
昨夜のうちに焼き上げたスポンジにデコレーションしていざ納品。
昨晩飯田さんから聞き捨てならない言葉を聞いたので実際見てみたいという好奇心程度だったのだが……
スマホを取り出してもう一度時間を確認。
朝の八時ちょっと過ぎた所。
飯田さんはトランクを開けてしっかりと固定しているクーラーボックスの中から箱に入れたケーキを取り出して二つ重ねながら燈火の店へと歩けば
「「「おはようございます」」」
朝からさわやかなおばさ……お姉さま達の挨拶に飯田さんも一瞬固まるもそこは気付かれないくらいに自然に振り向いて
「おはようございます。まだまだ暑いですね」
そんな挨拶をさりげなくかわしたところで中から燈火が店のドアを開けてくれた。
「おはようございます。って、綾人も一緒か?珍しい」
「あー、昨夜不審な言葉を聞いたからちょっとのぞき見に」
「不審って……」
なんだ?
そんなコトさえ疑問にも覚えない様子の燈火はきっとこの状況を見慣れてしまったせいだろう。
ちらりと店の入り口の軒下に並ぶおばさ……お姉さま達を一瞬ちらりと見れば一瞬彷徨った視線に察する事は出来た。
苦手な人種に妥協したなと……
「とりあえず少し話そうか」
「どうぞ……」
飯田さんより先に俺を通してくれた時に視界の端がとらえたおばさ……お姉さんたちの視線の厳しさに一瞬なんでと問いただしたかったが、そこは皆様お待ちかねのケーキを手にするのが神・飯田だからだろう。
だから何なんだよ。
モラルと常識をわきまえない客は迷惑だと声を出して言いたい。
それがたとえ燈火の店の営業にダメージを与えて店をたたむことになっても俺の知った事じゃない。
ひどい、それが何なんだ。
行列を作る名店でもないただの喫茶店。
しかも住宅街の一角に建つ店舗。
「ご近所迷惑って言葉を知ってるか?」
「あの年齢の人達に勝てる攻略法をぜひ聞きたい」
気持ちいいほど開きなおった顔で言い切った燈火。
確かに燈火には無理かもしれないが
「何も攻略する相手は外の人達だけじゃないだろう」
ちらりと二回目のケーキを運んできた飯田さんを見る。
店に入って来たとたんに俺たちの視線を受けた飯田さんはドアが閉まったところで固まってしまったので、ふっとすぐに視線を外せば
「暴動が起きるぞ」
「この店は誰の店だ」
疲れたように言えばそれだけで飯田さんは理解してそそくさとケーキをショーケースの中に入れていた。
その様子をちゃんと見てから
「飯田さんもこちらに」
俺が座るカウンターの隣の席をトントンと叩けば気まずそうな顔で、でもおとなしく座る。
「言いたいことはわかりますね」
「はい」
少しだけ沈黙。
もうね、耳としっぽが垂れているのが見ないでもわかるって言うのってどうよって問いただしたいけど
「週に一度だからって黙認してきました」
「はい」
ケーキの切れ端とかを食べさせてもらって言うのは心苦しいのですが、ここは商業地区ではありません」
「はい」
「向こう三件両隣、すべて普通のご家庭の住宅街です」
「はい」
「営業時間前にお客様が並ばれるのは極力避けなければいけません」
「はい」
ここは飯田さんに見習って燈火が返事をする。
「もし、すでに並んでいるお客様に早朝より並ばれないようにと言えないのなら、このケーキサービスはやめるべきだと思います」
「はい」
なんて言うけどせっかくお客様が楽しみにしているのにと言うのはわかりきってる言葉。
だからその前に
「飯田さん。このケーキの事を青山さんはご存じでしょうか?」
「はい」
今までと同じように返答。
だけど俺はそこを見逃すほど甘くない。
スマホを取り出して電話をかけようとした時点で
「すみません。青山は知りません」
「マイヤーに鍛えてもらった俺の耳をなめないでくださいね」
多少だけど確実に拾い上げた戸惑いを指摘すれば飯田さんはすんなりと認めてくれた。
きっと簡単に高額ともいえるお金を動かす俺に対して悪意ある人達から守る為に教えてくれたのだろう。少なくともマイヤーに鍛えてもらってからは何気ない会話に潜む悪意を聞き分けることはできるようになった。あからさまな態度でわかる分には問題外だが、少なくとも言い寄ってくる人達は確実にいて、そういう人たちこそ確実に心地よい距離感をとりながら近づいてくることを俺はカレッジにいる間に山ほど体験した。
この村やふもとの町ではいまだに吉野と言う名前が幅を利かせてくれてそういったヤバいひとはいないけど。きっとそこに長沢さん達元吉野の職人さんだった人たちがいまだにジイちゃんに代わって俺を守ってくれているだけなのだろう。頭が下がる思いだ。
そんな中で俺はここで店を開くという燈火の希望に全力で応援したのだ。
その結果が
「オープン時散々ご迷惑かけておいてなおかけ続ける。
皆さん黙って店舗運営に反対しなかったのにそれに対するのがこれとは、燈火の爺さんも悲しんでいるだろうな」
「はい。大変申し訳なく思います」
俺もだけど燈火も大概爺ちゃんっ子なので、大好きな爺ちゃんの家を継いだ孫がご近所の皆さんが何も言わないだけに対策を何も取らないとはさすがにいかがなものかと遠回しで言っても分からないからとストレートに言った所でやっと反省をしてくれた。
「今日は仕方がないとして、お客様のお帰りの時にそれとなく言うように。
このような事が続くようならケーキサービスは終了するし、終了しなくてもせめて九時以降にしてもらうようにご協力を仰ぐ事。
そして飯田さんは事後承諾でも青山さんに言うように。たとえ金銭が絡んでなくてもMon chateauの飯田が料理を提供している事は青山さんと交わした雇用契約上違法です。ケーキを作るのなら青山さんに許可をもらうようにしてください」
「「はい」」
ハモる声は確実にわんこが反省したもの。
ここまで言えば理解してもらえたかと思い、俺は席を立って
「圭斗の所に挨拶に行ってきます。飯田さんこのあと少し付き合ってもらいたいので圭斗の家の方に来てくださいね」
「わかりました」
言って楽しく談笑するおばさ……お姉さま方の前を通り過ぎる。
まるで俺なんてどうでもいいというように気にも留めずにおしゃべりに花を咲かせるのを聞きながら道を挟んだ遠藤と表札を掲げる家の門をくぐって
「おはよー」
「珍しいな。朝から山から下りてくるなんて」
すでに皆さんお仕事の時間と言うように集まっている様子の中に少し疲れた顔をしているのか圭斗自らお茶を入れてくれた。
「なんかあったのか?」
「まあ、神・飯田のケーキテロでご近所迷惑勃発と言う木曜日名物?」
なんて言ってみれば
「あれな。朝七時過ぎには並び始めていておばさん達家の事はいいのかっておもうよなw」
なんて道を挟んだお向いさんの遠藤の意図せずに発せられた意見に家も大切だよなと出されたお茶を啜るのだった。
こういうのもなんだけどまだ朝の八時過ぎ。
昨夜のうちに焼き上げたスポンジにデコレーションしていざ納品。
昨晩飯田さんから聞き捨てならない言葉を聞いたので実際見てみたいという好奇心程度だったのだが……
スマホを取り出してもう一度時間を確認。
朝の八時ちょっと過ぎた所。
飯田さんはトランクを開けてしっかりと固定しているクーラーボックスの中から箱に入れたケーキを取り出して二つ重ねながら燈火の店へと歩けば
「「「おはようございます」」」
朝からさわやかなおばさ……お姉さま達の挨拶に飯田さんも一瞬固まるもそこは気付かれないくらいに自然に振り向いて
「おはようございます。まだまだ暑いですね」
そんな挨拶をさりげなくかわしたところで中から燈火が店のドアを開けてくれた。
「おはようございます。って、綾人も一緒か?珍しい」
「あー、昨夜不審な言葉を聞いたからちょっとのぞき見に」
「不審って……」
なんだ?
そんなコトさえ疑問にも覚えない様子の燈火はきっとこの状況を見慣れてしまったせいだろう。
ちらりと店の入り口の軒下に並ぶおばさ……お姉さま達を一瞬ちらりと見れば一瞬彷徨った視線に察する事は出来た。
苦手な人種に妥協したなと……
「とりあえず少し話そうか」
「どうぞ……」
飯田さんより先に俺を通してくれた時に視界の端がとらえたおばさ……お姉さんたちの視線の厳しさに一瞬なんでと問いただしたかったが、そこは皆様お待ちかねのケーキを手にするのが神・飯田だからだろう。
だから何なんだよ。
モラルと常識をわきまえない客は迷惑だと声を出して言いたい。
それがたとえ燈火の店の営業にダメージを与えて店をたたむことになっても俺の知った事じゃない。
ひどい、それが何なんだ。
行列を作る名店でもないただの喫茶店。
しかも住宅街の一角に建つ店舗。
「ご近所迷惑って言葉を知ってるか?」
「あの年齢の人達に勝てる攻略法をぜひ聞きたい」
気持ちいいほど開きなおった顔で言い切った燈火。
確かに燈火には無理かもしれないが
「何も攻略する相手は外の人達だけじゃないだろう」
ちらりと二回目のケーキを運んできた飯田さんを見る。
店に入って来たとたんに俺たちの視線を受けた飯田さんはドアが閉まったところで固まってしまったので、ふっとすぐに視線を外せば
「暴動が起きるぞ」
「この店は誰の店だ」
疲れたように言えばそれだけで飯田さんは理解してそそくさとケーキをショーケースの中に入れていた。
その様子をちゃんと見てから
「飯田さんもこちらに」
俺が座るカウンターの隣の席をトントンと叩けば気まずそうな顔で、でもおとなしく座る。
「言いたいことはわかりますね」
「はい」
少しだけ沈黙。
もうね、耳としっぽが垂れているのが見ないでもわかるって言うのってどうよって問いただしたいけど
「週に一度だからって黙認してきました」
「はい」
ケーキの切れ端とかを食べさせてもらって言うのは心苦しいのですが、ここは商業地区ではありません」
「はい」
「向こう三件両隣、すべて普通のご家庭の住宅街です」
「はい」
「営業時間前にお客様が並ばれるのは極力避けなければいけません」
「はい」
ここは飯田さんに見習って燈火が返事をする。
「もし、すでに並んでいるお客様に早朝より並ばれないようにと言えないのなら、このケーキサービスはやめるべきだと思います」
「はい」
なんて言うけどせっかくお客様が楽しみにしているのにと言うのはわかりきってる言葉。
だからその前に
「飯田さん。このケーキの事を青山さんはご存じでしょうか?」
「はい」
今までと同じように返答。
だけど俺はそこを見逃すほど甘くない。
スマホを取り出して電話をかけようとした時点で
「すみません。青山は知りません」
「マイヤーに鍛えてもらった俺の耳をなめないでくださいね」
多少だけど確実に拾い上げた戸惑いを指摘すれば飯田さんはすんなりと認めてくれた。
きっと簡単に高額ともいえるお金を動かす俺に対して悪意ある人達から守る為に教えてくれたのだろう。少なくともマイヤーに鍛えてもらってからは何気ない会話に潜む悪意を聞き分けることはできるようになった。あからさまな態度でわかる分には問題外だが、少なくとも言い寄ってくる人達は確実にいて、そういう人たちこそ確実に心地よい距離感をとりながら近づいてくることを俺はカレッジにいる間に山ほど体験した。
この村やふもとの町ではいまだに吉野と言う名前が幅を利かせてくれてそういったヤバいひとはいないけど。きっとそこに長沢さん達元吉野の職人さんだった人たちがいまだにジイちゃんに代わって俺を守ってくれているだけなのだろう。頭が下がる思いだ。
そんな中で俺はここで店を開くという燈火の希望に全力で応援したのだ。
その結果が
「オープン時散々ご迷惑かけておいてなおかけ続ける。
皆さん黙って店舗運営に反対しなかったのにそれに対するのがこれとは、燈火の爺さんも悲しんでいるだろうな」
「はい。大変申し訳なく思います」
俺もだけど燈火も大概爺ちゃんっ子なので、大好きな爺ちゃんの家を継いだ孫がご近所の皆さんが何も言わないだけに対策を何も取らないとはさすがにいかがなものかと遠回しで言っても分からないからとストレートに言った所でやっと反省をしてくれた。
「今日は仕方がないとして、お客様のお帰りの時にそれとなく言うように。
このような事が続くようならケーキサービスは終了するし、終了しなくてもせめて九時以降にしてもらうようにご協力を仰ぐ事。
そして飯田さんは事後承諾でも青山さんに言うように。たとえ金銭が絡んでなくてもMon chateauの飯田が料理を提供している事は青山さんと交わした雇用契約上違法です。ケーキを作るのなら青山さんに許可をもらうようにしてください」
「「はい」」
ハモる声は確実にわんこが反省したもの。
ここまで言えば理解してもらえたかと思い、俺は席を立って
「圭斗の所に挨拶に行ってきます。飯田さんこのあと少し付き合ってもらいたいので圭斗の家の方に来てくださいね」
「わかりました」
言って楽しく談笑するおばさ……お姉さま方の前を通り過ぎる。
まるで俺なんてどうでもいいというように気にも留めずにおしゃべりに花を咲かせるのを聞きながら道を挟んだ遠藤と表札を掲げる家の門をくぐって
「おはよー」
「珍しいな。朝から山から下りてくるなんて」
すでに皆さんお仕事の時間と言うように集まっている様子の中に少し疲れた顔をしているのか圭斗自らお茶を入れてくれた。
「なんかあったのか?」
「まあ、神・飯田のケーキテロでご近所迷惑勃発と言う木曜日名物?」
なんて言ってみれば
「あれな。朝七時過ぎには並び始めていておばさん達家の事はいいのかっておもうよなw」
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