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青い空、白い画面。それならそれでやってやればいいじゃないかって誰がやるんだ? 3

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 カリフォルニアにある大学の講堂で発表会が始まった。
 順番としてはまだまだ余裕があるが、控室で手順をもう一度確認する。
 ご飯を食べて三十分ほど仮眠を取って目を覚せば
「アヤト、君は本当に大胆だね。発表前に寝る奴を私は初めて見た」
「そうなると記念すべき第一号になれたわけだ。教授の記憶に残れそうで嬉しいよ」
 座り心地の良くない椅子で机に突っ伏して眠ったせいか体がバッキバキに痛い。上着を脱いで軽く身体を伸ばしていれば
「余裕だね?」
 隣の机のグループから声をかけられた。 
 俺に話しかけたのかと言う様に自分で指を指せば彼はにっこりと笑ってそうだと頷く。
「それを言ったら人に声をかけられるだけ余裕じゃん?
 因みに俺の場合今更何もできないから今やれる事をやってただけ」
「それがご飯と昼寝なのか?」
 呆れたと言う顔に
「そんな事は山ほどの論文の話しを聞く人達にはどうでもいい事だし、ランチの内容だってどうでもいい事だから。だったら緊張して食べ損ねるよりは折角アメリカまで来たならもてなしは受けておきたいってものだし?」
 壁に並べられたピザを始めとする軽食が並べられ、ジュースやコーヒーも飲み放題だった。
 ミネラルウォーターで良いよ……
 一口飲んで持って来た粉末の緑茶を入れてシェイク。
 うーん、溶かしてもやっぱり粉っぽい……
 飯田さんのお母さんが入れてくれた抹茶は全然粉っぽくなくってふわっふわで美味しかったのになと少しだけ懐かしく思いながらペットボトルの底に沈殿する緑茶の粉末を眺めていれば
「えー?君、ビーガンなの?」
 さっき声をかけてきた奴が緑色の液体と化したペットボトルを見てどん引きしていた。確かにいきなりこんな色にしたのを飲んでたら警戒するかもと今度はほうじ茶の粉末にしようと思いながらも
「まさか。肉も食べるぞー」
 留学してからは猪や鹿の肉がなかなか入手しにくくって恋しくなってはオリオールにお願いして食べさせてもらっている。羊や鴨も手に入れて来てくれるので月一で会いに行っているが毎回何の肉が出てくるのか楽しみでしょうがないのはばれているので思考を凝らしてくれるから病み付きになると言う物だ。
 思い出した所でじゅるりと涎が垂れたせいかもう話しかけては来なかったものの
「綾人、そろそろ準備だ」
 カーライル先生が呼びに来た。
「じゃあ行ってくるから、カティは大人しく座ってるか?」
「ちょっと会場の様子見たいかも」
「そうだな。だったら一緒に見に行こうか」
 カーライル先生は迷子にならないようについて来なさいと一緒に行動する事となった。
 そしてありえないほどの事故を経験する事になるとはこの時は思いもしていなかった。

 十分の持ち時間の間に発表はきっちりと出来て、カーライル教授の注意通り意地の悪い質問にも冷静に答える事が出来た。
 なんせ一歩間違えればプライバシーもへったくれもないセキュリティシステムなのだ。性善説に訴えるようなシステムは管理者の良心に頼るしかない一面も持っている。そこの所はちゃんと対策をしてあるが、プログラムが分る人が覗けば解除で来てしまうのはそう言う構造だから仕方がないと言う物。
 だけどそれを抜きにしても、例えば施設内にこのプログラムを使ったセキュリティシステムを使えば誰がどんな行動をとったか、視線の認識、仕種のパターンからの予測を幾つも導き出して事前にシステムが快適な環境を整えてくれると言う物。事前に登録していた網膜、声帯、指紋と言った物からセキュリティカードも要らないし、逆に行動も制限する事が出来る。 
 うん。プライバシーもへったくれもないが、こう言ったガチガチのセキュリティは研究所なんかではありがたがられるのだから世の中よくわからない。
 そこの所はかなり突っ込まれたが、言われる事は判っていたので冷静に対処できたと思っている。
 予測行動の判定が今回のテーマだっただけに精一杯の予測をしていたおかげでこれと行ったトラブルもなく終わって控室に戻るのだった。

 そして見る。
 ありえない状況に俺やカーライル教授以上にカティが何も考えれないと言う様に固まっていた。

 控室の中は現状いくつかのグループが殴り合い、蹴り合い、物が飛び交う状況になっていた。
「な、な……」
 声も出ない様子のカーライル教授の手をカティの肩に置いた所で俺は警備員を呼びにロビーへと向かう所で既に呼びに行った人がいてくれて警備員が向こうから走って来てくれた。



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