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繰り返す変化のない俺の日常 4

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 汚れた白いシャツ、砂ぼこりの付いたズボン。肘や腕には擦過傷が幾つもあり、頬には殴られたようなあざがある。
 一瞬陸斗が身動きできないくらい固まってしまったのは一年前の記憶はまだ生々しく、罅の入った骨は完治してもまだ無意識のようにかばう姿はそれだけ恐怖が沁み込んでいると言う証拠。
「一樹、それはどうした……」
 強張る住職の声になんでいつも誰もいないここにこんなにも人がいると言いたげな一樹と呼ばれた住職の息子さんは
「転んだ……」
 視線所か背中を向け出して逃げようとした姿に俺は圭斗の脇を突けばすぐにスマホを取り出して
「あ、お世話になってる篠田陸斗の父の圭斗と申します。
 今お寺で日下さんと話をしていたら学校帰りの一樹君がなぐられたような痕があり、ええ、本人は転んだとはいってますが見た目の傷の割に服が破れたりしてなくて故意による怪我の可能性が大きく、はい。とりあえず本人は隠したくしたいようですが、うちの陸斗みたいに骨にひびを淹れられたり入院騒ぎになる前に対処してほしく……
 ええ、報復にも怯えて言いだせないようなので、よろしくお願いしますよ?」
 俺は圭斗からスマホを取り上げて学校で電話を取り上げた人に連絡を取るのだった。
「おい!何勝手な事してんだよ!」
 可哀想に報復を恐れて顔を真っ青にして俺に突っかかってくるもその間に圭斗を始めとした園田達、深山の草刈り部隊が立ちはだかった。
 その身長さと夏休みの間真面目に草刈りに駆り出された受験生達は体格も一回り大きくなって一樹を見下ろせば、さすがに親が側に居るとは言え怖いと思ってかスマホを取り上げようとした手を下ろすのだった。
「川上、知ってる事を言え」
 少しきつめな声になってしまったのもお構いなしに言えば
「聞こえたはなしだけど、新しい住職の所の奴が碌に挨拶もしないから始まって、田舎だからバカにしてるとかそんな所」
「あー、田舎の洗礼か。俺も経験したなー」
 とは言え田舎の底辺学校でも学生の本分でもある成績によるヒエラルキーのトップに立って先生事見下していた俺は遠巻きに敬遠されていた自覚はある。
 静かに、穏便に過ごす予定だった三年間は物の見事先生によって破壊され、圭斗と宮下が巻き込まれた賑やかな一年を、学生十二年の間で一番楽しかった事は間違っても口に出さない。照れるとかではなく、何だか素直に認めるのがこそばゆくて言えないだけだけど、それが今もこうやって続く宝となっているのだから出会いとは不思議な物だと思っている。
「まあ、とりあえず住職」
 不安を仕事によって子供なりの未来計画を壊してしまった事を申し訳なく思うも、どのみち前のお寺に居ても碌な未来計画を描けれなかった住職にはこの街に来る選択しか当時はなかったと俺も思っている。
 前住職によろしくと言われて判りましたと言った以上、俺はこの親子を見捨てる洗濯は既に捨て去っていたのでどうするべきかすぐさま考える前にも十分前例はあるのだ。みんな通って来たパターンを繰り返す所から始めようと
「明日から休みだからとりあえず家に連れて行きます。
 お前らも着替えたら荷物を持って家に集合!
 圭斗、悪いけど預けてあるカードでこいつらの食料と先生の焼き鳥買って来てもらえるか?
 あ、俺は今幸田さんを呼んだから先に帰ってるな」
 スマホを操作して幸田さんをお寺に召喚。五分ほどでいきますとすぐに返事が来た。
「とりあえず日曜まで強制イベント発生だ。着替えと勉強道具、草取りの準備してこい!」
 イエエエエッス!!!
 返事だけは良い高校生達のノリについていけない一樹に
「人を見下す奴を正しく見下す気持ちよさを教えてやる」
「ヒュー!綾っち悪役w」
「綾っちいうな」
 川上の冷やかす声にも冷静に対応。
「覚えておけ、所詮この狭い山間に住む狭い人間関係しか作れない心の狭い人間は力でしかマウントを取る事が出来ないんだ。
 世の中それだけじゃ通用しない事どころかそれがどれだけ悪手か知らしめるためにも強くならないといけない。
 正しく言えば力もその一つかもしれないかもしれないが、それだけじゃ足りないのは年月を重ねれば証明できる。
 知力、そして浅くても良いから広い人脈。その中からいくつか深い付き合いを出来る様な相手を探せばいい。
 今はまだ狭い学校生活がすべてかもしれないが、卒業してこの街を離れるとしよう。それまでの常識は通用しなくなるし、圧倒的な学力差があればその後の生活にそいつらと交わる事もない。
 俺が正しい武器を作ってやるからこの狭い町を飛び出すのも親父より各上になって戻って来るのもお前の頑張り次第だと言うのを理解は今は出来ないけど今言った事を覚えてとりあえず家に来い」
 よくわかってないと言う顔だが圧倒されたようにただ頷くしか与えられなかった選択に満足して
「住職、悪いけど日曜の夕方には返しますんで」
「陸斗、下田、葉山よかったな!
 念願の後輩獲得だ!
 園田がさっきまでのシリアスな空気をぶち壊すように下田と葉山の肩を抱いて笑顔を見せる。
 園田も判ってるなー。笑顔こそ最高の武器だと言うのを理解するようになったと心の中で褒め称えていれば
「五右衛門風呂入った事あるか?まずは入れないから楽しみにしてろよ。あと竈で焚くご飯も美味いから。絶対病み付きになるし、俺達の一個上の水野先輩がいるけど先輩の作るごはんがマズ飯か普通かのスリルも楽しみだし!
 何もない山だけど退屈する暇もないから楽しみにしてろよ」
「園田、誉めてるかけなしてるか判らないぞ」
 絶対馬鹿にしてるだろうと言う物の
「いやいや、世界的クラッシックの演奏者や一流のシェフが出入りする家をけなすわけないでしょ?
 ましてや今や登録者数百万人突破した動画配信者の住まいを一緒に体験できるなんて貴重な体験ですよ?」
「は?」
 何か異様な数字を聞いたような気がしたけどそこは軽く無視をした。
「オリヴィエ効果じゃないけどやっぱり世界的なバイオリニストってすごいっすねー」
「チョリさんの正体とか、二人ともフランスの城の件があるとはいえ綾っちと宮下さんの応援の為にぶっちゃけ過ぎだけど」
「いや待て、綾っち言うなって言うか何で宮下さんなんだよ。普通俺の事を綾人さんとか吉野様とか言うべきだろ園田?」
 言っていたのは山田だけど園田に振れば
「ええと、宮下さんの人徳?」
 宮下に餌付けされた学年は信用ならねぇ……
「なんでだー?!おまえら土産なしだ!!!」
「そこが人徳の差!」
「横暴だ!」
「うるせぇっ!!!」
 土産なしと言っても怪しい向こうの駄菓子を残されても俺が困るだけだからちゃんと渡すしそれも予測してるだろうあいつらもしっかり貰う気でいるけど、このテンションをまだ知らない一樹はただ父親の背後に隠れる様に俺達の言い合いに怯えるように眺めていて
「とりあえずだ!」
 言いながらバアちゃんとジイちゃんがが眠る墓に手を合わせて
「しばらくまた忙しくなるから。町に来た時はまた来るから」
 そう言って蝋燭を消してお線香は自然に燃え尽きるのを見ずに新しい花が飾るお墓の前から去る……家の墓は古いから一番お寺の本堂に近い場所にあるだけあって便利だけど周囲から丸見えなのを振り向いた奥様方の心配気な視線を知らない顔をして迎えに来た幸田さんのタクシーに乗って家に帰るのだった。


 
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