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正しく夏休みを過ごす為に 3
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部屋に案内されて綾人は涙した。
別館と言われるだけあって贅沢が詰まっていた。
海を一望する洗礼された和風の室内には部屋風呂もあり、まだ新しい井草の香りが鼻孔を擽る。
大きなベットが二台並び、綾人は海の見える方のベットに飛び込めば仲居さんがくすくすと笑うのだった。
「すごい!どこを見ても最高!部屋風呂もあるし海も見えるし!」
広いベットの上をごろごろと転がる綾人に仲居さんはもう失笑しっぱなしで
「本館の方に大きな大浴場もご用意しております」
「さ、早速行こう。でも部屋風呂も堪能したい!どっちを優先するべきだと思う?!」
「とりあえずお茶頂いたから貰おうか」
くすくすと笑いっぱなしの仲居さんは部屋の使い方とお風呂のタオルは部屋にもあるけど本館の方のお風呂は向こうにタオルを用意してあるのでそれを使ってくれと言う。クローゼットの中に浴衣が用意してあり、お茶とお菓子を用意して部屋を辞するタイミングで宮下も部屋を出て行った辺り、心付けを渡しに行ったのだろう。まあ、チップと言う物だが、襖越しにこの辺りの名物とか特産物とか歩いて見に行ける場所なり聞いていたので旅慣れたなあと感心する。
俺がイギリスに留学する様になって宮下は少しずつ行動範囲を広げる様に一人で旅行をするようになった。ほとんどがキャンプ用品一式を車に詰めての旅だが、途中途中温泉地に寄ったり海や川で魚を釣って捌いたりとそんな動画を俺のイギリス生活と半分半分を使って紹介していた。山の世話や畑の事。俺の居ない山の家の事も報告する様に動画に上げているので月に一度ぐらいのペースだがほとんど実家から動かない宮下を思えばその成長ぶりにこの年になってもまだまだ人は変れると言う事を証明しているようでニマニマとしてしまう。
大和さんの後ろにくっついて行動してるわけでもないし、圭斗だのみってわけでもないし、寧ろ一人で行動している事に心配になってしまっているが、今までの一人ぼっちとは全然意味合いが違うので、高校時の孤独な宮下を知ってる面々はこの成長をそっと見守っている。
何より驚きだったのが年に二度ほど西野さんのお宅にお邪魔していると言う。
お盆と暮れに挨拶に行き、今も続くリハビリの様子を見にいきながら長沢さんに教えてもらった事を報告もしているらしい。
連絡用のスマホで俺達の動画を見る方法を教え、山間の生活や仕事ぶりを見せている。時には長沢さんと一緒に仕事をしている様子や、鉄治さんに大工の仕事を教えてもらう様子を目を細めて楽しんでいると奥様から聞いた時は嬉しくて泣きそうだったとまで言っていた。
そう、きっと宮下が変わり出したのは広島に旅行に行ったよりも早く芽吹いていたと思う。西野さんの家に一人で修行しに出かけた所から大きく変わった、そんな気がしてきっかけとなった納屋のリフォームで長沢さんとの出会いからの縁に繋がった事が誇らしくベットでごろごろしてる合間に一瞬で……
「綾人、少し庭園の方散歩しよ?って、ちょ、綾人寝ちゃってるの?」
ゆさゆさと肩をゆすられたような気がしたけど長距離の移動に海辺で潮風に吹かれた後でこの寝心地とか広さとか抜群のベットに横になって心地よい温度設定の室内に居たら落ちるのは仕方がない。どうしようもなく抗えない時間に辛うじてスマホのアラームセットをする。なんか呆れた声が聞こえたけど晩ご飯の時間は聞いていたのでその前にはお風呂に入る余裕を持たせての時間設定に
「じゃあ、俺お土産買ってくるから大人しく寝ててね」
寝るのに大人しいとか関係あるのかよと思うもベットから落ちるなと言う意味ならありだなとどうでもいい事は一瞬で霧散する様に意識が遠のくのだった。
今日は海に行ったので明日は観光しよう。一応城主の綾人に会わせてお城を見に行く予定にしている。何より兼六園と言う美しい庭が広がるお城があるのだ。見ないわけないよなと机にこれでもかと並べられた料理を食べながら予定を立てる。ザルな予定だから宮下の中では城に行って庭を散策する程度しか予定は立ってない。そこの所を食事中に綾人に報告する理由はうっとりと日本海側の新鮮な海産物に感動しながら箸が止まらないと言う様に食べまくる一番ご機嫌タイムだから。おなかが空いて凶暴な時にあえて言うバカは水野辺りならやりそうだけどそこは何度も経験した俺はタイミングは間違えない。
ゆっくり咀嚼していた口とせわしなく動いていた箸が止まった所で
「うん。良いと思う。後は街をぶらぶらして何かお土産買って行こう。折角だから向こうの奴らにも買いたいし。日本らしいお土産を買うぞ」
船盛りを粗方攻略してご満悦な綾人はザルな予定の他は何も聞かずにまた箸を動かす。
「日本海側のお魚って太平洋側のお魚となんでこんなにも違うんだろうな」
うっとりと半分意識が飛びかけてる綾人にある種良い方向に向かっているから良しとしよう。充分リフレッシュできたじゃないかと俺がんばったよと誰に言うわけでもなく心の中で叫び声をあげる。
だってもしここでお祖母ちゃんモード突入となった場合、約一週間程度の期間と定めれば折角夏休みで帰ってきたこの長期休暇のこっちの滞在時間の半分を思うように過ごせなかった事になるわけだ。さすがに可哀想でお祖母ちゃんモード脱出した後で先生と険悪な状態になるのも同じ家を共有する間柄勘弁してほしいと言う様に山を脱出してきたのだが……
「綾人、また一緒に旅行行こうね」
「ああ、海外も良いが国内も良いよな」
しっかり煮えたった鍋の攻略を始める綾人の幸せそうな顔を見ながら
「まだまだいった事ない場所だらけだから楽しみだね」
「その時はこうやって美味しい場所に行きたい。あと温泉がある所が良い」
そんな提案にどれだけあるんだよと笑いながらもテーブルいっぱいの料理をしっかり食べ終え、料理を下げに来た仲居さんはデザート食べ終わったと言うのにこの近くの銘菓とお茶を置いて下がって行った。
「チップの効果あったね」
にっこりと笑う宮下にやるなと笑いながらお湯を入れて置いた部屋風呂に二人並んで夜の海を眺めながらさざ波の音に耳を傾けるのだった。
別館と言われるだけあって贅沢が詰まっていた。
海を一望する洗礼された和風の室内には部屋風呂もあり、まだ新しい井草の香りが鼻孔を擽る。
大きなベットが二台並び、綾人は海の見える方のベットに飛び込めば仲居さんがくすくすと笑うのだった。
「すごい!どこを見ても最高!部屋風呂もあるし海も見えるし!」
広いベットの上をごろごろと転がる綾人に仲居さんはもう失笑しっぱなしで
「本館の方に大きな大浴場もご用意しております」
「さ、早速行こう。でも部屋風呂も堪能したい!どっちを優先するべきだと思う?!」
「とりあえずお茶頂いたから貰おうか」
くすくすと笑いっぱなしの仲居さんは部屋の使い方とお風呂のタオルは部屋にもあるけど本館の方のお風呂は向こうにタオルを用意してあるのでそれを使ってくれと言う。クローゼットの中に浴衣が用意してあり、お茶とお菓子を用意して部屋を辞するタイミングで宮下も部屋を出て行った辺り、心付けを渡しに行ったのだろう。まあ、チップと言う物だが、襖越しにこの辺りの名物とか特産物とか歩いて見に行ける場所なり聞いていたので旅慣れたなあと感心する。
俺がイギリスに留学する様になって宮下は少しずつ行動範囲を広げる様に一人で旅行をするようになった。ほとんどがキャンプ用品一式を車に詰めての旅だが、途中途中温泉地に寄ったり海や川で魚を釣って捌いたりとそんな動画を俺のイギリス生活と半分半分を使って紹介していた。山の世話や畑の事。俺の居ない山の家の事も報告する様に動画に上げているので月に一度ぐらいのペースだがほとんど実家から動かない宮下を思えばその成長ぶりにこの年になってもまだまだ人は変れると言う事を証明しているようでニマニマとしてしまう。
大和さんの後ろにくっついて行動してるわけでもないし、圭斗だのみってわけでもないし、寧ろ一人で行動している事に心配になってしまっているが、今までの一人ぼっちとは全然意味合いが違うので、高校時の孤独な宮下を知ってる面々はこの成長をそっと見守っている。
何より驚きだったのが年に二度ほど西野さんのお宅にお邪魔していると言う。
お盆と暮れに挨拶に行き、今も続くリハビリの様子を見にいきながら長沢さんに教えてもらった事を報告もしているらしい。
連絡用のスマホで俺達の動画を見る方法を教え、山間の生活や仕事ぶりを見せている。時には長沢さんと一緒に仕事をしている様子や、鉄治さんに大工の仕事を教えてもらう様子を目を細めて楽しんでいると奥様から聞いた時は嬉しくて泣きそうだったとまで言っていた。
そう、きっと宮下が変わり出したのは広島に旅行に行ったよりも早く芽吹いていたと思う。西野さんの家に一人で修行しに出かけた所から大きく変わった、そんな気がしてきっかけとなった納屋のリフォームで長沢さんとの出会いからの縁に繋がった事が誇らしくベットでごろごろしてる合間に一瞬で……
「綾人、少し庭園の方散歩しよ?って、ちょ、綾人寝ちゃってるの?」
ゆさゆさと肩をゆすられたような気がしたけど長距離の移動に海辺で潮風に吹かれた後でこの寝心地とか広さとか抜群のベットに横になって心地よい温度設定の室内に居たら落ちるのは仕方がない。どうしようもなく抗えない時間に辛うじてスマホのアラームセットをする。なんか呆れた声が聞こえたけど晩ご飯の時間は聞いていたのでその前にはお風呂に入る余裕を持たせての時間設定に
「じゃあ、俺お土産買ってくるから大人しく寝ててね」
寝るのに大人しいとか関係あるのかよと思うもベットから落ちるなと言う意味ならありだなとどうでもいい事は一瞬で霧散する様に意識が遠のくのだった。
今日は海に行ったので明日は観光しよう。一応城主の綾人に会わせてお城を見に行く予定にしている。何より兼六園と言う美しい庭が広がるお城があるのだ。見ないわけないよなと机にこれでもかと並べられた料理を食べながら予定を立てる。ザルな予定だから宮下の中では城に行って庭を散策する程度しか予定は立ってない。そこの所を食事中に綾人に報告する理由はうっとりと日本海側の新鮮な海産物に感動しながら箸が止まらないと言う様に食べまくる一番ご機嫌タイムだから。おなかが空いて凶暴な時にあえて言うバカは水野辺りならやりそうだけどそこは何度も経験した俺はタイミングは間違えない。
ゆっくり咀嚼していた口とせわしなく動いていた箸が止まった所で
「うん。良いと思う。後は街をぶらぶらして何かお土産買って行こう。折角だから向こうの奴らにも買いたいし。日本らしいお土産を買うぞ」
船盛りを粗方攻略してご満悦な綾人はザルな予定の他は何も聞かずにまた箸を動かす。
「日本海側のお魚って太平洋側のお魚となんでこんなにも違うんだろうな」
うっとりと半分意識が飛びかけてる綾人にある種良い方向に向かっているから良しとしよう。充分リフレッシュできたじゃないかと俺がんばったよと誰に言うわけでもなく心の中で叫び声をあげる。
だってもしここでお祖母ちゃんモード突入となった場合、約一週間程度の期間と定めれば折角夏休みで帰ってきたこの長期休暇のこっちの滞在時間の半分を思うように過ごせなかった事になるわけだ。さすがに可哀想でお祖母ちゃんモード脱出した後で先生と険悪な状態になるのも同じ家を共有する間柄勘弁してほしいと言う様に山を脱出してきたのだが……
「綾人、また一緒に旅行行こうね」
「ああ、海外も良いが国内も良いよな」
しっかり煮えたった鍋の攻略を始める綾人の幸せそうな顔を見ながら
「まだまだいった事ない場所だらけだから楽しみだね」
「その時はこうやって美味しい場所に行きたい。あと温泉がある所が良い」
そんな提案にどれだけあるんだよと笑いながらもテーブルいっぱいの料理をしっかり食べ終え、料理を下げに来た仲居さんはデザート食べ終わったと言うのにこの近くの銘菓とお茶を置いて下がって行った。
「チップの効果あったね」
にっこりと笑う宮下にやるなと笑いながらお湯を入れて置いた部屋風呂に二人並んで夜の海を眺めながらさざ波の音に耳を傾けるのだった。
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