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ルーツを思う 3

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 あの後警察に話を聞かれながら改めて後日警察にと言う話しを終えた所で夏樹に電話をした。叔父達が崖から滑り落ちて亡くなった事を。さすがに言葉を失っていたが
「すぐに陽菜に連絡をしていくから」
「うん。だけどまだ事件性とかそういった話で直ぐに遺体の返却は無理かも?」
 すぐ側の遺体にぞっとする事無く、どこか山で狩った獣の処理前の状態と一緒だと言うような目で見てしまってこれはいけないと自分を窘めながら
「それでも会いに行くって言うのが縁って言う物だと思う。たとえやっと縁が切れたと喜んでいるとしてもだ」
 夏樹は何も言わなかったがそれなりにこいつにも親に対して思う所はあるようだ。こんな風な言葉が出るくらいに。まあ、知りたいとも思わないがそれよりもだ。
「浩志と康隆にも一応連絡入れるぞ」 
 俺の言葉にスマホ越しの声が息を飲んでいた。
「お、おま……
 二人の居場所知ってたのかよ」
 驚く夏樹に
「一応めんどくさくても浩志がアパート借りる時の保証人とかになってるから。
 アルバイト掛け持ちして何とか食いつないでるぞ」
「後輩の面倒見の良さに何となく面倒見てるような気はしてたから驚きはしないけどさ……
 康隆の場所まで知ってたんだ」
 緊張する声は夏樹と康隆の二人掛かりで俺を川に落としてたって言うのもあっての事。
 長いとは言えないけどそれなりに誠意を見せてくれている夏樹とは別に今までこの十年ほど一度も名前の出なかった従兄弟を思い出しながら
「一応何かあった時の為に消息は把握してるよ」
 何かあった時の為とは一体何なんだろう。間違っても親が亡くなったからじゃないよなと夏樹は薄ら寒さを覚えながらも
「あいつ何やってんだよ」
 何だか口を閉ざしたら言葉が出てこなくなる気がして無理やり声を出せば
「普通に高校卒業して普通に就職してる」
「そ、そうか……」
「まぁ、こっちからじゃあちょっとやそっとは足を運べない九州辺りにいる」
「何で?!」
 思わず知るわけがないと判ってても聞いてしまう。
 だけど綾人は知ってますと言わんばかりにつまらなそうに
「こいつん所も借金抱えてたみたいで。街金にまで手を出して一家離散。って、うちの親族って何で簡単に街金にまで手を出すかねえ」
 呆れたように言ってしまうのは仕方がない。
 親父と言い陽菜の父親だって金融関係の仕事についていたと言うのにだ。
「あ、ちなみに康隆の所の借金の理由は叔父さんが不倫してて三百万程請求され、奥さんからも三百万程請求されたらしい。しかもえげつない事に一括でって。更に叔父さんにはマイホームのローンも圧し掛かっていての離婚。康隆は母親に付いて行ったらしくって借金の連鎖から逃れたらしいが、元々頭の可笑しい夫婦。いや、康隆を含めてだけどその時の修羅場を一番近くの特等席で見て初めてお金がかかわると身内とか親子とか関係なくなることを理解したらしい」
「あのさ、なんか詳しすぎないか?」
 ビビるような声の夏樹に
「ん?普通にFBとかに書いてあったぞ。ウケる~」
 ついでと言う様に夏樹に康隆のもう何年も更新されてないFBを教えておいた。
「そんな経緯であいつの連絡先ゲット!」
 不気味なくらい明るい綾人の声に夏樹も言葉を失いながらもSNS怖いと震えていた。
「まぁ、どのみち来るなら続きは会ってからだ。陽菜にも浩志が来る事を先に伝えて無理なら来なくていいぞって言っておいてくれ」
「ああ、うん。気を使ってくれてありがとう」
 そこで通話を切って叔父達を見る。
 暫くは冷凍保存らしいがいずれ死斑も出てくるだろう。
 バアちゃんとオヤジの時にも見たが、さすがに叔父達の顔にそれを憂うまで付き合う気はない。
 それから今度は幸田さんと話をしている警察の人の所に足を向けて
「すみません。お葬式とかどうすればいいでしょうか?」
 聞くも
「ええと、あまり事件性とかがないので明日には返却できると思います。
 一応規則があるのでお話は聞かせてもらう事になりますが、まあ、すぐに返却できると思います」
「はい、ありがとうございます。親族の方には連絡をしたので今日明日には来れると思いますので安心するでしょう」
 何て会話の後に
「だけど吉野の、気を落すななんて言うのは無用の心配だがもう少しこういった場では悲しげな顔をしておけ」
「あー、そんなにも嬉しそうな顔をしてますか?」
 何て警察の人と話をする物の相手は同じ村出身の元吉野の関係の人。親が。
 気楽に警察とお話しする理由はここにあるのだが
「それよりも何か長沢の兄さん達の様子がおかしいって親父が言ってたからそっちの方を気にしてくれ」
 何て長沢さんに対してビビりすぎじゃね?なんて思うもどこか静かな所で話しをしたそうな視線なので俺はその予言をありがたく受ける事にした。
「少し休憩室でお茶でも飲んできます」
「ああ、その方がいい。いきなり叔父が亡くなったのならショックだろうからな」
 何て素敵なお言葉に俺はちょうど一人になっていた長沢さんを休憩室に呼び出して温かくて甘いコーヒーを自販機で買った。








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