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夏休みの始まり 8
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チャイムを鳴らせば少し重そうな扉が開く。見た目よりもいかつい扉から現れたのは飛び切りの笑顔が素敵なナイスミドル。
「いらっしゃい綾人君待っていたよ」
「お久しぶりです青山さん。これ少しですが食べてください」
鞄の中にたっぷり詰め込んだトウモロコシに青山はにっこりと笑い
「高遠に渡してきます。それよりどうぞ」
促されるまま一見の高級別荘にも見える優雅な建物の中に足を運ぶ。緑に囲まれ現実から逃避したかのような建物と
だけどそこは何処か事務的なまでの通路。初めて通された時から変わらない動きやすい動線だがその先から聞こえる賑やかな音に振り向けば青山が気を効かせて俺を誘導してくれる。
「皆、綾人君が来たから手を放せる者から休憩に入って」
その言葉に真っ先に手を止めたのが
「やあ綾人君入らっしゃい。所で青山が持ってる鞄から見えるトウモロコシは綾人君のお土産かな?」
「お久しぶりです。今年のトウモロコシです。今年も粒も揃って生でも食べれる位甘くできてますよ」
「薫から聞いてたから楽しみにしてたよ。すぐ茹でるよ」
さすがこの『Mon chateau』のトップに立つシェフ・ド・キュイジーヌ。名前にコンプレックスを持つ飯田さんの名前をさらりと言うあたりこれが通常なのだろうと想像をすれば楽しそうだなと微笑ましい想像をして笑っておく。
そして案内された部屋へと入れば後は給仕をするだけという様に既にお昼の準備はされていた。
さらにチャイムが鳴るのを聞いて青山さんがかけて行く。本日もう一人のゲストが来られたようでしばらくすればこの部屋へと案内されて、俺は数か月ぶりだけど久しぶりの再会に
「ご無沙汰してます沢村さん」
「こちらこそ何時も父の相手をして下さってありがとうございます」
ぺこりと挨拶をしている間にも休憩に入って来た皆さんがやって来た。指定席でもあるかのように椅子に座れば青山さんに俺と沢村さんは席を進められた。俺が一番の上座を貰ってもいいのかなと思うも最後に高遠さんが茹でたばかりのトウモロコシと
「大宮さんが見えました」
「お邪魔します。吉野様がお見えとなってお邪魔させてもらいました」
最後の空いた席には大宮さんが座った事で納得をし、お店の人達が手際よく給仕をしてくれる。
さすがプロ。
給仕をしながら本日の料理を紹介してくれて食べる前だからだろうか涎が止まらなくって青山さんの失笑を買っていた。
「では、綾人君が待ちきれないようだから頂こう」
その挨拶に一斉に頂きますとカトラリーを手にして賄飯と言うには少々豪華で遅い昼食を頂くのだった。
料理の為に肉からお肉を外して残った骨を数日分用意して作った鶏骨スープはあっさり塩仕立てで、これも購入した時の隅の切れ端の部分を寄せ集めた肉団子と一口大の色んな野菜と共に黄金に透き通ったスープを飾っていた。本当はこんな豪華なスープは作らないと飯田さんから聞いてはいたので、今日俺が来るに当たりサービスしてくれたのだろう。皆さんの目が輝いていた理由は本日の賄当番が高遠さんと言うのも一役買っている。夏野菜をふんだんに使ったキッシュの中にはベーコンもゴロゴロと入っていて、メインのアクアパッツァは鯛を三枚におろした片身が豪勢にも振舞われた。
「高遠さんアクアパッツァ美味しいです!
飯田さんよりも白ワインの酸味が効いててすごくあっさりしているはずなのにスープが濃厚で幾らでも飲めそうです」
「気に入ってくれて何よりだよ」
そんな短い感謝の言葉だけど
「薫のと味比べをされるなんて手を抜けないなぁ」
お褒めの言葉よりも後輩がぐいぐいと成長してくる様の方が気になるお年頃なのか、それでも大らかな笑みは年長者の余裕と言う物だろう。
「薫は昔から料理に対する探究心がすごかったからねぇ。兄貴も手を焼いてたのを思い出すよ。ついに一人で台所に入るなって言われてね、その日に破って蔵に閉じ込められて大泣きしていたっけ」
あまりに想像がついて皆で大笑い。可哀想にソムリエの桧山さんは咽てしまって背中を向けて蹲ってしまっていた。
「おとうとの庵は大人しかったけどね、薫は昔から川で釣ってきた魚を捌いてたり罠を作って鳩を捕まえて……なんてしようとしたりしてね。魚はともかく鳩は捕まえちゃいけないから兄貴にド叱られて蔵に放り込まれてたけど。
「放り込まれすぎとかwww」
吹き出すような真似にならないように先に大笑いしていれば皆さん同じ意見なようで食事の手を止めて高遠さんでさえ口元をナフキンで隠して笑っていた。
「まぁ、そんな薫の子供の頃のやんちゃはぶりは親を持って止める事は出来なかった一番のしでかしたのは高校受験の時に『おじさん、東京の方の料理いろいろ勉強したいから下宿させてくれる?え?父さん?知るわけないじゃん。勿論母さんもだよ』って親にも黙って進路変更しやがった時だよ。そんな自由人の薫が恩師のピンチに店を一ヶ月休んで駆けつけに行って、みんなには迷惑をかけて本当に申し訳なく思う」
ああ、今回はこう言った席だったのかと、高遠さんの料理だけど賄にしては豪華な料理に納得が出来てしまった。
「そして今回、薫のあほにそそのかされて綾人君までフランスに行く事になって……
綾人君もほんとあの子の言う事間に受けなくていいからね!叔父として離れのキッチン見て一体いくらかかったのか考えただけでも卒倒しそうになったから、せめてこき使ってやって!薫じゃ話にならないから兄貴にも相談したんだけどやっぱり薫の親だけあって使い心地とか訳の分からないこと言いだしたし……
ほんとに兄貴親子が迷惑かけてごめんね!」
「いえ、まぁ、小山さん込みでこき使えるので、ただより高い物はないかと?」
お酒も飲まずに良いだしたかのように今まで溜まっていた物を吐きだす青山を心配してしまうが、高遠さんは慣れているのかワゴンに鶏骨スープのおかわりをしに行くのを見て俺もおかわりを貰う事にした。
「ああ、小山の奴は元気してるか?」
メートル・ド・テルの鈴木さんが懐かしいと言うように聞くので
「時々ですが飯田さんが来る時山口さん夫妻と一緒に遊びに来てくれます。庭の花の手入れしてもらえるので助かってます」
仕事に振り回してばかりの奥様の為に月に一度こちらに足を運んではバアちゃんの花畑のお世話をしてくれている。
店の花壇を何時かこんな風にしたいと楽しそうに手を入れてくれる姿がバアちゃんを思い出して俺も手伝わせてもらっている。そうだ。今度長谷川さんにこの花畑に降りる階段をちゃんと作ってもらおう。削って踏みしめただけの階段はバアちゃんもそうだったけどとても足場が悪かったなと手すりがあればいいなとリクエストしておこう。
「いらっしゃい綾人君待っていたよ」
「お久しぶりです青山さん。これ少しですが食べてください」
鞄の中にたっぷり詰め込んだトウモロコシに青山はにっこりと笑い
「高遠に渡してきます。それよりどうぞ」
促されるまま一見の高級別荘にも見える優雅な建物の中に足を運ぶ。緑に囲まれ現実から逃避したかのような建物と
だけどそこは何処か事務的なまでの通路。初めて通された時から変わらない動きやすい動線だがその先から聞こえる賑やかな音に振り向けば青山が気を効かせて俺を誘導してくれる。
「皆、綾人君が来たから手を放せる者から休憩に入って」
その言葉に真っ先に手を止めたのが
「やあ綾人君入らっしゃい。所で青山が持ってる鞄から見えるトウモロコシは綾人君のお土産かな?」
「お久しぶりです。今年のトウモロコシです。今年も粒も揃って生でも食べれる位甘くできてますよ」
「薫から聞いてたから楽しみにしてたよ。すぐ茹でるよ」
さすがこの『Mon chateau』のトップに立つシェフ・ド・キュイジーヌ。名前にコンプレックスを持つ飯田さんの名前をさらりと言うあたりこれが通常なのだろうと想像をすれば楽しそうだなと微笑ましい想像をして笑っておく。
そして案内された部屋へと入れば後は給仕をするだけという様に既にお昼の準備はされていた。
さらにチャイムが鳴るのを聞いて青山さんがかけて行く。本日もう一人のゲストが来られたようでしばらくすればこの部屋へと案内されて、俺は数か月ぶりだけど久しぶりの再会に
「ご無沙汰してます沢村さん」
「こちらこそ何時も父の相手をして下さってありがとうございます」
ぺこりと挨拶をしている間にも休憩に入って来た皆さんがやって来た。指定席でもあるかのように椅子に座れば青山さんに俺と沢村さんは席を進められた。俺が一番の上座を貰ってもいいのかなと思うも最後に高遠さんが茹でたばかりのトウモロコシと
「大宮さんが見えました」
「お邪魔します。吉野様がお見えとなってお邪魔させてもらいました」
最後の空いた席には大宮さんが座った事で納得をし、お店の人達が手際よく給仕をしてくれる。
さすがプロ。
給仕をしながら本日の料理を紹介してくれて食べる前だからだろうか涎が止まらなくって青山さんの失笑を買っていた。
「では、綾人君が待ちきれないようだから頂こう」
その挨拶に一斉に頂きますとカトラリーを手にして賄飯と言うには少々豪華で遅い昼食を頂くのだった。
料理の為に肉からお肉を外して残った骨を数日分用意して作った鶏骨スープはあっさり塩仕立てで、これも購入した時の隅の切れ端の部分を寄せ集めた肉団子と一口大の色んな野菜と共に黄金に透き通ったスープを飾っていた。本当はこんな豪華なスープは作らないと飯田さんから聞いてはいたので、今日俺が来るに当たりサービスしてくれたのだろう。皆さんの目が輝いていた理由は本日の賄当番が高遠さんと言うのも一役買っている。夏野菜をふんだんに使ったキッシュの中にはベーコンもゴロゴロと入っていて、メインのアクアパッツァは鯛を三枚におろした片身が豪勢にも振舞われた。
「高遠さんアクアパッツァ美味しいです!
飯田さんよりも白ワインの酸味が効いててすごくあっさりしているはずなのにスープが濃厚で幾らでも飲めそうです」
「気に入ってくれて何よりだよ」
そんな短い感謝の言葉だけど
「薫のと味比べをされるなんて手を抜けないなぁ」
お褒めの言葉よりも後輩がぐいぐいと成長してくる様の方が気になるお年頃なのか、それでも大らかな笑みは年長者の余裕と言う物だろう。
「薫は昔から料理に対する探究心がすごかったからねぇ。兄貴も手を焼いてたのを思い出すよ。ついに一人で台所に入るなって言われてね、その日に破って蔵に閉じ込められて大泣きしていたっけ」
あまりに想像がついて皆で大笑い。可哀想にソムリエの桧山さんは咽てしまって背中を向けて蹲ってしまっていた。
「おとうとの庵は大人しかったけどね、薫は昔から川で釣ってきた魚を捌いてたり罠を作って鳩を捕まえて……なんてしようとしたりしてね。魚はともかく鳩は捕まえちゃいけないから兄貴にド叱られて蔵に放り込まれてたけど。
「放り込まれすぎとかwww」
吹き出すような真似にならないように先に大笑いしていれば皆さん同じ意見なようで食事の手を止めて高遠さんでさえ口元をナフキンで隠して笑っていた。
「まぁ、そんな薫の子供の頃のやんちゃはぶりは親を持って止める事は出来なかった一番のしでかしたのは高校受験の時に『おじさん、東京の方の料理いろいろ勉強したいから下宿させてくれる?え?父さん?知るわけないじゃん。勿論母さんもだよ』って親にも黙って進路変更しやがった時だよ。そんな自由人の薫が恩師のピンチに店を一ヶ月休んで駆けつけに行って、みんなには迷惑をかけて本当に申し訳なく思う」
ああ、今回はこう言った席だったのかと、高遠さんの料理だけど賄にしては豪華な料理に納得が出来てしまった。
「そして今回、薫のあほにそそのかされて綾人君までフランスに行く事になって……
綾人君もほんとあの子の言う事間に受けなくていいからね!叔父として離れのキッチン見て一体いくらかかったのか考えただけでも卒倒しそうになったから、せめてこき使ってやって!薫じゃ話にならないから兄貴にも相談したんだけどやっぱり薫の親だけあって使い心地とか訳の分からないこと言いだしたし……
ほんとに兄貴親子が迷惑かけてごめんね!」
「いえ、まぁ、小山さん込みでこき使えるので、ただより高い物はないかと?」
お酒も飲まずに良いだしたかのように今まで溜まっていた物を吐きだす青山を心配してしまうが、高遠さんは慣れているのかワゴンに鶏骨スープのおかわりをしに行くのを見て俺もおかわりを貰う事にした。
「ああ、小山の奴は元気してるか?」
メートル・ド・テルの鈴木さんが懐かしいと言うように聞くので
「時々ですが飯田さんが来る時山口さん夫妻と一緒に遊びに来てくれます。庭の花の手入れしてもらえるので助かってます」
仕事に振り回してばかりの奥様の為に月に一度こちらに足を運んではバアちゃんの花畑のお世話をしてくれている。
店の花壇を何時かこんな風にしたいと楽しそうに手を入れてくれる姿がバアちゃんを思い出して俺も手伝わせてもらっている。そうだ。今度長谷川さんにこの花畑に降りる階段をちゃんと作ってもらおう。削って踏みしめただけの階段はバアちゃんもそうだったけどとても足場が悪かったなと手すりがあればいいなとリクエストしておこう。
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