上 下
705 / 976

脳筋なめんな! 6

しおりを挟む
 一つ分かった事がある。
 今回の生徒さんは物凄く燃費が悪いと言う事だ。
 昨日の草取りの後のダウンはその後の全員が食べ終わっても食べ続ける喰いっぷりに目が点になったし、おかずが無くてもご飯を食べ続けるごはん好きは一人一升は食べている。見てるだけで胃が重くなるし、つられて食べ過ぎて物理的にも胃が重い。
 飯田さんは良い顔をして車に一杯のお土産を詰め込んでまた来週一泊させてもらいますと相変わらず変わらないタフさ俺も見習いたいと見送るのだった。
 もちろん陸斗達は勿論新入り三人組も。
 こんな目覚めの良い高校生初めてだとある種の感動を覚えるのは伝説の水野と植田のコンビの寝起きの悪さが起因するのだろう。学校が朝二十分までに教室に入れと言われているのに朝八時に起きてご飯食べて準備する強者ぶり。むしろどうすれば間に合うか教えてほしい位だ。そして遅刻はないと言う。本当にどうしてたのか教えてほしい。
 そんなふうに朝から一生を食べる三人組と飯田さんの朝ごはんを食べ終えた後は
「じゃあ、散歩行ってくるから」
 陸斗が三人組を連れてウコハウスから烏骨鶏を出させた所で三人組はげんなりとした顔をしていた。運動が好きなようだがお散歩は苦痛らしい。と言うか高地の散歩のハードさを身を持って理解したようだ。
「行は下り坂だが帰りは降りた分だけ坂を上がらなくてはいけない。
 いざとなったら迎えに行くから。まあ、スマホが圏内ならな」
「綾っちー、完全に圏外です」
「頑張って圏内の所まで移動してから掛けてくれ」
 無情なまでの一言。
「まぁ、ここに慣れるまでのんびり散歩すればいいから。慣れたらゆっくり走って返って来い。もうちょっと奥で大学生達がよくマラソンの合宿してるくらいだから。最終的に休まずに走りきれればいいから頑張ってみるのもここにいる間の一つの目標にすると言い」
 まずこの急な坂は正月名物の駅伝にも匹敵する角度だ。むしろそれより酷い。仕方がないのだ。だってジイちゃんが達ご先祖様が作った道だからな。
 当時まだいた職人さん達と山を切り開き、材木を安全に運べる道を作って戦後村役場を半ば脅してアスファルトを敷かせた強者だった。まあ、そこは水道工事に上手くすり替えられてしまったので業者と直接交渉してアスファルトを敷かせた猛者だった。
 この辺の事は内田さんからも酔っぱらった時に何度も聞かされていたし、もっとオブラートにした話をジイちゃんがからも聞かされていた。それはもう別次元のような内容で。まあ、部屋で一人本を読んでばっかりの孫を気遣って話しを盛ったのだろうが、だけどこの家に来て、吉野に縁を持つ元樵の皆様の人の良さとその人の好さの裏側に隠された凶暴な一面(熊に対して)を見ればあながち間違いではないような気がして、寧ろ内田さんが語ってくれる話しの方が信憑性がないと言う不思議なすり替え現象が起きている。まあ、そう言う事があった。それでいいじゃないかと思いながらも冬を超えるたびに部分的に崩れるアスファルトの補修しないとなともうめんどくさくって長谷川さんにお願いする事を今決めた。
 ちょうどあいつらに土木している姿を身近に見せるのにちょうどいと思いながら電話を掛ける。
「長谷川さんおはようございます。
 今日はお願いしたい事がありまして……」
「吉野の、すまん。まだ寝てて……」
 与市さんの寝てる所を起こされたかっすかすの声に先生がスマホの時計を見せてくれた。まだ五時を少し回ったばかり。
「すみません。八時ごろもう一度かけ直させていただきます」
 それも早いと思うけどどこか出かけられるぐらいならこれくらいの時間ならまだ許されるだろうと起こしてしまってごめんなさいと電話を切る。
 昨晩高校生達はさすがになれない環境にさっさと寝てしまい、植田と水野が居ないから離れで寝泊まりしている陸斗達もさっさと寝てしまっての朝四時過ぎ起床時間となってしまったのだ。
 と言うか高校生達は飯田さんがご飯の準備をする物音と匂いにつられて目が覚めたと言うダメっぷり。なんて言うか、もう、バカな子ほどかわいいってこう言う事だなと朝から竈で焚くご飯にハイテンションになる子供達のお茶碗はラーメンどんぶりに変更されていた。さすがに酷くね飯田さん?なんて言葉が何度口から出そうになる物の嬉しそうに目を輝かせるお子様にその言葉はぐっと飲み込んだ。
 そんな一団が目的地の宮下商店へと向かっていくのを見送って、俺はこの家でのルーティンへと突入するのだがその前にだ。
「よお宮下。今からそっちに先生達が散歩に行ったから。
 悪いけどこの後雨予報だから悪いけど拾ってこっちに連れて来てくれる?」
「綾人おはよー。なに、先生たち来るの?相変わらず散歩好きだね先生」
「まあな。歩かせておけばこの後疲れて煩くないからな」
「まあね、ウザいからね」
 二人して酷い言いぐさ。
 帰ってきたら先生は風呂に突っ込んで後はみんなで小一時間ほどのお昼寝。それでも八時から九時には起床時間となって頭を切り替えて昼まで勉強の時間にすれは多少宿題は出来るだろう。
 そんな計画をして家の世話をしながら待つ事一時間ちょっと……
「綾人、とりあえず高山病になった子達だけ連れてきたから」
 顔を真っ青にして連れて帰ってこられた三人はとりあえず土間から上がった台所の隣の部屋に寝転がせればあっという間に眠りについてしまった。
「まぁ、慣れない環境だからね」
 そんな宮下のフォロー。
「三人だけ連れて帰られたのは判ったけど残りはどうした?」
 と思えば
「ああ、折角だからって母さんが蕎麦を打ち始めたんだ。待ってる間草取りさせられてたよ」
「ああ、うん。
 ただでご飯が貰えるわけないかな」 
 それでいいのかと思うも
「雨が降りそうだから迎えに来てって。さすがにうちの車じゃ乗りきれないから」
「確かに。じゃあ寝てる間に迎えに行こうか」
 そう言って三人のスマホに先生達無前に行ってくるからとメッセージを送って、宮下のお袋さんの花畑でキャッキャして草刈りをしている地元の子供達を拾うのだった。
 これが地元力。
 高校生達にはまだ理解できない謎のタフさを少し誇らしく思ってしまう綾人だった。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

神様自学

天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。 それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。 自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。 果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。 人の恋心は、どうなるのだろうか。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました

瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。 レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。 そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。 そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。 王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。 「隊長~勉強頑張っているか~?」 「ひひひ……差し入れのお菓子です」 「あ、クッキー!!」 「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」 第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。 そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。 ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。 *小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。

処理中です...