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たまには色々と仕掛けをしておこうと思います 10
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話し合いは混迷を極めた。
あの後、長沢さんはよりにもよって県北部にあるご実家に住むお爺さん幸造さんと言うらしいがその人に電話をして今すぐ来いとおっしゃった。
耳を疑う俺達に圭斗は仕事があるのでと言って宮下を連れて山に逃げる始末。
俺も連れてってくださいと土下座してお願いしたかったけど、長沢さんは俺を含めて岡野家の方へと向かい合うのだった。
久しぶりの再会だと言うのに無言の沈黙が痛い空間。
実桜さんのお母さんが
「元気にしてた?」「仕事は大丈夫?」「凛は保育園?」
なんて小さな声で話しかけていたけどあまりにしらじら過ぎて会話にならなく、約二時間ほどして圭斗の家の方の事務所に人影が見えた。
タクシーの運転手よと思うもそこは長沢さんが窓を開けてこっちだと呼び寄せてくれた。
「長沢さん、お久しぶりです」
家に上がり、部屋に入る前の廊下で奥様共々両手をついての挨拶。
そして頭を上げずにそのままの姿勢は単なる丁寧な挨拶じゃなかった……
思わず視線を彷徨わせるも実桜さんも蒼さんも夫婦そろって他の誰とも目を合わさないように視線を俯けたまま。実桜さんのご両親までおろおろとしながらも冷汗は止まらない様子。
おかしいな……
長沢さんはジイちゃんの幼馴染で寡黙な職人気質だが親切な爺さんって言うイメージだったはずなのになんかずれ始め、離れのリフォームで出会った初めましての頃から振り返るもこんな人様に頭を下げさせるような人物じゃなかったはずなのにと何を見落としていたのか思い出しているのに、そんなそぶりなんかどこにもなかった。
「ずいぶんと遅かったな」
電車でも十分早かったですよとつっこみたかったけど
「もう車の免許は返納させてもらったので」
「そうか、年を取ったなお互い」
「兄さんは相変わらず達者なようで」
長沢さんの方が年上なのかと思うもそろそろ足がしびれて勘弁してほしいと思う。とりあえずこの空気を散らすように
「実桜さん、お茶をお願いします」
「ええと、はい。失礼します」
「実桜、俺も手伝う」
「ありがとう」
折角なら俺もお手伝いしたいと思いたかったが、二人が隣のキッチンへと向かえば間の襖をさりげなく長沢さんはピシャリと閉めてしまった。
えええ……
なぜに閉める?
俺も向こう側行きたいと思うも長沢さんがチラリと俺を見て
「吉野の、この宇野幸造って言うのは旦那様がまだ林業をしていた時一時期これの父親に勉強に行けと吉野で世話をしてていた職人の一人だ」
「それだと幸田さん達と一緒に働いてたのかな?年齢的に……」
と言えばびくりと体を震わすと言う過剰なまでの反応。
一体何があったんだよと思うも
「まぁ、よく言えば仲間。悪く言えばお客様で随分と事故を起こさせて迷惑かけられたと聞く。その頃わしはもう内田の所に弟子入りさせてもらってたけど、吉野の噂は麓の町まで毎日のように届くほど賑やかだった」
うわー、と今もまだ両手をついて頭を下げている夫妻の居心地の悪さに
「とりあえず冷えるのでこちらへどうぞ」
何て座布団を進めるも座布団を退けて末席に座るのだった。
ちょっとどういう事と思うもその間に実桜さんのご両親はこの並々ならぬ空気を察して壁際まで下がる様子に本当血のご先祖様達何をして下さったのだろうと子孫としてはせめてそう言う情報を残して欲しいと切に願ってしまう。
お茶が欲しくてもこの様子だと当分来る事はないだろうからと全員が落ち着いた所で
「改めまして吉野綾人です。
今日は遠い所を……」
「それで幸造よ、一体お前の家は一体何をやっている」
それ以上の丁寧なあいさつは必要ない、名前だけ聞かせればいいと長沢さんが挨拶をぶった切ってくれた。
うん。普通なら腹立たしいと思う所なのだが俺ここにいる必要ある?な状況です。
早くお山に帰りたいそんな罠に掴まったような気がするのは俺だけでしょうか。いえ、それはあちらもそうでしょう。
自営業と言う中で使い勝手の良い若くて立場の弱い実の娘の実桜さんとろくな学歴と職歴のない蒼さんと言う餌でやって来てくれたまでは良いが、餌が簡単に奪われない、どんな手段で自ら諦めないようにと保険をかけて助けを求めた相手の代打が強すぎたのだ。そして釣れた獲物が狙った物だけではなく斜め上行くジイちゃんが達の過去と言う想定外の物までのおまけつき。
大量過ぎでおなかいっぱい頭はパニック、次はなんだこうご期待。
違う!!!
誰か迎えに来てーと圭斗と宮下を心の中で何度も召喚するもまるで何かが邪魔をする様に何の音沙汰もない。いや、単にスマホの電波が届かない所に居るだけなのだがこういう時友達の少なさを呪ってしまう。
あの後、長沢さんはよりにもよって県北部にあるご実家に住むお爺さん幸造さんと言うらしいがその人に電話をして今すぐ来いとおっしゃった。
耳を疑う俺達に圭斗は仕事があるのでと言って宮下を連れて山に逃げる始末。
俺も連れてってくださいと土下座してお願いしたかったけど、長沢さんは俺を含めて岡野家の方へと向かい合うのだった。
久しぶりの再会だと言うのに無言の沈黙が痛い空間。
実桜さんのお母さんが
「元気にしてた?」「仕事は大丈夫?」「凛は保育園?」
なんて小さな声で話しかけていたけどあまりにしらじら過ぎて会話にならなく、約二時間ほどして圭斗の家の方の事務所に人影が見えた。
タクシーの運転手よと思うもそこは長沢さんが窓を開けてこっちだと呼び寄せてくれた。
「長沢さん、お久しぶりです」
家に上がり、部屋に入る前の廊下で奥様共々両手をついての挨拶。
そして頭を上げずにそのままの姿勢は単なる丁寧な挨拶じゃなかった……
思わず視線を彷徨わせるも実桜さんも蒼さんも夫婦そろって他の誰とも目を合わさないように視線を俯けたまま。実桜さんのご両親までおろおろとしながらも冷汗は止まらない様子。
おかしいな……
長沢さんはジイちゃんの幼馴染で寡黙な職人気質だが親切な爺さんって言うイメージだったはずなのになんかずれ始め、離れのリフォームで出会った初めましての頃から振り返るもこんな人様に頭を下げさせるような人物じゃなかったはずなのにと何を見落としていたのか思い出しているのに、そんなそぶりなんかどこにもなかった。
「ずいぶんと遅かったな」
電車でも十分早かったですよとつっこみたかったけど
「もう車の免許は返納させてもらったので」
「そうか、年を取ったなお互い」
「兄さんは相変わらず達者なようで」
長沢さんの方が年上なのかと思うもそろそろ足がしびれて勘弁してほしいと思う。とりあえずこの空気を散らすように
「実桜さん、お茶をお願いします」
「ええと、はい。失礼します」
「実桜、俺も手伝う」
「ありがとう」
折角なら俺もお手伝いしたいと思いたかったが、二人が隣のキッチンへと向かえば間の襖をさりげなく長沢さんはピシャリと閉めてしまった。
えええ……
なぜに閉める?
俺も向こう側行きたいと思うも長沢さんがチラリと俺を見て
「吉野の、この宇野幸造って言うのは旦那様がまだ林業をしていた時一時期これの父親に勉強に行けと吉野で世話をしてていた職人の一人だ」
「それだと幸田さん達と一緒に働いてたのかな?年齢的に……」
と言えばびくりと体を震わすと言う過剰なまでの反応。
一体何があったんだよと思うも
「まぁ、よく言えば仲間。悪く言えばお客様で随分と事故を起こさせて迷惑かけられたと聞く。その頃わしはもう内田の所に弟子入りさせてもらってたけど、吉野の噂は麓の町まで毎日のように届くほど賑やかだった」
うわー、と今もまだ両手をついて頭を下げている夫妻の居心地の悪さに
「とりあえず冷えるのでこちらへどうぞ」
何て座布団を進めるも座布団を退けて末席に座るのだった。
ちょっとどういう事と思うもその間に実桜さんのご両親はこの並々ならぬ空気を察して壁際まで下がる様子に本当血のご先祖様達何をして下さったのだろうと子孫としてはせめてそう言う情報を残して欲しいと切に願ってしまう。
お茶が欲しくてもこの様子だと当分来る事はないだろうからと全員が落ち着いた所で
「改めまして吉野綾人です。
今日は遠い所を……」
「それで幸造よ、一体お前の家は一体何をやっている」
それ以上の丁寧なあいさつは必要ない、名前だけ聞かせればいいと長沢さんが挨拶をぶった切ってくれた。
うん。普通なら腹立たしいと思う所なのだが俺ここにいる必要ある?な状況です。
早くお山に帰りたいそんな罠に掴まったような気がするのは俺だけでしょうか。いえ、それはあちらもそうでしょう。
自営業と言う中で使い勝手の良い若くて立場の弱い実の娘の実桜さんとろくな学歴と職歴のない蒼さんと言う餌でやって来てくれたまでは良いが、餌が簡単に奪われない、どんな手段で自ら諦めないようにと保険をかけて助けを求めた相手の代打が強すぎたのだ。そして釣れた獲物が狙った物だけではなく斜め上行くジイちゃんが達の過去と言う想定外の物までのおまけつき。
大量過ぎでおなかいっぱい頭はパニック、次はなんだこうご期待。
違う!!!
誰か迎えに来てーと圭斗と宮下を心の中で何度も召喚するもまるで何かが邪魔をする様に何の音沙汰もない。いや、単にスマホの電波が届かない所に居るだけなのだがこういう時友達の少なさを呪ってしまう。
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