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手を伸ばしても掴みとれないのなら足を運んで奪いに行けば良い 1
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予定通りルーブルを午前中だけの時間を使って見学した。
はっきり言おう。何も見れなかったと言うにふさわしい時間だった。
一日巡っても巡りきれない美の館はとりあえずお目当ての物だけ見るにとどめる。
お目当ては当然モナリザ様。
小学校の時から何度も教科書でお会いした女性との対面は感慨深く、俺はこの一点だけを記憶にとどめる様に見つめ合っていた。
この一枚からどれだけのドラマが生み出されたか、ロマンが生まれたか、そして今もどれだけの人が恋焦がれているかなんて星の数ほどあるだろう。
単に数を数えるのがめんどいと言う点でだが。
俺は集合の時間までひたすら壁際まで下がって目の前を通り過ぎる人並み事目に焼き付ける。
彼女と対面して挨拶をする人。足を止めて涙する人、もちろん通り過ぎて行く人もいる。俺のように足を止めて模写する人もいるし、じっと見つめ合う人もいる。
彼女を取り巻く人間模様でもこれだけドラマがあるのにさらに人はドラマを盛り込みたい、彼女に纏わる小説を何冊も読んだ俺としては生憎文才には恵まれずそのドラマを楽しむだけの悲しい人間だ。
とは言えだ。
スマホがプルプルと騒ぐので仕方がなく出口へと向かい、合流場所で既に待っていた宮下と圭斗、陸斗と岡野夫妻と合流した。
「綾人さんずいぶんゆっくりでしたね」
お土産を手にテンション高い岡野夫妻と同様土産を大事に抱える陸斗が対照的で微笑ましい。
「陸斗も土産買えたか?」
「はい。綾人さんがくれたバイト代で先輩達にもちゃんと買えました」
良い子や。決して高くはないバイト代と言うか安くないお土産代だと言うのに全部使ってまで買おうと言う心意気!ご利用は計画的にと圭斗にちゃんと言っておこう。
まぁ、圭斗の背中を見て育ってるから大丈夫だと思うけどね。
「じゃあ次はカフェでいいかな?」
実桜さんが楽しくてしょうがないと言う顔を隠せないままスマホの地図を見せてここに行こうと言う。
俺達だけだとマックいかねー?なんて展開になる所だが、女の人一人いるだけでカフェになるんだと感心しながら先に進むその背中について行く。
結局のところ凛ちゃんはお城でお留守番になった。
子守もいないし誰に頼むんだかとリヴェットとオラスを待っていればリヴェットは女性三人を連れてやって来た。
まだまだ工事中の城を見上げながら車を降りたリヴェットと同じぐらいの年齢の女性はまず前の晩に実桜さんが整えてくれてそれだけで見違えるようになった庭を構える城を見てこんな立派な所に!なんてはしゃいだ後、俺の紹介、そして本日のお仕事、凛ちゃんのお世話を受け入れてくれた。
まだ一歳にもならない、立って伝い歩きを覚えた凛ちゃんの幼さに三人の女性、クロエ・リヴェット、パトリシア・オラス、そしてアグラエ・オルタと言う名前からわかる様にリヴェットとオラス、そして最後の方はオリオールの元奥さんだった。
リヴェットの明るい声に俺達の方が居た堪れなかったが、どこかやつれた様にやせ細ってる彼女はそれでもオリオールを見て気まずそうな笑みがこぼれるも、自力で歩けない子供を抱き上げればどれだけ歳を重ねても残る母性に自然と笑みが溢れるのだった。
そもそも二人はいがみ合って、憎しみ合って別れたわけではない。
借金の追立から彼女を守る為に選んだ選択だ。きっとこう言うのを悲しい選択と言うのだろうが、新たに再出発したオリオールに胸を張って迎えに行くにはまだ早いとは言えかつてのように顔を合わせない方が幸せな環境ではなくなっていた。
二人は凛ちゃんを母親に返して少し庭を案内すると言って出かけて行ったが
「リヴェット、こう言うのは先に言ってよ」
「いや、二人の事は気にしてたんだ。クロエとパティの説得が無ければ今朝は無理だったんだぞ?」
胸を張る白髪の美しいレディ達は説得に成功して自慢げに笑みを浮かべる。
ああ、絶対肝っ玉系母ちゃんだなと納得している間に飯田さんがこの人数が乗れるレンタカーに乗ってやってきて
「さあ、パリの名物の渋滞に巻き込まれたくなければ急いで移動しましょう!」
「綾人お土産よろしくねー!」
車に乗りこめば朝ごはんを食べに来ていたマイヤーとオリヴィエのお見送り。
オリヴィエも誘いたかったのだが本日はお仕事の打ち合わせにデューリー氏が迎えに来ていた。まぁ、少し前までパリのホテル暮らしだったオリヴィエだから珍しくもない所だから一緒に行けないのが寂しいだけで、だけど陸斗にあそこの店が、あの店はとかいろいろ教えている姿がどっちがお兄さんか教えてもらいたいような関係に、既に保育園に通っている凛ちゃんはあまり人見知りをしなくオリオールに抱っこされて見送りをしてくれるのだった。
そんなわけで身軽な二人は久しぶりに味の濃い物を食べたいとの事で大通りに面した、という有名店ではない穴場的な店を選んでくれた。
エビのカクテルにオイスター、フランスパンにガーリックバターをたっぷり塗ってエビのビスクを頂く。どれ一つとっても日本でも珍しくないメニューのはずなのに不思議な事に本場で頂くとどれもこれもおしゃれで陸斗なんかは目を回していた。
その後は時間を決め岡野夫妻と別れてぶらり街の探索になった。
陸斗は隣の家の女の子とその友達の分のお土産に悩んでいて、とりあえず無難にストラップなんてどうだ?と勧めておいた。
女の子にお土産を買う体験のない陸斗はその提案に従って懸命にストラップを選ぶ。だけど何か思い出したように俺達の顔を見た後飯田さんへと何か内緒話をしていた。
物凄い困り顔で。
とりあえず圭斗は心配していたけど俺は
「後から聞けばいいだろう、お小遣いが足りなければお父さんから少しお小遣いを渡すのも旅先の思い出だぞ」
どうなるかの展開の方が気になって圭斗を言いくるめる。
余計にしかめっ面になったものの、陸斗はちゃんとお小遣いの中で買い物を終えて飯田さんに頭を何度も下げていた。
「さあ、飯田さん白状しよう。
陸斗は何を買ったんだい?」
思いっきり悪代官的な顔で問い詰めれば宮下はそう言うのは聞くもんじゃないよと言うも飯田さんは笑顔で
「出掛けに隣の子とあったようでお土産を強請られたそうです。
花火大会を誘ってくれるつもりだったのですが、旅行で無理な事が判ったから代わりに何か可愛い物買ってきてって強請られたそうですよ」
「わー、あの二人まだその段階か」
「良いじゃないですか。即物的な大人と違って健全ですよ?」
確かにと唸る圭斗だがお父さんはどうやら心配性らしい。
「因みにネックレスをお買い上げしてました。
シンプルなアンティークネックレスです。可愛い猫ちゃんが付いてました」
高校生っぽくて可愛いですねと笑う飯田さんはどうやら二人と言うか彼女を応援するつもりらしい。
まぁ、隣同士仲がいいのは良い事だが、喧嘩した時は最悪だぞと心の中で突っ込んでしまうのはお隣同士と言う距離が俺にも覚えがあるからだ。
売り払った東京に住んでいた時のマンションの隣の部屋に住む幼馴染は今も連絡をくれるし俺も今も連絡を取る。年に一度二度ほどだが不思議な事に縁は今も途切れていない。
小さい頃なんて何が切っ掛けで喧嘩したかなんてないに等しい理由でも同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校と言う縛りは少々息苦しい時もあったが、今高校生達との集団生活を繰り返して振り返れば仲間と言うより兄妹みたいなものだったかなと少しだけ懐かしく思い
「たまには手紙でも書くか」
すぐ側の露店で売っていた街並みのポストカードを買うのだった。
はっきり言おう。何も見れなかったと言うにふさわしい時間だった。
一日巡っても巡りきれない美の館はとりあえずお目当ての物だけ見るにとどめる。
お目当ては当然モナリザ様。
小学校の時から何度も教科書でお会いした女性との対面は感慨深く、俺はこの一点だけを記憶にとどめる様に見つめ合っていた。
この一枚からどれだけのドラマが生み出されたか、ロマンが生まれたか、そして今もどれだけの人が恋焦がれているかなんて星の数ほどあるだろう。
単に数を数えるのがめんどいと言う点でだが。
俺は集合の時間までひたすら壁際まで下がって目の前を通り過ぎる人並み事目に焼き付ける。
彼女と対面して挨拶をする人。足を止めて涙する人、もちろん通り過ぎて行く人もいる。俺のように足を止めて模写する人もいるし、じっと見つめ合う人もいる。
彼女を取り巻く人間模様でもこれだけドラマがあるのにさらに人はドラマを盛り込みたい、彼女に纏わる小説を何冊も読んだ俺としては生憎文才には恵まれずそのドラマを楽しむだけの悲しい人間だ。
とは言えだ。
スマホがプルプルと騒ぐので仕方がなく出口へと向かい、合流場所で既に待っていた宮下と圭斗、陸斗と岡野夫妻と合流した。
「綾人さんずいぶんゆっくりでしたね」
お土産を手にテンション高い岡野夫妻と同様土産を大事に抱える陸斗が対照的で微笑ましい。
「陸斗も土産買えたか?」
「はい。綾人さんがくれたバイト代で先輩達にもちゃんと買えました」
良い子や。決して高くはないバイト代と言うか安くないお土産代だと言うのに全部使ってまで買おうと言う心意気!ご利用は計画的にと圭斗にちゃんと言っておこう。
まぁ、圭斗の背中を見て育ってるから大丈夫だと思うけどね。
「じゃあ次はカフェでいいかな?」
実桜さんが楽しくてしょうがないと言う顔を隠せないままスマホの地図を見せてここに行こうと言う。
俺達だけだとマックいかねー?なんて展開になる所だが、女の人一人いるだけでカフェになるんだと感心しながら先に進むその背中について行く。
結局のところ凛ちゃんはお城でお留守番になった。
子守もいないし誰に頼むんだかとリヴェットとオラスを待っていればリヴェットは女性三人を連れてやって来た。
まだまだ工事中の城を見上げながら車を降りたリヴェットと同じぐらいの年齢の女性はまず前の晩に実桜さんが整えてくれてそれだけで見違えるようになった庭を構える城を見てこんな立派な所に!なんてはしゃいだ後、俺の紹介、そして本日のお仕事、凛ちゃんのお世話を受け入れてくれた。
まだ一歳にもならない、立って伝い歩きを覚えた凛ちゃんの幼さに三人の女性、クロエ・リヴェット、パトリシア・オラス、そしてアグラエ・オルタと言う名前からわかる様にリヴェットとオラス、そして最後の方はオリオールの元奥さんだった。
リヴェットの明るい声に俺達の方が居た堪れなかったが、どこかやつれた様にやせ細ってる彼女はそれでもオリオールを見て気まずそうな笑みがこぼれるも、自力で歩けない子供を抱き上げればどれだけ歳を重ねても残る母性に自然と笑みが溢れるのだった。
そもそも二人はいがみ合って、憎しみ合って別れたわけではない。
借金の追立から彼女を守る為に選んだ選択だ。きっとこう言うのを悲しい選択と言うのだろうが、新たに再出発したオリオールに胸を張って迎えに行くにはまだ早いとは言えかつてのように顔を合わせない方が幸せな環境ではなくなっていた。
二人は凛ちゃんを母親に返して少し庭を案内すると言って出かけて行ったが
「リヴェット、こう言うのは先に言ってよ」
「いや、二人の事は気にしてたんだ。クロエとパティの説得が無ければ今朝は無理だったんだぞ?」
胸を張る白髪の美しいレディ達は説得に成功して自慢げに笑みを浮かべる。
ああ、絶対肝っ玉系母ちゃんだなと納得している間に飯田さんがこの人数が乗れるレンタカーに乗ってやってきて
「さあ、パリの名物の渋滞に巻き込まれたくなければ急いで移動しましょう!」
「綾人お土産よろしくねー!」
車に乗りこめば朝ごはんを食べに来ていたマイヤーとオリヴィエのお見送り。
オリヴィエも誘いたかったのだが本日はお仕事の打ち合わせにデューリー氏が迎えに来ていた。まぁ、少し前までパリのホテル暮らしだったオリヴィエだから珍しくもない所だから一緒に行けないのが寂しいだけで、だけど陸斗にあそこの店が、あの店はとかいろいろ教えている姿がどっちがお兄さんか教えてもらいたいような関係に、既に保育園に通っている凛ちゃんはあまり人見知りをしなくオリオールに抱っこされて見送りをしてくれるのだった。
そんなわけで身軽な二人は久しぶりに味の濃い物を食べたいとの事で大通りに面した、という有名店ではない穴場的な店を選んでくれた。
エビのカクテルにオイスター、フランスパンにガーリックバターをたっぷり塗ってエビのビスクを頂く。どれ一つとっても日本でも珍しくないメニューのはずなのに不思議な事に本場で頂くとどれもこれもおしゃれで陸斗なんかは目を回していた。
その後は時間を決め岡野夫妻と別れてぶらり街の探索になった。
陸斗は隣の家の女の子とその友達の分のお土産に悩んでいて、とりあえず無難にストラップなんてどうだ?と勧めておいた。
女の子にお土産を買う体験のない陸斗はその提案に従って懸命にストラップを選ぶ。だけど何か思い出したように俺達の顔を見た後飯田さんへと何か内緒話をしていた。
物凄い困り顔で。
とりあえず圭斗は心配していたけど俺は
「後から聞けばいいだろう、お小遣いが足りなければお父さんから少しお小遣いを渡すのも旅先の思い出だぞ」
どうなるかの展開の方が気になって圭斗を言いくるめる。
余計にしかめっ面になったものの、陸斗はちゃんとお小遣いの中で買い物を終えて飯田さんに頭を何度も下げていた。
「さあ、飯田さん白状しよう。
陸斗は何を買ったんだい?」
思いっきり悪代官的な顔で問い詰めれば宮下はそう言うのは聞くもんじゃないよと言うも飯田さんは笑顔で
「出掛けに隣の子とあったようでお土産を強請られたそうです。
花火大会を誘ってくれるつもりだったのですが、旅行で無理な事が判ったから代わりに何か可愛い物買ってきてって強請られたそうですよ」
「わー、あの二人まだその段階か」
「良いじゃないですか。即物的な大人と違って健全ですよ?」
確かにと唸る圭斗だがお父さんはどうやら心配性らしい。
「因みにネックレスをお買い上げしてました。
シンプルなアンティークネックレスです。可愛い猫ちゃんが付いてました」
高校生っぽくて可愛いですねと笑う飯田さんはどうやら二人と言うか彼女を応援するつもりらしい。
まぁ、隣同士仲がいいのは良い事だが、喧嘩した時は最悪だぞと心の中で突っ込んでしまうのはお隣同士と言う距離が俺にも覚えがあるからだ。
売り払った東京に住んでいた時のマンションの隣の部屋に住む幼馴染は今も連絡をくれるし俺も今も連絡を取る。年に一度二度ほどだが不思議な事に縁は今も途切れていない。
小さい頃なんて何が切っ掛けで喧嘩したかなんてないに等しい理由でも同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校と言う縛りは少々息苦しい時もあったが、今高校生達との集団生活を繰り返して振り返れば仲間と言うより兄妹みたいなものだったかなと少しだけ懐かしく思い
「たまには手紙でも書くか」
すぐ側の露店で売っていた街並みのポストカードを買うのだった。
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