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白銀の世界で春を謳う 13
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食に対するどん欲さに目覚めた以上自分の事は自分でやるのなら好きにさせる、それがここでの生き方だと言う様にあえて何も言わない事にした。
「なんだ?綾人は株でもやってるのか?」
それなりに稼いでそうな蓮司なら抵抗なくやってそうだなと思うって「儲かってる?」と聞けば「少しだけ」と言うあたりガッツリ稼いでいる事を察した。
とは言えいくら資本があれどこんな山の奥。
「ここに住んで通勤圏に会社があれば話は別だ」
いや、あるだろうと言う周囲のツッコミを華麗に無視して
「烏骨鶏の面倒を見ながら畑の世話をして雑草の退治をしながらサラリー何て生活できないし」
「いや、結構やってる人いるぞ?」
先生は冷静に言うも綾人だってやってる人を知っているだけに聞こえない顔をする。
「この冬の前から山の手入れも始めたし、今更満員電車に乗って仕事に出掛けるなんて考えたら不労所得の確保でどうするかを考えた方が現実的だ」
「幸いお前にはその才能があったって言うのが高三の担任教師だった先生は泣きたくなったよ。あの年のクラスでお前だけが、三年間不動の学年一位にもかかわらず進学も就職もしなかったんだから。他の先生方にも突かれ続けたんだぞ」
「先生は来年進学とかそう言う言葉で誤魔化す事知らないの?」
「だったら予備校行くとかあるだろう。それすらしないんじゃ他の先生方も心配するぞ」
なんて俺の問題児ぶりに蓮司も山川さんも引いている。
「俺は高校の時もう芸能人してたから、貴重な学生時代という名目を堪能したぞ」
最後に小さな声で多分と付け加えたぐらいだからいろいろあったと察するのは簡単だ。
「皆楽しんでるんだなぁ。
俺は家が左官職人の家だから卒業したらすぐ家の仕事を手伝うって言う空気だったから。
だけど世間的に高校に行っておけって流れで行ってたから、だらだらと過ごしてたなぁ」
今はこうやってきちんとしている山川さんとは思えない生活ぶりに驚くも
「学校行く暇があるなら爺さんに引っ付いて仕事手伝わせてもらった方が楽しかったしな」
根っからの職人気質にさすがと言うしかないだろう。
「そのじーさんはとっくに逝ったし、親父も中々引退してくれないし、子供達は東京方面にさっさと就職しちまって、こうやって振り返ると順風満々な人生だなぁ」
親父さんの所が元気そうで何よりと思うも
「先生の学生時代は?」
教師なんてやってるんだからさも真面目な学生時代だっただろうといつの間にか持ち出して来た日本酒を舐めながら笑うも
「俺?俺はあまりいい生徒じゃないぞ。
いつもさぼってたから出席日数はギリだったし、仲の良かった、ああ、やっぱり物理の先生だったな。準備室に入り浸って私物化してたし。
時々勝手に実験器具を使って怒られたり、大事にはならなかったけど壁に穴をあけて、先生と一緒に棚で隠したな」
「うわ、それは酷い」
「成績も物理以外はほぼ全滅に近かったぞ」
「その先生の苦労が忍ばれる!」
「ついでにじゃないが数学と英語はみっちりやらされたけど、そこからどうしてか判らんが気が付いたら教師の道を進まされていた」
「はあ、なんて言うか。先生にもそんな可愛い時代があったんだなぁ」
「俺の教え子に教師になった奴は一人もいないが、何が違うんだ?」
「んなの、先生の家を一度見れば納得するさ」
人としては時々頭が下がる思いもするが、人間的には全く持って学ぶところがない教師を見て教師を目指す理由こそ教えてほしい。
「まぁ、でもだ。
そんな学生時代を経て今の俺達がある。みんなそれぞれ自分の道を突き進んでいるからいいじゃないか」
それがたとえ困難しかなく、人にも認められにくい物だろうとしてもだ。
「爺さんが人生も一年の中何度も季節を巡るなんてよく言っていた。
子供の頃の無邪気な頃を春として、学生時代の何でもバカな事がやれた頃を夏だと言った。それから慌ただしい環境の変化を秋として、いつの間にか仕事に押しつぶされてがんじがらめになっている冬を迎えていたと。だけど結婚を春にして、子供に振り回される夏が来て、反抗期や進学の問題と言う一番胃の痛い冬が来て、ああ、秋は何時もあっという間だと言ってたな。そう言った事の繰り返しだと。
そんな爺さんの持論で言うところ今はいつになるだろうか」
冬だとは言いたくないなと山川さんは言えば静かなスマホのバイブの音が響く。
蓮司の物らしく、そのモニターを覗き込んで通話が必要なのだろう。土間に移動して何やらはい、はいと返事をしていた。
仕事がらみかと、今山川さんのお爺さんが言う所で真冬だろう蓮司を眺めれば通話は意外にも早く終わった。
少し複雑そうな顔をして戻って来た蓮司に
「何かめんどくさい事?」
仕事の事なら聞かない方が良いのにと分かっていてもどこか暗い表情を見ては聞かずにはいられない。
「いや、そうだな。めんどくさくはないが、めんどくさいんだろうな」
何だかその表情通り複雑な事かと思えば
「仕事再開するから明日帰って来いって言われた」
突然の展開に思わず目を瞠った。
「なんだ?綾人は株でもやってるのか?」
それなりに稼いでそうな蓮司なら抵抗なくやってそうだなと思うって「儲かってる?」と聞けば「少しだけ」と言うあたりガッツリ稼いでいる事を察した。
とは言えいくら資本があれどこんな山の奥。
「ここに住んで通勤圏に会社があれば話は別だ」
いや、あるだろうと言う周囲のツッコミを華麗に無視して
「烏骨鶏の面倒を見ながら畑の世話をして雑草の退治をしながらサラリー何て生活できないし」
「いや、結構やってる人いるぞ?」
先生は冷静に言うも綾人だってやってる人を知っているだけに聞こえない顔をする。
「この冬の前から山の手入れも始めたし、今更満員電車に乗って仕事に出掛けるなんて考えたら不労所得の確保でどうするかを考えた方が現実的だ」
「幸いお前にはその才能があったって言うのが高三の担任教師だった先生は泣きたくなったよ。あの年のクラスでお前だけが、三年間不動の学年一位にもかかわらず進学も就職もしなかったんだから。他の先生方にも突かれ続けたんだぞ」
「先生は来年進学とかそう言う言葉で誤魔化す事知らないの?」
「だったら予備校行くとかあるだろう。それすらしないんじゃ他の先生方も心配するぞ」
なんて俺の問題児ぶりに蓮司も山川さんも引いている。
「俺は高校の時もう芸能人してたから、貴重な学生時代という名目を堪能したぞ」
最後に小さな声で多分と付け加えたぐらいだからいろいろあったと察するのは簡単だ。
「皆楽しんでるんだなぁ。
俺は家が左官職人の家だから卒業したらすぐ家の仕事を手伝うって言う空気だったから。
だけど世間的に高校に行っておけって流れで行ってたから、だらだらと過ごしてたなぁ」
今はこうやってきちんとしている山川さんとは思えない生活ぶりに驚くも
「学校行く暇があるなら爺さんに引っ付いて仕事手伝わせてもらった方が楽しかったしな」
根っからの職人気質にさすがと言うしかないだろう。
「そのじーさんはとっくに逝ったし、親父も中々引退してくれないし、子供達は東京方面にさっさと就職しちまって、こうやって振り返ると順風満々な人生だなぁ」
親父さんの所が元気そうで何よりと思うも
「先生の学生時代は?」
教師なんてやってるんだからさも真面目な学生時代だっただろうといつの間にか持ち出して来た日本酒を舐めながら笑うも
「俺?俺はあまりいい生徒じゃないぞ。
いつもさぼってたから出席日数はギリだったし、仲の良かった、ああ、やっぱり物理の先生だったな。準備室に入り浸って私物化してたし。
時々勝手に実験器具を使って怒られたり、大事にはならなかったけど壁に穴をあけて、先生と一緒に棚で隠したな」
「うわ、それは酷い」
「成績も物理以外はほぼ全滅に近かったぞ」
「その先生の苦労が忍ばれる!」
「ついでにじゃないが数学と英語はみっちりやらされたけど、そこからどうしてか判らんが気が付いたら教師の道を進まされていた」
「はあ、なんて言うか。先生にもそんな可愛い時代があったんだなぁ」
「俺の教え子に教師になった奴は一人もいないが、何が違うんだ?」
「んなの、先生の家を一度見れば納得するさ」
人としては時々頭が下がる思いもするが、人間的には全く持って学ぶところがない教師を見て教師を目指す理由こそ教えてほしい。
「まぁ、でもだ。
そんな学生時代を経て今の俺達がある。みんなそれぞれ自分の道を突き進んでいるからいいじゃないか」
それがたとえ困難しかなく、人にも認められにくい物だろうとしてもだ。
「爺さんが人生も一年の中何度も季節を巡るなんてよく言っていた。
子供の頃の無邪気な頃を春として、学生時代の何でもバカな事がやれた頃を夏だと言った。それから慌ただしい環境の変化を秋として、いつの間にか仕事に押しつぶされてがんじがらめになっている冬を迎えていたと。だけど結婚を春にして、子供に振り回される夏が来て、反抗期や進学の問題と言う一番胃の痛い冬が来て、ああ、秋は何時もあっという間だと言ってたな。そう言った事の繰り返しだと。
そんな爺さんの持論で言うところ今はいつになるだろうか」
冬だとは言いたくないなと山川さんは言えば静かなスマホのバイブの音が響く。
蓮司の物らしく、そのモニターを覗き込んで通話が必要なのだろう。土間に移動して何やらはい、はいと返事をしていた。
仕事がらみかと、今山川さんのお爺さんが言う所で真冬だろう蓮司を眺めれば通話は意外にも早く終わった。
少し複雑そうな顔をして戻って来た蓮司に
「何かめんどくさい事?」
仕事の事なら聞かない方が良いのにと分かっていてもどこか暗い表情を見ては聞かずにはいられない。
「いや、そうだな。めんどくさくはないが、めんどくさいんだろうな」
何だかその表情通り複雑な事かと思えば
「仕事再開するから明日帰って来いって言われた」
突然の展開に思わず目を瞠った。
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