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身体が動く季節なので皆さん働こうではないか 7
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失恋のショックと言う物を知っているだろうか。
凛ちゃんは実桜さんにべったりと言う状態となりこっちをみなくなってしまった。
ショックを受ける俺に高校生達はげらげらと笑いとばしてくれて、フランスで凛ちゃんのベビーシッターをしていた陸斗が声をかけても顔を背けるくらいの人見知りになってしまった。
「綾人ー、責任重大だぞ?」
「ええと、多分凛は眠いから」
ご機嫌斜めだとお母様は仰ってくれた。
「ほら、俺悪くない」
先生に俺は無罪だと言っている間に凛ちゃんはぐずりながらいつの間にか静かになっていた。
陸斗がどこからかお昼寝マットとバスタオルを持って来てくれて、岡野夫妻はありがたく借りてそこに凛ちゃんを寝かすのだった。
凛ちゃんは素晴らしい事に一度寝るとぐっすり眠ってしまい多少騒がしくても目を覚ます事のない寝つきの良さに俺達はこのまま話しをさせてもらう事にする。
「って言うか何で俺が二人を養うとかそんな話になったんだ?」
全く話の流れが分らんと言う様に聞けば
「ええと、フランスから帰った後の話しになります」
蒼さんが切り出すもどこか不安そうな様子に実桜さんが話を始めるのだった。
「フランスでは本当にありがとうございました。
綾人さんのおかげで凛と一緒に旅行も出来て、ドレスも来てレストランにも行けました。更にお城に宿泊までできて、夢のような時間を頂いた上に仕事の報酬まで頂いて、本当に夢の時間でした」
うつむく実桜さんは正座した膝の上に両手の拳を押し付けながら
「そして帰ってきて実家にお土産を置きに行った時に次の仕事の話になって、仕事の話がおかしい事に気付きました。
予定ではあと一日休みがある様にスケジュールを立てていたのにいきなり急きょ明日から仕事に戻れって言われた挙句に隣の県まで出張となりました。勿論交通費は自腹で現地集合。さすがにそれは無理だって言ったのですが、散々遊んでおいて仕事はしたくないとはどういう事だと、まぁ、父は昔気質な人なので案の定殴られました。
母も止めに入ってくれましたが
『父さんに逆らうからだよバカ娘。とりあえずはいはい言っておけば殴られなかったのにほんとバカだねぇ』
って、言われて……」
きゅっと固く結ばれた唇と拳が少し震えていた。
あまりの展開に高校生達もここに居ていいのだろうかと思って俺をちらちらと見る物の俺は一切無視してだまって話に耳を傾けていた。
「その日、家に帰って家計簿を見直しました。
蒼の収入は不安定なのですが、大体十六万から二十万の間、そして私の収入は十万。これはどれだけ働こうが上がる事もない固定給みたいなものです。勿論残業代や出張費なんてありません。税金引いたら九万もなくて……
分かってます。フランスで頂いたお給金が色がついていてもかなり高額だった事は理解してます。
実家暮らしだったので高校卒業からずっと同じ金額だった事に別に気にしなかった私もおかしかったのでしょうが、フランスの庭師の方達の話しを聞いてあまりの差に愕然しました。
改めて実家で雇ってる職人さん達から大まかなお給料を教えてもらって、あれだけ特殊車両の免許を持って現場の指示をしている私が彼らの半分以下だなんて納得できなくて、父に直談判しました。
だけど父は
『女なんだから他の職人に迷惑かけてるだろう、凛の出産や風邪をひいた時なんかは何時も休ませてやっただろう。それだけ迷惑かけておいて他の職人と同じ給料もらえると思う方が間違いだ』
ってなりまして。
悔しくて悲しくて、そのまま仕事を辞めて家を逃げ出しました。
もちろん蒼にも泣きつきましたが、その間に父は知り合いの職人仲間に話をして蒼に仕事を回すのを辞めるように言いふらしたのです」
ぽかんという言葉が似合う様に実桜さんの話しを飲み込む合間に
「俺が、高校中退で何度も離婚歴があって、中途半端だったから、信頼ないって言いふらされまして……
地元の仕事仲間に連絡を取ったらそんな話を聞かされて。
実桜の家も俺の信頼を信じさせる前に実桜の父親の名前の方が絶対だから、結局相手が悪かったなって事になりまして……」
悔しさから蒼の手も怒りで震えていた。
「ちょうど内田さんから呼ばれてた仕事が唯一ありまして、こんな状態の俺に棟梁が声をかけてくれた時に話しをさせていただいて……
他に聞いていた人も相手が悪いとしか言えなくて。
そうしたら井上さんがダメもとで良ければ綾人さんに話しだけでも聞いてもらったらと言う流れになりました。
フランスで散々ご厄介になった上に他でも迷惑かけているのにこれ以上なんて思いましたが、浩太さんが話だけでも聞いてもらえば何かアドバイスを貰えるかもと言ってくれて、今回お邪魔させていただきました」
陸斗が出したお茶はその頃には冷めていて、あんまりな内容は実桜さんのお父さんはきっと自分を頼らなければどうしようもないと言う状況に追い込んだのだろうと俺は理解した。
安く、そして腕のいい職人を囲い込めばそれなりに楽をして稼げる、そして浮いたお金はどこに行ったのか何て、家族の間では不問となろう。
「って言うか、今頃になってよく反抗?しましたね」
園田の何気ない疑問。
そう、何で今頃何かと思えば
「家計簿です。凛が生まれてからちゃんと家計簿を付けていつか家を建てれるように節約をしなくちゃって思って付け始めました。
だけど家計簿をつけて何が変わるのかわからなかったんだけど、綾人さんが何時も直ぐにスマホで調べてたじゃないですか。
それを見習って、凛が大学を卒業するまでのお金を試算してみました。
とてもじゃないけど溜めれないどころか、家なんてまた次の話しになり、それどころか保育園の支払いも難しい事に気付きました。
二人合わせて二十四万円、これが最低ラインとします。
お互い車を使うのでガソリン代で二万ずつ、駐車場、アパート代、光熱費、食費、通信費で約十五万を固定とします。だけどお互い職人なので交流費とか機材の買い替えとかなんだかんだ五万円を確保してます。そこに凛の費用が入ります。医療費などは補助で無料ですが、月齢と言う言葉通りどんどん成長する凛にかかるお金は何かあっても良い様に一万円は積立と言う形でかくほしてます。
ただ私達は会社に勤めているわけではないので国民年金を支払わなくてはいけないので、そこで月の予算を切るかどうかになってしまいます」
「あー、そこにもし怪我をしたら一瞬で破たんするわけだ」
「はい。保育園にかけるお金もないしどうすればいいのかわからなくて蒼に相談したんですけどやはり二人では限界がありまして、そこで父にお給料をせめて他の職人んの方達と同じ位とまでは言わないけど近い金額が欲しいと言ったら
『お前の給料が家に入らなかったら暮してけれないじゃないか』
ってお母さんに言われちゃいました。
因みに二人とも毎月温泉旅行に行くのを楽しみにしてまして、どうやらそのお金が私の給料に支払われる物だったのです」
何も知らなくって私ほんとバカだと泣きながら笑う実桜さんにもう誰も何も言えなくなってしまった。
だけど綾人はここで
「で、そこで何で俺に相談になるんだか」
盛大に呆れて見せれば周囲の視線が殺気立っていた。
「何でって、綾っち無駄に家がいっぱいあるから一つぐらい貸したっていいじゃん!」
川上が噛みついて来たけど、俺はなんでそうなるんだと言う様に首を傾げ
「収入もなく、自分で仕事も見つけられないのに何で俺が建て替えたばかりの家に無償で住ませる理由になる。
そもそも今まで疑問に思わなかった実桜さんの責任だし、それこそいま直ぐ俺に相談じゃなくてハローワークに行くべきだろう。仕事さえ選ばなければよりどりみどりだ。それに最低賃金でフルに働いても十万はよゆうに超える。
俺はまずそこからだと思うんだけど、先生、俺間違ってますか?」
「あー間違ってるかどうかと言えば間違ってないが、もう少しお前は人の心に寄り添う事を覚えろ」
容赦なく切り捨てるなと言う言葉に俺はそれぐらいがこの二人にはちょうどいいんだとぼやいてしまうのだった。
凛ちゃんは実桜さんにべったりと言う状態となりこっちをみなくなってしまった。
ショックを受ける俺に高校生達はげらげらと笑いとばしてくれて、フランスで凛ちゃんのベビーシッターをしていた陸斗が声をかけても顔を背けるくらいの人見知りになってしまった。
「綾人ー、責任重大だぞ?」
「ええと、多分凛は眠いから」
ご機嫌斜めだとお母様は仰ってくれた。
「ほら、俺悪くない」
先生に俺は無罪だと言っている間に凛ちゃんはぐずりながらいつの間にか静かになっていた。
陸斗がどこからかお昼寝マットとバスタオルを持って来てくれて、岡野夫妻はありがたく借りてそこに凛ちゃんを寝かすのだった。
凛ちゃんは素晴らしい事に一度寝るとぐっすり眠ってしまい多少騒がしくても目を覚ます事のない寝つきの良さに俺達はこのまま話しをさせてもらう事にする。
「って言うか何で俺が二人を養うとかそんな話になったんだ?」
全く話の流れが分らんと言う様に聞けば
「ええと、フランスから帰った後の話しになります」
蒼さんが切り出すもどこか不安そうな様子に実桜さんが話を始めるのだった。
「フランスでは本当にありがとうございました。
綾人さんのおかげで凛と一緒に旅行も出来て、ドレスも来てレストランにも行けました。更にお城に宿泊までできて、夢のような時間を頂いた上に仕事の報酬まで頂いて、本当に夢の時間でした」
うつむく実桜さんは正座した膝の上に両手の拳を押し付けながら
「そして帰ってきて実家にお土産を置きに行った時に次の仕事の話になって、仕事の話がおかしい事に気付きました。
予定ではあと一日休みがある様にスケジュールを立てていたのにいきなり急きょ明日から仕事に戻れって言われた挙句に隣の県まで出張となりました。勿論交通費は自腹で現地集合。さすがにそれは無理だって言ったのですが、散々遊んでおいて仕事はしたくないとはどういう事だと、まぁ、父は昔気質な人なので案の定殴られました。
母も止めに入ってくれましたが
『父さんに逆らうからだよバカ娘。とりあえずはいはい言っておけば殴られなかったのにほんとバカだねぇ』
って、言われて……」
きゅっと固く結ばれた唇と拳が少し震えていた。
あまりの展開に高校生達もここに居ていいのだろうかと思って俺をちらちらと見る物の俺は一切無視してだまって話に耳を傾けていた。
「その日、家に帰って家計簿を見直しました。
蒼の収入は不安定なのですが、大体十六万から二十万の間、そして私の収入は十万。これはどれだけ働こうが上がる事もない固定給みたいなものです。勿論残業代や出張費なんてありません。税金引いたら九万もなくて……
分かってます。フランスで頂いたお給金が色がついていてもかなり高額だった事は理解してます。
実家暮らしだったので高校卒業からずっと同じ金額だった事に別に気にしなかった私もおかしかったのでしょうが、フランスの庭師の方達の話しを聞いてあまりの差に愕然しました。
改めて実家で雇ってる職人さん達から大まかなお給料を教えてもらって、あれだけ特殊車両の免許を持って現場の指示をしている私が彼らの半分以下だなんて納得できなくて、父に直談判しました。
だけど父は
『女なんだから他の職人に迷惑かけてるだろう、凛の出産や風邪をひいた時なんかは何時も休ませてやっただろう。それだけ迷惑かけておいて他の職人と同じ給料もらえると思う方が間違いだ』
ってなりまして。
悔しくて悲しくて、そのまま仕事を辞めて家を逃げ出しました。
もちろん蒼にも泣きつきましたが、その間に父は知り合いの職人仲間に話をして蒼に仕事を回すのを辞めるように言いふらしたのです」
ぽかんという言葉が似合う様に実桜さんの話しを飲み込む合間に
「俺が、高校中退で何度も離婚歴があって、中途半端だったから、信頼ないって言いふらされまして……
地元の仕事仲間に連絡を取ったらそんな話を聞かされて。
実桜の家も俺の信頼を信じさせる前に実桜の父親の名前の方が絶対だから、結局相手が悪かったなって事になりまして……」
悔しさから蒼の手も怒りで震えていた。
「ちょうど内田さんから呼ばれてた仕事が唯一ありまして、こんな状態の俺に棟梁が声をかけてくれた時に話しをさせていただいて……
他に聞いていた人も相手が悪いとしか言えなくて。
そうしたら井上さんがダメもとで良ければ綾人さんに話しだけでも聞いてもらったらと言う流れになりました。
フランスで散々ご厄介になった上に他でも迷惑かけているのにこれ以上なんて思いましたが、浩太さんが話だけでも聞いてもらえば何かアドバイスを貰えるかもと言ってくれて、今回お邪魔させていただきました」
陸斗が出したお茶はその頃には冷めていて、あんまりな内容は実桜さんのお父さんはきっと自分を頼らなければどうしようもないと言う状況に追い込んだのだろうと俺は理解した。
安く、そして腕のいい職人を囲い込めばそれなりに楽をして稼げる、そして浮いたお金はどこに行ったのか何て、家族の間では不問となろう。
「って言うか、今頃になってよく反抗?しましたね」
園田の何気ない疑問。
そう、何で今頃何かと思えば
「家計簿です。凛が生まれてからちゃんと家計簿を付けていつか家を建てれるように節約をしなくちゃって思って付け始めました。
だけど家計簿をつけて何が変わるのかわからなかったんだけど、綾人さんが何時も直ぐにスマホで調べてたじゃないですか。
それを見習って、凛が大学を卒業するまでのお金を試算してみました。
とてもじゃないけど溜めれないどころか、家なんてまた次の話しになり、それどころか保育園の支払いも難しい事に気付きました。
二人合わせて二十四万円、これが最低ラインとします。
お互い車を使うのでガソリン代で二万ずつ、駐車場、アパート代、光熱費、食費、通信費で約十五万を固定とします。だけどお互い職人なので交流費とか機材の買い替えとかなんだかんだ五万円を確保してます。そこに凛の費用が入ります。医療費などは補助で無料ですが、月齢と言う言葉通りどんどん成長する凛にかかるお金は何かあっても良い様に一万円は積立と言う形でかくほしてます。
ただ私達は会社に勤めているわけではないので国民年金を支払わなくてはいけないので、そこで月の予算を切るかどうかになってしまいます」
「あー、そこにもし怪我をしたら一瞬で破たんするわけだ」
「はい。保育園にかけるお金もないしどうすればいいのかわからなくて蒼に相談したんですけどやはり二人では限界がありまして、そこで父にお給料をせめて他の職人んの方達と同じ位とまでは言わないけど近い金額が欲しいと言ったら
『お前の給料が家に入らなかったら暮してけれないじゃないか』
ってお母さんに言われちゃいました。
因みに二人とも毎月温泉旅行に行くのを楽しみにしてまして、どうやらそのお金が私の給料に支払われる物だったのです」
何も知らなくって私ほんとバカだと泣きながら笑う実桜さんにもう誰も何も言えなくなってしまった。
だけど綾人はここで
「で、そこで何で俺に相談になるんだか」
盛大に呆れて見せれば周囲の視線が殺気立っていた。
「何でって、綾っち無駄に家がいっぱいあるから一つぐらい貸したっていいじゃん!」
川上が噛みついて来たけど、俺はなんでそうなるんだと言う様に首を傾げ
「収入もなく、自分で仕事も見つけられないのに何で俺が建て替えたばかりの家に無償で住ませる理由になる。
そもそも今まで疑問に思わなかった実桜さんの責任だし、それこそいま直ぐ俺に相談じゃなくてハローワークに行くべきだろう。仕事さえ選ばなければよりどりみどりだ。それに最低賃金でフルに働いても十万はよゆうに超える。
俺はまずそこからだと思うんだけど、先生、俺間違ってますか?」
「あー間違ってるかどうかと言えば間違ってないが、もう少しお前は人の心に寄り添う事を覚えろ」
容赦なく切り捨てるなと言う言葉に俺はそれぐらいがこの二人にはちょうどいいんだとぼやいてしまうのだった。
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