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繰り返す変化のない俺の日常 6

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 日下一樹まだ十五歳。
 多分檀家さんなのだろうがいきなり親の許可を取ったと思ったら山奥に連れて行かれたと思ったら江戸時代にタイムスリップまでしていて呆然とした。
 鞄を抱えて見上げる風格漂う古めかしい家と妙に新品なのだが古めかしいデザインの家、更に幾つも建物もあるし、畑もある。いやこっちに来て知ったのだけど街中でなければどの家にも庭先には畑があるが、ここまでがっちりと柵に囲まれた畑はまず見た事はなく牧歌的な後継に違和感を漂わせていた。
 さらに何故か足を踏んで去っていく鶏が闊歩してるし
「綾っちー、掃除したから離れ借りても良い?」
「山田、綾っち言うな」
「綾っちー、スイッチかしてー。スマブラで徹る」
「綾っち言うな。それと園田は受験生な事を自覚しろ」
「綾っち、今日の晩ご飯水野がマズ飯にした」
「料理担当上島何とか食材を救出しろ!あと綾っち言うな!
 植田はなんで水野から目を離した!!!」
「植田パイセンいま超極楽お風呂タイムですから」
「くっそ、そんな隙があったか」
「まあ、単なるドキドキワクワクの謎鍋だから。食べれないわけじゃないだろうから何とかなるだろう」
 すっきりとした顔である種のやりきった感を開き直って見せた水野。
「まずいけどまだ食べられるレベルだし?」
「カレーのルーあっただろ?出汁を効かせてなんちゃって和風カレーに出来ない?」
「あ、いま圭斗さんがフォローしてます」
「よっし!これはどんな事があっても全員食べきれフラグだぞ!」
 どんな大事故になっても食べきれよと四つん這いになって項垂れるこの家の主の綾っち、本名はまだ知らない、がやっと家に帰って来たのにいきなり水野のまず飯カー、それもまた懐かしいなーと四つん這いから畳の上に潰れて泣いていた。
「まぁそこまで泣くな。
 具の内容を考えなければカレーとしての味はまともだから期待していいぞ」
 言えばここまで車に乗せて来てくれた篠田圭斗さんが弟の陸斗さんを連れて囲炉裏にカレーなべを引っ掻けて囲炉裏に火をくべていた。
 リアル囲炉裏すげーなんてオブジェじゃなくって実用しているの何て初めてだと驚きながら竈で炊いたご飯を炊飯器に移して持って来てくれたと言うか、竈でご飯焚いてるのにも驚きだと言うのに盛られたごはんにはおこげがあって、全員がカレーをかける前におこげのご飯旨いよなーと楽しんでいて
「おこげ旨いぞ」
 圭斗さんに言われて俺も摘まんでみれば
「香ばしい、美味しい……」
 思わず目を瞠って夢中になって食べてしまった。
「まあ、この時期の古米は随分乾燥してるからな。今の時期の方がカリッと焦げておこげにするには向いてるよな」
「新米は新米でもちっとして美味しいから好きだけどね」
 綾っちさんがご飯のおこげで復活をして、和風カレーのルゥをおこげですくってにんまりと笑っていた。
「やっぱり米うめえ!」
「ずーっとオリオールと飯田さんのご飯食べておいて何我が儘な事言ってる」
 圭斗さんがカレーを一通り全員にいきわたる様によそってくれた。
「それとこれとは別なんだよ。
 さてだ。みんな俺の留守の間この家の面倒を見てくれてありがとう。
 俺が一ヶ月ほどヨーロッパ遊学していて居ない間に麓の家も出来上がり、柵の工事も終わって、運よく水野、上島、植田が住み込みでこの家の面倒を見てくれてたから雑草にのみこまれる事無く木々の枝葉に覆われる事もなく済んで、お前達に草刈りと剪定の技術を教え込んだ俺を褒め称えたい」
 ぶーぶーと俺達をもっと誉めろと言う三人にみんな笑い
「圭斗と陸斗にも無茶行って大切な夏休みを俺の我が儘にも付き合ってもらって香奈にも寂しい思いさせたけどあいつにはブランドのバッグをせがまれたからそれでチャラだから俺はもう悪くも何もないと開き直る」
「おお、いいぞー。開き直れ。
 俺達もこっちに戻って来た時空港にお迎え来てくれた時にしっかりと飯をおごらされたから気にするなー」
 ちゃんと短いながらも思い出は出来たからと気にするなと言う香奈さんは圭斗さんの妹で陸斗のお姉さんだと言う。今はギリ東京暮らしをしている社会人だと隣に座る植田さんが教えてくれた。
「まぁ、なんか異様にウコ達が少なくなったのが気になったが、そこは後からの事後報告で良いぞ」
 誰もがさっと顔を背ける当たり何かがあったのかぐらいは理解できた。
「とりあえずフランスの城の管理で年に二度ほど向こうに行く事を考えている。ひょっとしたらまた手を貸して貰わないといけないかもしれないが、今回のように運よく夏休みと言うタイミングじゃないだろうし、一週間程度の渡航になるだろうから何とかなるだろうと言う楽観的な部分もある。
 いつか自腹で向こうに行く時は部屋を用意してやるから遊びに行ってくれ」
「綾っちー、普通に招待してくださーい」
「植田悪いな。働かん奴らを招待する謂れはない」
「相変わらず鬼畜www」
 なぜか喜ぶ眼鏡をかけた植田さんはそれでも嬉しそうに頂きますする前からカレーをもう食べていた。否植田さんだけじゃなく水野さんや上島さんも食べていて、さすがに他の方々はえ?もう食べちゃっていいのと言う顔をしていた。
「あと、今回から元理科部に新メンバーがはいった。
 住職の所の日下一樹だ。
 みんな知っての通り引っ越してきて中学三年の三学期からこっちに来ると言う何の罰ゲームか判らないタイミングの引っ越しにこっちの人間関係がうまく作れなかったらしい」
「綾っちとどっちが上ですか?!」
「あー、俺は人間関係作ろうとしなかったから俺の方が下かな?」
「良かったな、綾っちに褒められてるぞ」
 どこに褒められる要素があったのか知らないが
「とりあえず、一樹は学校でも肉体的な暴力を受けていたようで。お前らが出来るフォロー何てたかが知れているかもしれないがみんな記憶に残っているように理不尽な扱いを受ける為に俺達は生まれてきたわけじゃない。
 誰かの自己満足を満たす為に生まれてきたわけじゃない」
 綾っちが、全員が俺を見ている事に気が付いて反射的に体がすくんで何も言えなくなっていた。
「とりあえず二学期中間までには結果を出す。そして二学期の期末には下手に何も言われない環境を作る。あとは何でこんな状況になってるか知らない地元以外の奴らに任せよう」
「まぁ、うちの学校地元と地元じゃないかで大きく別れるからね」
 つまらなさそうに言う植田に
「そしてこいつはそのどちらにもなじめなかった少しシャイで不器用なお子様だ」
 ニヤニヤと意地悪く言う顔はわざと言ってると言った物。ムカッとするも周囲は面白いおもちゃ見つけちゃったと言うような憐れみを向けられてしまった。ああ、完全におもちゃになったなと思う合間に水野さん達卒業生三人組はカレーのおかわりを勝手にやっていた。食べ始めて三分も経ってなかったのに何この人達と唖然と眺めていれば皆さんらっきょうをポリポリと齧りだしていた。
「まぁ、このまま説明をすると飯を全部食われるから、一樹、お前から何か質問あるか?」
 俺の挨拶はどうでもいいらしい。
 とりあえずだ
「日下一樹です。良ければ皆さんの名前教えてください。特に綾っちさん」
 ぶほっと誰かのらっきょうが囲炉裏に飛んでくのを誰もが笑い
「おら、お前らが綾っちってしか言わないから俺の名前が綾っちになったぞ」
 言いながらカレーのなべから好きな具材なのか牡蠣を取り出してはそればかりを盛り付ける綾っちはついでに鶏肉も取り出していた。
「こら綾人、行儀が悪いぞ」
「知るか!具が野菜しかないのは俺を綾っちと呼んだ奴らのせいと思え!」
「わ、マジ綾っち大人気ねえ!」
「これが大人の本気だ!」
「綾っち好き嫌いするの良くないって言うかタンパク質下さい!」
「ミルワームでも食っとけ!」
「「「「「「ごめんなさー!」」」」」」
 どうやら盛大な地雷を踏んでしまったらしく自己紹介何てどうでもいいと言う様に賑やかな食卓は家では絶対ありえない所か体験もした事のないようなにぎやかな、楽しい食事の場につられるように、こっちに引っ越してから始めて心から笑うと言う事を思い出すのだった。

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