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斬 6
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山の家を下りて三十分、麓まで下りてきた所で宮下にやっと麓の家の紹介が出来る事になった。真っ先に案内したかったが大工チームの草刈り部隊の相手の手数の少なさにこっちに来てもらったのでさらっと概観しか見せる事が出来なかったけどやっと家の中を案内する事が出来て少しだけホッとした。
何も相談せずに俺が勝手に決めた間取りなので見たらこの家の使い方がばれるかな?怒るかな?軽蔑されるだろうかと不安は尽きないが圭斗と内田さんのトラックと道路に数台のワゴンが止まっていた。
草刈り部隊の人はせっかくこっちに来たので観光を兼ねて午前中に解散したはずなのにまだ残っている人がいるのかと思って見覚えのある車を見ながらこんにちはーなんてドアを開ければ
「ああ、吉野の。やっと宮下のせがれを連れてきたか」
「何だ、買い出しか?」
長沢さんと圭斗がドアを開けた場所で仕事をしていた。
「まぁ、買い出しの前に麓の家を生で見せに?」
ビデオを撮ってこれでもかと見せたつもりだが、実際肉眼で見るのは全く違う。
「説明するよりも宮下の場合実際見せた方が早いからな」
言いながらお邪魔しますと先生の家の方から見せるのだった。
玄関を上がってすぐ横は広い玄関ホール。
あれからいろいろ話し合って土間に変えたのだ。
三畳ほどの板の間だったけど玄関から上がる事なくオープンシューズクローゼットな感じに変えてしまった。
実際は靴を置く棚とその上に花を飾るような空間、そして広い土間には長椅子を作りつけて誰かが来た時には家に上がる事なくここで話しが出来たりする場所になる。
急な変更も直ぐに対応してくれてありがたいと言うかこう言う所は知り合いって融通がきいていいよなとすぐに変更が聞く当たり感謝だ。当然料金は追加になるが……
そこは俺の我が儘代として納得しよう。
「あー、お風呂場の脱衣所作ったんだ」
「さすがにないとな」
苦笑すれば納戸潰したんだねと言いながら壁を壊したので風呂場と納戸が丸見えなのが随分恥ずかしい状態だけど
「これだけ広いと家の中に洗濯機もおけるね」
「そういや先生の家で洗濯したトコ見た事なかったな」
「コインランドリー使ってたよ」
それは必要になるかと思うも壁にはりつけられた設計図を見ればいつ使うか判らないのに浴室乾燥機完備になっているこの風呂場を「役に立つのかな」と苦笑しながら見回してから廊下を挟んだ台所へと向かう。
キッチンはまだ来てないので配管がむき出しだが明るい室内は新しいフローリングが木屑でもさっとなっていた。
仕方がない。
どこを踏んでも床が抜けそうになるこの家で足場の確保は安全の一歩だ。
下の方は缶ビールの飲み残し空の湿気で総て張り替えとなったし、予定してた壁とは少し趣向が凝らされて、若手の大工さんの練習現場となったのはもう言うまい。
あれこれこうしてほしいと口は出すが、住まいに関しては別にこだわりのない俺は最初のイメージが崩れなければ予算内なら問題なしと言うのは前回の離れで皆さん理解してか楽しそうに改造して下さっている。
俺の感性が酷いのが一番問題なのでよくしてくれる分なら問題ないし、多少の増額は仕方がないと割り切っている。なんせ、俺が思うには技術料はほぼプライスレス。俺の計算だと実費だけなので寧ろ得をさせてもらっていると俺は思っている。
「あ、この欄間は壁にはめ込んだんだ」
「内田のじいさんの作品だってさ。綺麗だからどこかにってなったらこの大きさだからな。良く見える様にここに持って来てもらった」
「酷い家だったからね。埃が積ってたけどこの欄間が輝いて見えた」
「俺には欄間の鷹が掃除しろって睨みつけているようにしか見えなかった」
「確かに睨まれても仕方がないよね」
何度掃除をしても元通りのこの不思議な家にはもう缶ビールの空き缶は転がってない。怪奇現象じゃないのだから先生が入らなければ普通の家だ。怯える事はないと二階へと案内をする。
宮下も上がり慣れた二階は街並みを一望するには特等席でこの街で花火大会があれば絶対文句なしにいい場所だろうと思ってしまう。
「二階はあまり変えないんだね」
「まぁ、イメージ画像みたいにこじんまりとした俺の住処が出来上がる予定だけどな」
「綾人の部屋でこじんまりって想像できないなー」
あの大きな山の家をよく知る宮下の感想に俺の部屋はコンパクトで全部が手が届くような作りだぞと言うもあの部屋は物を詰め過ぎと逆に注意されてしまう。
「いいんだよあれは」
家具一つも置いてない部屋が幾つもある部屋に対してのあの密度は倉庫と言うのかもしれないが俺はあの部屋が一番居心地がいいと思うのだから良いだろうと言っておく。
「で、隣の家はどんなふうになってるの?」
「ふふふ、この家の別名はニコイチハウス。
なんと間の通路が出来たから見てもらいたい!」
階段を下りて隣との家の段差のすうだんの階段を前にして言えば
「雨漏り大丈夫?」
「それ!全員に言われた!!!」
「うん。判ってても言いたかった!」
きりっとした顔で言うのは確信犯。共犯者は幼馴染と言う所か。
「まぁ、圭斗に雪かきを頑張ってもらうだけだしな」
「圭斗が不憫」
酷いと泣き真似をする宮下こそ友情を確認したくなる物だった。
何も相談せずに俺が勝手に決めた間取りなので見たらこの家の使い方がばれるかな?怒るかな?軽蔑されるだろうかと不安は尽きないが圭斗と内田さんのトラックと道路に数台のワゴンが止まっていた。
草刈り部隊の人はせっかくこっちに来たので観光を兼ねて午前中に解散したはずなのにまだ残っている人がいるのかと思って見覚えのある車を見ながらこんにちはーなんてドアを開ければ
「ああ、吉野の。やっと宮下のせがれを連れてきたか」
「何だ、買い出しか?」
長沢さんと圭斗がドアを開けた場所で仕事をしていた。
「まぁ、買い出しの前に麓の家を生で見せに?」
ビデオを撮ってこれでもかと見せたつもりだが、実際肉眼で見るのは全く違う。
「説明するよりも宮下の場合実際見せた方が早いからな」
言いながらお邪魔しますと先生の家の方から見せるのだった。
玄関を上がってすぐ横は広い玄関ホール。
あれからいろいろ話し合って土間に変えたのだ。
三畳ほどの板の間だったけど玄関から上がる事なくオープンシューズクローゼットな感じに変えてしまった。
実際は靴を置く棚とその上に花を飾るような空間、そして広い土間には長椅子を作りつけて誰かが来た時には家に上がる事なくここで話しが出来たりする場所になる。
急な変更も直ぐに対応してくれてありがたいと言うかこう言う所は知り合いって融通がきいていいよなとすぐに変更が聞く当たり感謝だ。当然料金は追加になるが……
そこは俺の我が儘代として納得しよう。
「あー、お風呂場の脱衣所作ったんだ」
「さすがにないとな」
苦笑すれば納戸潰したんだねと言いながら壁を壊したので風呂場と納戸が丸見えなのが随分恥ずかしい状態だけど
「これだけ広いと家の中に洗濯機もおけるね」
「そういや先生の家で洗濯したトコ見た事なかったな」
「コインランドリー使ってたよ」
それは必要になるかと思うも壁にはりつけられた設計図を見ればいつ使うか判らないのに浴室乾燥機完備になっているこの風呂場を「役に立つのかな」と苦笑しながら見回してから廊下を挟んだ台所へと向かう。
キッチンはまだ来てないので配管がむき出しだが明るい室内は新しいフローリングが木屑でもさっとなっていた。
仕方がない。
どこを踏んでも床が抜けそうになるこの家で足場の確保は安全の一歩だ。
下の方は缶ビールの飲み残し空の湿気で総て張り替えとなったし、予定してた壁とは少し趣向が凝らされて、若手の大工さんの練習現場となったのはもう言うまい。
あれこれこうしてほしいと口は出すが、住まいに関しては別にこだわりのない俺は最初のイメージが崩れなければ予算内なら問題なしと言うのは前回の離れで皆さん理解してか楽しそうに改造して下さっている。
俺の感性が酷いのが一番問題なのでよくしてくれる分なら問題ないし、多少の増額は仕方がないと割り切っている。なんせ、俺が思うには技術料はほぼプライスレス。俺の計算だと実費だけなので寧ろ得をさせてもらっていると俺は思っている。
「あ、この欄間は壁にはめ込んだんだ」
「内田のじいさんの作品だってさ。綺麗だからどこかにってなったらこの大きさだからな。良く見える様にここに持って来てもらった」
「酷い家だったからね。埃が積ってたけどこの欄間が輝いて見えた」
「俺には欄間の鷹が掃除しろって睨みつけているようにしか見えなかった」
「確かに睨まれても仕方がないよね」
何度掃除をしても元通りのこの不思議な家にはもう缶ビールの空き缶は転がってない。怪奇現象じゃないのだから先生が入らなければ普通の家だ。怯える事はないと二階へと案内をする。
宮下も上がり慣れた二階は街並みを一望するには特等席でこの街で花火大会があれば絶対文句なしにいい場所だろうと思ってしまう。
「二階はあまり変えないんだね」
「まぁ、イメージ画像みたいにこじんまりとした俺の住処が出来上がる予定だけどな」
「綾人の部屋でこじんまりって想像できないなー」
あの大きな山の家をよく知る宮下の感想に俺の部屋はコンパクトで全部が手が届くような作りだぞと言うもあの部屋は物を詰め過ぎと逆に注意されてしまう。
「いいんだよあれは」
家具一つも置いてない部屋が幾つもある部屋に対してのあの密度は倉庫と言うのかもしれないが俺はあの部屋が一番居心地がいいと思うのだから良いだろうと言っておく。
「で、隣の家はどんなふうになってるの?」
「ふふふ、この家の別名はニコイチハウス。
なんと間の通路が出来たから見てもらいたい!」
階段を下りて隣との家の段差のすうだんの階段を前にして言えば
「雨漏り大丈夫?」
「それ!全員に言われた!!!」
「うん。判ってても言いたかった!」
きりっとした顔で言うのは確信犯。共犯者は幼馴染と言う所か。
「まぁ、圭斗に雪かきを頑張ってもらうだけだしな」
「圭斗が不憫」
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