人生負け組のスローライフ

雪那 由多

文字の大きさ
上 下
141 / 976

静かな夜に 3

しおりを挟む
 酷い目を見た一日が終わり、今夜はお茶を淹れて啜っていた。
 あいつらに関わるとろくな事がない、いや自業自得だけど責任の半分ぐらいはあいつらにあると思っている。
 だけど流石に今夜ぐらいは肝臓の為にも休ませないとねと、嘘です。一日中ゲロってたら流石に飲む気になれませんでしたので部屋に籠りPCを起動させます。
 三台のPCを使って黙々と仕事の日でもないのに情報を集める。
 今日一日ずっと横になってずっと一日ウトウトと過ごしたので眠気のやってこない夜にするにはちょうどいいかと三台のモニターを駆使してこの田舎にはないペースの世界へと飛び込んだ。
 そんな中でこの国の言葉ではない国の情報を拾い上げた。
「あ……」
 懐かしい想いが溢れだすような文字の羅列に思いとは裏腹に目は情報を拾い上げ、いつの間にか過ぎてしまった時間を悔しく思い唇を強く噛んでページを閉ざす。
 諦めるにはまだ生々しい傷痕で、だけど選んだのは俺だ。後悔はしないとやりたいと思う事はやって来たと自負して居る。だけど焦がれた想いはまだ燻っていて、こんな日には再び見つけた偶然の幸運を喜ぶよりもダメージとなって返ってくる。
 払拭するように何か映画でも見ようかと思うもそんな気分にはなれず、思い出したかのように今日一日シャットダウンしていたスマホを起動する。
 うん。さすがにまずった。
 山のように既読がついてないLIMEと返事をして放置した相手。圭斗からも意味のないメッセージから始まった読まれないメッセージに起きやがれと叱咤する物からやがて心配する内容。
 この国の大半どこかにいれば電波を拾い上げてくれるが。でも裏山になるともう完全に届かなくなる。流石にこんな山の中の一軒家の為に設備投資はしてもらえなかった。なので山に登るときは必ず誰かに伝えてから登ることにしている。なので予告なく連絡がつかないと言う事はまずない。
 主に遭難か熊に遭遇した時の為に。
 遭難した事はないが、宮下商店に行く為の近道を探してかなり遠回りした事は何度かあるが、おかげでうちから下の様子は手にとるように理解した。勿論我が家の秘密の場所も。
 とりあえず段々畑になっている一番下の畑からさらに畑を作ったりいろんな感情をぶつけるようにがむしゃらな時もあって、今は使ってないので雑草に飲み込まれた畑がいくつか増えていた。
 開墾して慣らしてかき集めた落ち葉を土に混ぜ込み畝を作ってと、あの時はなぜか一面のキャベツ畑を作って半分以上を土に帰したという思い出となったのが畑が雑草に飲み込まれた理由だろう。
「じゃがいもとか玉ねぎなら保存が出来たのにね」
 五玉ほど持って帰ってくれた宮下の言葉に雷に打たれたようなショックを覚えたのは今では懐かしい思い出だ。
 ともあれ一つ一つ処理をして最後は胃の居たくなるような薄くも同じジイちゃんがとバアちゃんの血が流れる従兄弟殿に連絡を入れた。
「ちょっと寝てただけだから連らく取れないくらいでいちいち騒ぐな、でいいか」
 ガキじゃないんだからとメッセージを返せばそれなりにすぐ反応があった物はちらちらと返って来た。圭斗には素直に二日酔いがヤバくって内田さんに介抱してもらったとか、圭斗から連絡が行ったのか宮下からも連絡が来て二日酔いの薬の位置を教えて貰ったり……お前はオカンかと呟くのは当然だろう。
 何が悲しくて人の家の薬箱事情を網羅してるのかと言う前にそれだけお世話をさせてしまった俺が一番の問題だがここに来て本当に宮下がいなくなってしまったのは大ダメージすぎると自分の普段の生活を振り返ってみれば随分な家内状況に追い込まれていた事にやっと気が付くのだった。
「薬箱の中の胃腸薬見つけた。だいぶすっきりした。ありがとう」
 そう言って返信すればすぐにこっちの様子を動画をクラウドに入れたからというメッセージが届いた。
 動画製作する為のお互いのチェック用にアカウントを共有しているが、そこにはいろいろと放りこんでいる。そこを見れば昨日の日付の新しいファイルがあって折角だから暇を持て余した眠れない俺が編集してやろうと宮下の様子を伺うのだった。

しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多
ライト文芸
 恋人に振られて独立を決心!  尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!  庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。  さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!  そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!  古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。  見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!  見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート! **************************************************************** 第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました! 沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました! ****************************************************************

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...