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幸せは幸せを呼ぶ連鎖反応に対する準備はなんだ 6

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「圭斗おはよー。あ、香奈もおはよ。
 ひとつ聞きたいんだけどさ、なにこれ……」
 昨日の宣言どおり昼過ぎには帰る予定の香奈に俺から渡せる事の出来る物件で気に居るのがあれば巡るつもりで早めに来れば
「俺に聞かないでくれ」
 したたかに睨みつけられてしまった。解せん。
「それより綾人さん何か言ってよ。これじゃあ皆さん風邪ひいちゃうから!」
 昨日雨が降ったようで濡れた地面に綺麗に正座をして両手をついて頭を下げる人達が何人もいた。しかも寒さからかなにかからかは判らないが震えている。足がしびれたと言うオチでいてほしい。
 いや、今目の前にいるのは昨日実桜さんの家でお会いしたパートの奥様方と、そのご主人達。既にご主人が居ない人もいるが、居る人は夫婦そろって並んで頭を下げていた。
「うん。さすがに冷えるから止めよう?
 圭斗達も困ってるし……」
「吉野の、それぐらいさせておけ」
 綿入り半纏を着て圭斗の家から出てきたのは長沢さんだった。
 まだ仕事着ではない様子に圭斗が泣きついたのは想像はついた。困ったように後ろに内田さんもいる。実桜さんはいないけど蒼さんも居て、一番近所の園芸部が居ない図太さはさすがと言う所だろうか。いや、蒼さんが凛ちゃんを抱っこしている所を見ると園芸部は実桜さんとぶれずに山に柴刈に行ったようだ。思わず昔、昔……と言うフレーズが頭に浮かんでしまう所を考えいるあたり俺も相当現実逃避をしているのだろう。
「立たないのならそのままで聞くけど、やっぱり昨日の事で来てるんだよね」
「はい、昨日長沢から話を聞かされて、婆さんに問いただしたら随分と篠田の妹さんに酷い事をしたようで」
 コンクリートで覆われた地面は小さな水たまりが出来ていて、そこに頭をついてまで許しを請う姿に思わず改めて
「長沢さん止めさせてよ!」
 助けを叫んでしまう。
「綾人に許してもらうまではと言ってのぅ」
「まではとか何普通に言っちゃうんですか。全然止めさせるつもりないじゃないですか!」
 何も言わずにニヤリと笑み作る口元にやっぱりジイちゃん達の世代より上ってヤバイ集団だろうと年月を重ねていくたびに確定していく縦社会の恐怖に身を震わせてしまう。いや、親父世代も散々だったなと思えば吉野の人間って最悪だと自分を棚に上げて呻いてしまう。
「それに俺に許してもらうんじゃなくって圭斗と香奈にだろ……」
 相手が違うじゃんと言うも
「圭斗と香奈にはもう許しを貰えた。あとは不快な思いをさせてしまった綾人にもだと」
 内田さんも呆れて言ってくれてるが吉野教かよと思ってしまった辺り俺も随分毒されているなと思うが宮下は無視かとつっこみたい。だけどきっと宮下は吉野じゃないからと言う理由で気にも留めないのだろうと言う所が苦い思いが広がって行く。
「もういいから。これから昨日みたいに圭斗と香奈にあんなひどいことを二度としなければいいから。普通にって言うのが躊躇うのならせめてビジネスストライクじゃないけど同じ職場の人間として挨拶とかして貰えればいいだけなんだから」
 なぜかすすり泣くよう鳴き声が聞こえてきた。
 俺何かしたかと思って長沢さんを見るも長沢さんも付き合いきれんと言う様に香奈に温かいお茶を用意してくれと言っていた。やっぱり頼りになる長老様だよなと出会った時よりも若返っている不思議なお爺ちゃんにどうにかしてよと縋りついてしまう。
「長沢さん、ほんとどうすればいいの!許さなくても泣かれるし許しても泣かれるし何が正解なの?!」
 それは知らんと言いう様に視線を反らされてしまうもその直後に頭のてっぺんに痛みが走った。
「人の心に正解何てあるわけないだろう。受け止める側の問題なんだから頂いた気持ちをありがたく受け取っておけばいい」
 ケースバイケースだがなと先生は仰った。
「圭斗、一体どれだけの人を呼んだんだよ」
「仕事のグループで一括と綾人が暴走した時に止めれるのは先生だから……」
「コユイ関係全員召集アリガトウゴザイマス」
 そこまでやるかと視線で圭斗に訴えるも
「皆さんには長沢さん、綾人には先生、いい塩梅だと思ったんだ」
 知れっとした顔で
「綾人よ、先生はもう少ししたら学校に行かなきゃならんから早く終わらせろ」
 びしっとしたスーツを着た教師姿を少し懐かしく思いながら
「次はない。解散」
 真っ先に俺は香奈を連れてこの場から逃げるようにではなく逃げた。
 




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