883 / 976
冬場は雪から家を守る為に動かずにいれば冬眠と言われるなんて知らないと思ったら大間違いだ! 7
しおりを挟む
賑やかな正月の後は音もない無音の世界の中に閉じ込められる。
温暖化のおかげか毎年少しはましな寒さになってきているとは言え雪かきから逃げれない日常に溜息は止まらない。
嬉しい事に圭斗の会社もこの季節なのにしっかりと仕事が予定を組まれていて忙しい様子は仕事が一件もなかった年を知っているのでコツコツと積み上げた信頼を誇らしく思っている。
香奈も仕事を引き継ぎ色々と奔走している様子を宮下からも聞いている。
宮下も少しでも時間が空けば新居のリフォームをするようになり、この冬最も忙しい人物となっていた。
休日ともなれば出稼ぎに来る人もいて作業がどんどん進んでひょっとして春になる頃には出来上がっちゃうんじゃないと言う心配も起きてきた。
まあ、屋根の張り替え、外壁の張り替えはさすがに雪が解けた頃やらないと危ないからそれはないけど。
あれだけ綺麗に刈りこんだ雑草地帯や畑は総て雪の下に埋もれてしまい、あの後すぐに雪が積もったタイミングを思えば絶妙な時期だったなと思うしかなかった。
そんな今一番忙しい二人は夏前には結婚式をあげたいと言う。
「だけどこの街に式場なんてないからどうしようか悩んでいるのよね。やる必要、おじさんとおばさんに晴れ姿見てもらいたいけどさ」
圭斗に用事があって連絡したけど何故か香奈が代わりに出て
「圭ちゃんスマホ置いていっちゃったから」
と言う致命的な忘れ物と個人的な悩みをぼやいてくださった。
「いや、花嫁さんよ、ウェディングドレス着るのが一生の思い出って奴じゃね?」
女の子なら人生のピークと言うべき記念日に何をおっしゃると言えば
「んー、別に今時内輪のお食事会で十分じゃん」
寧ろ都会的な発想にそう言うのがこの田舎で通用すると思ってるのかと思うも
「宮下なら絶対綺麗な香奈を見たいって言うんじゃないか?」
なんせ飯田さんのお母さんに着せられた花嫁衣装を見てやっと意識したのだ。
やっぱり香奈の花嫁姿を見たかろうと言う様に言えば
「うん。それはそれでわかってるんだけど……」
「ど?」
何が不満だと思えば
「ほら、結婚式って親族とか友人とか呼ばなくちゃいけないでしょ?」
「あ、ああ…… そこか。そこだよな……」
これは宮下にも圭斗にも相談しにくい内容だ。
「翔ちゃんだからきっと職場の皆さんとか飯田さんとか先生とか沢山呼びたいと思うんだ」
「まぁ、呼んで来てくれる人達ってそれぐらいしか居ないしな」
学生時代上手く友人関係を作れなかった俺達の友達はほとんどいない。圭斗は一緒にするなと言ってきそうだけど今回の主役は圭斗じゃないのでスルー一択だ。
「私も元会社の人達は呼びたくないし、呼びたい人達とは引っ越しの時に翔ちゃんに来てもらったタイミングでランチをして紹介したからこんな遠くまでって事が無いようにしたし」
「そういや社長ご夫妻と何人かのもう辞めちゃった人達と小さなパーティをしたんだってな」
「うん。翔ちゃんが飯田さんにお願いして飯田さんのお店で内々のお食事会を開いてくれたんだ」
「まぁ、宮下が知る東京のレストランって言ったら飯田さん所しかないしな」
因みに向こうに行くのならと雪を掘り返して収穫した野菜とこの冬獲れたお肉たちを持たせたからなんとなく飯田さんの所に行くんだよなという前提で話してたから宮下も言わなかったがやっぱりそこかと勇者ぶりに驚いた。
「うん。みんなすっごくおしゃれですっごく美味しいって喜んでくれたよ」
「皆さん宮下と会いたがってたからこっちこそありがたいよ」
一緒に動画をしているけど宮下に直接会った事がないと言う不思議な状態が十年以上も続いてた事に気付けば笑うしかないけど。
「そんなわけで、結婚式ってどうしてもやらないといけないのかなって言うのを相談したかったのです」
「まあな。隣の町の式場からシャトルバスに来てもらえればいいけど、他に呼びたい奴っていないのか?」
何て聞けば
「高校時の友達はみんな出てっちゃったから気軽に来てなんて言えないし」
「そこな」
「だったらいっその事大矢さんの所の旅館で出来ないかなって言うのも考えてみたんだけど……」
それも一つの手かと中々の良案だと思えば一つの古い写真を思い出した。
白黒の古くて変色した指の跡が残る写真。
ドラマや映画でも見るだけになった古い風習の結婚式……
「だったらいっその事料理を大矢さんにお願いして新居で式を挙げるってのはどうだ?詳しい事は長沢さんの奥さん達が経験者だから知ってると思うけど」
「……」
「圭斗の家から新居まで街を歩いて嫁いでいくって言うこの辺でも昔はやってた結婚でさ、花嫁衣装も着るから香奈と宮下の要望が両方叶うぞ」
「……」
暫くの間香奈は無言だったが、さすがに見世物になる気はないよなと先日実桜さんの家であったことを思えばこれはなしだろう。
「悪い、勝手な事言いすぎ……」
「ちょっと考えて見ます」
そこで通話を切られた。
と言うかだ。
「俺、圭斗に用事があったんだけど……」
スマホで通じないとなれば蒼さん辺りに連絡すれば捕まるかと電話をして香奈が結婚式の事で悩んでいるって事だけを俺にではなく本来一緒に悩まなくてはいけない相手に伝えておいた。
温暖化のおかげか毎年少しはましな寒さになってきているとは言え雪かきから逃げれない日常に溜息は止まらない。
嬉しい事に圭斗の会社もこの季節なのにしっかりと仕事が予定を組まれていて忙しい様子は仕事が一件もなかった年を知っているのでコツコツと積み上げた信頼を誇らしく思っている。
香奈も仕事を引き継ぎ色々と奔走している様子を宮下からも聞いている。
宮下も少しでも時間が空けば新居のリフォームをするようになり、この冬最も忙しい人物となっていた。
休日ともなれば出稼ぎに来る人もいて作業がどんどん進んでひょっとして春になる頃には出来上がっちゃうんじゃないと言う心配も起きてきた。
まあ、屋根の張り替え、外壁の張り替えはさすがに雪が解けた頃やらないと危ないからそれはないけど。
あれだけ綺麗に刈りこんだ雑草地帯や畑は総て雪の下に埋もれてしまい、あの後すぐに雪が積もったタイミングを思えば絶妙な時期だったなと思うしかなかった。
そんな今一番忙しい二人は夏前には結婚式をあげたいと言う。
「だけどこの街に式場なんてないからどうしようか悩んでいるのよね。やる必要、おじさんとおばさんに晴れ姿見てもらいたいけどさ」
圭斗に用事があって連絡したけど何故か香奈が代わりに出て
「圭ちゃんスマホ置いていっちゃったから」
と言う致命的な忘れ物と個人的な悩みをぼやいてくださった。
「いや、花嫁さんよ、ウェディングドレス着るのが一生の思い出って奴じゃね?」
女の子なら人生のピークと言うべき記念日に何をおっしゃると言えば
「んー、別に今時内輪のお食事会で十分じゃん」
寧ろ都会的な発想にそう言うのがこの田舎で通用すると思ってるのかと思うも
「宮下なら絶対綺麗な香奈を見たいって言うんじゃないか?」
なんせ飯田さんのお母さんに着せられた花嫁衣装を見てやっと意識したのだ。
やっぱり香奈の花嫁姿を見たかろうと言う様に言えば
「うん。それはそれでわかってるんだけど……」
「ど?」
何が不満だと思えば
「ほら、結婚式って親族とか友人とか呼ばなくちゃいけないでしょ?」
「あ、ああ…… そこか。そこだよな……」
これは宮下にも圭斗にも相談しにくい内容だ。
「翔ちゃんだからきっと職場の皆さんとか飯田さんとか先生とか沢山呼びたいと思うんだ」
「まぁ、呼んで来てくれる人達ってそれぐらいしか居ないしな」
学生時代上手く友人関係を作れなかった俺達の友達はほとんどいない。圭斗は一緒にするなと言ってきそうだけど今回の主役は圭斗じゃないのでスルー一択だ。
「私も元会社の人達は呼びたくないし、呼びたい人達とは引っ越しの時に翔ちゃんに来てもらったタイミングでランチをして紹介したからこんな遠くまでって事が無いようにしたし」
「そういや社長ご夫妻と何人かのもう辞めちゃった人達と小さなパーティをしたんだってな」
「うん。翔ちゃんが飯田さんにお願いして飯田さんのお店で内々のお食事会を開いてくれたんだ」
「まぁ、宮下が知る東京のレストランって言ったら飯田さん所しかないしな」
因みに向こうに行くのならと雪を掘り返して収穫した野菜とこの冬獲れたお肉たちを持たせたからなんとなく飯田さんの所に行くんだよなという前提で話してたから宮下も言わなかったがやっぱりそこかと勇者ぶりに驚いた。
「うん。みんなすっごくおしゃれですっごく美味しいって喜んでくれたよ」
「皆さん宮下と会いたがってたからこっちこそありがたいよ」
一緒に動画をしているけど宮下に直接会った事がないと言う不思議な状態が十年以上も続いてた事に気付けば笑うしかないけど。
「そんなわけで、結婚式ってどうしてもやらないといけないのかなって言うのを相談したかったのです」
「まあな。隣の町の式場からシャトルバスに来てもらえればいいけど、他に呼びたい奴っていないのか?」
何て聞けば
「高校時の友達はみんな出てっちゃったから気軽に来てなんて言えないし」
「そこな」
「だったらいっその事大矢さんの所の旅館で出来ないかなって言うのも考えてみたんだけど……」
それも一つの手かと中々の良案だと思えば一つの古い写真を思い出した。
白黒の古くて変色した指の跡が残る写真。
ドラマや映画でも見るだけになった古い風習の結婚式……
「だったらいっその事料理を大矢さんにお願いして新居で式を挙げるってのはどうだ?詳しい事は長沢さんの奥さん達が経験者だから知ってると思うけど」
「……」
「圭斗の家から新居まで街を歩いて嫁いでいくって言うこの辺でも昔はやってた結婚でさ、花嫁衣装も着るから香奈と宮下の要望が両方叶うぞ」
「……」
暫くの間香奈は無言だったが、さすがに見世物になる気はないよなと先日実桜さんの家であったことを思えばこれはなしだろう。
「悪い、勝手な事言いすぎ……」
「ちょっと考えて見ます」
そこで通話を切られた。
と言うかだ。
「俺、圭斗に用事があったんだけど……」
スマホで通じないとなれば蒼さん辺りに連絡すれば捕まるかと電話をして香奈が結婚式の事で悩んでいるって事だけを俺にではなく本来一緒に悩まなくてはいけない相手に伝えておいた。
157
お気に入りに追加
2,744
あなたにおすすめの小説
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる