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無垢なる綿に包まれて 2

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 話している間に一杯目の猪汁を完食した先生はお酒に手を伸ばしながら
『日本文化だけどアイヴィーはこっちに来てやりたい事は何かないのか?そろそろ綾人に身体を動かせたいから行きたい所があれば連れてってもらえ』
 何て、たどたどしいけど先生が時間をかけながら言葉を投げるので
『はい。綾人にお願いしてあります。
 イイダのご実家の京都に連れてってもらう事になってます。本格的な和食を食べたいって言うのもありますが日本文化の坩堝と聞いたので是非とも古都を堪能したいと思ってます』
『なるほど……』
「で、シェフは知ってるのか?」
「先生、俺に気を使って日本語に直さなくても良いですよ?」
「やっぱり英語は単語がすぐ出てこないのよ。
 門前の小僧じゃないけど陸斗達の横で英語の勉強を見聞きしてたけど先生じゃここが限度だったわ」
 若いって羨ましいとふてくされるけどそこで勉強し直そうと言う根性こそ立派じゃんなんて声を出して誉めれば調子に乗るから言わないけど。こっそりと数学も理科も勉強し直してる事を知っているので笑みを浮かべるだけにしておく。
「飯田さんのお母さんがご飯を食べにいらっしゃいって呼んでくれたので顔を見せに行ってきます。多分当日飯田さんが知る事になると思いますので」
「何か前にもあったな」
「ボジョレーも終わったのでクリスマスまでの束の間の休みを堪能する母親の心情は俺には分かりませんので」
「あー、うん。先生にもわからないわぁ。特に飯田家なんて、これ以上後だと忘年会で賑やかそうだからな」
 一見様お断りのお店の繁忙期何てどれぐらいの収入になるか考えただけでぞっとしてしまうも、その直前にお呼ばれしてくれる事に感謝は尽きない。
 イギリスから帰って初めての訪問なのでお土産は何にしようかなと考えてしまう。
 ちなみに宮下に栗や松茸を運んでもらってる時にイギリス土産も運んでもらったので地味にお土産が難しいと悩んでしまえばそこは長沢さんの奥様が京都でもそん色のない和傘を用意してくれると言ってくれた。勿論これはアイヴィーのお土産も兼ねての物。本当に感謝しますと頭を下げたのは今朝の話し。大矢さんから外国から女の子のお客様が来てると言う事で気合を入れてくれたとかなんとか。皆さん浮かれないでよと言いたかったけど、心配かけた後なので仕方なく遊ばれる事にしておく。
 それでほっとしてくれるならと願って。
 日曜日の夜から月曜の朝にかけて吹雪くと言う天気予報に俺達は一足先に麓の家へと降りて月曜日に京都へと向かう事にした。俺の家付近ではしっかりとした雪の世界だったけど少し降りれば紅葉真っ盛りの世界。紅葉と雪のコラボレーションを美しいとは思う物のそこに住む身となるとここまで来たら確り雪よ降ってくれと空に向かって祈ってしまう。その直後後悔するのは毎年の事なので割愛するが、案外冬の何もない山の家も嫌いじゃないと次第に暑くなっていく世の中に休憩ごとに上着を脱いでいくのは山の上で着こみ過ぎただけ。
 やっぱりうちって断熱材が部分的にしか入ってないから寒いんだよね。
 
『ねえ、アヤト。世の中ってこんなに温かかったんだね』
『むしろ暑い位。風邪ひかないように注意しろよ』
『どっちかって言うと綾人がね』
 すっかり山の家で冬モードになって食欲減退から弱っていた俺の方が暑さにばてている様子の俺とフランスとは言えしっかりと庭仕事や畑仕事、そして烏骨鶏の世話を手伝う様になって健康を手に入れたアイヴィーではどちらが元気かなんて比べるまでもなく、ゆっくりとサービスエリアで休憩を取りながら飯田家に辿り着く頃にはすっかりお昼も過ぎていて

「体調が悪いのなら無理して車で来る事なかっただろう。駅まで庵に迎えに行かせたのに」
「ご心配おかけしまして。アイヴィーにいろいろ見せたかったので張り切ってサービスエリアめぐりをしてきました」
 飯田さんのお父さんは呆れたと言う顔をしたけど直ぐにいつもの少し難しい顔をして
「紗凪、綾人を少し休ませてやる間こちらのお嬢さんの面倒を頼む」
「まあまあ、可愛らしいお嬢さんを連れてきたのね。 
 うちの薫も青い目のお嬢さんを連れてくるのを楽しみにしてたけど、まさか綾人さんの方が先に緑の目のお嬢さんを紹介してくれるなんてお母さん嬉しいわ」
「いえ、友人ですので」
「ふふふ、照れちゃって。恥ずかしがらなくてもいいのよ」
「恥ずかしくもなく友人ですので……」
『アイヴィーちゃん、折角京都に来たのだから着物に着替えて見ない?
 若い頃の着物がたくさんあるからきてみましょう!』
 まさかの英語の堪能さに驚く合間にわけのわからない顔のままアイヴィーが拉致られてしまった。
 ポカンとした顔で見送ってしまえばすぐ横でお父さんがコホンと咳払い。
「何着か着せ替え人形楽しんだら仕事の時間だから済まないがそれまで休んで待っててくれ」
 遠回しにあれはもう何を言っても無駄だから諦めろと言う言葉に考えるのもしんどかったので
「好意に甘えさせてもらって少し横にならさせてもらいます」
「すまない。客間は多分足の踏み場もないだろうから薫の部屋を使ってくれ」
 そう言って勝手知ったる他人の家で真っ直ぐに飯田さんの部屋へと向かって直ぐにいつでも使える準備をしてあるベットへと潜り込んで瞼を閉じた。




 
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