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振り向いて立ち止まり 2

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 綾人の家の事情はある程度想像が付いたとは言えそれでカティとの仲が当然良くなるどころか戻る事もなかった。
 寧ろ戻りすぎて知り合う前まで到着したかのようにお互いスルーしていた。それはもちろんケリー達にも波及して何とも言い難い気まずい空気しかなかった。
 なんでこうなった。
 それはカティと一緒にいる友人もそう思っていたらしく、ついに
「ちょっとそこまで顔かしな」
 そう言う呼びかけには一番気安そうなジェムが掴まって、慌ててアレックス、クリス、ウィル、ケリー、フェイ、叶野、柊に纏めてヘルプを出す奇跡を起こした。
 綾人を何とかしてやり隊とカティとの仲を取り戻す為に作ったグループだが、慌てて呼び出した所まで行けばパブに連れ込まれてたかられていた。いや、彼女達もちゃんと支払う常識を持っていたが、それでも異様な光景の集団の周囲は何故か人が寄り付かない完全なる営業妨害を犯していた。
 とりあえずアレックス達が応援した所でこの輪に参戦したところで一気に増えるグラスの数に一杯だけ飲んで近くの公園へと移動した。
 片手にミネラルウォーターを持って酔いを醒ましながら
「あんた達カティに何したの。 
 あの子休み明けからずーっと調子悪くって時々泣いてるのよ」
「そうよ。アヤトが何かしたんでしょ!」
「カティが大人しいからって酷い事したんでしょ?!」
 この場に居ない一名にカティの友達三人の剣幕にこれは逆に綾人の名誉を傷つけるのではと思いながらもどういうべきか視線を彷徨わせながら
「このクリスマス休暇にずっと綾人の所に居たのは知ってる?」
 聞けば休み前の卒論突き返し事件は風物詩と言うくらい名物なので三人共所かカレッジ中に知れ渡っていたらしい。むしろ卒論にあの教授を選ぶカティと数名の勇者を皆尊敬するぐらいの出来事だったが、案の定皆様に娯楽として提供されていた。そこでカティが泣きついたのは当然綾人だった。アメリカの学会の出来事もありカティの中ではすっかり王子様としての地位を築いてしまっていたので当然と言うべきか綾人にとったら迷惑の話しかは当人だけの感情としてあえて察する必要はない。
 カティは立ちふさがる積雪にもまけずに荷物を持って雪を掻きわけて綾人の郊外の家に侵入する事に成功した努力は普段のカティを知る人間から言えば積極的で頑張ったねと褒めるしかない出来事だった。
 それだけに応援してたと言うのにだ。

「……つまり、あれだけ長期間一緒に居て何も起きなかったと」
「それって酷過ぎない?」
 どっちに転んでも酷い事は決定してただけに誰も返事が出来なかった。
「まあ、そんなこんなでどうもカティが行動に出たらしいんだ」
 ヒュー!
 彼女たちは口笛を吹きながらワクワクしているようだがそもそも考えてほしい。何かあったらカティがあそこまで落ち込むわけがない事を。
「どうも最後まで何もなかったからこそ気まずい状況なだけだよ。
 時間が解決してくれるか、このまま消滅するかの二択だな」
「そのままでいいの?」
 友情かどうかはわからないが心配げなカティの友人だが
「大体カティには婚約者がいてカレッジ卒業したら結婚するんだろ?
 何でも実家の会社の存続の為とかそんな感じで。それを考えたら綾人を巻きこむなって言うのが常識だろ?」
 クリフの言葉にこれは彼女達も知っていたのか複雑そうな顔をされた。
「あのクズ男と結婚なんて、カティの親はほんとどうにかしてる。
 いくら従業員を守る為だとか言ってるけどカティがそこまでする必要ないじゃん」
 ドーバー海峡に鉄道が通る前までは船は重要な交通手段だった時代を知るカティの父親はあの時の裕福だった時代を忘れられなかったらしい。
 生活のレベルを下げる事が出来ないまま先細りしていく会社の運営ではあっと言う間に借金を膨らまして行く結果。銀行からも再三営業の見直し計画をさせられいて、カティの家の先祖が築き上げた資産を売り払っては取り繕っているらしい。当然父親と一緒に遊び歩く母親も家計の事なんて全く知らず、家には当時新発売のブランドバッグなどが今も大量に溢れていると言う。
 そんな家庭環境でカティは寄宿学校放りこまれて長期休暇以外家に帰る事をしなかったために毒親に毒される事無くのびのびと育っていた。ただ、世界中の裕福な令嬢や立場ある家柄の令嬢ばかりなので少し浮いた存在だたらしいが、皆良い人で今も交流を持っているらしい。
 カティの頭脳があれば仲良くしたいのは当然かとカティのお友達もカティに頼ったりする間柄なので妙なほど親近感をおぼえたようだ。
 こんな感じのカティの生い立ちと打算はあれどこうやって心配してくれる溢れんばかりの恵まれた友人関係だったが、ここでまさかの結婚前から今いる彼女と暮すから黙って別居婚を要請してくるクズ男に運がないと哀れむしかない。 
「だけどさ、結婚前からの不貞ならそれを理由に婚約解消、もしくは破断できるんじゃないのか?」
「ですよね。むしろ結婚後より別れた方がダメージが少なそうでよろしいのではと思いますが……」
 叶野の疑問にフェイも頷く。
 言いたい事は理解できると言う様にカティの友人は深く頷きながら
「そのクズ男の家からの援助金がないと会社がつぶれるらしいの。
 娘の幸せより会社の存亡をカティの家族は優先したのよ」
「ひでえな……」
 アレックスが思わずと言う様に呟くぐらいの酷さに言葉を続ける事が出来なかった。
 いくら賢くても人生経験の少なさに何もできなく無言の時間が流れた所で
「一応連絡先交換しないか?良ければカティの様子を教えてほしい」
 年長者のフェイの機転に連絡先を交換して綾人とカティの居ないルームは当人達だけが知らない二人の話しで盛り上がる事になった。



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