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今年もありがたい事にスケジュールがいっぱいになりそうです 7
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突然の飯田さんの帰郷と共に食卓の場は賑やかになった。
一緒に働くお店の人と一緒にご飯を頂きながら
「初めまして!いつも薫さんにお世話になってます吉野綾人と」
「宮下翔太です!今日はお忙しい時間にお邪魔します!」
動画で鍛えた謎の呼吸に皆さんも笑顔でようこそと挨拶をしてくれた。
だけどここではこの忙しい時間によく来たなと言う意味も隠されている事を理解しなくてはいけない。しかし隣では気付かずに
「宮下もいっぱい食べて行け」
「はい!飯田さんのお料理と同じお味で美味しいです!」
「同じお味か?」
「なんて言うか、飯田さんのやんちゃさが抜けた感じですね!」
やんちゃさと言う所は多分俺が実験的に育てたスーパーにはならばない野菜を使ってる所だろうがそこはお父さんにもわかって貰えた挙句笑ってもらえてにこにこと話をしながら心から美味しそうにご飯を食べる宮下にあれも食べなさい、これも食べなさいとお父さんにどんどん取り皿に盛られていくそのスピードに負けないくらい宮下はモリモリと食べて行く。ちょっと尊敬するぞ。
だって隣では……
「庵、少し塩味が強い」
お父さんと宮下以外は途端に静かになる食卓。お母さんはそうかしらと首を傾げるもお父さんは何も言わずに宮下の話しの合間に一つ頷いて
「出汁の取り方も少し生臭さが残っておる。誤魔化そうとするから塩味がきつくなる」
二人は粗を探しながら食べ続ける隣の俺は胃が痛い。
それに何がすごいって
「川田さんの焼き方相変わらず綺麗ですね」
とか
「緒方さんの野菜の煮物いつ食べても本当にちょうど良い火の通し方と大きさですね」
なんてさっきまで一緒に飯田さんの部屋でだべってたはずなのにお料理を誰が作ったのか見てないはずなのに当てるその神の舌……
当ってるからお父さんも「庵もこの食感を覚えろよ」なんて小言を言うから誰も何も言えなくて黙々と食べていた。
「薫を呼んだのは間違いだったかしら?」
お母さんのボヤキ何て聞こえないと言う様に
「今日のこの味だと九条さんがお見えになるんですね。確か綾人さん達と同じ年頃の息子さんが見えたと思いましたが……」
「九条?」
というかお味で誰が来るか判るんですね。さすがにそこは宮下も一緒にどん引きだけど皆さんはこの親子兄弟はこれが普通という様に黙々とご飯を食べていた。真似は出来ない……
「あの頑固者は未だに紹介に来ないぞ」
「その内おじいさんが連れて来てくれるでしょう。同級生だからって当たりが強くてどうするのです。
あ、古くからのお客様でうちの前の坂をもうちょっと山の方に登るとご自宅があるご近所さんです」
「いえ、俺も九条って言う知り合いがいるだけなので気になっただけです」
「歴史的な九条家とは違うので大丈夫ですよ。傍系に残された血筋を守る家からも名前が残ってるだけの遥か遠い家系らしいので」
「ですよねー」
「因みにどのような御関係の九条さんで?」
「よくわからないけど友達連れてうちの山に登りに来る人。
ジイちゃんがの知り合いらしいから時々山に登っても良い?って手紙が来るんだーってバアちゃんが言ってた。長い事ガン無視してたからイギリス行く前に一度ご挨拶はしておこうと思うけどね」
「となるとうちの知る九条さんとは違うかな?うちの知り合いは坊さんだらけだから登山何てしてる暇ないだろうし」
「そういや坊さんで思い出したけど、うちのお寺さんの一樹がさ、なんと遂に高校卒業したら父親の後を継ぐって言いだしたんだ」
「それは素晴らしい」
「ありがたい事に家のお墓を守る為にって頑張ってくれるらしいよ」
「優しい子ですね」
本当にそう思う。
「あの無気力だった一樹が目的を持つ事もその為に勉強を励む事も、夢を持つ事も全部話してくれて進路を打ち明けてくれた時嬉しかった」
「教え子の成長を見守れるのは何とも嬉しい報告ですね。ますます先生の存在必要なくなりましたね。
なのに庵の成長はどこに向かってるんだか」
「庵さんごめんなさい。俺達が来たばかりに薫さんも連れて来てしまって」
思わずと言うように謝っておく。だけどそこは兄弟。
「気にしないでください。これだから兄貴に嫁さんが付かない理由ですので」
弟容赦ない……
飯田さん咥え箸したまま固まってますよ?
モグモグしてください?
ほら、みなさんそっと顔を反らせて咽ないように懸命に耐えてますよ?
思わぬ反撃だが
「そう言えば一樹の事で思い出した」
そこは空気を読まない宮下。良いぞ宮下と思いながらなんだと首を傾げれば
「実は第二種電気工事士のペーパーテストの方通ったんだ」
「え?マジ?ちょ……」
あまりに嬉しすぎて脳がショートしてた。
「綾人と言い合いになって実桜さんと一緒に勉強してたんだけど、実桜さん先に合格しちゃうし、園芸部も先に合格しちゃうし。
蒼さんにコツを教えてもらいながら三度目で何とか一次試験通ったんだ」
「宮ちゃん……」
「綾人が留学試験を頑張ってたのに俺ががんばんないなんてなんだか恥ずかしくって。オームの法則も理解して計算式ちゃんとできるようになったよ!」
「すごい!何時の間にそんなに勉強してたんだよ!」
「えへへ。仕事の後圭斗の所で陸斗にも教えてもらってたんだ」
「頑張ったんだ!!!」
にこにこと誇らしげに笑う宮下と思わず抱き合って感動する。
よくわからない皆様も頑張ったねぇと言ってくれるけど、オームの法則?中学生に習うんじゃないの?何て視線で冷静に突っ込む皆様をガン無視して俺の皿からお祝いにあれも食べろこれも食べろとお皿の上に乗せて行く。
「綾人ったらほめ過ぎだよ」
「それだけ宮下が頑張ったからだろ?当然だよ!」
「こんなに誉めてもらうんだったらもっと早くからがんばればよかった!」
なんて言いながらも俺の皿から移したおかずをひょいぱくひょいぱくと食べて行く。もちろん俺が少し苦手とする物がメインだとは言わない。
「このお魚綺麗に処理してますね」
元鮮魚コーナーで働いていただけに小さな切口からの内臓処理の丁寧さに宮下は関心をする。
「そう言う宮下君の魚処理も上手ですよ?」
珍しく誉める飯田さんに宮下は照れたように
「皆さんみたいに修行したわけじゃなくってチーフの教えられて一日ひたすら処理してただけだからどうしてもただの作業になっちゃって丁寧さが無かったなってこれを見たら思うよ」
「そんな事ありません。綾人さんの家で甘露煮作る時何時も半分手伝ってもらえて助かってます」
「飯田さんの味付け美味しいからね。張りきっちゃうよ」
丁寧さは飯田さんに劣るけどなんだかんだ同じスピードで処理をする宮下に俺はそれを見ながらお茶を飲む事にしている。俺が入ったって邪魔になるだけだしねと言い訳をしておく。うん、包丁振り回す二人の邪魔できないからね。さすが毎日何百匹と処理してただけに飯田さんもびっくりな宮下の技術だった。正直魚屋を辞めたのはもったいなかったけど、その技術と時給が合ってないので天職が見つかって良かったと思う事にしておこう。
そんな合間にも食べ終わったお店の方は食べ終わった食器を流しに置いて片づけて行く。本日のご飯当番の庵さんが片づけるらしいので俺達も同じタイミングで食べ終える様に食べ終えてご馳走様をする。
「おなかいっぱいです」
幸せな顔でご馳走様をすれば庵さんが
「兄さんのお世話お願いします」
何だろう。飯田さんに調理場に来させるなと言う事なのかなと思えばそこはニヤリと笑ってしまう。
「お父さん、隅っこで良いので調理場の見学できますか?」
「あああ!!!止めてよ!!!」
思わずと叫ぶ庵さんにお父さんも
「イスを用意しておくからそこから見てなさい。ああ、イスは二つしかなかったか」
そんな事あるわけないのにさらりと言ってお母さんに椅子を二つだけ用意させるらしい。となると飯田さんの席は……
「庵、もう少し野菜の形をそろえて皮を剥け。形が崩れているとみっともない。
安田君も湯通し長すぎます。食感が無くなる。
だから庵はさっき出汁が生臭いって言われたからって出汁を濃くすればいいってわけじゃない。いい加減対比をしっかり覚えろ!」
お犬様が狂犬モードに入りまして吠えてます。
寧ろこの場にいていいのだろうかとカメラを抱えて飯田さんを撮りまくっているけど正直言って本当にこの場にいていいのだろうかと居た堪れない。何というか庵さん弄りを見に来たつもりだったのにガチでの指導はフランスでの一軒の店の事を思い出してしまう。
何だか泣きが入りそうな展開に既に隣に座る宮下はちょっぴり涙目になって初のお犬様の狂犬モードにガキでビビるのだった。
まだ足技が披露されてないから平和だぞと教えられないこの空気に耐えられなくって
「すみません、トイレ行ってきます!」
「あ、俺も行ってきます!」
何て逃げ出す俺達をお父さんが笑ってたと言うのは誰も教えてくれなかった。
結局お母さんにお泊りするお部屋に案内してもらって少ししてやって来た飯田さんと晩酌をする事になった。ちゃっかりおつまみを何点か作って来たらしくって、匂いが他の料理に移らないようにという配慮から和風なおつまみだった。
だが問題ない。
飯田家のお店のお品書きは縦書きのお値段が書いてないお品書きなのだ。
どれ一つとっても最上級な素材と言う、元が美味しいからさっと炙っただけ、さらっと熱を通して来ただけというお料理でも
「素材のお味がまろくてなんて優しいお味でしょう」
「やっぱりお父さんのお目に叶う農家さんの野菜は素人農家とは違うお味ですね」
宮下の限界ギリギリの語尾力と俺の無駄な抵抗の評価はやっぱり土が違うとここまで変わるのかという感動にも似た差異にお酒よりもお箸が止まらなかった。
「綾人さんの家はどうしても火山灰の影響がありますからね」
「判っていても対抗したくなるのはなんでだ」
「単なる負けず嫌いだね」
なんてあっさりと宮下が身もふたもない事を言ってくれて飯田さんも噴き出すように笑ってくれた。
一緒に働くお店の人と一緒にご飯を頂きながら
「初めまして!いつも薫さんにお世話になってます吉野綾人と」
「宮下翔太です!今日はお忙しい時間にお邪魔します!」
動画で鍛えた謎の呼吸に皆さんも笑顔でようこそと挨拶をしてくれた。
だけどここではこの忙しい時間によく来たなと言う意味も隠されている事を理解しなくてはいけない。しかし隣では気付かずに
「宮下もいっぱい食べて行け」
「はい!飯田さんのお料理と同じお味で美味しいです!」
「同じお味か?」
「なんて言うか、飯田さんのやんちゃさが抜けた感じですね!」
やんちゃさと言う所は多分俺が実験的に育てたスーパーにはならばない野菜を使ってる所だろうがそこはお父さんにもわかって貰えた挙句笑ってもらえてにこにこと話をしながら心から美味しそうにご飯を食べる宮下にあれも食べなさい、これも食べなさいとお父さんにどんどん取り皿に盛られていくそのスピードに負けないくらい宮下はモリモリと食べて行く。ちょっと尊敬するぞ。
だって隣では……
「庵、少し塩味が強い」
お父さんと宮下以外は途端に静かになる食卓。お母さんはそうかしらと首を傾げるもお父さんは何も言わずに宮下の話しの合間に一つ頷いて
「出汁の取り方も少し生臭さが残っておる。誤魔化そうとするから塩味がきつくなる」
二人は粗を探しながら食べ続ける隣の俺は胃が痛い。
それに何がすごいって
「川田さんの焼き方相変わらず綺麗ですね」
とか
「緒方さんの野菜の煮物いつ食べても本当にちょうど良い火の通し方と大きさですね」
なんてさっきまで一緒に飯田さんの部屋でだべってたはずなのにお料理を誰が作ったのか見てないはずなのに当てるその神の舌……
当ってるからお父さんも「庵もこの食感を覚えろよ」なんて小言を言うから誰も何も言えなくて黙々と食べていた。
「薫を呼んだのは間違いだったかしら?」
お母さんのボヤキ何て聞こえないと言う様に
「今日のこの味だと九条さんがお見えになるんですね。確か綾人さん達と同じ年頃の息子さんが見えたと思いましたが……」
「九条?」
というかお味で誰が来るか判るんですね。さすがにそこは宮下も一緒にどん引きだけど皆さんはこの親子兄弟はこれが普通という様に黙々とご飯を食べていた。真似は出来ない……
「あの頑固者は未だに紹介に来ないぞ」
「その内おじいさんが連れて来てくれるでしょう。同級生だからって当たりが強くてどうするのです。
あ、古くからのお客様でうちの前の坂をもうちょっと山の方に登るとご自宅があるご近所さんです」
「いえ、俺も九条って言う知り合いがいるだけなので気になっただけです」
「歴史的な九条家とは違うので大丈夫ですよ。傍系に残された血筋を守る家からも名前が残ってるだけの遥か遠い家系らしいので」
「ですよねー」
「因みにどのような御関係の九条さんで?」
「よくわからないけど友達連れてうちの山に登りに来る人。
ジイちゃんがの知り合いらしいから時々山に登っても良い?って手紙が来るんだーってバアちゃんが言ってた。長い事ガン無視してたからイギリス行く前に一度ご挨拶はしておこうと思うけどね」
「となるとうちの知る九条さんとは違うかな?うちの知り合いは坊さんだらけだから登山何てしてる暇ないだろうし」
「そういや坊さんで思い出したけど、うちのお寺さんの一樹がさ、なんと遂に高校卒業したら父親の後を継ぐって言いだしたんだ」
「それは素晴らしい」
「ありがたい事に家のお墓を守る為にって頑張ってくれるらしいよ」
「優しい子ですね」
本当にそう思う。
「あの無気力だった一樹が目的を持つ事もその為に勉強を励む事も、夢を持つ事も全部話してくれて進路を打ち明けてくれた時嬉しかった」
「教え子の成長を見守れるのは何とも嬉しい報告ですね。ますます先生の存在必要なくなりましたね。
なのに庵の成長はどこに向かってるんだか」
「庵さんごめんなさい。俺達が来たばかりに薫さんも連れて来てしまって」
思わずと言うように謝っておく。だけどそこは兄弟。
「気にしないでください。これだから兄貴に嫁さんが付かない理由ですので」
弟容赦ない……
飯田さん咥え箸したまま固まってますよ?
モグモグしてください?
ほら、みなさんそっと顔を反らせて咽ないように懸命に耐えてますよ?
思わぬ反撃だが
「そう言えば一樹の事で思い出した」
そこは空気を読まない宮下。良いぞ宮下と思いながらなんだと首を傾げれば
「実は第二種電気工事士のペーパーテストの方通ったんだ」
「え?マジ?ちょ……」
あまりに嬉しすぎて脳がショートしてた。
「綾人と言い合いになって実桜さんと一緒に勉強してたんだけど、実桜さん先に合格しちゃうし、園芸部も先に合格しちゃうし。
蒼さんにコツを教えてもらいながら三度目で何とか一次試験通ったんだ」
「宮ちゃん……」
「綾人が留学試験を頑張ってたのに俺ががんばんないなんてなんだか恥ずかしくって。オームの法則も理解して計算式ちゃんとできるようになったよ!」
「すごい!何時の間にそんなに勉強してたんだよ!」
「えへへ。仕事の後圭斗の所で陸斗にも教えてもらってたんだ」
「頑張ったんだ!!!」
にこにこと誇らしげに笑う宮下と思わず抱き合って感動する。
よくわからない皆様も頑張ったねぇと言ってくれるけど、オームの法則?中学生に習うんじゃないの?何て視線で冷静に突っ込む皆様をガン無視して俺の皿からお祝いにあれも食べろこれも食べろとお皿の上に乗せて行く。
「綾人ったらほめ過ぎだよ」
「それだけ宮下が頑張ったからだろ?当然だよ!」
「こんなに誉めてもらうんだったらもっと早くからがんばればよかった!」
なんて言いながらも俺の皿から移したおかずをひょいぱくひょいぱくと食べて行く。もちろん俺が少し苦手とする物がメインだとは言わない。
「このお魚綺麗に処理してますね」
元鮮魚コーナーで働いていただけに小さな切口からの内臓処理の丁寧さに宮下は関心をする。
「そう言う宮下君の魚処理も上手ですよ?」
珍しく誉める飯田さんに宮下は照れたように
「皆さんみたいに修行したわけじゃなくってチーフの教えられて一日ひたすら処理してただけだからどうしてもただの作業になっちゃって丁寧さが無かったなってこれを見たら思うよ」
「そんな事ありません。綾人さんの家で甘露煮作る時何時も半分手伝ってもらえて助かってます」
「飯田さんの味付け美味しいからね。張りきっちゃうよ」
丁寧さは飯田さんに劣るけどなんだかんだ同じスピードで処理をする宮下に俺はそれを見ながらお茶を飲む事にしている。俺が入ったって邪魔になるだけだしねと言い訳をしておく。うん、包丁振り回す二人の邪魔できないからね。さすが毎日何百匹と処理してただけに飯田さんもびっくりな宮下の技術だった。正直魚屋を辞めたのはもったいなかったけど、その技術と時給が合ってないので天職が見つかって良かったと思う事にしておこう。
そんな合間にも食べ終わったお店の方は食べ終わった食器を流しに置いて片づけて行く。本日のご飯当番の庵さんが片づけるらしいので俺達も同じタイミングで食べ終える様に食べ終えてご馳走様をする。
「おなかいっぱいです」
幸せな顔でご馳走様をすれば庵さんが
「兄さんのお世話お願いします」
何だろう。飯田さんに調理場に来させるなと言う事なのかなと思えばそこはニヤリと笑ってしまう。
「お父さん、隅っこで良いので調理場の見学できますか?」
「あああ!!!止めてよ!!!」
思わずと叫ぶ庵さんにお父さんも
「イスを用意しておくからそこから見てなさい。ああ、イスは二つしかなかったか」
そんな事あるわけないのにさらりと言ってお母さんに椅子を二つだけ用意させるらしい。となると飯田さんの席は……
「庵、もう少し野菜の形をそろえて皮を剥け。形が崩れているとみっともない。
安田君も湯通し長すぎます。食感が無くなる。
だから庵はさっき出汁が生臭いって言われたからって出汁を濃くすればいいってわけじゃない。いい加減対比をしっかり覚えろ!」
お犬様が狂犬モードに入りまして吠えてます。
寧ろこの場にいていいのだろうかとカメラを抱えて飯田さんを撮りまくっているけど正直言って本当にこの場にいていいのだろうかと居た堪れない。何というか庵さん弄りを見に来たつもりだったのにガチでの指導はフランスでの一軒の店の事を思い出してしまう。
何だか泣きが入りそうな展開に既に隣に座る宮下はちょっぴり涙目になって初のお犬様の狂犬モードにガキでビビるのだった。
まだ足技が披露されてないから平和だぞと教えられないこの空気に耐えられなくって
「すみません、トイレ行ってきます!」
「あ、俺も行ってきます!」
何て逃げ出す俺達をお父さんが笑ってたと言うのは誰も教えてくれなかった。
結局お母さんにお泊りするお部屋に案内してもらって少ししてやって来た飯田さんと晩酌をする事になった。ちゃっかりおつまみを何点か作って来たらしくって、匂いが他の料理に移らないようにという配慮から和風なおつまみだった。
だが問題ない。
飯田家のお店のお品書きは縦書きのお値段が書いてないお品書きなのだ。
どれ一つとっても最上級な素材と言う、元が美味しいからさっと炙っただけ、さらっと熱を通して来ただけというお料理でも
「素材のお味がまろくてなんて優しいお味でしょう」
「やっぱりお父さんのお目に叶う農家さんの野菜は素人農家とは違うお味ですね」
宮下の限界ギリギリの語尾力と俺の無駄な抵抗の評価はやっぱり土が違うとここまで変わるのかという感動にも似た差異にお酒よりもお箸が止まらなかった。
「綾人さんの家はどうしても火山灰の影響がありますからね」
「判っていても対抗したくなるのはなんでだ」
「単なる負けず嫌いだね」
なんてあっさりと宮下が身もふたもない事を言ってくれて飯田さんも噴き出すように笑ってくれた。
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