265 / 976
旅立つ君に 2
しおりを挟む
「ずいぶんとまあ、いきなりだな」
「たまにあるのよ。向こうの先生が体調悪くなって急遽辞める事になってね、って。先生もこっちにそれなりにいるでしょ?そろそろ移動あるかと思ったら今なのよ」
やれやれと言う顔だが、それを知らずに卒業してしまった卒業生達は会えなくなることを知っているのだろうかと思うも
「まぁ、公立高校の教師の使い勝手の良い所よ」
せめて家から通えるところにしてくれればいいのにとぼやく様子に
「じゃあ、あの家は?」
「まぁ、別荘としてて持っててもいいけど、税金かかるからねぇ。売れれば売ってもいいかもな。こっち来た時はいつもみたいに綾人の家に泊まればいいし、圭斗の家にも俺の部屋を確保してあるし」
「いや、せんせーの家、間違っても売れねえだろ」
「つーかさ、せんせーの部屋なんてないぜ?」
「お前ら元担任に対して冷たくないか?」
サザエをほじくり出しながら抗議をするが
「先生の家を掃除させられた時に家の中でハクビシンに会った時はマジビビったし」
「あの頃の綾人は可愛かったよな。ゴキブリ見て悲鳴あげちゃってさ。それが今じゃチェンソー振り上げてクマに襲いかかる子になっちゃって、先生びっくりだよ」
ほじくり出したサザエから肝を取り分けて肝醤油を作り、それに身を絡めて堪能する。
「うめえ!日本酒おかわり!」
植田が綾人に引きながらお酌をする。
「待て、何についてそんな目で俺を見る」
「あやっちの全部っす。
ゴキで悲鳴とか熊にチェインソーとか。アイスホッケーのマスクした映画が昔ありましたよね?」
「ジェイ●ン君のお話?ハロウィンになると渋谷にもやってくるよ」
どうでも良さげに焼き牡蠣の熱と戦いながらも攻略する様子はさすがに恥ずかしいというのを懸命に誤魔化している証拠だろうか。
「それよりも屋根だけじゃなくってやっぱり家の中までハクビシンは入ってくるのですか?」
牡蠣の殻を開けながら素直に疑問を飯田が問えば
「そこは先生の家の特殊事情があるから。いくらなんでも人が住んでいる家なら屋根から降りてこないよ」
簡単な宮下の説明にだったら何で?というよりも
「特殊事情?」
上島も疑問を覚えながらも牡蠣の殻むきを手伝っている。
「あんな所に人が住んでいるのかってぐらいのゴミ屋敷だからな」
「積もり積もって七年分。思い出が詰まった我が家は獣達もやってくる魅惑の我が家だ」
見た事ないだろう下田達も牛タンを食べる手を止めてしまった。
「何だろう。お世話になった先生のために引越しのための先生の家の掃除に行こうかって提案しようと思ったんだけど」
「川上、そんな危険な提案は止めろ。
絶対一日じゃ終わらないから」
牡蠣から箸を離して何を思い出したのか震える綾人に焼いた伊勢海老で海老グラタンを作った飯田は思い出すなというように差し出せばもう忘れたと言わんばかりに一人伊勢海老のグラタンを抱えて恍惚と堪能していた。
圭斗は飯田の綾人の扱いがぞんざいすぎないかと不安になるも、その横で伊勢海老の刺身を用意されれば真っ先に手を伸ばすのだった。勿論海老だけではなく蟹の刺身も用意すれば陸斗が
「初めて食べました!」
とこれもお約束の感動に目をキラキラとさせながら蟹の足を下田と葉山と一緒に空を仰ぐようにしてつるんと食べるのだった。
そして身の方は先生が甲羅に集められた味噌と共にに日本酒を入れてアテにするという未成年が手を出せない暴挙ぶり。さすがに独り占めはダメですよと飯田が一気に飲むというこれも酷い暴挙だがいいぞもっとやれ!とのエールをもらう様子に高山は飯田への嫉妬を募らす横で綾人は真剣な目で海老グラタンの味噌を懸命に攻略していた。
「あ、ラム肉の香草焼そろそろ食べごろです。熱いうちにかぶりついてください」
飯田の指示に綾人を覗く全員がラム肉に群がる中飯田は鮑の殻に雲丹を盛り付けて牡蠣の隣で貝焼きを作り始めた。
「シェフー、こんなの食べたら明日から何食べればいいかわからなくなるんだけどー?」
とても両手にラム肉を持って食べるやつの言葉じゃねえと思うがそこは飯田。
「大丈夫です。俺は毎日食べてるけど次の日も毎日美味しくご飯をいただけますので」
「味見で毎日食べてるだけだろ。それにこれだけの腕なら毎日ご飯は美味いよな!」
「先生も料理の上手な方をみつけて再婚なさって下さい」
「キーッツ!プロポーズ断られたヤローに言われたくない!」
両者致命的大ダメージ。
高校生達は宮下の指示によって肉ゾーンに避難をし、綾人は海鮮コーナーで黙々と口を動かし圭斗は聞こえないという顔で雲丹うめえと貝焼きを焦げだした隅っこから攻略するのだった。
「たまにあるのよ。向こうの先生が体調悪くなって急遽辞める事になってね、って。先生もこっちにそれなりにいるでしょ?そろそろ移動あるかと思ったら今なのよ」
やれやれと言う顔だが、それを知らずに卒業してしまった卒業生達は会えなくなることを知っているのだろうかと思うも
「まぁ、公立高校の教師の使い勝手の良い所よ」
せめて家から通えるところにしてくれればいいのにとぼやく様子に
「じゃあ、あの家は?」
「まぁ、別荘としてて持っててもいいけど、税金かかるからねぇ。売れれば売ってもいいかもな。こっち来た時はいつもみたいに綾人の家に泊まればいいし、圭斗の家にも俺の部屋を確保してあるし」
「いや、せんせーの家、間違っても売れねえだろ」
「つーかさ、せんせーの部屋なんてないぜ?」
「お前ら元担任に対して冷たくないか?」
サザエをほじくり出しながら抗議をするが
「先生の家を掃除させられた時に家の中でハクビシンに会った時はマジビビったし」
「あの頃の綾人は可愛かったよな。ゴキブリ見て悲鳴あげちゃってさ。それが今じゃチェンソー振り上げてクマに襲いかかる子になっちゃって、先生びっくりだよ」
ほじくり出したサザエから肝を取り分けて肝醤油を作り、それに身を絡めて堪能する。
「うめえ!日本酒おかわり!」
植田が綾人に引きながらお酌をする。
「待て、何についてそんな目で俺を見る」
「あやっちの全部っす。
ゴキで悲鳴とか熊にチェインソーとか。アイスホッケーのマスクした映画が昔ありましたよね?」
「ジェイ●ン君のお話?ハロウィンになると渋谷にもやってくるよ」
どうでも良さげに焼き牡蠣の熱と戦いながらも攻略する様子はさすがに恥ずかしいというのを懸命に誤魔化している証拠だろうか。
「それよりも屋根だけじゃなくってやっぱり家の中までハクビシンは入ってくるのですか?」
牡蠣の殻を開けながら素直に疑問を飯田が問えば
「そこは先生の家の特殊事情があるから。いくらなんでも人が住んでいる家なら屋根から降りてこないよ」
簡単な宮下の説明にだったら何で?というよりも
「特殊事情?」
上島も疑問を覚えながらも牡蠣の殻むきを手伝っている。
「あんな所に人が住んでいるのかってぐらいのゴミ屋敷だからな」
「積もり積もって七年分。思い出が詰まった我が家は獣達もやってくる魅惑の我が家だ」
見た事ないだろう下田達も牛タンを食べる手を止めてしまった。
「何だろう。お世話になった先生のために引越しのための先生の家の掃除に行こうかって提案しようと思ったんだけど」
「川上、そんな危険な提案は止めろ。
絶対一日じゃ終わらないから」
牡蠣から箸を離して何を思い出したのか震える綾人に焼いた伊勢海老で海老グラタンを作った飯田は思い出すなというように差し出せばもう忘れたと言わんばかりに一人伊勢海老のグラタンを抱えて恍惚と堪能していた。
圭斗は飯田の綾人の扱いがぞんざいすぎないかと不安になるも、その横で伊勢海老の刺身を用意されれば真っ先に手を伸ばすのだった。勿論海老だけではなく蟹の刺身も用意すれば陸斗が
「初めて食べました!」
とこれもお約束の感動に目をキラキラとさせながら蟹の足を下田と葉山と一緒に空を仰ぐようにしてつるんと食べるのだった。
そして身の方は先生が甲羅に集められた味噌と共にに日本酒を入れてアテにするという未成年が手を出せない暴挙ぶり。さすがに独り占めはダメですよと飯田が一気に飲むというこれも酷い暴挙だがいいぞもっとやれ!とのエールをもらう様子に高山は飯田への嫉妬を募らす横で綾人は真剣な目で海老グラタンの味噌を懸命に攻略していた。
「あ、ラム肉の香草焼そろそろ食べごろです。熱いうちにかぶりついてください」
飯田の指示に綾人を覗く全員がラム肉に群がる中飯田は鮑の殻に雲丹を盛り付けて牡蠣の隣で貝焼きを作り始めた。
「シェフー、こんなの食べたら明日から何食べればいいかわからなくなるんだけどー?」
とても両手にラム肉を持って食べるやつの言葉じゃねえと思うがそこは飯田。
「大丈夫です。俺は毎日食べてるけど次の日も毎日美味しくご飯をいただけますので」
「味見で毎日食べてるだけだろ。それにこれだけの腕なら毎日ご飯は美味いよな!」
「先生も料理の上手な方をみつけて再婚なさって下さい」
「キーッツ!プロポーズ断られたヤローに言われたくない!」
両者致命的大ダメージ。
高校生達は宮下の指示によって肉ゾーンに避難をし、綾人は海鮮コーナーで黙々と口を動かし圭斗は聞こえないという顔で雲丹うめえと貝焼きを焦げだした隅っこから攻略するのだった。
149
お気に入りに追加
2,744
あなたにおすすめの小説
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした
赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】
皆様どうぞよろしくお願いいたします。
【10/23コミカライズ開始!】
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました!
颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。
【第2巻が発売されました!】
今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです!
素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。
【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる