人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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冬場は雪から家を守る為に動かずにいれば冬眠と言われるなんて知らないと思ったら大間違いだ! 7

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 賑やかな正月の後は音もない無音の世界の中に閉じ込められる。
 温暖化のおかげか毎年少しはましな寒さになってきているとは言え雪かきから逃げれない日常に溜息は止まらない。
 嬉しい事に圭斗の会社もこの季節なのにしっかりと仕事が予定を組まれていて忙しい様子は仕事が一件もなかった年を知っているのでコツコツと積み上げた信頼を誇らしく思っている。
 香奈も仕事を引き継ぎ色々と奔走している様子を宮下からも聞いている。
 宮下も少しでも時間が空けば新居のリフォームをするようになり、この冬最も忙しい人物となっていた。
 休日ともなれば出稼ぎに来る人もいて作業がどんどん進んでひょっとして春になる頃には出来上がっちゃうんじゃないと言う心配も起きてきた。
 まあ、屋根の張り替え、外壁の張り替えはさすがに雪が解けた頃やらないと危ないからそれはないけど。
 あれだけ綺麗に刈りこんだ雑草地帯や畑は総て雪の下に埋もれてしまい、あの後すぐに雪が積もったタイミングを思えば絶妙な時期だったなと思うしかなかった。

 そんな今一番忙しい二人は夏前には結婚式をあげたいと言う。

「だけどこの街に式場なんてないからどうしようか悩んでいるのよね。やる必要、おじさんとおばさんに晴れ姿見てもらいたいけどさ」
 圭斗に用事があって連絡したけど何故か香奈が代わりに出て
「圭ちゃんスマホ置いていっちゃったから」
 と言う致命的な忘れ物と個人的な悩みをぼやいてくださった。
「いや、花嫁さんよ、ウェディングドレス着るのが一生の思い出って奴じゃね?」
 女の子なら人生のピークと言うべき記念日に何をおっしゃると言えば 
「んー、別に今時内輪のお食事会で十分じゃん」
 寧ろ都会的な発想にそう言うのがこの田舎で通用すると思ってるのかと思うも
「宮下なら絶対綺麗な香奈を見たいって言うんじゃないか?」
 なんせ飯田さんのお母さんに着せられた花嫁衣装を見てやっと意識したのだ。
 やっぱり香奈の花嫁姿を見たかろうと言う様に言えば
「うん。それはそれでわかってるんだけど……」
「ど?」
 何が不満だと思えば
「ほら、結婚式って親族とか友人とか呼ばなくちゃいけないでしょ?」
「あ、ああ…… そこか。そこだよな……」
 これは宮下にも圭斗にも相談しにくい内容だ。
「翔ちゃんだからきっと職場の皆さんとか飯田さんとか先生とか沢山呼びたいと思うんだ」
「まぁ、呼んで来てくれる人達ってそれぐらいしか居ないしな」
 学生時代上手く友人関係を作れなかった俺達の友達はほとんどいない。圭斗は一緒にするなと言ってきそうだけど今回の主役は圭斗じゃないのでスルー一択だ。
「私も元会社の人達は呼びたくないし、呼びたい人達とは引っ越しの時に翔ちゃんに来てもらったタイミングでランチをして紹介したからこんな遠くまでって事が無いようにしたし」
「そういや社長ご夫妻と何人かのもう辞めちゃった人達と小さなパーティをしたんだってな」
「うん。翔ちゃんが飯田さんにお願いして飯田さんのお店で内々のお食事会を開いてくれたんだ」
「まぁ、宮下が知る東京のレストランって言ったら飯田さん所しかないしな」
 因みに向こうに行くのならと雪を掘り返して収穫した野菜とこの冬獲れたお肉たちを持たせたからなんとなく飯田さんの所に行くんだよなという前提で話してたから宮下も言わなかったがやっぱりそこかと勇者ぶりに驚いた。
「うん。みんなすっごくおしゃれですっごく美味しいって喜んでくれたよ」
「皆さん宮下と会いたがってたからこっちこそありがたいよ」
 一緒に動画をしているけど宮下に直接会った事がないと言う不思議な状態が十年以上も続いてた事に気付けば笑うしかないけど。
「そんなわけで、結婚式ってどうしてもやらないといけないのかなって言うのを相談したかったのです」
「まあな。隣の町の式場からシャトルバスに来てもらえればいいけど、他に呼びたい奴っていないのか?」
 何て聞けば
「高校時の友達はみんな出てっちゃったから気軽に来てなんて言えないし」
「そこな」
「だったらいっその事大矢さんの所の旅館で出来ないかなって言うのも考えてみたんだけど……」
 それも一つの手かと中々の良案だと思えば一つの古い写真を思い出した。
 白黒の古くて変色した指の跡が残る写真。
 ドラマや映画でも見るだけになった古い風習の結婚式……
「だったらいっその事料理を大矢さんにお願いして新居で式を挙げるってのはどうだ?詳しい事は長沢さんの奥さん達が経験者だから知ってると思うけど」
「……」
「圭斗の家から新居まで街を歩いて嫁いでいくって言うこの辺でも昔はやってた結婚でさ、花嫁衣装も着るから香奈と宮下の要望が両方叶うぞ」
「……」
 暫くの間香奈は無言だったが、さすがに見世物になる気はないよなと先日実桜さんの家であったことを思えばこれはなしだろう。
「悪い、勝手な事言いすぎ……」
「ちょっと考えて見ます」
 そこで通話を切られた。
 と言うかだ。
「俺、圭斗に用事があったんだけど……」
 スマホで通じないとなれば蒼さん辺りに連絡すれば捕まるかと電話をして香奈が結婚式の事で悩んでいるって事だけを俺にではなく本来一緒に悩まなくてはいけない相手に伝えておいた。 







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