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ゼロとイチのパズル 6

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 カティとカーライル教授と再び会った時は綾人は目もショボショボでフラフラだった。
 前日に朝には宿泊しているホテルに送り届けると言う約束をしていたはずなのに綾人の複雑怪奇なプログラムをエドワーズとリーブスとグラハムは理解できずに結局昼まで時間の延長を綾人から願い出るのだった。
 綾人を含めてこれ以上とないくらい濃密な時間だと振り返る。
 綾人としては学会で観客が見ている目の前でプレゼンテーターの口調に合わせて作業をすると言う緊張をしたばかりなのでそれほどないと思っている。それに説明してるのは自分で作ったプログラムなので誰よりも理解しているせいか教えるのは簡単だと思っている。
 仮令理解している人の説明が理解していない人にとって難題だとしても同じ分野の人間だからいずれわかるだろうと言う綾人のもくろみを秒で止めたエドワーズが正しいと言う出だしから始まった時点で混乱の予想はついた。
 もうその瞬間から誰もまともに俺からレクチャーを聞かないと言う方面になり見て盗む、構築のパターンを勝手に解析してくれる優秀さに俺はどんどん理数系ならでは主語述語を省いた要点だけの会話でポイントを押さえて行く。
 有り難い事にこれはアメリカでも通用して会話が成立するのが難しい以上これで成立させていくと言う自ら難題に仕立てて行く猛者ステキーとやっぱり憧れるなとわけわからない方に迷走しだす綾人だったがそれでも夜が明けるまでにはポイントは抑えきれず昼までかかったのだ。本当のことを言えばそれでも足りない裏テクやメンテナンスのチェック事項が山ほどあるが、それはまた別の期会にファイルにして送付すると言う事になった。
 最初こそ高をくくっていたリーブス達だったが実際にじかにシステムに触れれば早々辿り着かないようなぶっ飛んだ仕上がりになっていたのには驚くしかなかった。
 とは言え綾人にとっては今までにない手法だとしても所詮はゼロとイチの世界。表現方法が変わったのは国によって言葉が変わる程度にしか認識してない時点で綾人の考えを理解するのは無理だろう。
 だけど深山の生活で人に寄り添う事を覚えた綾人は拙いながらも理解してもらえるように努力する事を惜しまない。さらに綾人と長く付き合えるだけあって好奇心を押さえれない友人達も理解する努力を惜しまない。
 その結果が予定時間を超えてもギリギリの時間までの交流が物語るのだった。
 徹夜何てどれぐらいぶりだと言う挨拶をカティとカーライルの前で交わす別れの言葉に大丈夫かと思うももう飛行機に乗らなくてはいけない時間。

「いつでも俺達は受け入れる準備してるから待ってるぞ」
「期待しないで待っててくれ」

 そんな挨拶とハグ。
 離れられないのはフラフラでひと肌が心地いいと言うだけの理由ではない。

「また遊びに来い。今度は仕事抜きで」
「次会うのはきっと十年後だよ」

 十年、意味する事は氷の女王の引退の時間だろうか。
 意図する事が分らないカティとカーライルは綾人がこんなにも心を開いている姿を見て感動してしまうもだ。
 別れがたい別れを交わし、名残り惜しくもいざチェックインする時に綾人はふと職員に聞く。
「ファーストクラス空いてる?」
 聞けば職員はとてもきれいな営業スマイルで
「はい。本日のフライトはまだ空きがございます」
「悪いけど今から席替えできるかな?食事はエコノミーのままで良いから」
 聞けば直ぐに問い合わせてくれて
「問題ありませんがお食事は本当によろしいのでしょうか?」
「寝たいので問題ありません」
 きりっと目の下の隈が濃くなった顔を見てそれでもそれだけの理由でファーストに変えるのかと突っ込みたかったけど職員は有能だった。
 すぐに差額を支払う綾人の判断もあれだが止める間も無く交渉は成立してしまった。
 カティは私も替えれるのなら替えたいと言いたかったが隣のカーライル教授がなんだか寂しそうだったので言葉にするのはやめておいた。
 職員はすぐに席の移動の変更を伝え、今にも眠りそうな綾人はPCのキーボードを打ちまくる事で何とか耐えてからの飛行機に乗り込んで離陸してシートベルトが外せるようになった瞬間リクライニングでベットに変えて着陸態勢に入る所で起こしてもらうまで爆睡を決め込むのだった。
 食事なんて関係ない。あまたのスペシャルなサービスも関係ない。
 ひたすら身体を伸ばして景色を楽しむ事無く客室乗務員に起こされるまで睡眠を堪能しても足りない睡眠に如何に脳を行使したか言うまでもないが、とりあえず飛行機に乗る前よりましな顔色をしている綾人にホッとするカティとカーライルは綾人をアパートまで連れ帰り、親切にもベットに放り込むまで面倒を見るのだった。 
 


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