288 / 976
空と風と 4
しおりを挟む
なだらかな芝生の斜面に池と松が中心の回遊式の配置。それを囲む様に花れと母屋があり、至る所に在る休憩所に足を運んではその景色を堪能する。そしてそのまま旅館の中に在る施設を巡る。図書館のようなスペースがあり、そこは綾人の家の二階のような場所でもあった。壁一面の本棚と、本好きがまったりと出来るようなまるで自宅にでもいるような錯覚をするスペース。CDを聞く先客が居たり、ジュースを飲みながらゴロゴロしているいい大人もいる。それを見て綾人が何かを考える様に固まっているので先生の家がどう変わるか何だか予想は出来たし、まだ改装が始まったばかりの麓の家。今からでも手を入れるには全く問題ない段階なので先生の家がどんどん変わっていくのが手に取るように理解は出来た。
レンガを敷き詰めた床の部屋はすぐに外に飛び出せるような作りでこう言う土間も悪くないと眺めながら長い時を重ねて踏みしめられて磨かれたような光沢をもつ煉瓦をじっと見ていれば
「こう言うのもありだな」
綾人のぼそりと言う様子に宮下は動画用のカメラを回すのだった。旅館で他にもお客がいるからと止めておこうなんて話していたのに資料として撮る分には良いだろうとじっくりとなめまわすように撮影する宮下はほんとマニアだと思う。
宿泊客なので最後に支払いをと部屋代に回してもらってバーで一杯ワインを飲ませてもらった。あっさりと白ワインとチーズのオードブル。撮影した映像を見ながら先生の家の改造に手を加える。
「俺、隣の家の内装知らないけど、時代的には先生の家とほぼ同時期なんだよね?」
「同じ内田と長沢で作ってもらってるから内装とかも似てるぞ」
圭斗はだから同じ癖があって作りやすいと言う。
「個人的には隣の土間をみんな煉瓦を敷き詰めようかどうしようか」
「枕木を詰めてもいいんじゃない?」
「シロアリの住処になる。こうなると石を敷き詰めるのもいいな」
「綾人が欲しい四阿もどういった物か何だか理解できたしね」
そんな話をしていれば支配人がやって来た。
どうもご挨拶にとか言う所なのだろう。席の傍らに立ちワインを舐めながら映像を見てスマホの小さな画面であーだこーだと呻く俺達にあっち行ってくれと言うわけでもなく一緒に建物の材質や作りの話しに混ざり、木工作家によって至る所にある家具を作ってもらったと言うのだ。味があるのはそう言ったアーティストだからかと納得すれば
「だったら今度麓の家の家具は俺に任せろ」
圭斗が何やら触発されて先生の家の家具を大幅に改造しようと言い出した。
「お前な、俺家なんだぞ?」
「お前に設計させたら烏骨鶏ハウスの二階のように何もない窓だけの部屋になるだろう」
これだからミニマムはと鼻で笑われてしまった。
「所で三人は設計か何かを?」
全く知らないのにここまで話に入ってきた支配人さんの知識が凄いなと感心している間に宮下が簡単に俺達の説明をする。
幼馴染で、高校生の同級生で、同じ村出身で……
「この動画を配信しているの俺達なんです。
今度の企画でいつか雪山から降りなくちゃいけなくなった時の家のリフォームをする事にしてるのですが、あまり手を入れないつもりだったけどここにきて触発されまして」
どうやら触発されてるのは圭斗だけではないようだ。
「なかなか凄い企画してるじゃないですか」
簡単に烏骨鶏ハウスの二階のリフォームや古民家の改築を飛ばし飛ばしに見せてのプレゼンテーション。
「良いもの見に来たつもりだったのにこうやって体験すると欲が増えるなぁ」
ただ体験して刺激になればと思って選んだのに、肝心の俺が刺激を受けてうずうずとし始めてしまっていた。
「ありがとうございます」
支配人は褒め言葉と受け止めてくれて満足したのかごゆっくりしてくださいと一言残して去って行く支配人の姿が見えなくなった所で
「あの人何しに来たんだろ」
「偵察じゃね?」
何て事もないと言う様に圭斗もスマホで二階の壁一面の書斎と縁側から優雅に正面の山肌を眺める景色を堪能できるような窓辺を大正レトロのように改造しよう提案する。駅が一番見やすい場所に格子窓を全面に張ってカーテンの代わりに障子も並べる。隅っこに机を置いてレトロなランプで明かりを取りながら酒杯を傾ける展望。縁側との境の障子を開ければ文豪でもいそうな書斎の数々。レトロな大きな机とゆったりとした椅子と……
「案外普通の部屋になったね」
「むしろ家の二階と変わらないな」
辛辣な宮下と俺の感想に圭斗はワインを一気に飲み干して不貞腐れるのだった。
「俺としては別の離れの写真だけどこう言った風呂場が良い」
綾人は檜風呂もいいよなといって風呂からそのまま外に出られる窓があるだけで、外から見えないように囲いで囲えばいいと言う提案もするが
「ここならできる事であって、麓じゃ水道管凍るぞ。水道管ならまだしも配水管が凍ると悲惨だぞ」
「やっぱり麓でも駄目かぁ」
氷点下切りまくる地域では綾人の夢は厳しいようだ。
レンガを敷き詰めた床の部屋はすぐに外に飛び出せるような作りでこう言う土間も悪くないと眺めながら長い時を重ねて踏みしめられて磨かれたような光沢をもつ煉瓦をじっと見ていれば
「こう言うのもありだな」
綾人のぼそりと言う様子に宮下は動画用のカメラを回すのだった。旅館で他にもお客がいるからと止めておこうなんて話していたのに資料として撮る分には良いだろうとじっくりとなめまわすように撮影する宮下はほんとマニアだと思う。
宿泊客なので最後に支払いをと部屋代に回してもらってバーで一杯ワインを飲ませてもらった。あっさりと白ワインとチーズのオードブル。撮影した映像を見ながら先生の家の改造に手を加える。
「俺、隣の家の内装知らないけど、時代的には先生の家とほぼ同時期なんだよね?」
「同じ内田と長沢で作ってもらってるから内装とかも似てるぞ」
圭斗はだから同じ癖があって作りやすいと言う。
「個人的には隣の土間をみんな煉瓦を敷き詰めようかどうしようか」
「枕木を詰めてもいいんじゃない?」
「シロアリの住処になる。こうなると石を敷き詰めるのもいいな」
「綾人が欲しい四阿もどういった物か何だか理解できたしね」
そんな話をしていれば支配人がやって来た。
どうもご挨拶にとか言う所なのだろう。席の傍らに立ちワインを舐めながら映像を見てスマホの小さな画面であーだこーだと呻く俺達にあっち行ってくれと言うわけでもなく一緒に建物の材質や作りの話しに混ざり、木工作家によって至る所にある家具を作ってもらったと言うのだ。味があるのはそう言ったアーティストだからかと納得すれば
「だったら今度麓の家の家具は俺に任せろ」
圭斗が何やら触発されて先生の家の家具を大幅に改造しようと言い出した。
「お前な、俺家なんだぞ?」
「お前に設計させたら烏骨鶏ハウスの二階のように何もない窓だけの部屋になるだろう」
これだからミニマムはと鼻で笑われてしまった。
「所で三人は設計か何かを?」
全く知らないのにここまで話に入ってきた支配人さんの知識が凄いなと感心している間に宮下が簡単に俺達の説明をする。
幼馴染で、高校生の同級生で、同じ村出身で……
「この動画を配信しているの俺達なんです。
今度の企画でいつか雪山から降りなくちゃいけなくなった時の家のリフォームをする事にしてるのですが、あまり手を入れないつもりだったけどここにきて触発されまして」
どうやら触発されてるのは圭斗だけではないようだ。
「なかなか凄い企画してるじゃないですか」
簡単に烏骨鶏ハウスの二階のリフォームや古民家の改築を飛ばし飛ばしに見せてのプレゼンテーション。
「良いもの見に来たつもりだったのにこうやって体験すると欲が増えるなぁ」
ただ体験して刺激になればと思って選んだのに、肝心の俺が刺激を受けてうずうずとし始めてしまっていた。
「ありがとうございます」
支配人は褒め言葉と受け止めてくれて満足したのかごゆっくりしてくださいと一言残して去って行く支配人の姿が見えなくなった所で
「あの人何しに来たんだろ」
「偵察じゃね?」
何て事もないと言う様に圭斗もスマホで二階の壁一面の書斎と縁側から優雅に正面の山肌を眺める景色を堪能できるような窓辺を大正レトロのように改造しよう提案する。駅が一番見やすい場所に格子窓を全面に張ってカーテンの代わりに障子も並べる。隅っこに机を置いてレトロなランプで明かりを取りながら酒杯を傾ける展望。縁側との境の障子を開ければ文豪でもいそうな書斎の数々。レトロな大きな机とゆったりとした椅子と……
「案外普通の部屋になったね」
「むしろ家の二階と変わらないな」
辛辣な宮下と俺の感想に圭斗はワインを一気に飲み干して不貞腐れるのだった。
「俺としては別の離れの写真だけどこう言った風呂場が良い」
綾人は檜風呂もいいよなといって風呂からそのまま外に出られる窓があるだけで、外から見えないように囲いで囲えばいいと言う提案もするが
「ここならできる事であって、麓じゃ水道管凍るぞ。水道管ならまだしも配水管が凍ると悲惨だぞ」
「やっぱり麓でも駄目かぁ」
氷点下切りまくる地域では綾人の夢は厳しいようだ。
137
お気に入りに追加
2,744
あなたにおすすめの小説
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる