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一人、二人、そして 6
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今回のリフォームはかつて俺がお願いをしてきた中で今回が一番地味な作業となる事だろう。
何せ家自体が綺麗なのだ。
「手伝いに来たのに掃除がいらないなんて……」
「綾っちが普通の家を買うだなんて……」
一度豪邸を見てみたいとやって来た水野と植田コンビは陸斗をサンドイッチにして震え上がっていた。
具材の陸斗が何とも言えなさそうな顔をして圭斗に視線で助けを求めていた。
だが陸斗よ、圭斗の顔を見てみろ。
もう昔の何も主張できない陸斗ではないだろうという視線を見ないふりをしてはいけないぞ。
そしてもう一つ踏み込んで考えるとわかるだろ?
全力で俺を巻き込むなと発するオーラを感じ取るがいい。
本当に危険があれば真っ先に助けるだろう圭斗だけど相手が悪かった。
あの水野・植田コンビ。
放っておいても大丈夫だと認定されているからにはあの二人に絡まれている程度で危険は一切ないことを圭斗だって学習してきた。
よってだ。
かわいいマスコットとして諦めるがよい。
これが俺からの精いっぱいの助言だという俺もあの二人の謎の思考回路には絡まれたくないので全力で圭斗の意見に賛同する。
「こら、二人とも。陸斗が苦しそうだろ!」
宮下降臨。
楽しそうに陸斗をサンドしていた二人から奪還して宮下は陸斗を背中に回す。
「まったく、陸斗がおとなしいからってそんな風にしたら暑いだろ!」
それこそわからない理論だ。まあ、大体合っているけどとどうなるか見守っていれば
「義兄さん参上!
俺も義兄さんって呼んでいいですか?もしくは翔兄ちゃんとか」
「宮っちが終わったら翔兄ちゃんになった……」
あくまでもスルーする方向にいる俺だけどこれはレベルアップなのかダウンなのかどっちだろうかと悩むところだけど本来の目的を思い出した陸斗は
「翔ちゃん、今回お手伝いする事はないの?」
安定の翔ちゃんに俺と圭斗もほっとした顔に先生もにやにやと笑っていた。
だけどそこは宮下。
周囲の視線なんて気にせず
「今回はこれといってお手伝いする事はなさそうだから。
せっかくだから山川さんのお仕事を近くで見学させてもらうと良いよ」
「うん。山川さんの左官作業、本当に綺麗だからね。俺山川さんが普通だと思ってたんだ」
「それね。全く別次元だから山川さんが普通だって思っていたら怒られるからね」
「もう怒られました。どれだけ玄人のレベルをさせるつもりだって」
「あー、そうだね。あの鏡面仕上げを普通に教えてくれた人が最高レベルだからね。
俺も京都で壁を塗ったりしていた時に初心者じゃないなってみんなに言われてなんかおかしいって気づいたんだけど」
見本と教師が最高レベルだと知らず知らずにレベルが高くなっていたという例なのかと綾人は小首をかしげながら圭斗を見ればそっと目をそらされてしまった。
つまりはそういう事なのだろう。
そして俺だけが教えてももらえずレベルアップしない状況を納得できないと少し拗ねてしまう所を圭斗が
「仕方がないだろう」
多分いくら教えても上達しないだろう俺の肩に腕を回して落ち込むなと励ましてくれた。
余計に落ち込むと泣きたかったけど、そのまま今日皆さんが来ることで退去してもらったアイヴィーのお気に入りの茶室へと向かう。
もちろん座敷童……ではなくアイヴィーは騒がしくなるからとホテルに移動してもらっている。昨日の夜にはいかせて朝食、昼食、夕食を部屋で摂らせてくださいと植草さんにお願いしてあるのでまずは大丈夫だろう。
とりあえずアイヴィーは野放しにすると危険なプログラムを作ろうとするけどそこは俺が監修すればいいとやりたいように放置を決定した。
もちろん新しいPCに夢中になっているアイヴィーはそれを餌に疑問なくホテル暮らしを満喫していることは植草さんから報告が来ている。
びっくりするくらいよく食べるけど大丈夫なのかと言う心配……
「あ、そこは心配しないでください。俺もそうなりますので」
「思考はカロリーが必要とは聞きますが、これほどですか」
「糖に変換しやすいものでお願いします。むしろおやつにブドウ糖を与えておいてください」
「さすがにホテルのシェフが泣きますので」
三食その後についたデザートはバイキングから一種類ずつ取りそろえたものだけどぺろりと平らげるその様子を見てしまった給仕の女性はまるで飲み物のように食べていたとアイヴィーの伝説を広げるのだった。
まあ、プログラムに集中しているときは俺だってケーキのホールぐらい軽く食べれるけどさ、そんな風に言わなくてもいいじゃんと少しだけ傷ついた。
そんな感じでアイヴィーをホテルで缶詰めにした所で朝八時にきっかりと集まった皆様を庭に集めて爺さんとの紹介、そして事前に渡しておいた補修個所を各自直接見てもらえば
「なんだ。また山川が一番目立つのか」
「結局のところ壁の補修がメインか」
「いえ、長沢の兄さんや内田の兄さんには茶室と言う一大作業がありましょう」
フランスの一件以来長沢さんと鉄二さんの山川さんいじりが止まる事がないのがもう本気か単なる仲良しなのかがどんどんわからなくなってきている。
まあ、山川さんがお二方より一回り若いって言うのも嫉妬の対象だけど、はたから見れば森下さん達も何かあればお二方に迷惑をかける前に山川さんに相談するという序列がいつの間にかできていた。
浩太さんの前にと言うか、そこはやはり知名度の違いだろう。
動画配信としてではなくその腕の知名度としてだ。
やはり海外遠征した実績とか国家資格持ちとか、爺さんみたいな人と知り合いとか。
こういうのはめぐり逢いがいいって言う証拠なんだよなーなんてぼやけば
「お前が言うか?」
先生の盛大な突込みに俺もそうなのかと……気が付けばあまりに著名人が近くにそろい過ぎて麻痺していたというかダメな反面ばかりを見てしまっているので今一つ理解できなかったけどそういや皆さん著名人でしたねと俺も三百万越えの動画配信者と言うのを綺麗に忘れ去ってなるほどと納得をしていた。
何せ家自体が綺麗なのだ。
「手伝いに来たのに掃除がいらないなんて……」
「綾っちが普通の家を買うだなんて……」
一度豪邸を見てみたいとやって来た水野と植田コンビは陸斗をサンドイッチにして震え上がっていた。
具材の陸斗が何とも言えなさそうな顔をして圭斗に視線で助けを求めていた。
だが陸斗よ、圭斗の顔を見てみろ。
もう昔の何も主張できない陸斗ではないだろうという視線を見ないふりをしてはいけないぞ。
そしてもう一つ踏み込んで考えるとわかるだろ?
全力で俺を巻き込むなと発するオーラを感じ取るがいい。
本当に危険があれば真っ先に助けるだろう圭斗だけど相手が悪かった。
あの水野・植田コンビ。
放っておいても大丈夫だと認定されているからにはあの二人に絡まれている程度で危険は一切ないことを圭斗だって学習してきた。
よってだ。
かわいいマスコットとして諦めるがよい。
これが俺からの精いっぱいの助言だという俺もあの二人の謎の思考回路には絡まれたくないので全力で圭斗の意見に賛同する。
「こら、二人とも。陸斗が苦しそうだろ!」
宮下降臨。
楽しそうに陸斗をサンドしていた二人から奪還して宮下は陸斗を背中に回す。
「まったく、陸斗がおとなしいからってそんな風にしたら暑いだろ!」
それこそわからない理論だ。まあ、大体合っているけどとどうなるか見守っていれば
「義兄さん参上!
俺も義兄さんって呼んでいいですか?もしくは翔兄ちゃんとか」
「宮っちが終わったら翔兄ちゃんになった……」
あくまでもスルーする方向にいる俺だけどこれはレベルアップなのかダウンなのかどっちだろうかと悩むところだけど本来の目的を思い出した陸斗は
「翔ちゃん、今回お手伝いする事はないの?」
安定の翔ちゃんに俺と圭斗もほっとした顔に先生もにやにやと笑っていた。
だけどそこは宮下。
周囲の視線なんて気にせず
「今回はこれといってお手伝いする事はなさそうだから。
せっかくだから山川さんのお仕事を近くで見学させてもらうと良いよ」
「うん。山川さんの左官作業、本当に綺麗だからね。俺山川さんが普通だと思ってたんだ」
「それね。全く別次元だから山川さんが普通だって思っていたら怒られるからね」
「もう怒られました。どれだけ玄人のレベルをさせるつもりだって」
「あー、そうだね。あの鏡面仕上げを普通に教えてくれた人が最高レベルだからね。
俺も京都で壁を塗ったりしていた時に初心者じゃないなってみんなに言われてなんかおかしいって気づいたんだけど」
見本と教師が最高レベルだと知らず知らずにレベルが高くなっていたという例なのかと綾人は小首をかしげながら圭斗を見ればそっと目をそらされてしまった。
つまりはそういう事なのだろう。
そして俺だけが教えてももらえずレベルアップしない状況を納得できないと少し拗ねてしまう所を圭斗が
「仕方がないだろう」
多分いくら教えても上達しないだろう俺の肩に腕を回して落ち込むなと励ましてくれた。
余計に落ち込むと泣きたかったけど、そのまま今日皆さんが来ることで退去してもらったアイヴィーのお気に入りの茶室へと向かう。
もちろん座敷童……ではなくアイヴィーは騒がしくなるからとホテルに移動してもらっている。昨日の夜にはいかせて朝食、昼食、夕食を部屋で摂らせてくださいと植草さんにお願いしてあるのでまずは大丈夫だろう。
とりあえずアイヴィーは野放しにすると危険なプログラムを作ろうとするけどそこは俺が監修すればいいとやりたいように放置を決定した。
もちろん新しいPCに夢中になっているアイヴィーはそれを餌に疑問なくホテル暮らしを満喫していることは植草さんから報告が来ている。
びっくりするくらいよく食べるけど大丈夫なのかと言う心配……
「あ、そこは心配しないでください。俺もそうなりますので」
「思考はカロリーが必要とは聞きますが、これほどですか」
「糖に変換しやすいものでお願いします。むしろおやつにブドウ糖を与えておいてください」
「さすがにホテルのシェフが泣きますので」
三食その後についたデザートはバイキングから一種類ずつ取りそろえたものだけどぺろりと平らげるその様子を見てしまった給仕の女性はまるで飲み物のように食べていたとアイヴィーの伝説を広げるのだった。
まあ、プログラムに集中しているときは俺だってケーキのホールぐらい軽く食べれるけどさ、そんな風に言わなくてもいいじゃんと少しだけ傷ついた。
そんな感じでアイヴィーをホテルで缶詰めにした所で朝八時にきっかりと集まった皆様を庭に集めて爺さんとの紹介、そして事前に渡しておいた補修個所を各自直接見てもらえば
「なんだ。また山川が一番目立つのか」
「結局のところ壁の補修がメインか」
「いえ、長沢の兄さんや内田の兄さんには茶室と言う一大作業がありましょう」
フランスの一件以来長沢さんと鉄二さんの山川さんいじりが止まる事がないのがもう本気か単なる仲良しなのかがどんどんわからなくなってきている。
まあ、山川さんがお二方より一回り若いって言うのも嫉妬の対象だけど、はたから見れば森下さん達も何かあればお二方に迷惑をかける前に山川さんに相談するという序列がいつの間にかできていた。
浩太さんの前にと言うか、そこはやはり知名度の違いだろう。
動画配信としてではなくその腕の知名度としてだ。
やはり海外遠征した実績とか国家資格持ちとか、爺さんみたいな人と知り合いとか。
こういうのはめぐり逢いがいいって言う証拠なんだよなーなんてぼやけば
「お前が言うか?」
先生の盛大な突込みに俺もそうなのかと……気が付けばあまりに著名人が近くにそろい過ぎて麻痺していたというかダメな反面ばかりを見てしまっているので今一つ理解できなかったけどそういや皆さん著名人でしたねと俺も三百万越えの動画配信者と言うのを綺麗に忘れ去ってなるほどと納得をしていた。
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――― 2024.12.1 再々公開 ――――
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