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冬場は雪から家を守る為に動かずにいれば冬眠と言われるなんて知らないと思ったら大間違いだ! 4

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 凛ちゃん主催の少し早いクリスマスも終わり、年に一度のこの日がやって来た。
 冬至。
 なぜか我が家はこの日と夏至の日には生臭と酒を断って家の中で過ごすと言うわけのわからん仕来りが残っている。
 日の出時間から日の入り時間の間は一族以外の訪問は禁止。
 来客の訪問もお断りにつき宮下の所から入る道のゲートも閉ざして鍵も掛ける徹底ぶり。脇から入りたい放題だけどな。
 それが出来なければ家の敷地の外に放り出される。
 こんな縛りしかない日なので大体は自室でゲームして寝ると言う無意味な時間を過ごしていた。
 だけど今回は違う。
 なんてったって哀れな生贄(?)がもう一人いるのだ。

「まぁ、浩志もこのわけのわからん我が一族の仕来りの話は聞いた事があると思う」
「初耳なんだけど」
 仕事があったのに俺が前日家の用事だの一言で拉致って来て巻き込んだ。だって一人でこんな仕来りを守るなんて寂しいんだもん。
「あれー?あー、確か家を受け継ぐ奴に教えるんだっけ。まあ、俺に何かあった時はお前に任す事になるから覚えとけばいいだろう?」
 あっはっはーとまったく悪気もなく言ってみる。
「万が一があった時は任されても良いけど、だけど一体何があるんだよ」
 囲炉裏を挟んで俺は肉類どころか出汁さえ生臭が一切ない鍋をよそって浩志に渡す。
 因みに今は前日の晩だけど既に肉類のない湯豆腐で腹を満たそうと試みてる。さすがにちょっぴり寂しい……
 浩志はあつあつの湯豆腐を楽しんでいた。なんせその前までは真冬でも冷奴だったらしいので、温かいのをお食べとどんどん食べさせるのを見守りながら
「まぁ、昔話みたいな話だ」
 そうやって長い無意味な一日が始まった。
 朝を迎え、最初こそ浩志も自室にいたが俺の所に来て対戦ゲームで盛り上がった。俺は慣れてるけど、こんな山奥で一人無音にも近い状態の中で自室にじっとしていると言うのは結構音に溢れた世界にいると精神的にキツイ。
 さらに食事の制限と言う普段考えた事もない事をしなくてはいけないというストレス。食べる物もままならなかった経験にそこはあまりないと言うので俺はそっと泣いた。
 そう考えると俺はバアちゃんが居たから恵まれてたなと、早々暗号資産に手を出してまとまったお金を作った高校生の行動力を今思い出しても褒め称えたい。
 若さとは無謀だな、と……
 ある程度資産を作って少しはハイリスクに危機感を覚えればすぐに普通に株に切り替えたけど。あの後すぐにサイバー攻撃によるハッキングで盗難された事件がおきたり、取引所の経営破綻リスクもあったり。普通の証券会社も変わらないが、それよりもリスクが高いと言う、かなりこう言った問題が多いのによく飛びついたなと真似をして財産総てとかしたとある従弟の父親の噂話にざまあだけど。まあ、そこから坂を転げ落ちるような道を用意した人生劇の主役の背中をちょっと押した身としては改めて見るまでもない位の予想通りの転落ぶりに面白さも何もなかったが……
 同じように俺の敷いたレールの上を走り続けた隣で一生懸命ゲームに熱中をする従弟殿の親父殿も俺が作ったシナリオを演じきって見せた。
 恨まれても仕方がないよなと刺されるくらいの覚悟はしているが、俺を殺そうとしておいてあんな死に方をした事だけは許せない気持ちは止まらない。なんてったってまだまだシナリオは続いていたのだから……
 本当にこんなあっさりと劇を下りられてしまって腹立たしいとゲームの中で代わりに浩志が操るキャラクターをペイントしまくってやるのだった。
 平和っていいな……
 とにかく一心不乱にゲームにのめり込む浩志に時々お茶とおにぎりを口の中に放りこむ。
 ゲームに飽きたら別のゲームでストーリーにのめりこめばあっという間に外は真っ暗になっていた。
 ほんと気が付けば日の入り時間もとっくに過ぎていてビーガンな食事を済ませてお風呂にも入らずに浩志は俺の部屋のベットを占領して眠りについた。
 まあ、気持ちもわからないけどな。
 本日風が強く、叩き付けるような音に心細さを覚えているのだろうか。
 まあ、この家では珍しくもないけどと、ベットを占領されたので俺は仕方がないから椅子で寝る事にする。
 この部屋でこいつを一人きりにさせるつもりもないし……
「こうやって寝るのってどれだけぶりかな……」
 幼い頃の記憶では布団を敷きつめて境目も越えて転がって乗り越えて寝てた子供らしい寝相は朝親達もびっくりする運動会でもあったかのような光景。
 いつも隅っこに追いやられていた浩志は今も寝返りを打ってベットの隅で壁にもたれながら眠っている。
 それがなんだか懐かしくって思わず一人笑って居た。
 

 





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