人生負け組のスローライフ

雪那 由多

文字の大きさ
上 下
131 / 976

焦って急いでも着地地点は結局同じ、と思ったら大間違いだ 8

しおりを挟む
「「「「「「綾っちおはよー!!!」」」」」」
「綾っち言うな」
 宮下の衝撃の告白?から二日過ぎて迎えた一泊二日の勉強会合宿。三日後には始業式があるのに大丈夫かと思うも三年と一年は何とか宿題を終わらせたので大丈夫だろう。問題は二年だが……
「二年は宿題終わらせてきたか?」
「出来る所までは。判らない所は教えてもらおうと思って残してます」
「同じく!」
「俺は終わらせてきました。去年の綾人さんマジ怖かったので」
三人組は可能な限り頑張ったようなのでこの後集中しての勉強会をするつもりだ」
「上島兄弟はどうだ?」
「うちは大丈夫です」
 そうだと頷く弟はここで勉強会に参加しなくても良いレベル。そんなに烏骨鶏と遊びたいか?とまあ、ちゃんと勉強もするしいいかと好きにさせている。
「親父さんはどう?屋根から落ちたその後」
「あー、特に怪我もなく元気にしてますよ」
「内田さんも心配してたからあとで挨拶しとけよ」
「うっす」
 そう言いながら家の外から釘を打つ音やチェンソーの音が聞こえてくる。
 お盆も終わり家造りも再開となった。
 内田さんはこのお盆の間に横浜の元奥さんの所に子供を連れて会いに行ったそうだ。元奥さん達にはこちらに来れない以上会いに行くしかないのだが、下の子供達がやはりまだ母親が恋しくて今も時々泣いて過ごしていると言う。
 当然そんな子供の姿を見て母親は自分の見栄のためにどれだけ身勝手な事をしたのか理解したようで、いずれはまた一緒に暮らしたいと言っているらしい。そんな話を浩太さんから聞いたが、もちろんそれは件の息子、雅治が独り立ちしてからだと言う。まぁ、人の家の事なのでとやかく言うつもりはないが、出来れば戻ってきてほしくはない。内田さんの家と圭斗の家はそれほど遠くなく、二人が再会した時の陸斗を思えば顔を見せるなと言う物だろう。
 そんな中荷物を置いて居間に集まって二年生達の宿題を見ながら用意したテストの予想問題をほかの奴らにさせる。夏休みの宿題から出されるテスト問題なんて大体の予想はつく。そして三年の三人組には少々難しめに用意をした。上島兄の学力なら問題ないだろうし、前日まで付きっきりで勉強する事になった植田水野コンビもクリアしている問題ばかりだ。一年に至ってはそもそも問題が限られるし、中三の上島弟に至っては高校受験の勉強が中心になっている。勿論進むのは地元の高校。だけど最近烏骨鶏達と遊んだり畑仕事を手伝わせたりしてたせいか農業高校に行きたいと言い出したとか。その相談は親御さんとしろと親にちくっておいたがどうなったかはまだ話は聞いてない。確か寮生活がどうのこうのと先生が言っていた。どのみち地元の高校と隣町の高校以外は全部寮生活になるだろうしと学費を払うのは俺じゃないからとそこは現実的な返答をしておくだけ。
 だが、もし行くとなると兄弟二人そろって家を出るわけだから、上島さんちも大変だと、屋根に穴をあけてる場合じゃないぞと心の中で突っ込んでおく。
 二年の面倒を見ている間に一枚目のテストが終わる。そして十分のインターバルを置いて二枚目のテストをさせ、また十分置いて三枚目のテストを終えた所で一年と三年でご飯の準備をさせるのだった。
 二年組は思ったよりも苦戦していてこの二日間は二年の強化合宿となった事が決定した。そしてほかの奴らは俺のテスト問題をひたすらさせる。テスト前の合宿なので山のように問題は作っておいたから、とにかくテストに出そうな問題に慣れろとひたすら鬼のようにさせて、間違えた所はちゃんと解説をする。勿論学年ごとにするのでその間はほかの奴らは休憩時間になる。
 一人で暮すには無駄に広く、そしてかなり処分したとはいえまだまだ物の多いこの家では今の広間に机を三つ設置してても狭苦しさはなく、二年の奴らは一番日当たりのいい温かな場所で勉強をしていた。主に俺の為に。
 山を舐めるなよ。
 はっきり言って真夏とは言え室内は二十六度とエアコン入れた気温は正直肌寒く思うんだぞ。日当たりが良いから三十度近くてちょうどいいが、下界から来たばかりのこいつらにはなれてない分肌寒く感じて長袖のブラウスを一枚着てるほどだぞ。
 もちろん陽射しの下でうろついてれば半袖でも汗ばむぐらいだが、それでも真夏に外で活動しようと言うやる気はある分過ごしやすいと思っている。
 やがて台所から賑やかな声が昼食の進行状況を伝えてくる。
 二年生達も気もそぞろにちらちらと台所に視線が奪われる。
 切れた集中力を取り戻すにはご飯にして気持ちをリセットするしかなく、開いたページを最後にお昼にしようと午前の勉強の終わりにしようと明確な目標を言えば二年生三人組は気合を入れて頑張るのだった。
 いつも思うのだがほんとちょろくて助かる。



しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多
ライト文芸
 恋人に振られて独立を決心!  尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!  庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。  さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!  そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!  古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。  見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!  見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート! **************************************************************** 第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました! 沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました! ****************************************************************

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...